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自習時間
チャイムの音に席に着くがなかなか先生が来ない。
ざわつく教室内。
五分もたった頃だろうか、開いた扉から来たのは別のクラスの教員。
「おう、揃ってるかお前等」
「何かあったんですか？」
「腹痛で倒れたらしいんだ、だからこの３．４時間は自習な」
「自習……」
教室に入ってくるなり黒板に大きく書かれる自習という文字。
チョークを置いてから手を払う。
「まあ適当にやっててくれ、学校の外に出なかったらいいから」
手近にあったイスを引き、そこに腰掛ける。
つまりは監督役を言い渡されたが、あまりやる気はないらしい。
さて、開いた時間を何に使おうか？
自習と聞いてさっそくザワザワと騒がしくなる室内。
夏の暑い日で、監督する人間がいいと言ってしまっているのだからこうなるのは当然の流れだろう。
さっそく居眠りを始める生徒。
用事があったのか足早に飛び出していく生徒。
涼しそうな位置を見つけてそこにたむろしては昨日のテレビがどうだとかを談笑していたり、机を向かい合わせにくっつけてどこからかとりだしたトランプでジュースを賭けて遊んでいたりする。
賑やかな光景を眺め、モーリスはすぐ側に座っている大切な人に丁重な口調で声をかけた。
「時間が空いてしまいましたが、どうします？」
「そうですね……いまは自習している事にします」
「そうですか、では帰りにでも面白そうな本があったらおみやげにします」
「楽しみにしてます」
軽く頭を下げ、教室を後にする
どうするかはもう決まっていた。
図書室で、大人しく本でも読んでいよう。 帰りに何か面白い本を見つけて、おみやげにしたら喜んでくれる事だろう。
図書室へ行く途中、なにやら道すがら多少騒がしくはあったが気にせずに真っ直ぐに図書室に向かった。
心地よい静かな空間。
ここが居心地が良さそうだと気付いている人は多いらしく、人は多いがいずれもマナーを守っている人ばかりで静かな物だった。
「さて、と」
ここでなら有意義な時間が送れる事だろう。
部屋の中を見渡し、足音を立てないように一周してみる。
もっとも見て回ったのは本ではなく、人なのだが。
「………」
目的を見つけたモーリスはクスリと笑みを浮かべる。
窓から少し離れた、日当たりの良い席に座ってうたた寝している女子生徒。
「……大丈夫ですか」
「う、ん……？」
寝ぼけているらしく、目蓋を重そうに開いても返事がない。
「ここで寝ていては体調を崩しますよ」
「……はい」
素直に、むしろ素直すぎるほどにこくりと頷く。
寝ぼけている事に気付いたモーリスはこれは好都合とばかりに少女に席を立つように言うとゆっくりとだか本を閉じ椅子から立ち上がる。
「他に落ち着けそうな所がありますから、そこに移動しましょうか」
「はい……」
フラフラと足下のおぼつかない少女の手を取り、並んで歩き始めた。
司書に声をかけると、いつもの事だと簡単に奥の部屋へと通してくれる。
鍵付きの扉は、とても好都合な物だった。
「程々に」
「ありがとうございます」
まるでこれからする事を言い表すかのように艶やかな笑みを返し、奥の部屋へと滑り込んだ。
「ああ、そうでした。ここでならゆっくり出来ますから……お名前は？」
「……蒲公英、弓槻、蒲公英」
「可愛らしい名前ですね。モーリスと言います、ヨロシク。蒲公英さん」
それが、これから始まる蜜事の始まり。
最低限だけに付けられた明かりの下で、露わになっていく白い肌。
「そう、いい子ですね」
言われるままに胸元のリボンを解き、一つ、また一つとボタンを外していく。
半ば寝ぼけている丈かもどかしいまでにゆっくりとした動きはもどかしくもあり、そこが良くもある。
暗い明かりの下で、あまり日に当たらない白い肌が際だつように晒され白いシャツとスカートが軽い音を立てて床へと落ちた。
「良く出来ました、次は……」
ぺたりと床に座り込んだ蒲公英の手を取り、楽しそうに指先に口付けてから取りだしたのは着替え一式。
「これに着替えてください」
「は……い」
こくりと頷いてから、手に取った服にああ、とモーリスが思い出したように声をかける。
「正しい着方を知らないのも無理はありません」
「………？」
首を傾げる蒲公英にモーリスが丁寧に着方を教え始めた。
「最初にこっちで、後からこの服を着るんですよ」
タイツに続いてピッタリと躰に合う水着のようなスーツ。
色は可愛く薄いピンク色。
つまり簡単に、一言で言うのなら……バニーさんである。
何故彼がこの服をもっているかは果てしなく疑問を感じる所であるはずだろう。
不幸な事はここのその疑問を問い掛ける人が居ない事だ。
唯一の蒲公英は現在何を言ってもうなずくような状況である。
「さ、どうぞ」
