コミュニティトップへ
高峰心霊学研究所トップへ 最新レポート クリエーター別で見る 商品別一覧 ゲームノベル・ゲームコミックを見る 前のページへ

<東京怪談ウェブゲーム 界鏡現象〜異界〜>


Let's海水浴!

●オープニング
ある暑い日のことである。

――――プラントショップ『まきえ』関係者は、揃って海水浴へやってきていた。

「青い空!」
ビシィッ!と水着の上にパーカーを羽織った崎が空を指差して叫ぶ。
「白い雲!!」
それに倣うように、水着着用で、腹に耐水性の包帯を巻いて同じくパーカーを羽織った希望がふわふわと漂う雲を指差して叫ぶ。

「そして――――輝く太陽を映しだす水の鏡!!」

男物の水着にシャツを羽織った葉華が、嬉しそうに下を指差して叫ぶ。


「「「海だ――――――ッ!!!!!」」」


喜んで駆け出す3人の先には――――太陽の光を反射して輝く、海があった。

「3人とも…嬉しいのは解りますけど、気をつけてくださいね…?」
浜辺にパラソルを立てながら黒のワンピースの水着にパーカーを羽織ったまきえが苦笑気味に言うと、離れた所から『おー!』ときちんと聞いているのか怪しい返事が返ってくる。
「ふふ、若い者は元気でよいのぉ」
ピンクのパレオの水着を着て、前を開けたパーカーを着た櫻がくつくつと喉を鳴らして3人を見る。
髪はポニーテールにされていて、一応考慮してあるのか、桜色の髪は腰までの長さに揃えられていた。
「まぁ、元気なのはいいことなんですけどね…」
水着の上にやはりフード付きのパーカーを羽織った聡が、荷物を置きながら苦笑気味に頷く。

「―――あれ?そう言えば、ボブはどこに…?」
先ほどまでは一緒に車に乗っていたはずなのに…。
そう呟きながら辺りを見回す聡に、まきえは笑顔で頭上…パラソルを指差した。

「ボブなら…さっきからそこにいますよ…?」
「……え?」

きょとんとして聡が上を見上げるが、そこにあるのは黒いパラソルの内側だけ。
「母さん、黒いパラソルのどこにボブが…」
そこまでいったところで、聡ははっとして顔を青くした。

―――まさか。
頭の中を過ぎった嫌な予感を振り切って、聡は慌ててパラソルの外へ出る。

――――そこには。
「ぼっ…ボブッ!?」
布の部分を広げられた挙句しっかり骨組みを取り付けられ、見事にパラソル代わりにされた憐れなボブの姿が…。
心なしか表情が情けなく、今にも泣きそうな感じが…。

「か、母さん!!ボブを今すぐ降ろしてよ!!
 普通のパラソル持ってきてるでしょ!?」
「それは勿論そうだけど…いいじゃない、そのままでも…」
「駄目です!!!」
「…そう…?」
どことなく不安そうな顔ながらも、まきえはボブを開放した。

そんな騒がしい面々を呆然とした顔で見ているしかなかった貴方達。
しかしそれに気づいた聡が、困ったように笑って振り返る。


「騒がしくてすみません。
 まぁ、今日は手伝いしてくださったお礼ですから、たっぷり楽しんでいってくださいね?」
そういって微笑む聡に、貴方は笑ってこくりと頷く。

「聡ー!!今から希望たちとビーチバレーするから審判やってくれー!!」
「あ、はーい!今行きますー!!」
大きく手を振って聡を呼ぶ葉華。近くには希望、崎、櫻の姿もある。
その声に返事を返すと、聡は小さく会釈をして葉華達のいる方に向かって走り去って行った。


――――――さて、これからどうしようか?


