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<PCシチュエーションノベル(ツイン)>


貴方と過ごす特別な日。

●ひそかな計画。
 8月27日。
 その日は沙羅にとって特別な日。


 夏休みも終わりに近づき、橘・沙羅(たちばな・さら)はたまたまカレンダーに目をやると、大切な行事が近づいている事に気がついた。
「えっと、今日は25日・・・・あれ?! 後2日で祀ちゃんの誕生日だ!!」
 随分前に沙羅がカレンダーの『27日』に花丸を付けた横に、可愛らしい文字で小さく『【祀ちゃんの誕生日】』と記入していた。

早速、沙羅は祀の一番喜んでくれるデートコースの計画を練り始める。
最高のお祝いの仕方を考え出したい沙羅は突然脳裏にいい案が浮かび、受話器に手をかける。

「もしもし、『ケーキ屋・フク一スナ一』ですか?」
 前々から花瀬・祀(はなせ・まつり)がケーキバイキングに行きたがっていたのだが、結局なんだかんだで行けずにいた。
 そこで沙羅は取って置きのお祝いをする為に、誕生日の客に特別なサービスをしてくれる人気店になんとか予約を入れられた。

 後は祀に連絡を取り、当日に約束を取り付けるだけである。

「あっ、祀ちゃん! 明後日は予定入れてる?」
「27日? 特に予定はないけど・・・」
 呉服屋へと訪れ祀を発見した沙羅は嬉しそうに声をかける。
「ケーキバイキングにいかないかな・・?」
「ほ、本当!! 沙羅ありがとう」
 きょとん、としていた祀の表情は見る見るうちに嬉しそうな表情に変わり、万遍の笑みで首を縦に振った。



●美味しいケーキを食べよう。
「祀ちゃ〜ん! こっちだよ!!」
 お気に入りの白いワンピースを着て予定時間よりも早く来た沙羅は祀をすでに待っていた。
「ご・・ごめん、遅くれた?」
「ううん。時間どおりだよ」
 焦りながら走ってきて、息をきらしている祀の代わりに腕時計を見るとちょうど定時である。
「なんか、沙羅はいつも可愛らしい服を着ているけど、いつもよりも気合入ってない?」
「そんな事ないよ。えへへ‥‥なんかデートみたいだね」
 不思議そうに首を傾げている祀の腕に勢いよく腕を絡めると嬉しそうに微笑みながら沙羅は祀と共に歩き出す。
 まだまだ暑い日は続き、体がだるく感じるものだが今日に限っては沙羅の体は軽く、ふわふわした気分になる。
 祀の方もケーキバイキングに誘われて上機嫌のようだ。

「祀ちゃん、ここだよ」
 沙羅の指差した先には『ケーキ屋・フク一スナ一』と看板が掲げられたオシャレで大きめのお店である。
 中に入ると外見だけではなく、室内も非常にオシャレで沙羅も祀も感動する。
 お昼時だけあって、とても人が多く混んでいる。

「お待ち申し上げておりました。ご予約されていた橘様と花瀬様ですね」
 タキシードをびしっと決めたウェイターがやって来て、優しく微笑みながらメニューを持って、どきどきする二人を特別席へと案内する。

 沙羅と祀は皆が居る場所とは少し雰囲気の違った個室へと案内され、辺りを見渡すと可愛い飾りつけがされている。
 良く見ると中央の丸い透明なテーブルの上にはテーブルいっぱいにケーキが並べてある。
椅子も可愛らしい形をしていて座り心地もよく、女の子が好むような雰囲気をかもし出している。
「沙羅大好き♪」
「喜んでくれて良かった・・沙羅も祀ちゃん大好きだよ!」
 祀の誕生日の為に沙羅が予約をしてくれていたことを知り、嬉しさのあまり沙羅をぎゅっと抱きしめる。
 沙羅も自分の計画をこんなにも喜んでくれたことに嬉しさを覚え、抱きしめ返した。

「祀ちゃん、早く食べよう!」

 祀の手をとり、心地よい椅子へと腰を下ろし席へと着く。
 沙羅が見つめている中、祀は幸せそうにケーキを頬張り幸せそうな笑顔を沙羅に見せる。
 幸せそうな顔に沙羅自身も幸せな気分になる。
「くすくす・・・祀ちゃん、顔にクリームがついてるよ」
「えっ?! ど・・何処??」
 頬についたクリームを祀がとろうとするがなかなかとれない。
 そんな姿に沙羅は微笑ましく思いながら祀の頬についたクリームをとってあげた。

 バイキングで手ごろな値段の割に、とても美味しく沙羅と祀はひと時の幸せな時間を過ごした。

「ふぅ。美味しかった・・」
 祀はケーキを満腹に食べた後に、幸せそうにため息をつき大満足の表情を見せる。
 沙羅は祀の表情を見て、計画を実行して良かったと改めて実感する。

 食べ終え、暫し会話をしていると、時間を計ったようにウェイターがやってきた。

「今日は花瀬様のお誕生日だと伺っております。当店ではささやかなお祝いでございますが、お誕生日プレゼントをご用意させていただきました・・」

 ウェイターがそう告げて指で『ばちんっ』と音を鳴らすと、急に室内が暗くなり扉が開く音が聞こえる。
運ばれてきた物には火が灯されており、テーブルに運ばれる。
 それは二人分用に作られた小さめの円方のフルーツケーキで、蝋燭が祀の歳の数だけ乗せられていた。
 中央には『Happy Birthday MATURI』と板チョコに書かれていた。
 祀はそれが自分の誕生日ケーキだと知り、食べたばかりでお腹いっぱいのはずなのに嬉しさのあまり手を合わせて喜ぶ。
 祀は一度で蝋燭の火を勢いよく吹き消した。
「祀ちゃんお誕生日おめでとう」
沙羅は誰よりも大きな拍手で、そして誰よりも強い気持ちで祀をお祝いした。


