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<東京怪談・PCゲームノベル>


砂蝕の暁夜〜獣達の啼く夜act3〜

オープニング

樹海の事件も落ち着いたが、叶はみちると言うもう一人の犯人を知ってしまった。
そして、数日後に警察署に叶あてに手紙が届いた。
「…り、か…」
だけど、その文字は紛れもなくこの連続通り魔事件の最初の被害者、桃生里香の文字だった。
特徴のある丸みを帯びた文字。
ここまで似せて書けるものなのだろうか?
手紙の文章は以下の通り。

お姉ちゃんへ。

元気にしていますか?
お姉ちゃんは事件の事になるとまわりが見えなくなるんだからちゃんと体調管理しなきゃだめだよ?
私は元気、元気すぎて困ってるくらいなんだから(笑
今度、一緒にご飯でも食べに行かない?
もちろんお姉ちゃんのオゴリで(笑
じゃあ、また連絡するね。

まるで事件の事など何もなかったような文章に叶は混乱するばかりだった。
「何よ、これは…頭がおかしくなりそう…」
 手紙をクシャと強く握りながら叶は弱々しく呟いた。


視点⇒エターナル・レディ


これは全てが始まる前日の話。
「これを夜白クン達にお渡しすればいいんですね、社長」
 レディは渡された小さなモノを眺めながらにっこりと答える。
 それは桃生里香という女性の細胞だった。そう、連続通り魔事件の最初の被害者であり、夜白達を追っている女刑事の妹の細胞だった。
 桃生里香はドナー登録をしていたらしく喰い散らかされた身体で無事な部分だけを病院側に送ったんだろう。それをTI総合病院が引き取ったというわけだ。
「では、届けてまいりますね」
 レディは穏やかな笑みを見せながらTI社を後にする。
「さて、夜白クン達に会う前に少し調べ物をしようかな」
 楽しげにレディは呟くと警察の重要書類を保管している建物に入っていく。本来なら不法侵入どころの騒ぎではないのだけれど警察署の人間には少しばかり眠っていてもらっているため誰もレディの侵入に気がつくものはいない。
「え〜っと。これかなぁ?」
 レディは厳重に鍵のしめられた本棚から一冊の分厚い本を取り出す。その本には《持ち出し厳禁》と書かれたラベルが表紙に貼られていた。レディはパラパラと捲るとその製薬会社で行われていた実験記録がびっしりと所狭しと書かれている。
「これは…」
 その数多い実験体の中に十六夜夜白、紫峰堂みちるの名前も小さく書かれていた。年齢は二人とも同じで17歳。夜白の方は薬との相性が良かったらしく他の実験体よりも多くの投薬が行われていたらしい。
 そして、記録の最終日に事件は起きた。五人の実験体が暴走を始めたのだ。だが、五人のうち三人は処理されてしまい、二人だけが研究所から逃げ出した。その二人こそが夜白とみちるだったのだ。
 その研究所が警察関係の施設だと知ると二人の行き所のない怒りは自然と警察へと向くようになっていた。そして、その本の最後には震える文字でたった一言書かれていた。

――…私たちは何てバケモノを作り出してしまったんだろう…と。

「なるほど〜。だから《復讐》ってワケですね〜」
 レディはパタンと音をたてながら本を閉じる。
「さぁて、夜白クンたちのところに行こうかなぁ」
 レディはそう呟くと本を片手に警察署を後にした。
 確かにこれだけでも復讐という動機にはなるけれど、彼らにはそれだけじゃない何かの理由があるような気がする、とレディは「う〜ん…」と唸りながら呟く。まぁ、そっちの方は彼らに直接聞き出せばいいのだけれど。


「はぁ〜い」
 レディがにっこりと笑いながら夜白たちに話しかける。どうやって探そうかと悩んでいる時に偶然彼らに出くわしたのだ。夜白は心底嫌そうな表情をレディに向ける。
「だれ?」
「この間スカウトに来ただろ。あの会社の人間だ。そして…俺たちと同じ…合成遺伝子生命体だ…」
 夜白の言葉にみちるも少々驚いたようで言葉を失った。
「これ、何に見えますか?」
 レディが笑いながら夜白たちに見せたのは小瓶のようなもの。
「なんや?それ…」
「桃生叶、貴方たちを追っている女刑事さんですよね?その女刑事さんの妹の遺伝子です。確か…連続通り魔事件の最初の被害者ですよね」
 そう淡々と言うレディの声色は相変わらず変わることはない。
「これを貴方たちにプレゼントしちゃいま〜す。どう使うのかお姉さん楽しみ、ワクワクしちゃう」
 レディはそう言いながら夜白の手に桃生里香の遺伝子を入れてある小瓶を握らせる。
「………」
 夜白はその小瓶を握り締めて着ていたジャケットのポケットに無造作に直した。
 何も言わないところを見るとレディの能力が効いているのだろう。夜白達のもとを訪れる度に気付かれない程度に幻惑作用の燐粉を出して無意識的に自分を信頼する様にしていたのだ。
「社長は貴方たちの為に会社にポストを用意しているようですよ。一度会社にいらしてくださいませ」
 それでは、と言いかけてレディは立ち止まる
「そういえば、貴方たちの復讐の理由を教えていただけませんか?そんな身体にされた、だけではないんでしょ?」
 レディが言うと夜白はジロリとレディをにらみつけた。
「…あんなぁ、うちらだけやったらまだ許せたンや。だけど…あの製薬会社の連中は…二歳になったばかりのうちらの妹まで犠牲にしたンよ。許せるか?」
「…うちらの妹?だったら貴方達は…」
「姉弟や」
 みちるは短く答えた、その後に「血は繋がってないけどな」と言葉を付け足す。
「そぅ、ですか。それでは失礼しますね」
 そう言ってレディは夜白たちの前から姿を消した。
「どう…するん?」
 みちるが小さな声で言う。
 はっきり言ってみちるは話的には悪い話だとは思わない。むしろ自分達には有益な事に思える。
「そやなぁ…今度一度会社に行ってみる?」
「…あぁ、まずは…コレどう使おうか」
 夜白が小瓶を取り出してみちるに見せながら問いかける。そんな夜白にみちるは不貞腐れたように答えた。
「どう使うって…もうどう使うか決めてンやろ?そやのにうちに聞かんといて」
「そうだな」


「お渡ししてきましたよ」
 レディはTI社に戻り、遺伝子を夜白に渡してきた事を報告する。
「夜白くんから連絡があったんですか?」
 レディがそう言うと目の前に人物は「近々会社を訪ねてくるらしい」とレディに答えを返した。
「これもキミの働きのおかげだな」
「いいえ、あたしは言われたとおりにしただけですから」
 にっこりと笑みを浮かべてレディは答えた。
 彼らはあの遺伝子をどう使うのだろう?
 それは簡単に予想できる。
 きっと、遺伝子を使って桃生里香を蘇らせるだろう。


そして、夜白たちは『復讐』という言葉を使い新しい事件と悲劇を生み出そうとしていた…。


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

2196/エターナル・レディ/女性/23歳TI社プロモーションガール

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■         ライター通信          ■
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エターナル・レディ様>

いつもお世話になっております。
今回「砂蝕の暁夜」を執筆させていただきました瀬皇緋澄です。
「砂蝕の暁夜」はいかがだったでしょうか?
少しでも面白いと言っていただけたらありがたいです^^
何かご意見等がありましたら、教えてくださいませ^^
それでは、またお会いできる時を楽しみにしております^^


                -瀬皇緋澄