コミュニティトップへ
高峰心霊学研究所トップへ 最新レポート クリエーター別で見る 商品別一覧 ゲームノベル・ゲームコミックを見る 前のページへ

<幻影学園奇譚・学園ノベル>


激走! まぼろしのメロンパン!

1.
夏休みの神聖都学園・・・。
その学園内になぜか1つの噂が持ち上がった。
その噂とは・・・

『限定メロンパンが購買部にて販売される』

という噂だった。
神聖都学園の購買部は食堂も兼ねた充実のラインナップが魅力的な、いわゆる名所のひとつである。
その購買部に限定メロンパンが販売されると聞けば客が殺到することは間違いない。

そして、噂は真実となる・・・。


2.

 ピンポンパンポーン

「ただ今より、購買部にて10個限定メロンパンの販売を開始します」

夏休みの補習授業の終了の鐘と共に、そのアナウンスは流れた。
限定、それは心をくすぐる何か神秘的な響きを持つ言葉である。
そして、そんな言葉に心くすぐられてしまった人物がここにもいた。

「限定!??」

3年B組・門屋将太郎(かどやしょうたろう)である。
校庭の片隅。
校舎に程近く、だが教師陣の死角となる昼寝に最適な木陰で午睡を味わっていたのだが、限定と聞いて血が騒いだ。

菓子パンはあんまし好きじゃねぇんだけど、限定って聞くと食いたくなるぜ。
急がねぇとなくなっちまう!

門屋は傍らにおいてあった白衣を掴むと、それを羽織った。
白衣はまるで、門屋のファイティングコスチュームであるかのように、燃える門屋を包み込んだ・・・。


3.
「怪我したくなかったらどけーーー!!」

門屋の形相は目が血走り、飢えた獣に近い。
いつもの気の優しさはどこへやら?
こんな顔では気が弱い者なら顔を見ただけで避けるだろう。
食い物とはかくも人を豹変させてしまうものなのだろうか・・・。

校舎沿いにダーッ!と全力疾走する。
と、前から一般生徒の姿が!?

「俺の邪魔をするヤツはぁ、なん人たりとも許さん!!」

門屋は走りながらすばやく足に履いていたを健康サンダルを手に持った。

パカーンッ! パカーーーーンッ!!!

小気味よい音とともに倒れ行く一般生徒!
それもそのはず、門屋はその手に持った健康サンダルで進路妨害した一般生徒を叩きのめして前に進んでいたのだ!
・・・進路妨害と言っても、ただ単に門屋の行く先にたまたま居ただけの通行人なのだが・・・。
哀れなり、一般生徒・・・。

メロンパン入手のためなら手段を選ばない・・・それが今の門屋将太郎なのだ!


4.

まっすぐ購買部に向かって走っていく。
その先に、2つの人影が見えてきた。
門屋は叫んだ!

「オラオラ〜!! 俺の行く手を阻むものは全てこの健康スリッパの餌食となりやがれ〜!!」

その2人とは隣のクラスの龍堂玲於奈(りゅうどうれおな)とシオン・レ・ハイであったが、今の門屋には全く関係ない。
おーいと、のん気に手を振るシオン。
だが、門屋の目にシオンは見えていない。
それほどまでに、メロンパンに情熱を燃やしていたのだ。

その情熱を感じ取ったのか、玲於奈がシオンをなにやら説得している。
最初はシオンも半信半疑のようだったが、途中表情が凍りついた。
おそらくは門屋の顔があまりにも鬼気迫っていたためだろう。
玲於奈がシオンの手を引っ張り、雨どいを伝い2階へと駆け上る。
どうやら二階の渡り廊下を使って購買部に行く作戦のようだ。
「メロンパンはお先に貰うよ! 追いつけるもんなら追いついてみな!」

玲於奈の捨て台詞に、門屋の雄たけびが炸裂した!

「なにをーー!? メロンパンは俺のもんだ! 誰にも食わせねぇ!」


5.
門屋は通りすがりの哀れな一般生徒を数人健康サンダルで仕留めつつ、購買部へと辿り着いた。
その中に1年生の相模紫弦(さがみしづる)が混じっていたのだが、それを知ったからといって門屋に手加減があるわけではなかった。
そして、門屋の通ってきた道には屍累々・・・といった表現が適切だろう。
・・いったいどこの戦場なのやら?

購買部は物凄い人の数で溢れかえっていた。
限定メロンパンを求め、集まってきた人々なのだろう。
だが、溢れた人々は何かに戸惑っているようでもあった。
「どけっ!」
門屋は、その人々を掻き分け前へと進み出た。
そして、その戸惑いの原因をみた。

デッサン狂いの落書きのような購買部のおばちゃんとレジ、そして怪しげなメロンパンの山。
そして、同じくデッサン狂いの謎のツインテール少女軍団。


・・・
・・・・・
・・・・・・・

「なにぃーーー!? これが噂のメロンパンだとーーー!?」

あまりの衝撃に言葉を失い数秒後、門屋は思わず叫んでいた。
これが本物だとは思わなかったが、ならば、本物はどこにあると言うのだ??

