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<東京怪談ウェブゲーム アトラス編集部>


安らぎの香りは危険な誘い(前編)

 それは、ごくごく日常的なできごとだった。主人が唐突に彼を呼ぶことも、脈絡もなく「出かけますよ」と告げることも。そして、たいていそういう時の主人は極上の笑みを浮かべている。今回もまたしかり。何か不可思議な事象の情報でも入ったのだろう。悠久とも言える永い年月を生きてきたにも関わらず、彼の主人には子どものように好奇心旺盛な一面がある。
「かしこまりました」
 モーリス・ラジアルはいつものように恭しく一礼すると、すぐに車を回す手配をした。

「過去の夢が見られるという香が街中で配られていて、それが女子中高生の間で流行っているらしいのですけどね」
 今回の目的地、アトラス編集部へと向かう車中で、モーリスの主人、セレスティ・カーニンガムがおもむろに口を開いた。
「どうやらそれを使って目覚めなくなった娘さんがおられるようで、その親御さんが編集部に駆け込んでこられたそうなのです」
 セレスティが出かけると言い出す少し前、屋敷に電話が入っていたことを思い出して、モーリスは小さく息を吐いた。あれがこの事件の一報だったのだろう。好奇心旺盛な主人は、今回の調査への協力を二つ返事で引き受けたに違いない。
「香を焚いて眠って目覚めなくなった……ということですか?」
 主人が承諾の返事をしたなら、それはモーリスにとっても決定事項だ。モーリスが細部を詰めるべく確認すると、セレスティは「そのようです」と頷いた。
「娘さんの枕元に香炉があるのを親御さんが確認されています。香炉には灰も残っていたようですが」
「では、その灰は……」
 自分に定められた役目を正確に悟って、モーリスが訪ねると、主人は絶世の美貌に極上の笑みを浮かべた。
「ええ、親御さんが持って来て下さるそうです」

 編集部に入るとすぐに、ぱっと顔を輝かせた三下が目に入る。モーリスがちらりと視線を向けると、三下はすぐに戸惑ったような顔をして、曖昧に視線を逸らした。そして、その三下の周りには既に3人の男女がいる。
 闇色の長い髪を伸ばし、神秘的な雰囲気をまとった少女に、やはりまっすぐの黒髪を伸ばした人形のような少女、そして指先にやじろべえを乗せている細身の少年。この暑い盛りだというのに、少女2人は冬物の漆黒のセーラー服に身を包み、汗をかいている様子もない。もっとも、それを言えば暑い盛りだというのにスーツに身を固めているセレスティやモーリスも似たようなものかもしれないが。
 3人もセレスティとモーリスが来ることは聞かされていたらしく、すぐに軽い会釈を寄越した。自然と、互いに自己紹介をする流れとなる。
 巫女特有の神秘的な雰囲気をまとった少女の1人はおっとりとした口調で海原みそのと名乗り、少し癖のある声でウラ・フレンツフェンと名乗った人形のような少女は、興味深そうに無遠慮な視線をセレスティとモーリスに向けた。レモンにも似た芳香を仄かに漂わせる少年は、屈託のない口調で音切創と名乗る。
 どうやら、この3人にセレスティとモーリスを加えた5人が今回の調査班らしい。なかなかにバランスのとれた構成だ。ちょうど中高生の年代で街に調査に出られるみそのたち3人と、特殊なネットワークと能力を持ち、別の観点から香の正体を探れるセレスティたち2人。これだけのメンバーを揃えた碇女史はなんだかんだ言って部下思いなのか、それとも最初から三下の調査能力を見限っているのか。おそらく前者2、後者8といったところだろう、とモーリスは見当をつける。
「では、これからどうしましょう」
 年長者としての役割か、財閥総帥としての染み付いた貫禄からか、自然とセレスティが場を仕切るような雰囲気になった。モーリスは一歩引いて成りゆきを見守るポジションに立つ。
「まず、街に出て現物を入手するのが先決だと思う。その後で、眠ったままの娘さんの様子を見たい」
「そうそう、そのための制服なんだから。うまくすれば配付人に接触できるかもしれないしね」
 既にある程度の相談はまとまっていたのだろう。創が口火を切れば、ウラが即座に同意した。スカートの裾をつまんでくるりと一回転すると、厚みのある布が宙を舞う。
「ええ、今どきの女子中学生にお話をお聞きするのも浪漫があっていいですわね」
 ワンテンポ遅れて、みそのがうっとりとした口調で言葉を足した。
「では、そちらの方はお願いしますね。私とモーリスはここに残って、灰の方から香について探ってみます。娘さんのお宅には、後で親御さんの許可を頂いて参りましょう」
 セレスティがたおやかな笑みで計画をまとめると、傍らで忘れられていた三下が情けない声を出した。
「あの……。僕は……」
「おまえは来なくていいわ。怪しいおじさんがいたところで邪魔なだけだもの」
 おどおどと言いかけたその言葉を、ウラが容赦なく一刀両断に斬って捨てる。
「そんなぁ……」
「三下くんは残っていて下さい。やってもらうことがありそうですから」
 たじたじと数歩退いた三下に、モーリスは笑顔を向けた。そう、モーリスの予定では三下が最も適任と思われる役目がある。
 つい、意味深げな響きを含んだその台詞に、さすがの三下もいくばくかの危機感を覚えたらしく、びくりと身体を震わせた。
「じゃ、行ってくるから」
「じゃあね、三下」
「行って参ります」
 そんな三下に構うことなく、少年少女3人組は思い思いの挨拶を残して出て行った。
「はい、お気をつけて」
 その後ろ姿をセレスティが笑顔で見送った。

