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ボウリングでGO!
●オープニング【0】
「第429回チキチキゴーストネットボウリング大会〜!!」
ゴーストネットの管理人・瀬名雫がそう挨拶すると、周囲の者たちから拍手が起こった。
場所は都内某ボウリング場、掲示板での雫の呼びかけで小規模の大会が開かれることになったのだ。ちなみに回数は適当なので信じないよーに。
「えへへ、たまにはこうして身体を動かさないとねっ☆」
照れ笑いを浮かべる雫。確かに自宅にこもっているよりは、屋内であっても外へ出てきた方が健康的であるだろう。
「はいはい、前来て、前っ!」
と言って、雫は座っていた草間零と三下忠雄を皆の前へ引っ張り出した。2人ともわざわざ雫が引っ張ってきたのであった。
「じゃあ今回のルールを説明するねっ☆」
雫は皆の顔を見回すと、大会のルールを説明し始めた。
1:大会は雫・零・三下といった3チームによる対抗戦
2:各チーム1人1投の交代制
3:2ゲーム行い、合計スコアが一番高いチームが優勝
「もしチームの希望があったら先に言ってね」
雫はそのように言ってから、零と三下にボウリングの腕前を聞いた。
「私、ボウリング初めてなんです」
「ぼ、僕は……ガーターばっかりで……」
「へー、零ちゃん初めてなんだ? 三下くんはやっぱりだよねー」
3人の腕前は、未知数の零・案の定の三下・そこそこの雫、といった感じか。
「あ、言い忘れてたけど、優勝したチームには焼肉食べ放題のお店のタダ券プレゼントだよ☆」
最後にそう付け加える雫。それを聞いた皆が、俄然やる気を見せ始めたのは気のせいだっただろうか?
さあ、優勝するチームはどこだ?
●ルールの確認【1】
「せんせー、しつもーん」
参加人数総勢14人。それではチーム分けを始めようかとした矢先、村上涼が雫に質問を投げかけた。
「ルールはそれだけ?」
「へ? それだけだよ?」
きょとんとなる雫。涼はさらに念を押すように尋ねた。
「くどいよーだけどそれだけなのね?」
「そうだけど……あ、忘れてたっ。2ゲーム目で最初に投げる人は、1ゲーム目で最後に投げた人の次の人だからっ」
いいのか悪いのか、涼の質問は雫に忘れかけていた事柄を思い出させたようである。だが、涼は別にそのことはどうでもいいらしい。
「そうかー、それだけなのね。てことは……ふっふっふ」
涼はくるっと後ろを向き、意味深な笑みを浮かべるのであった。さて、いったい何を考えているのやら。
「なあ、罰ゲームはねぇの?」
質問が1つ出れば続けて出るというもの。鬼頭郡司が涼に続いて雫に質問をした。予想外の質問だったのか、雫は驚きの表情を見せた。
「ば、罰ゲーム?」
「やっぱ勝負って言ったら罰ゲームだろ、罰ゲーム♪」
楽し気に含み笑いする郡司。まあ、定番と言えば定番だろうか。
しかし、雫はそんな用意などしていない。さてどうしたものかと思案したその時、三下が恐る恐る口を挟んできた。
「あの……使えそうな物なら鞄に……」
と言い、三下が鞄から取り出したのはプチシュークリーム1袋であった。一同、一様に首を傾げる。
「三下、そのプチシュークリームが罰ゲームになるの? 食べても美味しいだけだよ」
頭に浮かんだ疑問をストレートにぶつけたのは、海原みあおである。みあおの言葉に、その通りだと頷く者多数。
「……違うんです。普通のプチシュークリームじゃないんです」
「不味いの?」
「からしやわさびが中身なんです……」
がくっと肩を落とす三下。
「そんなのどこで売ってるのよ。というか、何で買うの?」
少し遠い目をして、シュライン・エマが突っ込みを入れる。明らかに呆れている様子だ。
「昔……かっぱの商店街に……何でも揃ってるって聞いたわ……。……そこかしら……?」
記憶の糸を辿り、ぼそりつぶやいたのは巳主神冴那だ。何やらがたがたと中で何かが動いているバスケットを膝上に抱えていた。
「それって合羽橋商店街のことですか……?」
あれっ、と首を傾げて言うのは志神みかね。以前、何かのテレビ番組でそこでのロケを見たような記憶があった。
「……カッパの商店街……キゅウリがイッパい……お代ハお金じゃナイ……別ノモノ……タマ……」
