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<幻影学園奇譚・学園ノベル>


回り灯篭
「ねえねえ、盆踊り大会行かない?」
 突如そんな言葉を投げかけられ、見ると刷ったばかりかインクの臭いの強いパンフレットを持ったアイドル――その違和感は強いが、SHIZUKU自体は全く気にする様子が無く、薄い紙を廊下を通り抜ける人々に配り歩いている。それも「盆踊り」という、どちらかと言うと若者向けではなさそうなイベントに嬉々としながら。
「…何か楽しいことでもあるの?バンド演奏があるとか」
「やあねえ、そんなのあるわけないじゃない。ご先祖様の霊が戻って来る日なんだから」
 あっけらかんと言う彼女に、通りがかった生徒が一瞬だけあっけにとられ…そして彼女のもう1つの姿に納得して、苦笑いしながらパンフレットを受け取る。
 怪奇探偵クラブ――文字通り、怪奇な噂を追い求める特殊なクラブに所属する彼女が、『霊』という言葉に飛びつかない筈が無かった。
「…ボクにも1枚くれないか」
 その時、何気なく通りがかった生徒がSHIZUKUについと手を差し出す。
「おっ、分かってるね詠子ちゃん。そうなのよ、これはちゃんとした盂蘭盆会の儀式なんだから、精一杯楽しまないと!」
 はいどーぞ、と紙を配りながら歩き回るSHIZKU。興味深そうにそのパンフレットを読み進める月神詠子が、
「どうしてお面がいるんだ?」
 不思議そうに聞く。
「強制じゃないけど、お面って被っていると誰が誰だか分からないでしょ?ご先祖様がスッピンで来たらすぐばれちゃうじゃない。だからね、あたしたちもそうやってご先祖様が入りやすい状態にしてあげるのよ」
「ふーん」
 感心したように頷く詠子に、おいでよ、ともう一度声をかけると、
「ねえねえ、盆踊り大会行かない?」
 再びそう言いながら、楽しそうにパンフレットを配り続けた。

***

「レモンとブルーハワイひとつづつ」
「イチゴに練乳トッピングお願い」
「えーとね、全色いっことレモンね♪」
「…ちょっと待ってろ」
 四角い氷の塊を押し付けて、古めかしいハンドルを回す。かりかりしゃりしゃりと細かな氷がカップに落ちていくのを眺めるいくつもの目。
 芹沢青は、楽しそうには見えない顔のまま部の命令でかき氷作り兼売り子に勤しんでいた。最初計画が出た時には本気かと呆れ返ったのだが、今こうして格闘している器具を初めて見た時には持ってきた奴の神経を疑ったものだ。
 …家庭用だろうと、それも電動のものだろうと思っていたこちらが甘かったのだろうか。
 いつの頃に作られたのか、昭和の香りが漂ってくる黒光りしたかき氷器を持ち込んだのだから。
 お陰で部員の少ないかき氷屋は大盛況だった。使っている器具の物珍しさもあったのだが、氷屋から買わないといけないような氷の塊を使ったもの手動で削った繊細な氷は口溶けも良く、口コミでひっきりなしに人が来る有様だったのだから。
「恨むぞこの提案考えた奴…」
 氷から来るひんやりとした空気は絶え間なく動かないといけない身体には焼け石に水の状態。
 しかもこれだけ売れたとしても、きっと全て部費に回されてしまうんだろうな、と情けない思いになりながらも頼まれたからには仕方ないとハンドルを回し続けている。
 もうじき交代の時間だから、と自分に言い聞かせながら。
「青」
「あ、おば…じゃない。緋玻さん」
「頑張ってるわねー」
 浴衣姿の緋玻が、店番をしている青を見かけたらしく声をかけて来る。お揃いの狐面を頭の横に斜めがけにしてがりごりと氷を削っていた青が複雑な顔をして口の端をきゅっと結んだ。
「まだ店番は終わらないよ」
「そう、じゃあ頑張んなさいな。あたしはもう少し冷やかしてから行くわ」
 そう言う緋玻の手には香ばしく焼けたイカ焼きが握られていた。
「上機嫌だな」
「あら、楽しいじゃない。盛大なお祭り程じゃないけど、どことなくしんみりしたこういう雰囲気も好きよ」
 ひらひらと手を振って人ごみに紛れていった緋玻をが何か思い出したか楽しげに青へ笑いかけてきて。
「あれ、どうした。何か言い忘れた?」
 すぐ戻ってきた緋玻に訊ねて来た青へとにこりと笑い、
「イチゴひとつね」
 握り締めた小銭をちゃりんと手渡したのだった。