 三人が出て行くと、編集部にも申し訳程度の静寂が訪れる。それを破ったのは、セレスティの言葉だった。
「さて……。編集長、インターネットの端末をお借りしたいのですが」
 まだ灰が届くまでに間がある。その間に他の心当たりを当たろうというのだろう。セレスティのその申し出に、碇はこともなげに答えた。
「ええ、三下くんのデスクにあるものは何でも使ってもらって構わないわ。三下くんを含めてね」
「ありがとうございます」
「三下くんも含めて、ですね?」
 丁寧に礼を述べる主人の後ろで、モーリスは碇にそう念をおした。これで、こちらから許可をとる手間も省けるというものだ。
「へ、へんしゅうちょお〜」
「ええ、構わないわ。好きに使ってちょうだい」
 今度ははっきりと身の危険を感じたのだろう。泣きつかんばかりに碇に訴えた三下だったが、それはいともあっさりと即刻却下された。大袈裟に床にへたりこんだ三下に意味ありげな笑みを向けてから、モーリスは熱心にキーボードを叩く主人の手許をそっと覗き込んだ。
 ちょうどモニタに映っていたのは、女子中高生たちの交流サイトで、彼女たちがよく使うという、一読してよくわからないような、文字ともつかない記号が散見していた。ただの電気信号の塊に過ぎないと知っていても、どこかしらその画面からは、かしましい少女たちの話し声が聞こえてきそうでさえあった。
「セレスティ様……。いえ……、何でもありません」
 一体どうして主人がこのようなサイトを知っているのか、思わず疑問が口をつきそうになったが、モーリスはそれを呑み込んだ。聞いても詮ないことだ。
「まあ、いろいろと縁もありましてね」
 案の定、主人は軽い苦笑を浮かべて、またモニタの方へと向き直る。モーリスも仕方なくその視線を追った。
 果たして、若々しい書き込みで賑わう掲示板の中には、香に関すると思われる書き込みも多く見られた。「本当に過去の夢を見られた」とか、「死んだおばあちゃんに夢で会えた」、「両親がまだ若くて、ラブラブで見てられなかった」といった記述もあったが、どちらかと言えばそれらは少数派で、「夢見が良かった」「よく眠れる」「肩凝りがほぐれた」「化粧のノリがよくなった」というような内容が断然多い。
 何とも危機感も緊張感もない書き込みばかりが続いているが、ふとセレスティが手を止めた。モーリスもその書き込みに気付いて軽く眉を寄せる。

