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<東京怪談・PCゲームノベル>


目隠しの森〜獣達の啼く夜act2〜

オープニング

 七人の犠牲者が出て、事件は一瞬の静寂を迎えた。
 ―…八人目の犠牲者は出ない、はずだったのだが…。
 七人目の犠牲者が出てから一週間、八人目の犠牲者が出た―…。
「ぐっ…」
 現場に向かった刑事の一人が遺体を見て、吐き出す。どんなに刑事歴の長い人間でもこの悲惨な現場を見たら吐き出してしまうのも無理はないだろう。
「吐くのは勝手だけど、現場を汚さないでね」
 叶は冷たく男の刑事に言うと、遺体の方へと足を進めた。
 殺され方は今までと同じ獣に食いちぎられたような殺され方。
 こんな異常な犯罪は今までにないため、同一犯と考えてもおかしくはないだろう。
「…だけど―…」
 今までと違うのは被害者が殺された場所。
 今までは人目につくような場所で殺されていたのだが、今回はあまり人が通らない樹海。間違えれば遺体は誰にも発見されない可能性だってあるのだ。
「…なんで今回はこんな場所に…」
 今までと何か違うのだろうか、叶はそう思いながら現場を後にした。


視点⇒貴城・竜太郎

「あの二人、ですか」
 竜太郎は空を飛ぶ影を見つけて一人呟く。樹海から離れるのかと思えば、その影は樹海の奥深くで降下を始めた。竜太郎はそれを確認した後に強化服を装着して空から飛び降り、樹海に降り立った。
「さて、あのお二方は…」
 どこに行ったのか、と呟く前にケモノが竜太郎に襲い掛かってきていた。だが、そのケモノ達は竜太郎の所に行き着く前に空中から飛来したミサイルがケモノたちを吹き飛ばした。
「今日は近くで日米合同夜間演習がありまして、利用させていただきました」
 強化服の遠隔操作でミサイルを撃たせたのだ。
 流石にその騒ぎを聞きつけたのか、夜白とみちるが竜太郎の所までやってきた。
「お探しする手間が省けました」
 竜太郎はにっこりと笑みを見せて言葉を続けた。
「十六夜・夜白さんと、その同胞の方ですね?私は貴城竜太郎。TIジャパンの社長です。先日の使いから聞いてるとは思いますが、貴方達を我が社に迎え入れる用意が出来てます」
 TIジャパンという言葉を聞いて夜白があからさまに不機嫌そうな表情を見せた。
「誰やの?知ってる?夜白」
 みちるが聞くと夜白は「合成遺伝子生命体の会社だ」と短く答えた。その答えにみちるも驚いたのか目を丸くして竜太郎を見つめた。
「へぇ、そんな会社あったなんて知らんかったわ」
 みちるが腕組みをしながらジロと竜太郎を見る。
「問題は如何にして能力を手に入れたかでなく、どう使うか、ですよ。人類は進化の袋小路に立たされてます。その状況を打破出来るのが貴方達選ばれた新人類なのです」
 その言葉に答えを返したのは以外にもみちるだった。
「人間を…助けるための新人類?あははっ、あんた何か勘違いしてない?あたしらは人間を滅ぼしたいんよ。こんな身体にした人間たちを!何でそれを助けなきゃいけないの?」
 声を荒げたためかゼェゼェと息を乱しながらみちるは叫んだ。
「前に来たやつにも言ったけど、俺たちは望んでこの身体を手に入れたわけじゃない。人間を助けてくれるヤツなら他をあたりなよ」
 夜白が冷たく言い放つとみちるも「同感」と短く返事を返す。
「では、貴方達は何をしたいんですか?今を生きる人間に罪はないでしょう?」
 竜太郎がそう言うと夜白は「罪のない人間なんかいない」と答えてきた。
「だってそうだろう、人間は大きいか小さいかは置いておいて生まれながらも罪人なんだ。罪を持った人間から子供が産まれ、その子供がまた罪を作る。終わりのない螺旋階段のようなものさ」
「では、確かめてみませんか?仮契約、という事でどうでしょう?暫くの間私の会社で過ごして御覧なさい、その上で断られるのならば納得しましょう」
会社の実態も何も知らないまま断られるのも何か癪だと思った竜太郎は仮契約という条件を持ち出した。
「あんたも大概にしつこいな」
 みちるが呆れたように呟く。
「私は諦めるという事をしませんから」
 竜太郎はにっこりと笑みを見せながら答える。
「どうする?みちる」
「あたしはどうでもいいよ。多分考えは変わらないと思うしー」
 頭の後ろで腕を組みながらみちるはやる気のなさそうな声で答える。
「今すぐに返事を、というのは無理があるでしょうからゆっくりと考えてください。決心がつきましたらこの場所まで来てください。前もって電話をしてくれましたら警備の人間にも話を通しておきますから」
 そう言うと竜太郎は一枚の名刺を取り出して夜白に渡した。
「では、またお会いできる事を願っていますよ」
 そう言って竜太郎は樹海から姿を消した。
「…なぁ、どう思う?」
「俺に言われても分からないよ」
「そやなぁ、何であたしらにスカウト来たのかもわからへんし」
「信用、できるのか?」
 二人は渡された名刺を暫く眺めながら小さく呟いた。



「お帰りなさいませ、社長。今回はいかがでしたか?」
 竜太郎はあれから会社に帰り、社長室の椅子に身体を預けた。
「あぁ、今回は有意義なものになりそうだよ」
 竜太郎は渡されたコーヒーカップを受け取り、中身を口に運ぶ。
 彼らはやっぱりこちら側へ来るだろう。
 確信?そんなものはありませんね。
 だけど―…彼らにはもう行き場がなくなりつつあるんですよ。
 派手な事件を起こして、警察からのマークも厳しくなっている。
 竜太郎は電話を手に取り、警備員室へと繋ぐ。
「もしもし、私だ。近々二人の少女と少年がやってくるはずです。その二人は私の大事なお客様だから失礼のないようにしてください」
 それだけを言うと竜太郎は電話を切った。電話の向こうで警備員が首をかしげている姿が目に取れて見えるようだ。
「さて、彼らが来たときの為にポストを開けて待っていないといけませんね」
 竜太郎はファイルを開きながら小さく呟く。

 そして、夜白とみちるがやってきたのは竜太郎が会ってから五日後の事だった。


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

1865/貴城・竜太郎/男性/34歳/テクニカルインターフェイス・ジャパン社長

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■         ライター通信          ■
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貴城・竜太郎様>

初めまして、今回「目隠しの森」を執筆させていただきました瀬皇緋澄です。
いつも細かなプレイングをありがとうございます^^
おかげさまで私もとても書きやすいです〜^^
「目隠しの森」はいかがだったでしょうか?
少しでも面白いと思ってくださったらありがたいです^^
それでは、またお会いできる機会がありましたらよろしくお願いします^^

               −瀬皇緋澄