●あだ名決定?(何)
解散状態になってすぐのこと。
ざわざわと海に向かって歩いていく一団の中に、天に向かって伸びをする少女とその肩に乗る人形が一人(?)ずつ。

――――如月・縁樹とその人形、ノイだ。

縁樹は黒地に白のハイビスカスが眩しいモンロータイプのビキニ。
バッチリトランクス付きのものを着用しているせいか、どこかボーイッシュな雰囲気が漂っている。
…と言っても胸は程よくボリューム有。意外と着やせするタイプらしい。

ノイは青色の海パンをはき、体に撥水スプレーをかけてバッチリ海仕様。
…とは言っても海に入ることは出来ません。なにせ綿100%の人形ですから。
どんなにスプレーつけても水吸っちゃって大変なんです。

「ん〜…っ!
 やっぱり夏は海に限るよね、ノイ?」
『そうかなぁ…?』

楽しそうにノイに問いかける縁樹だが、その返事はそっけない。
不満そうな表情をしつつも何時ものことだし仕方ないか、とあっさり片付けると、ノイを肩に乗せたまま海に向かって歩いていった。

***

――――そして数分後。

「うーん…こうやって遊ぶのも中々楽しいね♪」
『…そうかなぁ?』

…ほんの数分前を思い出す会話の流れである。
ちなみに現在縁樹とノイが何処にいるかというと…時々波が打ち寄せてくる、海辺。
今、縁樹はノイと砂の城を作っているのだ。
湿っている砂は触り心地は悪いが固めやすい。
それを掴んでぺたぺたやっている一人と一体は、いろんな意味で人目を引く。
…勿論、どちらもそんなことを気にするほど神経細くはなかったけれど。

ほんの少し前までは縁樹が一人で軽く泳いでいたのだが、海辺に座ってじ――――――っ、とこちらを恨めしげに見てくるノイを無視しきれずに諦めて戻ってきたのだ。
そして一緒に出来ることを模索した結果、砂の城を作ると言う事で話がついたのである。
さすがに水着一丁で砂遊びをするのは少々抵抗があったのか、一旦パラソルの所に置いてあるパーカーを羽織って作業中だが。

ぺたぺたと土をこねていると、なんとなく小さな子供になった気がしてそれなりに楽しめる。
最初は土台すら出来ていなかった砂をどんどん高く積み上げていくその行為は、単調ながらも中々技術がいって、意外とのめりこんでしまうものだ。

「ハオ☆楽しんでるー?」

黙々と作業を進める一人の一体の上に、急に人の影がかかる。
そしてそこから告げられた楽しげな声に、縁樹とノイは同時顔を上げた。

そこに楽しそうに立っているのは――――崎。

スカイブルーの髪を靡かせながら楽しそうににやにや笑う姿に、ノイは思わず顔を顰める。
それに気づいた崎はがーんっ、と大げさにショックを受けたようなリアクションをすると、口の前に握った両拳を添え、ぶりっこポーズをとりながら声をあげた。

「あ、牡丹ってばひっどーい!そんな嫌そうな顔しなくてもいーじゃないのよぅ!!!」
『気持ち悪いからやめてよそのぶりっこ。
 っていうか牡丹ってもしかしなくてもボクのこと!?』
「少なくとも俺を見てあからさまに嫌そうな顔をしたのはキミしかおらんがね?」
「どういう風に考えたらノイが牡丹になるんですか?」

きっぱりと切り捨てた後に呼ばれた珍妙な名に驚くノイにさらっと返す崎に、不思議そうな顔をした縁樹がさりげなく失礼なことを言いながら問いかける。
それに笑うと、崎は人差し指を立てて自慢げに口を開く。

「『ノイ』ってひっくり返すと『いの』だべ?
 いのっつったら『いのしかちょう(猪鹿蝶)』の猪の部分と俺は考えた!!
 更に、猪といえば猪突猛進と牡丹鍋!!
 そしてなんとなく牡丹鍋食いたいなーと言う欲求の名の下に俺は『牡丹』でファイナルアンサーしたのさ!!!」

相変わらずワケわからん決め方である。
―――きっとこの人と連想ゲームをして遊んだら一回毎に理由を聞くためにストップする羽目になるんだろうなぁ…。
なんてことを考えてぼんやりしてる縁樹を他所に、変なあだ名をつけられたノイは大抗議。

『イヤだよそんな変なあだ名!!
 っていうか最終的にはアンタの希望じゃんか!!!』
「当たり前田のクラッカー!!所詮人間己の欲求には逆らえんのさ!!!!」
『古っ!ってかワケわかんないし!!』
「ちなみに牡丹の持ち主どんは『バレンタイン』で決定であります!!」
『なんで敬礼しながら変な隊員風口調なんだよ!!
 …ってなんで縁樹がそんな行事ごとのあだ名にされてんのさ!?』
「あれ?いつの間に僕の話になってるんですか?」

