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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


彼は何を拾ったの


------<オープニング>--------------------------------------


 こめかみを突くような鋭い痛みは、太陽の熱を感じるたびに酷くなった。
 上山晃はその場で立ち尽くし、川と舗道を遮るようにあるフェンスに体を預けながら、額を押さえて目を瞑り、痛みがひいていくのを待った。
 昨年の夏のことはもう忘れてしまっているから、今年の夏が平均より暑いのか暑くないのか分からない。けれどただ、漠然と暑い。
 この頭痛も太陽を避け続け、エアコンに頼った生活をしているつけだと晃は思った。
 テレビで特集されていた冷麺を見て、どうしても食べたくて堪らなくなったのはつい十分ほど前のことだった。財布だけをジャージのポケットに突っ込み、徒歩で数分程度の場所に建つコンビニエンスストアーへ買いに行くことにした。
 外は、別世界だった。熱気にあてられ、数分程度の道のりがやけに長く感じられた。
 コンビニへ行く途中にあるごみ収集場所まで歩いた時、集められている透明の袋達を見て、そういえば今日が燃えるゴミの日だったことを思い出した。
 部屋に帰ってもまだ覚えていたら出そう。
 そう思って通り過ぎようと思った時、それと目が、合った。
 透明なゴミ袋の間に押し込められるようにして、それはいた。深い土色をしたそれは、顔のようなものと胴体のようなものをもった、置き人形のようだった。
 深い土色の胴体には洗濯板のようなギザギザが刻まれており、気味が悪いほど長い腕は頭の上で交差している。目と思われるような二つの丸だけが透き通るようなブルーをしており、ゴミ袋に押しやられるようにそこに居ながらも、瞳だけはしっかりと晃を捉えているかのようだった。
 気味が悪いことこの上ない。
 早々に立ち去ろうと思った。しかし何故か、どうしても目を逸らすことが出来ないでいた。
 青い瞳に射すくめられたように立ち竦む晃の隣を、生ぬるい風が通り過ぎて行った。

 ※

 それは、武彦の目から見ても気味の悪い人形だった。何をモチーフにして作られたのか全く検討もつかないような歪な形のその人形は、依頼人がゴミ収集の日に拾って帰って来てしまったものらしかった。
「元々、体が強いタイプとかじゃないんですけど」
 応接ソファに座った上山晃の顔はぞっとするほど青白かった。今にも消え去りそうな声で、小さな呼吸を繰り返しながら話をしている。
 今にも彼が息を詰まらせて死んでしまうのではないかという一抹の不安を覚えながら、武彦は調査書にペンを走らせた。
「最近は、特に疲れてて」
 そう言った晃の顔は、疲れているなどという言葉では生ぬるいほど見ているだけで痛々しかった。目の下には隈が浮かび、頬はこけ、元々、華奢な体つきではあったのだろう。浮き上がった骨はすぐにでも折れてしまいそうなくらい、細かった。
「この人形を拾って帰って来た日からなんです。ちゃんと眠ってるつもりでも疲れがとれなくなったり、ちゃんと食べてるつもりでも、体重がどんどん減っていったり」
「どうしてこの人形を拾って帰ったりしたんだ」質問というよりは、窘めるような口調になっていた。彼の顔を見ていると、そういわずにはいられなかった。
「わかりません。目が……合って。薄気味悪いと思っているのに、どうしても持って帰らなければいけないような。そんな気になって」
「じゃあ。これを捨てようと思ったことは?」
「あります。持って帰ってすぐ、部屋の中にあることが怖くなって捨てに行きました」
「では何故ここにある」
「戻ってくるんです。いや、戻してしまうんです」
「自分で?」
「はい。捨てたのも自分なのに、どうしても捨ててはいけないような気になって、また戻してしまうんです」
 小さく溜め息をついた後、晃は骨の浮いた細い手で顔を覆う。「でももう。解放されたい……。だから何とか。この人形のこと、調べて貰えませんか。自分で捨てることもできないし。そういう呪いだとか何だとかの……関係の話も取り扱ってらっしゃるんでしょう? 助けて下さい。俺、このままだと死んでしまうような気するんです」
 確かに。と頷きそうになった。今この場で彼が死んだとしても、武彦は驚かないだろう。
「呪いかどうかは調査してみないと分からない」
 武彦は煙草の箱に手を伸ばしかけて、やめた。彼に有害な煙を吸わせたら、たちまちその場で息を詰まらせ死んでしまいそうな気がしたからだ。
「だからとにかく。調査してみようじゃないか」