『あんたたち、もうそれ使うのやめときなよ。マジヤバいって。戻ってこれなくなるよ』

 セレスティはしばし思案するような顔をして、キーボードを叩き始めた。

『少し思い当たる事情がありまして、お話を伺いたく存じます。よろしければメール頂けませんか』
 
「さとて、あとはしばらく待ちますかね」
 先程の記事に返信して、セレスティが呟いたちょうどその時、編集部の扉が叩かれた。どうやら依頼人である母親が香の灰を持って来てくれたらしい。
 セレスティは三下を通じてその灰を受け取り、母親には二言三言話して、先に帰ってもらった。灰を調べたところで、どんな結果が出るのかわからない。母親には直接見せない方が良いこともあると気遣ったのだろう。
「モーリス」
 灰の入ったプラスチックの小袋を手に、香りを確かめてからセレスティがモーリスを呼ぶ。モーリスはそれを受け取ると、手近な小皿に中身を開けた。かすかに、沈香に似た香りが立ち上がる。同時に、モーリスは能力を発動させた。この、ただの灰色の粉となったものを、元の、あるべき姿へ。
 と、見る間にそれは、樹皮の切れ端と小枝、蜜状のものへと姿を変える。どうやら元の香は香木ではなく、練り香であったらしい。灰になって分解された分、原材料になって復元されたのだろう。
 モーリスは、その中でも主成分と思われる樹皮を手にとった。黒みがかってごつごつとしたそれは、見た目よりもずっと重さを感じるものだった。ざらざらとした表面には、複雑に絡み合うように、いくつもの溝が刻まれている。ほんのわずかの切れ端ではあるが、一種の神木にも似た貫禄を感じさせる。
「どうですか?」
「……見たことのないものですね」
 主人の問いに、モーリスは軽く息を吐いた。モーリスは植物には精通している。見たことがない、というのは単純に知らない、ということを指しているのではない。つまりは、異界のものである可能性が高い、ということだ。
「そうですか。つまりは、そういうことですね」
 モーリスの返事を正しく理解して、セレスティの表情がやや険しくなった。
「ええ、世界樹になりそこねた木……といった雰囲気ですね」
 言いながら、モーリスは小皿の上のものを全て掌に集めた。今度はこれらをまとめて「あるべき姿」に戻す。次に手を開くと、それはコーン状の香へと姿を変えていた。
「せっかくですので、この香を焚いて試してみたいのですが……」
 言いながら、モーリスは編集部の中を見回した。小動物のように身をすくめている三下が目に入ると、知らず、口元が綻ぶ。
「戦力的に考えてもここはやはり、三下くんに尊い犠牲をお願いするのが得策ですね。先程、所有者の碇女史の許可も頂きましたし」
「ええええっ。ぼ、僕ですかぁ? だって、それ、目覚めないかもしれないって……」
 モーリスの提案に、三下が怯えきった悲鳴をあげる。
「モーリス、あまり怖がらせてはいけませんよ」
 セレスティが柔和な笑顔でたしなめるが、そこにモーリスを止めるような響きはない。むろん、編集部のどこからも異論は出てこない。
「女に二言はないわ。やってちょうだい」
 逆に、女編集長が情け容赦なくとどめをさす。
「大丈夫ですよ、ちゃんと後で元に戻してあげますから」
 緑の瞳をわずかに細め、モーリスが言葉を足した。けれど、その字義通りに三下をいたわる気など、かけらもない。
「そ、そ、それなら、起きなくなった娘さんを元に戻してあげれば一件落着、じゃないですかぁ」
 よっぽどの窮地であると感じたのか、三下は彼にしては気の利いた言い逃れを絞り出した。
「原因がわからないままじゃ、解決とは言えません。第一、それじゃあ記事にならないでしょう? 知りませんよ、碇女史のお怒りをかっても」
 むしろ三下を追い詰めるのを楽しむかのように、モーリスは薄い笑みで切り返した。碇の怒りという脅しがよっぽど効いたのか、三下は情けない顔のままで黙り込んだ。
「さて、では始めましょうかね」
 結局、三下の涙の訴えは聞き入れられることなく、首筋にモーリスの手刀一閃、ソファへと沈み込んだ。モーリスは手近な灰皿の上で香に火をつけると、それを三下の枕元に起き、得意の能力で檻を作り出して三下を隔離した。
「では、私はこのまましばらく三下くんの観察を続けます」
 恭しく主人に言いおいて、モーリスは再びソファで眠る三下へと視線を転じた。今のところ、三下に変わった様子はなく、すやすやと静かな寝息をたてている。
 不意に、三下の顔が緩み始めた。口元が締まりなく動き、眠っているながらも、とろけそうな至福の表情を作り出す。
「へ、へんしゅうちょう、あの、お、お代わりしてもいいですか〜」
 何とも間抜けな寝言をくり出して、三下はむにゃむにゃと寝返りをうった。編集部中の失笑をかっていることなど、当然本人は知る由もない。
「……そう言えば昔、一度だけしゃぶしゃぶ食い放題に連れていったことあったわね……」
 編集長デスクで、碇は呆れたように溜息をつき、眉間を押さえた。
「それが三下くんの楽しい思い出、というわけですか」
「……あそこの店、2皿目からはあからさまに質の悪い肉を出してきたんだけど」 
 モーリスの呟きに、碇がやれやれと首を振る。
 これくらいでここまで至福の表情ができる三下は、よっぽど哀れな境遇の持ち主なのか、それともこの上なく幸せな人種なのか。
 結局、モーリスが見守る中、三下は一時間弱にわたって夢の中で幸せそうにしゃぶしゃぶを食した後で、むっくりと起き上がった。枕元で焚いていた香は既に燃え尽きている。
「あれ……、お肉……」
 右手を箸をもつ形にしたままできょろきょろと辺りを伺い、ようやく編集部にいることを理解したらしい三下は、慌ててソファの上で身を小さくした。
「おはようございます、三下くん。で、夢見はいかがでしたか?」
 唇に薄い笑みを浮かべてモーリスが尋ねると、三下はとたんにおびえた顔になる。
「えーっと、しゃぶしゃぶおいしかった……、じゃなくて、気付いたら廊下のようなところにいました。両脇に扉があって、一番近くのを開けてみたらしゃぶしゃぶが……」
 先程の至福の時を思い出したのだろう、ふわ、と一瞬三下の顔が緩んだ。
「そうですか……。どうやら量が足りなかったようですね……」
 じっと三下を見据えていた視線を、香の灰へと移して、モーリスは小さく呟く。
「モーリス。少し出ましょう」
 先程の書き込みの主と連絡がとれたのか、それまでずっとパソコンのモニタに向かっていたセレスティが立ち上がった。
「はい」
 モーリスが返事をすれば、三下が明らかにほっとしたような顔を見せる。そんな三下にちらりと一瞥をくれると、モーリスは車を用意すべく編集部を出た。