「……はい」
寝ぼけたまま、特に疑問を感じることなくスーツに足を通す。
ここまでは簡単で、次が背中にジッパーが付いているタイプであったために、今の状態では上手く着られない蒲公英にモーリスが気付いて手助けを買って出る。
「少し大変でしたね」
背後に回り。長い髪を挟まないように両脇に避けてから、ジッパーを上へと上げながら白い背中にキスを一つ。
「……ぁ」
小さく震える体。
「可愛らしいですね……」
腰を抱いて引き寄せ、スーツのなかに手を差し込み小振りな胸がピッタリと治まるように形を整える。
「……んっ」
「大丈夫ですよ、すぐに終わりますから」
「は、はい……」
「正しい服の着方は覚えて置いて損はないですからね」
知識がある事や、実体験をする事に損がないのは事実だ。
果たして今後蒲公英がバニーを着る事があるのかどうかを聞かれたら、謎意外の何物でもない。
他の小道具は簡単な物だった。
首に巻かれる衿状のチョーカーに白い手首にだけ巻かれる袖。
尻尾はスーツに固定されている。
「良く出来ました」
最後に取りだしたのは最も重要なアイテム。
「ご褒美に付けてあげますから」
うなずいたのを確認してから、ウサ耳の付いたカチューシャを蒲公英の髪に付け、髪の乱れを直して完成。
「これで完成です」
ポンと肩を叩き、何かカメラでももっていれば良かったと思うが残念ながらここにはない。
こんな楽しい事があると知っていたら忘れる事はなかった。
少し残念だった考え、これを彼……蒲公英を大切に思う人の顔が脳裏に浮かんだ。もしこの事を彼が知ったらどうなるかを考え苦笑する。
ばれた時は、その時だ。
「さて、次は」
艶やかな髪を手に取り、優しく撫でる。
「服は見たかっただけですから、もっと別の事をしましょうか」
触れそうな程に顔を寄せ囁く。
「……？」
「今もとても可愛らしいんですが、ね」
背中に手を伸ばし脱がせていると理解出来るような、遅々とした動作でジッパーを下ろしていく。
「……！」
最後まで避けたモーリスは直感的に手を離し一歩離れる。
「―――っ」
脱げ描けた服の胸元を手でおおう蒲公英の顔は真っ赤に染まっていた。
ようやく目が覚めたらしい。
「あの、そ、の……」
しどろもどろになってモーリスを見上げる蒲公英に、静かにの合図を送り平然と後を続ける。
「何もしてませんから、安心してください」
着替えさせたのは、この場合モーリスにとって何かした内には入らない。
「………！」
とても混乱していたようで、着替えを見つけるなり今着ている服を脱ぎ着替え始めた。
すぐ横にモーリスがいるのすら構っていられないらしい。
「………混乱してますね」
あんまりにもカワイイ行動に微笑むのをばれないように隠すのが大変だった。
早々に着替え終わってしまった蒲公英がぺたりと床に座り込む。
突然の事に驚愕して疲れたのだろう。
「送りますよ」
「あ……の、でも…」
「安心してください、何もしませんから」
「………」
困惑する蒲公英を連れ、扉の外にでた後おみやげの本を借りていこうと考え、近くの椅子に腰掛けて待ってるいように告げておく。
目的の物を借りながら。
「ありがとうございました」
「いやいや、またよろしく」
司書の一人とそんな会話を交わし、帰ってくるまでほんの数分。
「………」
蒲公英の周りに人だかりが出来ているのに気付き足を止める。
今、彼女はとても真っ赤だった。
「どうしたの？」
「大丈夫？」
何かあったのだと、言わないでも解るほどに。
「あっ、あのっ……」
蒲公英が気付いてモーリスを見上げた事で、周りの目も一気に集まる。
「お待たせしました」
さて、どうこの場を乗り切ろうか……モーリスはそんな事を考え始めた。
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■ 登場人物（この物語に登場した人物の一覧） ■
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【整理番号 ／ ＰＣ名 ／ 性別 ／ 年齢 ／ 職業】
【１９９２／弓槻・蒲公英／女性／２−Ｃ】
【２３１８／モーリス・ラジアル／男性／３−Ａ】
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■ ライター通信 ■
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学園依頼へのご参加、ありがとうございました。
少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
また何かありましたら言って下さいませ。
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