---------------------------------------------------------



 平和なはずの日常に。
 それは突如として振ってきた。




「変な物が、見えて」
 加藤暢はたどたどしい口調でそんな言葉を言った。
 元々口が余り上手くない加藤のその説明は、重要なことがまだ省かれてある気がしてしまい、十ヶ崎正は彼の同居人に「どういう意味なんだい」と更に、聞いた。
 加藤の同居人である柏木永樹は、少し小首を傾げて「とにかく。そういうことみたいなんです」と言う。
 変な物とは一体何なのか。正には想像もつかなかった。
 柏木が入れてくれた紅茶に口をつけながら、窓の外を見る加藤の横顔に、正は視線を向ける。ぼんやりとした目で外を見つめる加藤の横顔に、何故だか正はぞっとする。
「とにかくね」柏木に向き直った。「個展は一ヵ月後だから。悠長にはやってられないんだ」
「ええ」脅迫されたかのように柏木は重く頷き、加藤の背中に控え目な視線を向けた。「でも。描くのは僕じゃないし……絵のことも僕には分からないから」
「そうは言ってもね。君は同居人である以上、彼の才能のことをもっとちゃんと考えてあげなければならない、と僕は思うんだ。スポーツ選手の妻が、夫の食事に気を使うようにね」
「え、ええ。分かってま」
「永樹には関係ありませんから」加藤が勢い込んで振り返る。「正さん。永樹はちゃんとしてくれてます。今はちょっと。調子が悪いだけなんです。僕なら、大丈夫です。ちゃんと間に合わせます」そう言った彼の顔は、少し反抗的にも見えた。
 芸術家のむら気というものか、と正は考える。そういえばちょうど、そういう時期なのかも知れない。何も手に入らなかった今までと違い、例えそれが微々たる物だったのだとしても、今の彼には手に入った物がある。第一、彼は少し前、絵を描くということの根本たるものを手に入れた。
 柏木永樹。
 この男の為に、彼は絵を描いていたと言っても過言ではない。
 それで満足なのかと正は思う。せっかくあんなにも人の心を動かすものを作りだせるのに。
 今、枯渇してしまっていいのか。と。
 けれど結局。
 選ぶのは彼自身なのだ。
 どんなに正が気を使ってやったって、加藤にその気がなければ意味がない。それに、一人の画家にずっと気を使ってやれるほど暇じゃないということも事実だ。
 勿体無いと叫んだって、絵を描けるのは彼なのであって自分じゃない。
 売り出して、人脈を作ってやれるのは自分だけれど、それを選ぶのは何処まで行っても彼自身なのだ。
 そこを間違え、信頼と強要を一つにしてしまってはいけない。
「まあ。なら、いいんだけどね」
 正は溜め息と共にスーツの内ポケットから、個展のチケットを二枚取り出しガラステーブルの上にゆっくりと置いた。
「個展のチケットとチラシが出来上がったんだ。それで、今から知り合いのところを回ろうと思ってたんだけれど。君も気分転換に外へ出てみないかい? どうだい、一緒に」
「いいじゃないか。行ってきなよ」
 力強く頷きながら柏木が促す。
「そう、ですね」
 歯切れ悪く加藤が頷いた。
 そして結局。
 そんな風に縛り付けることでしか、彼に価値を分からせてあげらない自分に少し、正は幻滅する。