戸隠ソネ子が何故か『かっぱ』に食い付いた。そんな商店街、想像するとちょっと怖い。
「うう……間違えて買ったんですぅぅぅぅっ」
とても悲し気な顔で言う三下。とことんついてないというか、そんな罰ゲーム向けお菓子を普通のお菓子と並べて置いてある店は出来ればちょっと遠慮したいものである。
「三下、グッジョブ!」
けれども罰ゲームが確保出来たということで、郡司は三下に向かって親指をぐっと立てて見せたのであった。
「じゃあ……ガーターだったり、ミスしたら1個食べることにしよっか?」
かくして、当初予定になかった罰ゲームが追加された。
●チーム編成【2】
「俺は零ちゃんと組みたい」
ルール確認も終わりようやくチーム分けが始まった時、高台寺孔志が真っ先にそう宣言した。
「私とですか?」
目をぱちくりさせて零が孔志に聞き返した。
「ああ。幸運の女神と愛の二人三脚ボウリング……そして焼肉ももらった!」
「じゃ、私も零ちゃんのチーム。保護者だし」
孔志が意気込む近くで、さらっと言い放つシュライン。
「後で教えてあげるからね。チーム分け決まったら、一緒にボール選びましょ」
「はいっ」
何となくだが、シュラインは微妙に孔志の言葉を警戒しているようである。
「みあおは三下のチームがいいな〜」
これは意外、みあおが自ら進んで三下のチームへ入ることを希望した。
「あ、私も三下さんのチーム希望です」
みあおの言葉が呼び水になったのか、もう1人三下のチームへの希望者が現れた。シオン・レ・ハイである。
希望することは別にいいのだが、特筆すべきはシオンの格好であった。
「……社交ダンス?」
首を傾げ、シュラインがシオンに尋ねた。そう思われても不思議ではない高そうなエレガントな衣服に、シオンは身を包んでいたのである。
「何かおかしかったですか?」
自らの格好を確認しながら、シオンも首を傾げる。
いや、非常にシオンに似合っていてかっこよい。だが、ボウリングするのに適しているかと言われたら、どうなのだろう。実際にやってみないことには分からない。
しかし、格好といえばシュラインもワンポイントあった。それに気付いたのは零である。
「あれ? シュラインさんの靴、違いますね」
他の皆はボウリング場の靴なのに、1人だけ明らかにデザインが違うのだ。
「実は……マイシューズ持ってたり」
少し照れるシュライン。さすがにマイボールはないようだが、何気にセミプロだったりするのだろうか?
と、シュラインの靴のことが話題になった直後、郡司が涼に声をかけていた。
「おっ、そうだ涼。せっかくだから一緒の組でやろうぜ♪」
「オッケー。じゃ、三下さんとこ以外のチームね」
きっぱりと言い切る涼。その判断はそれなりに正しいかもしれない。
「じゃ、うちのチームに入る?」
雫が郡司と涼を勧誘した。もちろん即決である。
結局、他の面々は特にどこという希望もなかったため、グー・チョキ・パーで1人・2人・2人ととにかく分かれるまでじゃんけんを何度か繰り返した。その間に雫・三下・零の3人が集まって、残り何人加えるかを相談したのである。
それでようやく決まったチーム分けはというと――。
「ふむ。陰陽は縁深い所に導いたか」
何やら納得した様子でつぶやくのは真名神慶悟である。1人だけチョキを出したため、零のチームへ入ることとなった。
・草間零チーム
高台寺孔志
シュライン・エマ
真名神慶悟
「ええと、グーです」
「……ずっとこぶしを握っていたのだけど……このチームね……?」
グーを出した2人、みかねと冴那が雫のそばへ歩いていった。言うまでもなく雫のチームだ。
・瀬名雫チーム
村上涼
鬼頭郡司
巳主神冴那
志神みかね
となれば、残った者は必然的に三下チームである。パーを出した2人だ。
「……ヨロしク……」
「うわぁっ!?」
いつの間にやら背後に立っていたソネ子に、三下が激しく驚いた。
「三下さんと同じチームね」
と言ったのは、おっとりのほほんとした雰囲気漂う女性、大和鮎である。広げた手をじーっと見ていた。
「ボウリング初めての人?」
ふと鮎は同じチームの面々に尋ねてみた。さっと手を挙げたのは2人、みあおとシオンである。
初心者2人に加えて三下。さて、スコアはどこまで伸ばせるのだろう?