素早い会話の押収の中、ふと気づけば自分のあだ名の話になっていたようだ。
そして崎の口から放たれた珍妙なあだ名に、縁樹は思わずきょとんとし、ノイは力いっぱいツッコミを入れた。
しかし崎はその発言に何故か一層踏ん反りかえると、声高に叫びだす。

「バレンタインの苗字は『如月』!
 如月といえば二月!二月といえば節分とバレンタイン!!
 個人的にはバレンタインの方が好きなんで『バレンタイン』に決定!!!!」

『またアンタの好みで決めたのかよ!?!?』
「あ、でも『節分』よりはマシかも」
『縁樹もそういう問題じゃないでしょ!?』
ぐっと親指を立てて説明する崎に何故か納得している縁樹。ツッコミ役のノイはさっきからいっぱいいっぱいだ。

「まぁ、そういうことでこれから君達は『バレンタイン』と『牡丹』で決定だす☆」

そう言ってしゅぱっと片手を上げて笑うと、崎はざばざばと海に戻っていった。
ふと海に視線を向けてみれば、何かあったらしく幾つかの巨大な氷と慌てる少女、笑う希望など何かあったのは歴然で。
しかもその複数の氷の巨塊の中の一つの中には鮫の姿があるのが見て取れた。
そこからはじき出せる結果を考え、ノイは疲れたように肩を落とした。

『……ボクたち、海の騒動が治まるまでの時間つぶしに使われたみたいだね』
「あはは、そうみたいだね?
 うーん…でも、僕的には楽しかったから別にいいけど」
『楽しかったって…縁樹、いくらなんでもそれはないよ〜…』

ノイの言葉に笑顔でさらっと返した縁樹。
そんな自分の主を見て、ノイはがっくりと肩を落とすのだった。


●のんびりのんびり(をい)
気づけばあっという間に昼を過ぎ。
簡単な昼食を皆で取った後、縁樹とノイはのんびりとパラソルの下で休息をとっていた。
隣には日に当たりすぎて倒れかけ、強制的にパラソルの下に押し込められたまきえが寝転んでいる。

「…楽しんでいらっしゃいますか…?」

控えめな問いかけにふと隣を見ると、頭に濡れタオルを乗せたまきえがふわりと微笑んでいた。
これで目の下のかなり濃い隈さえなければ熟女好きに結構モテるかもしれない、なんてちょっとズレたことが縁樹の頭をよぎる。
しかしそんな表情は微塵も見せず、縁樹はにっこり微笑んで頷いた。

「はい、楽しんでます。誘っていただいて有難うございました」
『まぁ、悪くはないね』
「…そうですか…それは、よかったです…」

自分が誘ったせいで不快な思いをさせてしまったかもしれないと気に病んでいたのかもしれない。
意外と可愛らしい人だな、なんて思わず笑った縁樹を不思議そうに見返すまきえ。
それに苦笑しながらなんでもないですよ、と返すとまきえはそうですか…と呟いてまた目を閉じた。

このまま寝るつもりらしいまきえの体にバスタオルをかけて、縁樹はノイに『静かにね』と声をかけて再度休息を楽しんだ。
ノイも騒ぎ立てる気はないらしくおとなしく縁樹の隣でタオルの上に寝転がった。

生暖かい風に乗って流れてくる潮の香りは、なんとなく心を癒してくれる気がする。
目を閉じれば、夏特有の暖かい空気とザザ…ンと聞こえてくる波の打ち寄せる音。
海鳥の鳴く声。
人のざわめき。

それはまるで心の中にすとんと落ちてくるようで、その不思議な感覚に縁樹はそっと目を開いた。

「…何か楽しいことでもあったか?」
「え?」

不意にまきえのいる方とは逆から問いかけられた言葉に、縁樹は驚いて目を見開く。
ばっと勢いよく声の方を振り向くと、頭にタオルを乗せたままだるそうに煙草をふかす、嘉神・真輝の姿があった。
『…あんた、何時の間に隣に座ったんだ?』
一体何時の間に隣に来たのだろうと縁樹が真輝を呆然と見つめていると、代わりにノイがその疑問を口にする。
それにやや眉を顰めた真輝だったが、すぐにふぅ、と煙草の煙を吐いて口を開く。