「それにしても久しぶりねえ」
 ソファに寛げたシュライン・エマがウィン・ルクセンブルクの腹に目をやり続けた。
「おなか、だいぶ大きくなったんじゃない?」
 ブランドから漏れる光りがその横顔を照らし出している。草間興信所の応接ソファは見た目が余り良くないが、座り心地はとても良い。
 ウィンは目尻を下げ、腹を撫でる。
「七ヶ月目に入ったの。とっても安定しているのよ」
「なんだか。すっかり『女性』って顔ね」
「いやね。女性よ。アナタも、私も。今までもこれからもずっと」
 シュラインが眉を上げる。
「悟っちゃったみたいね。昔からそんな穏やかな顔、してたかしら」
 確かに。
 今までの自分がこんな穏やかな表情や声をしていたか、と問われれば小首を傾げるしかなかった。自分が女性にしては、勝気でクールな性格だったことは間違いない。女だ、ということを意識する機会も、それほど多いとは言えなかったかも知れない。
 女だから優しくして貰おうとか、女だから手加減して貰おうとか。そういう風に女を武器にして生きていこうとはどうやっても思えなかった。
 そんなウィンは、女に生まれたことを不運だと思ったことはなかったが、不便だと感じたことはある。
 そしてシュラインも、きっとそうだ。
 それなのに今は、女に生まれてきて良かったとしみじみ思う。
 生命の種は畑がなければ育たない。
 そのことを、とても光栄に思っている。
「してたわよ」
 ウィンは素っ気無く答えて、ソファに寛げる。
 重い腹が、何だか誇らしかった。
「ふうん」
 幸せなのねえ。とシュラインは口の中で小さく呟いた。
「それで? 今日はどうしてここに来たの」
「なんとなくよ」
「なんとなく?」
「この近所に最近オープンした、生鮮食料品の専門店、ご存知かしら?」
「ああ。前を通ったことはあるわ。何だか。安売りとは程遠い、高級な物ばかり置いてある店よね」そこでシュラインは苦笑する。「そんなの、手が出ないわ」
「そこにね。自分の好きな果物を搾ってジュースを作ってくれるテナントが入ってるんだけど。最近、そこを愛用してるの。今日はたまたまその帰りにね。何となく、顔を見ようと思って」
「そうだったの」
「ええ。そうなの。それに長い時間運転を続けてると疲れるし。丁度良い距離に建ってるのよね。ここって」
「あらまあ」シュラインが肩を竦める。「うちは。パーキングじゃないわよ」
「それで最近、調子はどうなの?」
「調子? そうねえ。ボチボチねえ」
 溜め息ともとれる息を含みながらシュラインが言った時、興信所の扉が開き「こんにちは」と声が振ってきた。
 ウィンは扉を振り返る。
 立っていたのは茶色い柔らかそうな髪をした眼鏡の青年だった。温和な雰囲気をストイックなスーツが包み、目鼻立ちはすっきりとしていた。その背後で、青白い顔をした長髪の青年がぬぼうという雰囲気で立っている。
「十ヶ崎さんと加藤くんじゃない」
「あ。来客中でしたか」
 十ヶ崎と呼ばれた青年は、ウィンに少しだけ目を馳せて足を止めた。
「いいえ。彼女はお客じゃないの。友人よ。久しぶりに逢ったから、ちょっとお話してただけなの」
「そうでしたか」
「どうしたの?」
「ああ」
 十ヶ崎は、手に持っていた紙切れをシュラインに向かい掲げる。
「いえ、これの」応接ソファの前まで足を進めたかと思うと、テーブルの上に紙を置いた。「お知らせに」
 それは、絵画個展のチラシだった。
「加藤君の個展、またやるのね」
 テーブルに置かれたチラシを手に取り、知り合いであるかのようにシュラインは言った。それから目を上げて、「わざわざありがとう」と言う。
「まあ。良かったら座って。ウィンさん。彼は、十ヶ崎正さん。画商を営んでらっしゃるのよ。それから奥の彼が、加藤暢くん。十ヶ崎さんイチオシの新人なの」
「そうだったの。ウィン・ルクセンブルクといいます。はじめまして」
「十ヶ崎正です。ルクセンブルク……ということは。ケーナズさんの、ご親戚の方ですか」
 シュラインが退いた場所に腰掛けながら、十ヶ崎が言う。その隣に加藤という青年が音もなく座った。
「兄を知ってらっしゃるの?」
「ああ。お兄様でしたか。いえ。興信所で何度かお見かけした程度なんですが」
「そうだったの。ケーナズは私の双子の兄なの」
「揃って、お美しいんですね」
 十ヶ崎の言葉に、キッチンから小さく笑い声が上がった。
「そう言って頂けて光栄ですけれど。人生の充実はまた、別のところにありますものね」
 シュラインが紅茶セットを持って戻ってくる。テーブルにそれらを並べ、持ち主不在の所長の椅子をデスクから引いた。
 その際、ちょうど椅子の尻を預ける部分に置かれてあった茶色い奇妙な人形を、ポンと所長のデスクに置いて座る。
「その、人生の充実と顔の話。私も少し前に何処かで言った気がするわ」
「美人な人はきっとそう思うんでしょう。しかし普通の女性は、美人ならば大抵のことが上手く行くと思いこんでいる……いただきます」
 十ヶ崎は飄々とした顔で言って、紅茶を口に運ぶ。
「そういえば。私もそんなように怒られたわね。でも本当、人生を生き抜くのに顔なんて全然必要じゃないじゃない。ねえ、ウィンさん」
「ええ」
 頷きながらウィンは、きっとシュラインの言う意味と自分の言う意味が全く異なっているということに気付いていた。
 シュラインは端から、自分が女性であること、目鼻立ちが整っていることなど、容姿や外見に関わる全てのことを必要ではないと思っているような口調である。
 しかしウィンは、美人である。ということが全く必要ない。とは思っていない。ただ、少なくとも、美人であるから人生が上手く行く。ということでもない、と思っているだけだ。
 兄にしても、妹の自分が言うのも何だがそれなりに整った容姿をしていると思う。
 けれど、手に出来ない物もあれば、打ちのめされることだってある。
「あの」
 ふっと訪れた沈黙の隙間を見つけ、加藤という青年がオズオズと口を挟んだ。
「その、人形」
 所長のデスクに置かれた人形を指差した。奇妙な形をした、茶色の人形だ。顔のようなものと胴体のようなものがついており、胴体の部分がキザキザと細かく波打っているのが何とも気味が悪い。
「ああ。あれ、ちょっと依頼でね」
「依頼、ですか」
「ええ。そうなのよ」
 シュラインは何故か、眉根を下げた。