・三下忠雄チーム
海原みあお
シオン・レ・ハイ
戸隠ソネ子
大和鮎
「それじゃあ作戦タイム10分の後、ゲーム開始だよっ☆」
雫が皆に宣言した。そして一同は3つに分かれ、戦略や投球順の相談を始めたのである。
●作戦タイム(三下忠雄チーム)【3B】
「ええっと……投球順はどうしましょうか……?」
きょろきょろとチームメイト全員の顔を見回し、三下が尋ねた。
「やっぱ三下が一番だよね」
間髪入れず、しれっと言うみあお。あまりにも早かったので、鮎がその理由を問う。
「どうして?」
「三下がガーターでも、次の人でカバー出来るでしょ?」
なるほど、とても明確な理由である。1投目が0本でも2投目で10本倒してスペアになる可能性はあるが、1投目が9本でも2投目が0だとスペアを逃してしまうのだから。
「私はどこでも構いませんよ」
にこにこしながら言うシオン。すでに選んできたボールを抱え、何度となくそれを撫で回す。初めてのボウリング、しかも皆でわいわいと遊ぶのだから、楽しくて仕方ないのだろう。
「焼肉食べ放題目指して頑張りましょう」
そう言いながら、ボールを置くシオン。やはり目指すのはタダ券。シオンにとってはこういう物は貴重なのである。
と、そこにボールを選んできたソネ子が戻ってきた。
「あ……置きましょうか?」
珍しく三下が気を利かせ、ソネ子のボールを受け取ろうとした。何も言わず、すっとボールを手渡すソネ子。次の瞬間、三下の身体ががくんと沈んだ。
「はうぁっ!?」
鈍い音とともに、三下はボールを床へ落としてしまった。鮎の目に、不意にボールの数字が飛び込んできた。
「えっ? これ、ひょっとしてここにあるので一番重いボール……?」
一瞬目を疑う鮎。ボールにはやたらと大きな数字が記されていたのだ。
「ハカイリョクが……アルから……」
ぼそっとつぶやくソネ子。確かにそれはそうなのだが、その前にちゃんと投げられるのであろうか?
「ねえねえ、投げ方のこつってあるの?」
「ええ、あるわ。ボールは放り投げるんじゃなくて、すっと押し出す感じで……」
投げ方のこつを聞くみあおに、身振り付きでアドバイスを始める鮎。初心者はよく放り投げるような形になってしまうが、それだと落ちた時にボールの威力が殺されてしまうのだ。
「はあ、押し出す感じなんですね」
シオンも鮎の言葉を、感心して聞いていた。
●投球順発表【4】
作戦タイムも終わり、各チームの投球順も決定した。順に各々紹介しよう。
・瀬名雫チーム
1:鬼頭郡司
2:村上涼
3:瀬名雫
4:巳主神冴那
5:志神みかね
・三下忠雄チーム
1:三下忠雄
2:戸隠ソネ子
3:海原みあお
4:シオン・レ・ハイ
5:大和鮎
・草間零チーム
1:草間零
2:高台寺孔志
3:シュライン・エマ
4:真名神慶悟
投球順を見る限り、各チームそれなりに考えてきているようだ。なるべくリスクを分散させているように見受けられた。
「じゃあゲーム開始〜っ!!」
雫が高らかに大会の開始を宣言した。
●千差万別【5】
1ゲーム目が始まり、各チーム順番に投げてゆく。しかし、投げ方も色々とある訳で。
「うらぁぁぁっ、にくぅぅぅぅぅっ!!!」
気合い一閃駆け出し、ボールをぶん投げる郡司。転がしてはない、まさにぶん投げているのだ。まるでドッジボールでも投げるかのごとく。郡司が投げれば、決まってドシンという音が聞こえていた。
そんな郡司と似たようなことをやってるのは冴那である。こっちは気合いのかけ声もなく静かなものなのだが、ファールラインの手前でピタと立ち止まると、ぶんとボールを投げていた。山なりに投げたボールは、やはりドシンとレーンに落ちていた。
それでも、だ。そういうレーンやボールが心配になる投げ方をしていても、2人ともにそこそこ倒しているのである。
「レーン……持つかなあ?」
雫が思わず心配の声を漏らした。何せ2人とも雫と同じチームなのだから。
投げ方の違いという意味では、シオンもこの中に入るだろう。だが先の2人みたく、ボールをぶん投げている訳ではない。両手でボールを持って転がしているのだ。鮎がみあおに向けて言っていたアドバイス通り、押し出すようにして。
けれども、初心者にとってはやりやすい投げ方なのかもしれなかった。少なくとも、大外しはなかったのだから。しかも第8フレームにはスペアまで取ったのだ!