俺が今まで苦労してきたことは一体なんだっていうんだ!?

「なんだ、意外と早かったじゃないか」
門屋を見つけた玲於奈がそう言って笑った。
と・・・

「メロンパンくださ〜い♪」

ふと、門屋の耳にそんな声が聞こえた。
玲於奈がその声の方向を向くと、ツインテールの少女がレジでメロンパンを受け取ろうとしていた。
そして、その少女に掴みかかろうとする少年の姿・・・。

「それが本物かーーーー!」
門屋は目標物を見つけるとまっすぐに健康サンダルを振り上げながら向かっていった・・・。


5.
「限定品と聞いたら手に入れたくなるのは乙女心よ! 年頃青春真っ盛りの乙女を止められるものなら止めてみなさいっ!」

ツインテールの少女・丈峯楓香(たけみねふうか)はそういうとクルリと体を反転させ購買部から運動場へと逃げだした!!
「待てこのやろー!」
と楓香を追っているのは1年生の鈴森鎮(すずもりしず)である。
そして鈴森と平行に追っているのは同じく1年生の相模。
「待ったないもーーん♪」
ベーッと舌を出し、楓香は足取りも軽く逃げていく。
「またんかい! こら!!」
と、後ろからさらに追う門屋。
「独り占めは許されないよ!?」
そしてさらに玲於奈も追ってくる。
「ちょ、ちょっと! か弱い乙女を数人掛かりでよってたかって追ってくるなんて酷いじゃない!」

「じゃあメロンパン独り占めするのは酷くないのか!?」

自分の所業を棚に上げた楓香の言いように、思わず鈴森はそう突っ込んだ。
「しょうがない。ここはひとまず休戦して、あの子からメロンパンを取り戻そうじゃないか?」
「ち、しかたねぇな。おい! おまえらも手伝え!」
なにやら休戦協定を結んだ玲於奈と門屋は鈴森と相模にも協力を求めた。
「女の子をいたぶるのは趣味じゃないんだが・・・まぁ、この場合しょうがないか・・・」
相模が少し考えた後でその協力に応じた。
「おっしゃ! 俺もやる!!」
鈴森もその手に乗ることにした。


6.
「じゃあ、4方向から追い詰めるよ!!」

玲於奈がそういうが早いか左方向へとダッシュをかける。
「では俺は右から・・・」
相模が宣言どおりに右へ。
「直進あるのみっ!!」
健康スリッパ片手に門屋は叫んだ。

「俺は反対側を塞ぐぜ!」

身軽に楓香の頭上を掠め、楓香の進行方向を塞ぐ。
「うっ!?」
4方向をふさがれ、楓香の足が止まった。
「フェレットとは違うのだよ、フェレットとは!」
得意げに鈴森は胸を張った。
「全然意味わかんねぇよ」と、相模が鋭い一言を放つ。
「ムッキーーー! おまえどこまで俺をバカにするんだよ!?」
怒る鈴森を無視し、玲於奈と門屋は楓香に詰め寄った。
「さぁ、メロンパンを出してもらおうか?」
「・・・」
「こっちは腹減ってんだから、これ以上手こずらせるんじゃないぞー? ん?」
玲於奈と門屋に優しい言葉ながら迫力満点で迫られ、楓香は焦った。
だが、

「っ、甘ーい! 道はどこにだってあるんだから!」

小競り合いを起こしていた鈴森と相模の間をすり抜け、楓香は再び走り出した!
『しまった!?』
一瞬、誰もがそう思った!
だが・・・

「あ、UFOだ!!」

「え? あ!!?」
髪の長い人物の指差した方向を思わず見た楓香は、その人物に思わぬ膝カックンを食らいその場にへたり込んだ。

その人物とは、誰あろう『シオン・レ・ハイ』。その人であった・・・。


7.
「どこから出てきたんだ・・・まぁ、いいや。とにかくこうしてメロンパンは手に入ったわけだし」
爽やかに笑い、いつもの顔に戻った門屋はそういうと、楓香の持っていた紙袋からひとつメロンパンを取り出した。
「あぁ!? あたしが買ったメロンパン!!」
「・・金は払うよ。いくらだよ?」
半泣きの楓香に門屋が財布を取り出しながら言った。

「5000円」

「嘘つくんじゃないの!」
速攻、玲於奈がコツンと楓香にデコピンをかます。
「うぇ〜ん・・いった〜い・・・」
チャリンと紙袋の中に100円硬貨を門屋は入れた。
「じゃあ俺も貰おうかな。・・・こんなこと、危ないから二度としちゃダメだよ?」
にっこりと笑うと相模も同じく100円を紙袋に入れメロンパンをひとつ取った。
「戦いとは、常に二手三手先を読んで行うものだ・・・」
「何かっこつけてんの? メロンパン食っちまうよ?」
玲於奈にそういわれ、鈴森はハッと我にかえると100円を袋に入れメロンパンを1つとった。