「…お前達がまきえと話し始めた頃からだよ」

と言うことはほぼ最初からずっと隣にいた、と。
それでずっと声をかけなかったのだから、実は結構意地悪なのかもしれない。

「…それにしても、なんで僕にあんな質問をしたんですか?」

縁樹は先ほどの質問の意図が図りかねるらしく、不思議そうに首を傾げた。
それに小さく笑うと、真輝は煙草を一吸ってから口を開く。

「なんでって…そりゃあ、お前の顔が笑ってたからだろ」
「……え?」

その言葉に、縁樹はきょとんとして自分の顔を触る。
意識せずに笑っていたらしいが、今は驚いた表情を浮かべていることしか読み取れない。

「笑ってるんならなんか楽しいことでもあるのかと思った。それだけだ」

そう言った真輝は立ち上がると、ちょっと煙草買いに行ってくる、と告げてすたすたと歩いていった。
そんな真輝の背中を見送った縁樹は、頬に掌を当てたまま、ノイを見る。
『…どうしたの?縁樹』
訝しげな問いかけに思わず小さく笑い、縁樹は口を開く。

「…ノイ。僕、笑ってるんだって」
『そりゃ笑うに決まってるじゃん。
 縁樹は楽しいときに笑うんだから』

さらっと返された言葉に、縁樹は軽く目を見開く。
けれどすぐに目を細め、くすくすと笑い出した。

「……うん、そうだね。
 楽しい時は、笑うに決まってるよね…」

『…変な縁樹』
くすくすと楽しそうに笑い続ける縁樹に、ノイは訝しげに溜息を吐くのだった。


―――その後、聡を埋めるのを手伝ってみたりとか、また海辺で少し遊んでみたりとかしながら、縁樹とノイは楽しそうに笑い合っていたそうな。


●ビーチバレー大会参加決定?
昼も食べて一時を回った頃。
一同は唐突に微笑むまきえに呼ばれ、パラソルの場所で全員集合となった。
「なんでおいらたちが全員呼ばれたんだ?」
「…あぁ、そのことはですね…」
何故か終始にこにこと微笑んでいるまきえに首を傾げる一同だったが、不意にまきえが持ち上げたポスターのような紙により、その理由が明らかになる。


『―――――「ビーチバレー」大会???』


そこに書かれているのは、砂浜でネットを挟んで二人の人間がジャンプしている場面。
上のあおり文や題名を見る限り、どうやら一般開催の簡単なお遊び大会らしい。

「…これの優勝賞金と商品…なんと、10万とスイカ5個だそうなんです」

ぴくり。
なんだくだらない、と呆れて解散しかけた者たちも、まききえの言葉に耳をダンボにして足を止めた。
「どういうことですか?」

「…どうやら今年は人の入りがよくてお金に余裕があるそうなんです…。
 ……ですから、今年は更に、二位には二万とスイカ一つ、三位にも一万と海の家割引券三枚が賞金・商品としてあてがわれるそうで…」

ぴくぴくぴくっ。
更に続くまきえの言葉に、面々の肩が大きく動く。

――――なんて美味しい大会だろう。

「…これに皆さんで参加していただければ、きっと上位独占で…分けても皆様の懐も少々ですが潤ったりするのではないかと…」


『参加する(します)!!!!!!』
ぐっと拳を握ってやる気満々で叫ぶものが数人。

「なんか楽しそうだからやってみてもい?ノイ」
『好きにすればー?』
「私もなんだか楽しそうだからやってみたいです…」
「ふむ、ビーチバレーは初めてじゃな。よい経験になろう」
興味津々で参加を決意する者が四人。