「全部倒れましたよ! あれがスペアなんですか? そうなんですか? おお、やりましたねー」
ピンが倒れただけでも喜んでいたシオン、スペアを取ったと分かるとそれこそ満面の笑みを浮かべた。ボウリングを楽しむという意味においては、きっとシオンが一番なのではないだろうか。
さて、普通に投げている者にも目を向けてみよう。外見の雰囲気とは意外だったのは、鮎ではないだろうか。
見た感じ鈍臭く思えるのだが、意外や意外、きっちりとピンを倒している。第6フレームにはストライクも叩き出していた。
もっともそのストライクも、次に投げた三下がガーターを出してやや無駄にしてしまったのであるが。
「……あそこまで下手っていうのもある意味才能よね」
小さな溜息とともにつぶやく鮎。フォームは別に悪くない、そして投げる前にもアドバイスをしている。だのに、何故倒せないのか。非常に不思議である。
ただそんな三下も、まぐれかもしれないが第9フレームにスペアを取っていた。
「三下えらい!」
みあおが素直に三下を褒めた。
「あっ、ありがとうございますっ」
「明日は雪だよねっ」
……素直過ぎるみあおであった。
で、確実にスペアを取ったり、着実にストライクを重ねたりしていたのは零のチームの面々――孔志・シュライン・慶悟だった。
とにかく各フレーム8本以上と手堅い。スペア4回にストライク4回、ターキーまで出していた。初心者の零をカバーして余りあるほどである。
「ストラーイク!!」
第8フレームにストライクを取った孔志なんて、白のタンクトップにジーンズという姿で懐かしのカズダンスを踊ってみせた。
「古っ!」
反射的に涼が言った。場の温度が2度くらい下がり、疲労度が15%ほど上がったような気がするのは、たぶん間違いではない。
その結果、1ゲーム目終了した段階で、零のチームは162点を叩き出していた。この後、三下チームの140点、雫チーム127点と続く。
どのチームもまだ十分に優勝が狙える状態であった。
●追い上げ【7】
インターバルを挟んで、2ゲーム目が始まった。
「お酒買ってきたわよ!!」
どっさりと酒を購入し、戻ってくる涼。そしておもむろに未成年者を除く皆に勧めてゆく。
「ささ、飲んでー♪」
「……何かたくらんでたりする?」
ちと気になったシュラインが涼に尋ねた。が、涼はぶんぶんと頭を振った。
「えー、ぜーんぜん? ゲームなんだから、楽しまないとー」
微妙に怪しさがあるのは気のせいだろうか?