「ケーキを食べた後なので、甘さを控えめにして食べやすいようになっています・・」
 ウェイターは説明をしながらケーキを切り分け、お皿に綺麗に乗っけて沙羅と祀の前に置く。
 また、サービスに紅茶もついてきたので食べやくなり、たくさん食べたせいで、残っていたケーキの甘さが自然と和らいでいく。
 二人はあっという間にフルーツケーキを平らげてしまった。



●沙羅より心を込めて。
「沙羅・・今日は誘ってくれてありがとう」
「ううん、祀ちゃんが喜んでくれて良かった・・」
 さすがに満腹になり、祀は数回お腹をゆっくり擦りながら沙羅に万遍の笑みを零すと沙羅は優しく微笑み返す。

「祀ちゃん・・あのね、沙羅からもプレゼントがあるんだ」
 少し照れながら沙羅は可愛らしい袋に入った手作りのプレゼントを祀に勇気を出して手渡す。
「沙羅の手作りなんだ・・」
「あたしに? 開けてもいい??」
 沙羅は軽く頷き、祀が袋を開けるのをドキドキしながらじっと見つめる。
 袋の中を開けると祀のイメージカラーの赤をベースにして、器用に作られた可愛らしい手作りのビーズの指輪が入っていた。
 それから「Happy Birthday 祀ちゃん」と書かれた綺麗なバースデーカードも添えられていた。
「わぁ・・・・可愛い。沙羅、ありがとう♪」
 指輪を手に取り祀は指輪を嵌めて沙羅から貰った指輪を軽く微笑みながらじっと見つめる。
「ま・・祀ちゃん、もしかして気に入らなかった?」
「違うよ・・可愛いなって思って・・。ものすごく嬉しいんだよ」
 不安そうな顔で祀を見つめる沙羅に、祀は指輪を沙羅の方へと見せながら笑みを零す。
 沙羅からの思わぬプレゼントに祀は心から喜んだ。


 ふっと突然ノックの音が聞こえ、先ほどのウェイターがやってきた。
「お客様、満足していただけましたでしょうか?」
「はい、とっても・・・」
 優しく微笑みかけながら話しかけるウェイターに沙羅は自然と微笑みかけながら答える。
 二人の満足した顔を見て、ウェイターは話を続ける。

「最後にノンアルコールのシャンパンをご用意いたしました・・」
 二人の目の前へシャンパンの入ったワイングラスを運ばせた後、ウェイターは再び口を開いた。
「此方はりんご味で炭酸が入った口当たりの良い拘りのノンアルコールシャンパンでございます。ごゆっくりご堪能ください・・・」
 綺麗な色をしたシャンパンは見ているだけでも堪能できる。
 ウェイターが説明を終えると、外からウェイトレスが花束を持ってきて祀に差し出す。
「わぁ・・綺麗な花束・・。ありがとうございます」
「8月27日の花瀬様のお誕生花はソリダスターというお花でございます・・」
「ありがとうございます・・」
 祀の受け取ったウェイトレスウェイターソリダスター誕生花には花瀬花束にはソリダスターと花が混じっていて、ウェイトレスによると花言葉は『豊富な知識』だと語る。

その後、ウェイターとウェイトレスは一礼をして席をはずした。

「祀ちゃん、改めてお誕生日おめでとう」
「ありがとう・・」
 ワイングラスをお互いにあてると『こつんっ』といい音が響き、振動が手へと伝わる。
 一口飲むとさっぱりとしたりんごの味と炭酸の具合が堪らなくよく、口の中がすっきりとした気分になる。
「「美味しい・・・」」
 自然と二人の口から言葉が漏れる。
 お口直しには最適のシャンパンとなったようで、二人はしっかりと飲みきった。



●来年もこうして貴方と。
「お客様、ありがとうございました・・」
 お見送りを受けて、二人を『ケーキ屋・フク一スナ一』を後にする。
 すでに夕暮れ時を迎えていて、外は夕焼けに染まり非常に美しく見とれてしまう。

「まだ、暑いね・・」
「沙羅、帰りはこっちの道から帰らない?」

 家へ帰るには少し遠回りの道を祀が指差す。
 帰り道にもっと色々と一緒に話をしたいという言葉の意味を含めて話す優しい祀の好意に沙羅は甘える。

「祀ちゃん、大好き!!」
「あはは、沙羅そんなに腕引っ張ったら痛いよ・・」
 祀に腕を絡め、肩を寄せる沙羅の姿は無邪気で愛らしく、祀もついつい優しくなってしまう。

「沙羅・・・今日は楽しかった・・」
「沙羅もすごく楽しかったよ、沙羅の為に今日一日を空けてくれてありがとう・・」
 祀を喜ばす計画だったはずだが、いつしか沙羅自身も楽しくなっていた。
 だけども祀が喜んでくれたことに変わりはなく、計画は成功である。

「祀ちゃん、来年もこうしてお祝いしたいな♪」
「その前に沙羅の誕生日があるでしょ?」

 二人の楽しい会話は家にたどり着くまで耐えなかった。





「「Happy Birthday for you」」

                          written by aisakura



『ライターより。』
初めまして。今回担当させてもらいました葵桜です。
「フク一スナ一」とはロシア語で「美味しい」という意味らしいです。
ケーキ屋の名前を考える時に「美味しい」を他の言葉でなんていうんだろう・・
と考えていて見つけ出した中でロシア語を選ばせてもらいました。
私も最近ケーキバイキングに行ってみたいと思ってます・・(本当に)

サービスは気に入ってもらえたでしょうか??