***

「やれやれ」
 ようやく交代員が来てその盛況ぶりに引いているのを無理やり押し付け、やり方を教えながら人が一旦切れるまで手伝った後にそこから抜け出して息を付く。
 あの様子だと次の交代が来るまでてんてこ舞いだろうが、知った事ではない。
 先程別れた緋玻がどの辺りにいるのだろうかと、狐面を斜めに頭の横に引っ掛けたままでうろうろと歩き回るも、
「あっ、青ー、美味しかったよ」
 ……客の中にいたらしい。
 全色フルカラーのかき氷を頼まれたのは良くあったのだが、その中の1人だったらしく、物凄い色合いになっているカップを手ににこにこと笑いかけてきたのは顔見知りのみあお。
「来ていたんだ」
「シュラインもいるよ?かき氷注文したのに全然気付いてないんだもん。モーリスも買ってたし…」
「……そりゃ悪かった」
 隣で、うす黄色い氷を突き崩していたシュラインがくすくす笑う。
「緋玻に宜しくね」
「ああ」
 他の屋台を見てまわるつもりか、その場を去って行く2人に何となく手を上げて、くるりと背を向けた。
 向こうの盆やぐらの辺りでも見て回ろうかと思いながら、人と人の間をすり抜けて…とん、と肩がぶつかり合う。
「すまない」
「いや、こちらこそ――」
 目と目が合ったその瞬間、ぱちり、と瞬きしたその女生徒――詠子が小さく首をかしげた。
「…不思議な、青だね」
「――変?」
「いや。…悪くないよ。ボクは好きだな、その色」
 ほんの少しだけ目を細め、詠子はそれだけ言うと、別の場所へ行くらしくすっと足を出す。
「――」
「!?」
 小さな声が、耳に届き…青はほんの少しだけその場に立ち竦んだ。
 …血脈かな。
 すれ違い様にそんな事を呟いた詠子の姿は人ごみに紛れ青の視線に届かない。
 その時、おぉぉぉっっ、とどよめきが聞こえて、はっと我に返った青がやぐらを見上げる。…そこに。
『みんな、ノッてるぅ〜!?』
 SHIZUKUが、やぐらのてっぺんからマイク片手に大声を張り上げていた。通りの良い声がきぃんとスピーカーに反響しつつ会場全体に行き渡る。
『今日はねえ、ご先祖様にも喜んでもらえるようにセッティングしたの。一気に行くよーっ』
 恐らく事前にこういった用意がなされていたのだろう。とは言え、太鼓に横笛、残りはテープで補うと言うものでしかなかったが、それは――SHIZUKUの新曲を祭ふうにアレンジしたダンスミュージックだった。
 …ざわ…
 最初戸惑っていた生徒達も、ノリ良いリズムに触発されたか綺麗な輪になりながら踊り出す。その様子を満足げに眺めていたSHIZUKUが、時折起こる歓声に上機嫌で手を振りながらやぐらの上で歌っていた。
「…おいおい…」
 小さく苦笑いしながらその様子を眺めていた青が、やぐらから目を落としてあちこちへと目を向ける。
 ――SHIZUKUが言うとおり。
 時折すれ違う者の中に、踊りの輪の中に、笑いさざめく生徒達の間に――ヒトならぬ人の姿や気配を感じ取りながら。だがそれはあくまでも場に溶け込んでいて、不自然さは感じ取れない。

 ――?