それでも酒は減ってゆく。特に飲んだのは慶悟であった。
そして第6フレームに慶悟の番がやってくる。第5フレームにシュラインがストライクを出した後だから重要な投球だった。
投げたボールは綺麗にど真ん中に行き、見事ストライク。心地よい音とともにピンが全部倒れた。
「酒と煙草は俺にとってのガソリンと同じだ。……ここは禁煙だから煙草は吸えないがな」
苦笑しながら言った慶悟は、戻ってくるなりまた新しい缶ビールに手を出した。
「ちっ、残念」
それを聞き、舌打ちをする涼。……どうやら何かたくらんでいたようである。
涼の謎の行動はそれだけに留まらず、他チームの者が投げる時に歌を歌ったりもしていた。いざ投げる瞬間に急に大声になってみたり、とか。当然投球時に影響を受ける者が居る訳で……。
(よし成功)
心の中でぐっとガッツポーズを取る涼であった。
だが、そういうことは何も涼の専売特許という訳ではない。孔志だってやっていた。こちらは投げる瞬間に、歌ではなく『あ、チャック全開君』とか『ヒップラインが悩ましい』などと軽口を叩いていた。けれどもそれが的確なので、こちらもそれなりの効果を叩き出していた。
「卑怯者!!」
自分のことを棚に上げ、孔志を批難する涼。
「卑怯者だって? 焼肉は1日にしてならずだ!!!」
意味不明な反論を返す孔志。いやはや、焼肉の魔力とは凄いものだ。
しばし2人は言い合っていたが、やがて2人して誰かに頭を叩かれた。だが、そばには誰も居ない。
「誰よっ?」
「どいつが殴った?」
きょろきょろと周囲を見回す涼と孔志。そんな2人に対し、慶悟がぼそっとつぶやいた。
「何事もほどほどだ」
と言い、くいとビールを飲み干した。
さて、ゲームの方は進んでゆく。第7フレーム、三下がガーターした直後にソネ子が10本倒しスペアをもぎ取った。そう、『もぎ取った』という表現が見事に当てはまっていた。
何しろボールは結果的にガーターに落ちたのに、何故か全ピン倒れてしまったのだから。
「嘘ぉっ!? 何でぇっ!?」
目を丸くした雫。しかしソネ子は喜ぶでもなくごく普通に椅子に戻って、まだ封の空いていないお菓子を手に取って食べ始めた。
「……全部倒れタ……アレでイい……?」
いや、いいんですが、別に。しかし、謎の倒れ方であった。
第9フレームに入ると、雫チームはみかねが投げる番となっていた。
「肉・肉・肉! 焼肉目指してな〜げ〜ろ〜♪ 全ピンたーおーせー、おーっ!!」
後ろではちと妙な踊りとともに、調子外れの応援歌を歌う郡司の姿が。第8フレームがスペアなので、ここでストライクを取ることは非常に大きい。
(大丈夫かな……)
不安になりながらもボールを投げるみかね。まっすぐ転がったみかねのボールは9本のピンをなぎ倒し、1本のピンをくるくると回転させていた。
「たっ……倒れて……!」
両手をぎゅっと祈るように組み、倒れることを念じるみかね。ピンはしばし踊った後……ことんと倒れた。
「た……倒れましたっ!!」
喜びの笑顔がみかねに浮かんだ。お見事、ストライクである。
こういう追い上げがあったからかもしれないが、2ゲーム目でトップを取ったのは何と雫チームであった。その後に三下チーム、零チームと続く。
1ゲーム目とは反対の順位。総合結果が楽しみな状況となっていた。
●総合成績【8】
「結果発表〜!」
各チームの合計を出し、雫が結果の発表を始めた。
「優勝は……」
一同が、ごくっとつばを飲み込んだ。
「合計310点、零ちゃんのチーム〜っ!!」
「やったわね、零ちゃん!」
シュラインがすぐ隣に居た零に、ぎゅっと抱きついた。どうやら1ゲーム目の貯金が役立ったようである。あと、2ゲーム目の第9フレームに零が初ストライクを取ったことも大きかったかもしれない。
「やりましたね。皆さん、ありがとうございました」
零はぺこんとシュライン、孔志、慶悟に対して頭を下げた。
「んー、残念だったねー」
雫が苦笑してチームメイトに言った。雫のチームは合計295点。三下チームが合計298点なので、わずかの差で3位となっていた。
「くそっ、もう一息だったなー」
スコアシートを雫から見せてもらい、悔やむ郡司。やはり1ゲーム目にもう少し点数を取っておくべきだったようだ。
「でも……意外と面白かったわ……。ピンが倒れると……心地いいのね……」
負けたとはいえ、それなりにピンを倒していた冴那は、まずまず満足した様子であった。
「……疲れました。やたらとボールが僕の近くに飛んでくるし……」
ふうっと溜息を吐く三下。当たりこそしなかったが、ゲーム中に何度となくすっぽ抜けたボールが三下の方へ飛んできていたのだ。
「疲れたの? じゃ、焼肉食べに行こうっ☆」
にこっと笑顔でみあおが三下に言った。
「はい?」
「もちろん三下のおごりだよっ!」
「はいぃぃぃぃぃっ!?」
「え、おごっていただけるんですか? 三下さん、ありがとうございます。運動したせいか、お腹が空いて空いて……倒れるかと思いました」
