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<東京怪談・PCゲームノベル>


砂蝕の暁夜〜獣達の啼く夜act3〜

オープニング

樹海の事件も落ち着いたが、叶はみちると言うもう一人の犯人を知ってしまった。
そして、数日後に警察署に叶あてに手紙が届いた。
「…り、か…」
だけど、その文字は紛れもなくこの連続通り魔事件の最初の被害者、桃生里香の文字だった。
特徴のある丸みを帯びた文字。
ここまで似せて書けるものなのだろうか?
手紙の文章は以下の通り。

お姉ちゃんへ。

元気にしていますか?
お姉ちゃんは事件の事になるとまわりが見えなくなるんだからちゃんと体調管理しなきゃだめだよ?
私は元気、元気すぎて困ってるくらいなんだから(笑
今度、一緒にご飯でも食べに行かない?
もちろんお姉ちゃんのオゴリで(笑
じゃあ、また連絡するね。

まるで事件の事など何もなかったような文章に叶は混乱するばかりだった。
「何よ、これは…頭がおかしくなりそう…」
 手紙をクシャと強く握りながら叶は弱々しく呟いた。


視点⇒夜切・陽炎


「何だ、幻でござるか」
 突然、頭に響いてきた声に陽炎は驚く事もなくその相手に言葉を返した。
 相手は陽炎が居候している家の主で幻という人間だ。幻は特定の相手とテレパシーで話す事ができるという能力の持ち主で今は陽炎が登録されている。
 大体の話はこうなる。
 現在、世間を騒がせている連続通り魔事件の犯人達を幻は追っているらしい。一緒に行動している叶という女刑事の妹が殺された時に幻が第一発見者となってしまったらしい。
 それで色々あってその叶という女性と犯人の二人を追っていると話を聞いた。
 今回はその死んだはずの妹から手紙が来たとのこと。ありえない話だ。
 そのことで不審に思った幻が拙者、陽炎に応援を求めてきた。
「ほぅ、それは興味深い話でござるな。拙者も力を貸そう」
 幻は「また連絡をする」と言ってテレパシーを切ろうとした。
「分かった、そのニセモノの里香と遭遇したら連絡をもらえるでござるか?そうしたらすぐに応援に駆けつけるでござる」
「ありがとうございます、それではまた連絡をしますね」
 幻はそう言って陽炎とのテレパシーを切った。
「さて、と…いつ連絡が来てもいいように準備をしておかねばいけないでござるな」
 幻がテレパシーという特異能力を持つように陽炎にも能力があった。転移術というものだ。自らの意思によって希望する場所へと転移できる便利な能力だ。しかし、陽炎は使いこなせていないため転移座標を幻がいる場所だけに限定している。
 とりあえず陽炎が用意したものは幻が使うための専用銃M4−S.I.R アサルトライフルと叶用に用意していたグロック26アドバンス ハンドガンを持つ。
 きっと幻が言っていた夜白という少年とみちるという女性も来るのだろう。