「まぁ、やれって言われたらやるけどねー」
「結果は期待しない方がいいと思うけどなぁ…」
やや乗り気ではないものの参加をするつもりなのが二人。

――――そして。

「ビーチバレー?
 ……ダルい」

きっぱり切り捨てるのが―――1人。
ダルいと言い切った男は嘉神・真輝。
その言葉通り、顔中から『めんどクサ…』的なオーラが満ち溢れている。

「あら…」
どうしましょう、と困ったような声をあげるまきえ。
しかし、それはすぐに杞憂へと変わることになる。


「――――――なんじゃ、負けるのが怖いのか?」


一抜けたとばかりにぷかぷかと煙草をふかす真輝の前に立ってにやりと笑ったのは…櫻。
「…は?」
その言葉に眉を寄せ、真輝はぎろりと櫻を睨みつける。
しかし櫻の不敵な表情はぴくりともせず、むしろ挑発するようににやにやと笑う。
しかもまるで追い討ちをかけるように、更に希望が櫻の隣に立ってにやりと笑って口を開いた。

「優勝できる自信がないから逃げるんだろ?」

「なっ…!
 んなワケねぇだろ!?」
言われた言葉に顔を怒りに染め、真輝は反論するが二人はどこ吹く風。
「どうだかのぉ?」
「言い訳なんていくらでもできるしねぇ?」
失礼この上ない二人の言葉に―――真輝は、ついにキレた。
がばっと立ち上がり、ふんぞり返るように胸に片手の平を当てて声を上げる。

「俺は運動は全般そこそこ得意だ!!」

「えー。そう言われても確証ないしー」
「左様。口で言うだけならなんでもできるからのぉ」
怒って言っても二人は疑いのまなざしを引っ込めない。
それに焦れた真輝は―――ついに、声高に宣言した。

「―――やればいいんだろ、やればっ!!!!」

生来負けず嫌いの性分の自分が、まるで負け犬みたいな扱いをされるなんて我慢できん。
半分自棄気味に言われた言葉に、櫻と希望はにやりと笑い合い、くるりと身体を半回転。
「まきえ、真輝のヤツも参加すると言うたぞ」
「これで全員参加だな♪」
「…えぇ…ありがとうございます…」
二人の言葉ににっこり返すまきえを見て…ようやく、真輝ははめられていたことに気づく。

「…そういうことかよ…」

他のメンバー達からどこか生暖かい視線を受けつつ、真輝はがくりと肩を落とすのだった。

***

全員参加することが決まったので、まずは二人一組に分かれねばならない。
その旨を伝えると、何時の間に作っていたのか、まきえの手には複数の紙くじが握られていた。
準備万端だな…なんてぼやく人物の言葉をさらっと無視し、まきえは皆にくじを引くように指示をする。
紙の先が同じ色に塗られていたらペア決定。
簡単な分け方に納得しながら、全員はせーの、と言う掛け声と共に一斉に掴んだ紙の端を引っ張った。


―――――その結果は、以下の通りである。

A−嘉神・真輝&櫻(W女王ペア)
B−高台寺・孔志&秘獏・崎(花屋と中学生(略して花中)ペア)
C−シオン・レ・ハイ&山川・まきえ(熟年ペア)
D−夏野・影踏&山川・聡(狩人と獲物ペア)
E−如月・縁樹&緋睡・希望(素性不明ペア)
F−彩峰・みどり&葉華(精神的大人と子供(略して大小)ペア)

なんていうか…こう、一部のペアに何者かの作為が見え隠れするような…偶然のはずなのに何故なのか…。
ちなみに()内は登録時にまきえが適当に決めたペア名なので、深くは考えないように。
…と言うか既にブーイングが発生している所もあるが、そこんとは黙殺の方向で。

「ふふ…きちんとやってくれるのであろうな?」
「当たり前だ!出るからには勝つ!!」

「よっしゃ、出るからには目指すは優勝だー!!」
「おうよ!でも俺的には賞金ゲット出来れば別に何位でもいいんだけどね!!」

「…ご一緒に…頑張りましょうね…?」
「えぇ、優勝目指して頑張りましょう!」

「さ・と・し〜vv俺たちはやっぱり離れられない運命なんだな!!」
「うぅ…なんでこんなことに…」

「頑張りましょうね!」
「まぁ、ぼちぼち頑張ってやろうねー」
『……やる気あるの?』

「葉華君、一緒に頑張ろうね!」
「まぁ、怪我しない程度に楽しもうな」

各ペア様々な会話がなされているが、とりあえずは大会に参加する気なので問題はない。


――――そんなわけで、ビーチバレー大会が開催されるのである。


●準々決勝!素性不明ペアVS一般人ペア編
一回戦、二回戦と意外と簡単に勝ち進めた全チーム。
今までメンバーのペアは全て別の所にいたので当たることはなかった。
が、三回戦…準々決勝になったところで、ついに知り合い同士で当たりだした。


