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<東京怪談・PCゲームノベル>


目隠しの森〜獣達の啼く夜act2〜

オープニング

 七人の犠牲者が出て、事件は一瞬の静寂を迎えた。
 ―…八人目の犠牲者は出ない、はずだったのだが…。
 七人目の犠牲者が出てから一週間、八人目の犠牲者が出た―…。
「ぐっ…」
 現場に向かった刑事の一人が遺体を見て、吐き出す。どんなに刑事歴の長い人間でもこの悲惨な現場を見たら吐き出してしまうのも無理はないだろう。
「吐くのは勝手だけど、現場を汚さないでね」
 叶は冷たく男の刑事に言うと、遺体の方へと足を進めた。
 殺され方は今までと同じ獣に食いちぎられたような殺され方。
 こんな異常な犯罪は今までにないため、同一犯と考えてもおかしくはないだろう。
「…だけど―…」
 今までと違うのは被害者が殺された場所。
 今までは人目につくような場所で殺されていたのだが、今回はあまり人が通らない樹海。間違えれば遺体は誰にも発見されない可能性だってあるのだ。
「…なんで今回はこんな場所に…」
 今までと何か違うのだろうか、叶はそう思いながら現場を後にした。


視点⇒七枷・誠


 目隠しの森〜獣達の啼く夜act2〜

 連続通り魔事件、こんな事件が起きるほどに最近は物騒になっている。
 だから誠は見回りをする事にした。その見回りの時に一人の女性と知り合った。
 名前を桃生叶といい、刑事さんらしい。話を聞いてみると叶には妹がいてその妹こそが連続通り魔事件の最初の被害者だったらしい。妹のカタキを取るために独自の調査をしているということも聞いた。
 そして、今日八件目の事件のあった樹海に叶と一緒に行く事になっていた。
「じゃあ、行きましょうか」
 叶の運転する車に誠は乗り込む。叶は「一時間くらいで着くから」と言って運転を始めた。
 それから二人は何を話すことなく樹海に着くまでの間、誠はぼんやりと外ばかりを見ていた。


「着いたわよ」
 一時間ほど車に揺られていると叶がポツリと呟く。誠は車から降りて樹海を見渡す。昼間でも暗いその樹海は夜では一層不気味さを増している。何かがいる、そう思わせるような不気味さに少しだけ身体を震わせた。
「…また邪魔しに来たの?おねーさん。あれ…そっちのおにーさんは初めてだね」
 クスクスと静かすぎる樹海に響き渡る笑い声。その声に聞き覚えがあるのか叶の表情が険しくなる。
「…あんたの知り合いなんか?夜白」
 月明かりに照らされて誠と叶の前に姿をあらわしたのは関西弁の女性、だがその背中には漆黒の翼が生えているところを見ると人間ではなさそうだ。
「前に俺の邪魔をしてくれたおねーさんさ、それと…今回はもう一人邪魔者が増えてるみたいだけどね」
 そう言って夜白は視線を誠へと移し、フッと笑う。
「アイツの餌にちょうどええかもな」
「あれに喰わせるのか?みちる」
 みちると呼ばれたその女性はクスと笑うと指笛を吹いた。その途端に「グオォッ!」と獣の咆哮が聞こえた。
「…何…?」
 誠が後ろを振り向こうとした時に何か、鋭いもので背中を切られた、いや…切られたというより引っ掻かれたといった方が正しいのかもしれない。
「誠くん!!」
 叶が大声で叫びながら誠へと近寄る。
「……え?」
 だが誠にダメージは見られない。全くの無傷と言うわけでもないが背中を強く売っただけのようだ。
「…いてて…衣服の裏地に細工してきたのは正解だったな…」
 そう、誠はこの事件が危険だと判断して衣服の裏地に『切り裂くことあたわず』と『貫くことあたわず』と書き込み、相手の攻撃を緩和出来るようにしていた。
「…大丈夫なの?」
 叶が心配そうに誠に問いかける。
「見かけほどダメージは受けてませんよ。それより…少し危ないので下がっていてくださいね」
 叶が「え?」という間もなく誠は地面に触れて槍を作り出した。そしてその槍をケモノに向けて投げつける。
 だが、やはり流石は野生の力、というか…誠の槍はサラリと避けられてしまう。
「ムダや。あたしが特別に改造したケモノなんよ。普通の人間ではかすり傷一つ作ることすら叶わんで」
 フンと鼻を鳴らしながらみちるが下卑た笑みを見せる。
「それは…どうかな…?――我が周囲にある者達よ、囁く木々よ、眠りし大地、聞こえているか?俺の声が…」
 誠は後ろにあった樹木に触れてニッと笑う。
「全てを貫く、樹木の刃……」
 目を閉じて言葉を言うと地面から次々に木の根のようなものが槍のように突き出してくる。それによってケモノは突き刺され、絶命した。逃げる場所すらも作らないように罠を仕掛けたのだから当然と言えば当然なのだけれど。
 この行動に今まで笑っていたみちるの顔からも笑みが消えた。
「へぇ…やるじゃん」
 夜白は面白そうに笑いながらこちらを見ている。
「…こ、の…クソガキがぁっ!」
 自分のケモノを殺された事によってキレたのかみちるが叶に襲い掛かってくる。能力で壁を作り出そうにも間に合いそうもない。誠は考えるより先に体が動き、身を挺して叶を庇い背中に傷を負う。
「誠くん!」
 誠は叶を庇いながらも『領域』の能力を発動するために発動の台詞を小さく呟いた。
「―…世界は我を忘れず…」
 その途端にみちるの存在、そして構成を積み上げている年月の一端を読み取った。膨大な量のデータが誠の頭の中に一気に入り込んできて、誠は暫くの間呆然としてしまう。
「みちる、今日は分が悪い。引き上げだよ」
 夜白がそう言うとみちるは舌打ちをしてバサと翼を取り出して夜の闇に消えていった。
「誠くん、大丈夫?」
 叶が着ていたジャケットの袖を破り背中の傷を手当てする。
「あいつらは…」
「逃げたわ…それより病院にいかないと…」
 叶に促されるままに誠は車に乗り込む。


 あの時、頭の中に入りこんできたものの中に気になる言葉を見つけた。
(敵はうちらだけやない。身近にいるかもしれへんで?)
 それがどういう意味なのかはまだわからない。
 その言葉の意味に誠が気がつくのはまだ暫くあとになる。



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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

3590/七枷・誠/男性/17歳/高校二年生/ワードマスター

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■         ライター通信          ■
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七枷・誠様>

初めまして、今回『目隠しの森』を執筆させていただきました瀬皇緋澄です。
『目隠しの森』はいかがだったでしょうか?
少しでも楽しんでくださったら幸いです^^
それでは、またお会いできる機会がありましたら、よろしくお願いします^^

                    −瀬皇緋澄