お腹をさすりながらシオンが言った。すでにもう決定事項となっているようだ。
「そ、そんなっ! おごるなんて一言も言っ……痛いぃぃぃぃぃぃぃっ!!」
「あ! ごめんなさい。ついうっかり」
にこっと笑顔で、うっかり三下の足の爪先を踏んだことを謝る鮎。本当にうっかりなのかは、本人のみが知ること――。
●三下忠雄チーム・スコアシート【9B】
・1ゲーム目
第1フレーム :1/9
第2フレーム :2/5
第3フレーム :9/0
第4フレーム :10
第5フレーム :8/1
第6フレーム :10
第7フレーム :0/10
第8フレーム :7/3
第9フレーム :5/5
第10フレーム:7/3/5
合計 :140
・2ゲーム目
第1フレーム :3/0
第2フレーム :7/3
第3フレーム :9/1
第4フレーム :10
第5フレーム :8/2
第6フレーム :3/6
第7フレーム :0/10
第8フレーム :6/4
第9フレーム :10
第10フレーム:5/5/8
合計 :158
総合計 :298
【ボウリングでGO! 了】
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【 整理番号 / PC名(読み)
/ 性別 / 年齢 / 職業 】
【 0086 / シュライン・エマ(しゅらいん・えま)
/ 女 / 26 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員 】
【 0249 / 志神・みかね(しがみ・みかね)
/ 女 / 15 / 学生 】
【 0376 / 巳主神・冴那(みすがみ・さえな)
/ 女 / 妙齢? / ペットショップオーナー 】
【 0381 / 村上・涼(むらかみ・りょう)
/ 女 / 22 / 学生 】
【 0389 / 真名神・慶悟(まながみ・けいご)
/ 男 / 20 / 陰陽師 】
【 0645 / 戸隠・ソネ子(とがくし・そねこ)
/ 女 / 15 / 見た目は都内の女子高生 】
【 1415 / 海原・みあお(うなばら・みあお)
/ 女 / 6? / 小学生 】
【 1838 / 鬼頭・郡司(きとう・ぐんじ)
/ 男 / 15 / 高校生・雷鬼 】
【 2936 / 高台寺・孔志(こうだいじ・たかし)
/ 男 / 27 / 花屋:独立営業は21歳から 】
【 3356 / シオン・レ・ハイ(しおん・れ・はい)
/ 男 / 42 / びんぼーにん +α 】
【 3580 / 大和・鮎(やまと・あゆ)
/ 女 / 21 / OL 】
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■ ライター通信 ■
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・『東京怪談ウェブゲーム』へのご参加ありがとうございます。本依頼の担当ライター、高原恵です。
・高原は原則としてPCを名で表記するようにしています。
・各タイトルの後ろには英数字がついていますが、数字は時間軸の流れを、英字が同時間帯別場面を意味します。ですので、1から始まっていなかったり、途中の数字が飛んでいる場合もあります。
・なお、本依頼の文章は(オープニングを除き)全14場面で構成されています。他の参加者の方の文章に目を通す機会がありましたら、本依頼の全体像がより見えてくるかもしれません。
・今回の参加者一覧は整理番号順で固定しています。
・大変お待たせいたしてしまい申し訳ありませんでした。ボウリング大会の模様をお届けいたします。一応ゴーストネットの依頼ではあるんですが、よくよく見れば草間興信所・月刊アトラス・ゴーストネットと揃い踏みしているのですよね。
・結果は本文の通りですが、最後のスコアシートを見ていただければお分かりのように、きっちりとスコアを作っています。判定はダイスの結果に対し、プレイングや能力などの影響を加味して行いました。結果的に総合力で勝ったチームが優勝した、という感じですね。
・あと、罰ゲームも判定を行ったんですが、ことごとくセーフ(普通のプチシュークリーム)となってしまったため、本文ではその模様は触れていません。
・海原みあおさん、3度目のご参加ありがとうございます。やっぱりネックは三下でしたね。まあ焼肉はおごってもらえる……というか、おごらせる訳ですが。みあおさんのボウリングは、内容的には可もなく不可もなくだったかと思います。
・感想等ありましたら、お気軽にテラコン等よりお送りください。きちんと目を通させていただき、今後の参考といたしますので。
・それでは、また別の依頼でお会いできることを願って。
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