三番目に戦うことになったのは、縁樹と希望のペアと、一般人のペアだ。
三番目・四番目の者たちは人数の関係で勝ちあがった一般人と戦うことになったのだ。


……とは言っても、相手はただの一般人。
不思議な力を持つ人間のペアが相手で、勝てるわけがない。
前の二試合の二人の勢いをバッチリ目の当たりにした一般人ペアは、既に腰が引けている。

ちなみにノイは今現在審判サイド…要するに横で待機中。
何でかと言うと…まぁ、単にボールに手が届かないせいなのだが。
ボールをレシーブしようとすれば間違いなく潰されると思われる。
そんなわけで、ノイは横で応援担当だ。

『縁樹!頑張れよー!!』
「うん、有難うノイ!僕頑張って勝つからね!!」
「なぁ、俺には応援ないわけ?」
『ない』

ほのぼのと会話を交わす縁樹とノイ。
希望が笑いながら問いかけると、爽やかな笑顔と共に一蹴された。
縁樹以外はどうでもいいということらしい。
恐るべし縁樹至上主義っ子。


――――そして、試合開始のホイッスルが鳴る。


***

「縁樹っ!!」
「はいっ!!!!」

バァンッ!!!!
わぁっ!!

希望の上げたトスを、縁樹が見事にアタックをして相手のコートに叩き込む。
あがった歓声は、圧倒的な勝利を収めたペアへの賞賛の声だ。

ピーッ。
「試合終了!素性不明ペアの勝利!!」

「うしっ!」
「やりましたねっ!!」
パンッ!と手を叩き合わせて喜び合う二人。
そして二人が次の試合の観戦のために横へ移動すると、やや不機嫌そうな顔をしたノイが座りこんでいる。

「どうしたの?ノイ」
『……なんでもない』

縁樹の問いにぶっきらぼうに返すノイ。
ノイの様子を見てほくそ笑んだ希望は、ノイの前にヤンキー座りで座り込んで口を開く。

「――安心しろよ。ゴシュジンサマを盗ったりしねーからv」
『なっ…!!!
 別にボクはそんなんじゃ…っ!!!』

小さな声で言われた言葉に顔を真っ赤にしてギャーギャーと反論するノイだが、希望はそれも何処吹く風。
それが更にノイの怒りを煽り、声が大きくなっていく。

「……いったいノイになんて言ったんですか?」
そんなノイを見て苦笑した縁樹が希望を見て問いかけるが、希望はにやりと笑って口元に立てた人差し指を当て、

「――――――ヒ・ミ・ツv」

…と言ってウィンクするだけだったとか。


――――――素性不明ペア、準決勝進出。


●準決勝!W女王ペアVS素性不明ペア編
一回戦、二回戦と意外と簡単に勝ち進めた全チーム。
三回戦…準々決勝になったところで、ついに知り合い同士で当たりだし。
そして勝ち進んだ者たち…と言うか知り合い同士のメンバーで、準決勝が行われることになった。


後に戦うことになったのは、真輝と櫻のペアと、縁樹と希望のペアだ。


「さて、準決勝まで来たのぉ」
「…そうだな。正直、ここまで来れるとは思わなかったけど」
悠々と構えている櫻と真輝は、女王の貫禄充ぶ…げふごふ。…えー…やる気があるんだかないんだか微妙なところである。
「こうなったらこのまま勝ち進む心意気で行くぞ」
「わかっておる。…足を引っ張るでないぞ?」
「それはこっちの台詞だ!」
仲がいいんだか良くないんだか…相変わらず微妙な二人だ。

「まぁ、気づいたら此処まで勝ってましたー、って感じだよな…」
「そうですね…僕もなんかそんな気がします…」
「気分は竜宮城?」
「あはは、何年も経過してるわけじゃないですけどね」
『二人とも、呑気に話してる余裕あるわけ…?』
希望と縁樹も軽口を叩きながら呑気に会話している。
ノイの突っ込みもさりげなくスルー、な様子だ。
余裕があるんだかないんだか。


――――そして、試合開始のホイッスルが鳴る。


***

―――――試合の様子は省略。
       いや、ぶっちゃけ書き手が白熱したバレーの試合の様子を書ききれないだけなんで、後でシメるなりなんなりご自由に。

…そしてその結果。

バァンッ!!!!!
わぁぁぁああっ!!!
ピーッ!