『いただきまーす♪』

・・・と食べようとしたが、とある熱い視線のせいで動きが止まった。
いや、食べることができなかったのだ。
その熱い視線はシオンのものであった。

「・・・財布、お金足りませんでした・・」

捨てられた子犬のように、そう呟くとジーッと無言で門屋や相模、鈴森を見つめる。
これで食えたら、相当のつわものである。
「あー・・わかった、わかった! ぼくがあんたの分までメロンパン買ってあげるから、そんな顔しないの!」
「えー、まだメロンパン減るのぉ・・・?」
ブーブーとブーイングをする楓香を一睨みし、玲於奈は200円を袋に入れると2つメロンパンをとった。
そしてその1つをシオンへと手渡した。
「あ、ありがとうございます〜」
ウルウルとした目のシオンに、玲於奈は視線をそらして「全然気にしなくていいから」と手を振った。

気を取り直し、目の前のメロンパンへとご挨拶。
『いただきまーーす!』

「・・・っ!」
親指を立て、無言でかぶりつく鈴森。
門屋も「ふまひ♪」と口に入れながら、もふもふと食っている。
そろそろ牛乳が欲しいお年頃だ。(?)
「これって、日本で初めて作られたメロンパンじゃないのか。でも美味い美味い♪」
どうやら復刻か何かと思っていた相模は、それでも美味しそうに食べている。
が・・・
「美味しい・・・? どの辺が限定なんだろ? でもいいか【限定品】だし! 美味しいに違いないのよ! そうに決まってるわ!」
なにやら自己暗示でもかけるかのように楓香は言った。
「ふーん、限定って言うから期待しちゃったけれど、なんか普通だね」
一口食べた玲於奈はクールにもそう言った。

味覚とは所詮、十人十色である。

そんななか、1人遠い目の人物がいた。
「『川の向こう 誰かが手招き メロンパン』
 『ひまわり畑 追いかけるよ メロンパン』・・・」

「し・・シオン先輩?」
鈴森が恐る恐るシオンに呼びかけると、シオンは涙を流しつつ呟いた。
「あれが天国なのでしょうか・・・」

「・・・何が見えてるんだ?」
相模がシオンの目の前でヒラヒラと手のひらを動かすが、シオンは全く反応しない。
「や、ヤバい物でも入ってたのか?」
「うっそぉ! だって同じもの食べてるのに・・・?」
玲於奈と楓香が食べかけのメロンパンを食べるべきか悩んでいる。
「ほっとけって。腹減ってる時はどんなモンでも美味いって事だからさ」
門屋が笑ったのを見て、鈴森がウンウンと頷いた。

夏にしては爽やかな風が吹いてきた。
ほんのひと時の休息。
学年も性別も関係なく、それは戦場をともにしたものだけが味わえる爽快感でもあった。

そして、その風に乗ってそれはやってきた。

『ただ今から限定5個のチョココルネを購買部にて販売開始しま〜す』

「・・・限定?」と、相模が呟いた。
「これは行かないとねぇ?」と、玲於奈が指を鳴らす。
「今度こそ俺が一番だ!」と、鈴森がダッシュをかます。
「このメロンパンよりは美味しいかな?」と、楓香も少し考えた後で走り出す。
「やっぱり菓子パン1つじゃたりねぇもんな」と門屋が再び健康スリッパを手にした。
「メロンパン・・幸せです・・・」と、シオンはメロンパンを噛み締めていた。


そしてまた、新たな戦いが幕を開ける。
今度の勝者は誰なのか!?

それは誰にもわからない・・・。



-------

■□   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  □■

【整理番号 / PC名 / 性別 / クラス】

2320 / 鈴森・鎮 / 男 / 1年A組

2973 / 相模・紫弦 / 男 / 1年B組

2152 / 丈峯・楓香 / 女 / 1年A組

1522 / 門屋・将太郎 / 男 / 3年B組

3356 / シオン・レ・ハイ / 男 / 3年C組

0669 / 龍堂・玲於奈 / 女 / 3年C組


■□         ライター通信       □■  

門屋・将太郎様

お久しぶりです。
この度は『激走! まぼろしのメロンパン!』へのご参加ありがとうございました。
今回のお話は、当初NPCを使いましての妨害の後メロンパン奪取・・・と考えておりましたが、色々考えましてNPC無しのPC様同士での競争と相成りました。
つきましては少々プレイングの方反映し切れなくなりましたことをお詫び申し上げます。
以前書かせていただきました、面倒見のよい親分肌な感じの門屋様とはまた打って変わった感じのプレイングで楽しく書かせていただきました。
・・・崩しすぎてなければよいのですが・・・。(^^;
幻影学園も残すところあと1ヶ月。楽しい高校生活をお送りください♪
それでは、またお会いできることを楽しみにしております。
とーいでした。