 ふと。
 何か視線を感じ、真っ直ぐ前を見つめた。
 やぐらを挟んだ向こうで、着流しに懐手の…つるりとした能面を付けた男が立っている。
 いくつくらいだろうか。自分達と同じ生徒には見えそうも無く、すらりとした姿勢の良さは何か武道でも嗜んでいるかと思う程きちんとその場に存在感を証明している。
 つい、と。
 その男が背を向けた。

 『青』が。
 ――風に流れる、青い髪が、青の目を打つ。

「っ!?」
 心臓を鷲づかみにされたかと思った。…その位、衝撃だった。
「ま、待てよ」
 お前が――お前の――
 その『存在』が本物なら。
 言いたい事は山のようにある。
 諦めなさい、そう緋玻に言われた事などとうに頭の隅から吹き飛んでいて。

「待てよッッ!」

 ――どぉん!

 やぐらの上で、ひときわ高く太鼓の音が鳴った。
 ぱちぱちぱちと、踊りを終えた皆が何とは無しに拍手をし、そして再びかちりとマイクの近くでスイッチの音がした。懐かしく物悲しい音頭がメロディに乗って流れ出す。

 どこ、だ。
 どこにいる。

 話を聞きたいんだ。俺の、この、青い――

「青」
 ふいに、ぐいと肩を掴まれた。勢い良く振り返ると、其処には隣のクラスの緋玻が怖い顔をして睨んでいる。…いや、狐面を付けているから表情は分からないものの、怖い顔をしているのだろうな、という想像は付く。
「…叔母さん――てっ」
 ぺしぃんと良い音を立てて頭を引っぱたかれた青が、珍しく恨みがましい目で緋玻を見上げた。
「あたしの方がちょっとだけ年上だからって叔母さんって言わないの。何度言ったら分かるの?田中『さん』か緋玻『さん』でしょ?」
 ずい、と迫られて身体を仰け反らせながら避ける青。
 狐面の細い目から覗いている緋玻の視線が、怖かった。
 ほんの数ヶ月の差でしかないのだが、緋玻の方が年上で良かったとつくづく思う青。…尤も、背の高さまで向こうの方が上と言うのが何となく納得行かないのだが。
 これしかない年の差で叔母甥と言うのも妙なものだ、と青はこの所良く思う。以前は疑問に感じもしなかったのが不思議なくらいだ。
「見たの?」
「え、――ああ…あっちに」
 向けた視線の先には、目指す人物の姿は無い。
「本当に――兄さんだった?」
 狐の顔の向こうで、どんな表情をしているのか。
 その声は、とても静かで…何を考えているのか読み取れなかった。
「…分からない。顔は見えなかったし…でも」
 あの、『青』が目に焼きついて。
 その色に気付く前に目が届いた事にも答えは無くて。
「――そう」
 ふ、と面の向こうで唇がほころんだ声がし。す、と面を外して――若々しい、苦笑いを浮かべた緋玻の顔がようやく現れた。
 それは…ほんの少しだけ生じた、違和感。尤もそれは、口に出す前に氷のように溶けて消えてしまったのだが。
 そんな青に、やぐらから聞こえるSHIZUKUの声が、別世界のもののように耳に飛び込んできた。