「試合終了!!
 勝者、W女王ペア!!!!」


――――軍配は、真輝と櫻に上がった。


「うっしゃ!」
「うむ、よくやった!」
「お互いにな」
パァン!と片手の平同士を打ちつける乾いた音を立てながら笑い合う勝者…もとい、櫻と真輝。

「あー…負けちゃいましたねぇ」
「そだねぇ。
 …あー、でもこんなに一生懸命運動したのって高校以来だなぁ」
苦笑する縁樹に微妙に投げやりな返しを贈りながら、肩をごきごきと鳴らして懐かしむように呟く希望。
『……ジジくさ』
「ほー、そういうこと言うのはこの口かにゃー?」
ぼそっと失礼なことを呟いたノイに対し、希望はそれはもう爽やかな笑顔でノイの口をぐにーっと両側に引っ張る。
『ひたたたたたっ!!にゃにふるんひゃよーっ!?!?』
「悪い子にはお仕置きが常識でしょー?」
「あ、あの希望さん…さすがにそれ以上はノイのほっぺた破れちゃうんで…」
「あいよー。しゃーないなー」
叫ぶノイに笑顔の希望。もう暫く続くのかと思われたが、縁樹に控えめに言われたので希望は大人しく諦めて手を離した。
頬を摩りながら『いつか絶対泣かす…』とぼやきつつ希望を睨みつけるノイだったが、どうやら希望には全く効果無し。
にやにやと笑う希望を見て一段と目を鋭くするノイを、一生懸命宥める縁樹の姿が見られたとか。

「…なんつーか…次が決勝っつー感覚がないんだけど…」
「奇遇じゃな。わしもじゃ」
「ま、何にせよ、狙うは優勝、だな!」
「そうさのぉ。まぁ、ぼちぼち頑張ろうではないか」
「ぼちぼちじゃ駄目なんだっつーの!!」
W女王サイドでは、少々険悪な空気を纏いつつも、漫才風味な会話がなされていたりした。


――――――W女王ペア、決勝進出。


●帰りは安全運転で(何)

ビーチバレー大会が終わった後、そのまま表彰式になった。
ちなみに順位は以下の通りである。

1位:大小ペア
2位:W女王ペア
3位:素性不明ペア(熟年ペアは片割れ(シオン)が戦闘不能の為3位決定戦は行われなかった)

まきえの希望通り、見事に上位を知り合いのメンバーが独占した状態になったのだ。
いやぁ、めでたいめでたい。
…ちなみに商品のスイカのうち三つは、その場で切って皆で祝杯代わりに食べました。
残りの三つは半分にしてラップに巻き、全員に手渡されましたよ。

――――そして、そのまま日が暮れて夕方。

一行はプラントショップのキャンプカー(10人+二体が乗っても充分余裕があるくらいには広い)に乗って、帰り道を走っていた。

「楽しかったですね」
『まぁ、悪くはなかったね』
「アンドレ、生きていてくれたんだね!!」
「勿論さオスカル!君を置いて死んだりはしないさ!!」
「あぁ、バイト代も沢山もらえたし…これで少し貯蓄が出来ます…」
「よかったですね、シオンさん」
「あー、それにしても幸せだったなーv聡の膝ま…」
「わーっ!!余計なこと言わないでくださいっ!!!」
「黙ってたってバレバレなのに…」
「だよなー?」

動きすぎてすっかり疲れた人間とか、バイト代を貰ってほくほくな人とか、まだまだ体力有り余ってる人とか。
皆すっかり海水浴を満喫した様子。


――――しかし、そんな中でも地獄を味わった人がいるようで。


「くっ…!!!」
上着を脱いで腕を抑えているのは―――真輝。
抑えられている彼の腕は、焼けて黒く…とかじゃなく。
まるで火傷のように真っ赤になってしまっていた。

「…やっぱり日焼けで赤くなってるし…」
…彼の肌はマトモな紫外線対策もしないで思い切り夏の太陽に照らされ、日焼けをせずに真っ赤になっただけになってしまったのだ。
ヒリヒリと痛む腕を抑え、真輝は身悶えていた。