 後日、幻から連絡が入った。
 その里香という少女が『殺された』公園に午後七時に来てくれという手紙が届いたらしい。幻の話を聞く限りその叶という女性は自分の妹が生きていると信じて疑わないような雰囲気だったとか…。
 そして、連絡は突然入った。夜白たちに生き返らされ、薬なしでは生きることの出来ない体を与えられ、つかの間の生にしがみつくように里香は叶と幻に敵対してきたのだという。
 陽炎は転移術を使って幻がいる場所まで移動する。
「諦めてはいけないでござるよ!」
 一人の女性が殺されかけているにもかかわらず動こうとしない様子を見て陽炎が叫んだ。
「陽炎さん!」
 幻が自分を呼ぶ声が聞こえる。陽炎は里香と叶の間に割って入り、幻用に持ってきた武器で里香を撃つ。やはり使い慣れないものは使うべきではない。手がジンジンとしびれるような感覚に陽炎は襲われた。
「やめてぇ!」
 里香を撃った陽炎の腕に叶がしがみついてくる。
「やめて、あの子は私の妹なの!どんな姿でもたった一人の妹なのよ!」
 叶は半狂乱したように陽炎に叫んだ。
「どや?面白い展開になってきたやろ?里香、そろそろ薬の時間やなぁ?さっさとそいつらを殺れ」
 背後からいきなり現われた女性がさも面白いといわんばかりの表情で見ながら里香に命令した。生きたいがために里香は自分の姉すらも手にかけようと再び叶に襲い掛かった。
「叶さん!戦ってください!このままではっ―…」
 幻の叫ぶ声と共に叶に武器が渡される。先ほど転移してきた時にでも落としてしまったのだろう。それを幻は叶に投げ渡した。だが、叶は渡された武器を手に持とうとはしなかった。
 たまりかねた陽炎が叶に話しかける。
「叶殿、おぬしは何のためにここまで戦ってきた?目を閉じて…心の目であの少女を見るでござる、あれが叶殿の妹に見えるでござるか!?」
 叶は陽炎の言葉にハッとした表情で里香を見つめる。そして、決心したように叶は武器を手に持ち撃った。弾は外れたもののみちる、夜白、そして里香に少なからずの動揺を与えた。
「お、お姉ちゃん…あたしを殺すの?ねぇ、たった二人の姉妹なのに?その銃であたしを殺すの?」
「あなたは…里香じゃない…。里香は…人に…死んでなんて残酷な言葉は言わなかった。あなたは…私の妹じゃない!」
 そう言って叶は再び発砲した。その弾は里香の肩を掠めた。
「どう思いますー?夜白クン」
「どうって…結構意外?みたいな感じかな」
 面白そうにクスクスと笑いながら話す夜白とみちるは里香を助けるそぶりすら見せない。
「助けないんですか?仲間でしょう?」
 幻が二人に問いかけると二人は一瞬目を丸くして高らかに笑い出した。
「仲間?うちの仲間は夜白だけや。実験動物にいちいち同情なんかできるか」
 みちるが冷たく言い放ち視線を叶と里香、そして陽炎に移した。
「陽炎、さん…お願いがあります。里香は私が…この手で…」
 叶は刺された場所が痛むのか、顔を苦痛にゆがめて搾り出すように消え入るような声で呟いた。
「分かったでござる」
 陽炎は短く返事を返すと幻がいる方向へと足を伸ばした。
「さて、拙者たちの相手はおぬし達か」
 陽炎がM4−S.I.R アサルトライフルをジャキと音を鳴らしながら構える。それに続いて幻も構えた。
「さっきの言葉は訂正してもらいます」
「さっきの言葉?」
 みちるが首をかしげながら幻に聞き返す。
「里香さんは実験動物ではありません。こんな人の命をもてあそぶような事を…っ」
「拙者も同意見でござる。命とは尊いものでござる!」
「尊い、ね。その尊い命とやらを最初に弄んだのはお前らだ!」
 みちるは先ほどのようなチャラけた表情ではなくゾッとするような表情で陽炎と幻を睨み付けた。
「それは僕たちがしたことではありません。もちろん叶さんも里香さんも関係がなかった。貴方達はただの殺人快楽主義者だ」
「へぇ、それは聞き捨てならないね」
 夜白がユラリと身体を震わせながら低い声で呟く。
「夜白、やめとき。あんたの力を使われたらここら一帯が吹き飛んでまうわ。じゃ、うちらは帰るわ。妹と戦う女刑事のカオが見たかっただけやしな〜」
「悪趣味ですね」
「どう言われても構わんわ、だけどな、全部あたしらが悪いような言い方はせんといて。こうなった原因もあるんや。警察の重要書類の中に高幡製薬って会社の書類があると思うわ。それ、調べたら分かると思う」
 それだけ言い残してみちると夜白は姿を消した。それと同時に背後からガゥンという銃声が響いた。
 陽炎と幻がそちらに目を向けると叶が立っていて叶の前には砂に姿を変えていく里香の姿があった。
「里香…私は…っ…」
 そう言って叶の膝が折れ、その場にガクンと座り込んだ。
「ねぇ、幻くん、陽炎さん…教えて…私は…何のためにここまで来たのかしら…里香の仇を取りたいと願いながら死にたくないという里香をこの手にかけたの」
 震える叶を見ながら二人は叶にかける言葉がみつからなかった。
 そして沈黙を破ったのは陽炎だった。
「叶殿も先ほど言っていたでござろう。叶殿の妹であった里香殿はもう…存在していなかったでござるよ。それだけは変わらない現実でござる」
 陽炎の言葉を聞いて叶は「そうね…」と力なく答えた。
「叶さん。高幡製薬という会社について調べてみませんか?あのみちるという女性の言葉を聞いているとそれが全ての原因に思われます。だけど、どうやら警察の重要書類となっているようで…」
 幻の言葉を聞いて叶は立ち上がり「私が調べてみるわ」と答えた。
 そして、三人は知る事になる。
 知らなければよかったと思えるくらいの残酷な現実を。




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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

3420/夜切・陽炎/女性/18歳/放浪忍者

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■         ライター通信          ■
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夜切・陽炎様>

初めまして、今回「砂蝕の暁夜」を執筆させていただきました瀬皇緋澄です。
私、忍者とか好きなもので楽しく書かせていただきました^^
少しでも面白かったと思ってくださったらありがたいです^^
それでは、またお会いできる機会がありましたらよろしくお願いします^^

               −瀬皇緋澄