***

 そろそろ帰る者が出始め、人が次第に減って行った頃。校庭の隅でほんのりと瞬いている灯りが目に付いた。
 その灯りは、遠いような近いような…好奇心をくすぐらずにはおれない複雑なパターンで瞬いていて、なんだろう、と思わず足を向ける。
「あら」
「あ」
「ん?」
「おや」
 その途中でばったりと行き会った数人が、同じものを目指していると互いに気付き少しくすぐったそうな顔をした。
「あらあら、どうしたの皆。そんなにSHIZUKUちゃん特製の回り灯篭が見たいの?」
 その後ろから更に元気な声が聞こえ。続いてぱたぱたと足音と共に寄って来たのはSHIZUKUと、途中で行き逢ったらしい詠子の2人だった。
「え…SHIZUKUさんも作ったんですか。私もですね、面白そうな風習という事でこんなものを作ってきたんですよ」
 手に持ったままだった盆灯篭をにこにこ笑いながら皆に見せるモーリス。
「それ、入り口に立てて置けば丁度いい目印になったかもしれないね」
 ひと目見て何を持っているのか分かったらしいSHIZUKUがモーリスへにこりと笑いかけ、
「そういうものなんですか。私はまたてっきり水に流すものかと思っていました」
「流す行事はあるけれど…その前に『それ』は流れないと思うわ」
 シュラインが少し困った笑みを浮かべながら、言葉を選んでモーリスへ告げる。
 紙を貼った逆さの円錐形に木の柄を付けた盆灯篭は、盆の行事にある意味欠かせないものではあるのだが…少なくとも水に流す物ではない。
「残念です…」
 しょんぼりとしたモーリスを慰めるように、何処に用意していたのかSHIZUKUが「はい」と小さな蝋燭を差し出し。
「大丈夫、その辺りに立てて置けば良いよ。まだ終わりじゃないし、このくらいの蝋燭の大きさならイベントが終わる前に消えちゃうから」
 その言葉に押されてモーリス手製の盆灯篭が立てられ、その傍でくるくると回転している廻り灯篭へと皆が近づいていった。…気のせいか、気配が増えたような気がしたのだが…人数が増えたようには見えないまま。

 ――ゆうらり、ゆうらりと。

 走馬灯が、回る。

 SHIZUKU手作りなのか、内側からほんのりと灯りが漏れ、和紙に描き、色を付けて描いた模様がくるくると周り、踊り出す。蝋燭を使用しているのだろう、内側からも揺らめく灯りが幻想的な雰囲気を醸し出して覗き込む者の顔をぼぅ…と下から照らし上げ。
「シャッターちゃーんす!」
 ぱしゃっ、と陽気な声を上げたSHIZUKUの手によって、時ならぬお化け屋敷のような形相がフィルムの中に巻き取られていった。
「やだ、何するのよぅ。変な顔で写っちゃってるでしょー」
 みあおがすぐさまその場から一歩飛び退り、その後で口を尖らせた。
「綺麗に写ってたら焼き増ししてあげるよ」
「いらないわよっ」
 みあおの声に、くすくす笑い声を上げたのは誰だったろうか。
 集まった人数さえ定かではない、そんな『場』で。
 ただ――悪意らしきものは、かけらも感じなかったけれど。

***

「さあて、後始末しないとね」
 三々五々帰り支度をして家路に付く生徒達を見送りながら、SHIZUKUが門の近くに置いておいた枯れ枝のような物を取り出した。
「遊びに来てくれてありがと。…またおいでよ」
 苧殻をぱきんぱきんと折りながら、SHIZUKUが灯篭の置いてあるすぐ近くにそれを重ねていく。
「お疲れ様でした。あたしも楽しかったよ」
 しゅっ、と小さな火が手元に生まれ。
 そして――薄い煙になって、空へと立ち昇っていった。
「――SHIZUKUはまだ帰らないの?」
 苧殻の火の始末をしているSHIZUKUが、そのまま会場へ戻ろうとするのを見てみあおが訊ねる。
「あたし実行委員でもあるから、最後の確認だけはしておかないとね。大きなものはほとんど片付いたし、後は見回るだけ。…ありがとう。皆が来てくれて嬉しかった」
「こっちこそ、なかなか楽しかったわ。ねえ?」
「…ああ…まあな」
 緋玻の言葉に青がこくりと頷き。
「おやすみなさい」
「おやすみ」
「またな」
 詠子とSHIZUKUが見守る中、それぞれが自分の家へと戻っていった。…夢のような一夜を過ごした後で。