 待ち合わせの喫茶店に姿を現したのは、ごく普通の高校生くらいの少女だった。セレスティとモーリスに気付いたらしい彼女は、足を止めて目を丸くした。まあ無理からぬことだろう。ネットで出会って待ち合わせをした相手が、よもやこんな麗人とは思うまい。
 セレスティが微笑みを浮かべ、軽く会釈をすると、ようやく少女の方も、ぎこちない会釈を返してきた。
「あの香についてお聞きしたいのですが……、焚いて眠ると過去の夢が見られるとか?」
 目の前に運ばれて来たアイスティーのストローを居心地悪そうに手遊ぶ少女に、セレスティが穏やかに口を開いた。セレスティにはいざとなれば魅了の能力がある。少女からの聞き取りは主人に任せることにして、モーリスはその隣に黙って座っていた。
「夢の中で、長い……長い廊下に立っているんです。両脇に、いくつも扉があって……。そして、扉を開けると、楽しかった思い出のシーンが現れるんです」
 少女は、ゆっくりと記憶を確かめるように、ぽつりぽつりと語った。
「三下くんの報告と同じです」
 少女の語りを邪魔しないよう、モーリスはセレスティの耳もとで囁いた。
「それで、キミはあの掲示板で警告をしていましたが……。『戻れなくなる』とは、どういうことですか?」
 穏やかな笑みを絶やさずに、セレスティは問いを重ねた。
「廊下の奥に行けば行く程……、思い出は古いものになっていくんです。あたしはあの時、突き当たりの扉を開けちゃって……」
 そこまで言うと、少女は黙り込んだ。ストローを持つ細い手が細かく震える。
「突き当たりの扉?」
「ええ、黒い扉で……。そこを開けたら……、真っ暗で何もなかったんです。あっという間に上も下もわからなくなって……、自分が誰かさえもわからなくなって……、何だか自分が溶けちゃうみたいで……、すごく怖いって思った時に、お母さんの呼ぶ声が聞こえたんです。それで自分の名前、思い出して、そうしたら扉が目の前にあって、それで戻ってこれたんです。あの時、お母さんが起こしにきてくれるのがあと一分でも遅かったら……、多分、あたし、戻ってこられなかった……」
 最後の方は淡々と抑揚のない声で言うと、少女はストローで、アイスティーをかきまわした。からん、と氷りの触れあう心地よい音がする。
「そうですか……。ご無事でよかったですね」
 セレスティが微笑むと、少女の雰囲気は少し和らいだ。が、すぐにそれは締まったものとなる。
「その目覚めなくなった子、多分、その部屋に本当に入り込んじゃったんだと思います。そして……きっと、すごく後悔してる……。ううん、後悔さえできないのかもしれない。どうか……、助けてあげて下さい」
 少女は口早にそう言うと、もっていたカバンから小さな袋を取り出し、セレスティに差し出した。
「あの香の、残りです。あたしはもう使わないから……。お役に立てて下さい」
「ありがとうございます。大丈夫、きっと何とかなりますよ」
 セレスティの言葉に、少女もほっとしたような笑みを浮かべた。
「ところで、もう1つお伺いしたいのですが……。どうして、そんなに過去に惹かれたのですか?」
 軽く首を傾げたセレスティの問いに、少女は言葉を詰まらせた。しばしの沈黙の後、少女はゆっくりと口を開く。
「あの……、笑わないで聞いていただけますか?」