「うわっ、すっげー…真っ赤だよ」
真輝の肌を見て興味津々の葉華は、真っ赤な腕をぺたりと触る。
「いっ…!
 っだー!葉華触るなっ!痛いだろーがっ!!!」
その痛みに涙目になりながら、真輝は葉華の手を振り払う。
「えー…ちぇっ」
残念そうにしながらも、葉華は大人しく手を引っ込める。
「くく…なさけないのぉ…」
何時の間にか普段の着物姿に戻った櫻が口元に扇を当てながら笑うと、真輝がぎろりと睨みつける。
しかし櫻がものともしないのを見ると、がくりと肩を落として疲れたように呟いた。

「大体なー…
 お前ら植物系なのに、なんでこの日差しで平気なんだよ…信じらんねー」

真輝のそのぼやきに、葉華と櫻は顔を見合わせるとなんとでもないように口を開く。

「おいらやボブの身体の細胞にはサボテンも混ざってるから、暑くても平気だし」
「わしは元々精神の塊のようなものじゃからのぉ。
 日差しなんぞあってないようなものじゃ」

「…そーかよ…」
さらっと言われた言葉に、真輝はがくりと肩を落とす。


「…ふふ…。
 ……機会がありましたら、またご一緒に海水浴に参りましょうね…?」


運転しながら微笑むまきえの言葉に全員が頷いたかどうかは…一行だけの秘密である。


終。

●●登場人物(この物語に登場した人物の一覧)●●
【1431/如月・縁樹/女/19歳/旅人】
【2227/嘉神・真輝/男/24歳/神聖都学園高等部教師(家庭科)】
【2309/夏野・影踏/男/22歳/栄養士】
【2936/高台寺・孔志/男/27歳/花屋】
【3057/彩峰・みどり/女/17歳/女優兼女子高生】
【3356/シオン・レ・ハイ/男/42歳/びんぼーにん】


【NPC/山川・まきえ/女/38歳/プラントショップ『まきえ』店長】
【NPC/山川・聡/男/18歳/プラントショップ『まきえ』店員】
【NPC/ボブ/無性別/1歳/「危険な温室」管理役】
【NPC/緋睡・希望/男/18歳/召喚術師&神憑き】
【NPC/葉華/両性/6歳/植物人間】
【NPC/秘獏・崎/男/15歳/中学生】
【NPC/櫻/女(無性…?)/999歳/精霊】

○○ライター通信○○
大変お待たせいたしまして申し訳御座いません(汗)異界第十弾、「Let's海水浴!」をお届けします。 …いかがだったでしょうか?
今回は全開にも増して個別9:共通1の割合で書いてますので、個別シーンが果てしなく大量です(ぇ)
自分のキャラが他の人のノベルに出てる、なんてこともありますので他の人の物も見て探してみるのも中々面白いかもしれません。
今回の〆直前は真輝さんと櫻・葉華の独断場となりましたが、そこはどうかお許し下さい(汗)
…ところで、誰がどの台詞を言ってるかわかりますか…?(爆)
ちょっと人によって長さがまちまちですが、ご容赦くださいませ(土下座)
なにはともあれ、どうぞこれからも愉快なNPC達のことをよろしくお願い致します(ぺこり)

縁樹様:ご参加、どうも有難う御座いました。
     今回はノイ君とのんびり遊びながらも崎とか希望とかに(ノイ君が)からかわれる、をコンセプトにやってみました(笑)
     縁樹さんは大人しいながらも可愛らしく!を信条に書かせていただきましたが…いかがでしたでしょうか?
     ノイ君がやきもち焼いて希望にからかわれるシーンは個人的に好きだったりします(笑)

また参加して下った方も、初参加の方も、この話への参加、どうも有難う御座いました☆
色々と至らないところもあると思いますが、楽しんでいただけたなら幸いです。
それでは、またお会いできることを願って。