***

「…ボクに縁のある人は来なかったみたいだね」
 後片付けをすれば、何も無くなってしまうグラウンド。捨てられて残った紙屑がかさついた音を立て、物悲しさを強調する。
「皆が皆来たわけじゃないし。そんなことしてたらこの学校じゃ全然足らないよ」
 くすっと笑いながら、頭にちょこんと乗せていた面を外すSHIZUKU。その頬は紅潮し、目はきらきらと満足げに輝いていた。
「SHIZUKUは楽しめた?」
「もっちろん楽しかったよ。年に1回しかないんだもの。…詠子ちゃんはどうだった?」
「そうだね」
 ほんの少し、小首をかしげ。
「楽しかった、かも」
 その答えにくすくすとSHIZUKUが笑う。
「詠子ちゃんってさ」
「うん?」
 にーっ、と意地悪気な笑みを浮かべ。
「とっても素直だよね♪」
 とても無邪気な――ブラウン管の向こう側で良く見かける『純真』な顔を向ける。
「――え…えっ、ボクが?」
 イベント用の灯りを取り払った後は、グラウンドの端に設置されている灯りがあるのみ。その薄暗い場で、詠子はさっと頬を染めた。
「いただきっ」
 ぱしゃり。
「あっ」
 うろたえてどうリアクションして良いのか分からずに居た詠子の顔に、フラッシュが焚かれた。瞬間目を閉じたものの、再び目を開けて見ると嬉しそうににこにこ笑うSHIZUKUがそこにいて。
「最後の一枚、余ってたんだ。学園祭のコンクールに出す写真をずっと撮ってたの」
 でもコレはあたしのお友達コレクション――と楽しげに笑いながら手元のカメラを振る。
「もう…びっくりしたよ」
「んー、だって詠子ちゃんの照れた顔なんて滅多に見れそうもないんだもん。あ、でも不意打ちは不意打ちだから怒ったらネガごと返すよ。驚かせちゃってごめんね?」
 普段、アイドルと言うもうひとつの顔を持つSHIZUKUのこと。自分がしょっちゅうシャッターチャンスを狙われているのを知っているだけに、勢いに任せて撮ってしまったことを後悔しているらしく、神妙な顔で詠子を見る。
「――ううん」
 ふるふる、と詠子が首を振って小さく笑みを浮かべた。
「ボクは構わないよ。…SHIZUKUの思い出になるんだよね?それ」
「当たり前じゃない。あたしはこういうのちゃーんと整理するんだから。自家製でHPだって作ってるのよ?」
「…やっぱり怪奇系かな」
「とーおぜん」
 ふむん、と胸を張りながら「あっそうだ」ところっと表情を変えると、
「来年もやるから、詠子ちゃんもまた参加しなよ。忙しくても息抜きにね」
「…来年か…そうだね」
 また、来年も変わりなくこの行事を行えるように。
 にこり、と詠子が笑いかける。
「帰ろうか」
「そうだね。…SHIZUKUの家って何処だっけ?」
「あたしはねー…」
 実行委員がまだ数人残っているのを除けばもう生徒の姿は無い。
 その中を、声だけが遠ざかって行く。

***

 誰が忘れたのか、
 燃え尽きた蝋燭がこびり付いた回り灯篭が、斜めに傾いだまま其処にあって。
 僅かな風に、ゆっくりと、ゆっくりと一回転し…そして、カツリと何かに引っかかったように動きを止めた。
 いつ、この場に来ていたのか。
 その灯篭へ伸ばされた白い手が、大事そうに其れを持ち上げる。
「…来年…か」
 最早表情も見えないその暗がりに響いた声は、酷く平坦で。
 ――そして…ひやりとした冷たさを含んでいた。


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / クラス】

【0086/シュライン・エマ /女性/2-A】
【1415/海原・みあお   /女性/2-C】
【2240/田中・緋玻    /女性/2-B】
【2259/芹沢・青     /男性/2-A】
【2318/モーリス・ラジアル/男性/3-A】

NPC
SHIZUKU
月神詠子

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■         ライター通信          ■
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お待たせしました。「回り灯篭」をお届けします。

盆踊り大会、特設ステージと言った感じでNPCの雫さんに歌っていただきました。
今回は物語の核心部には全く触れていません。が…ほんの少しずつ、綻びが出て来ているような…そんな雰囲気を感じ取って下されば幸いです。

『夢』の終わりまであと1ヶ月。宜しければまたお付き合い下さい。

間垣久実