「どう思いますか、モーリス」
 依頼人宅へと向かう車中で、セレスティがおもむろに口を開いた。
「自分が生まれる前の……、渾沌の世界に迷いこんだ、ということでしょうね。となると、ただ元に戻すというわけにはいかなくなってきますね」
 奥に行くほど過去になるという廊下の突き当たりという扉の位置、「自分」が溶けてなくなりそう、といった少女の言葉、そして異界のものとしか思えない香。
 それらを考えあわせると、こう結論づけるより他なくなってくる。
「そうですね……。少しばかりやっかいなことになっているようですね」
 しばしの沈黙の後に、セレスティは小声でつぶやいた。モーリスもそれ以上言葉を返さずに視線を前へと戻した。
 けれどこの時、依頼人宅で三下の身に思わぬ悲劇が起こっていようとは、さすがの2人も考えてはいなかった。

<了>

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【1388/海原・みその/女性/13歳/深淵の巫女】
【3579/音切・創/男性/18歳/実験体(組換能力体)】
【1883/セレスティ・カーニンガム/男性/725歳/財閥総帥・占い師・水霊使い】
【2318/モーリス・ラジアル/男性/527歳/ガードナー・医師・調和者】
【3427/ウラ・フレンツフェン/女性/14歳/魔術師見習にして助手】

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■         ライター通信          ■
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こんにちは。ライターの沙月亜衣と申します。
初めましての方も、二度目ましての方も、今回のご依頼にご参加いただき、まことにありがとうございます。
そして、私の方の事情で納品が遅れてしまい、大変申し訳ありません。
また、今回は余裕がなくなってしまいましたので、勝手ながら個別のコメントはご容赦下さい。重ね重ね申し訳ありません。

今回、5名ものPC様を預からせて頂くのは初めてでしたが、非常にバランスのとれた構成で、楽しんで書けました。
私の予想以上に能力の高いPC様が多かったため、だいぶ込み入った真相になって参りましたが、楽しんでいただければ幸いです。
なお、オープニング段階で申していた「してはいけないこと」は、「途中で誰も止めてくれる人がいない状態で、眠っている少女の夢に潜り込む、あるいは同調する」ことでしたが、今回、音切さんの能力によって、三下くんにアウト判定を出させて頂きました。後編では少女に加えて、三下くんも救ってあげて下さい。

なお、後編は、私個人の事情がありまして少し間が空いてしまうのですが、9月の中ごろに窓を開けたいと思います。気が向かれれば、ご参加いただけると幸いです。

また、ご意見等ありましたら、遠慮なくお申し付け下さい。できるだけ真摯に受け止め、次回からの参考にさせて頂きたいと思います。
それでは、またどこかでお会いできることを祈りつつ、失礼致します。本当にありがとうございました。