 薄暗い室内に、薄い青色の光りが漂っている。その幻想的な景色は、深海にも似ていた。
 セレスティ・カーニンガムはその景色を味わうように視線を馳せた後、ゆっくりと瞳を閉じた。
 そして昨日、草間興信所で見たものを思い出していた。

×

 黒と赤茶色とが、マイルドに混ざり合った柔らかそうな髪の下に、骨の浮き出た青白い顔がある。
 寝息を立てるその顔は、安らかなはずなのに酷く苦しそうに見えた。
 応急処置として、自分の能力である水の力を使ってやりながら、どうしてこの青年はこんなことになってしまったのだろうかと、セレスティは考えていた。
 人とはこれほどまでに、痩せ細れるものなのだろうか、と。誰かに問わずにはいられないくらい、青年は痩せ細っていた。そして、人としての赤みというものが全くなかった。
 まるでもう、とっくに寿命は尽きているのに。
 まだ生かされているかのような。そんな顔だった。
 仰向けに眠る青年の腹の辺りで手を翳し、セレスティはゆったりと瞳を閉じる。
 掌からは優しい青の光りが出て、青年の体を包んでいった。
 暫くは水の守護の元、彼の血液は緩やかな温かさを持って体を駆け巡る。そうしてある程度の病ならば消毒され、死滅する。
 草間興信所に訪れたのは、ふとした空き時間の暇潰しとシュラインに本を借りる予定からだったが、事務所に入るなり血相を変えたシュラインに泣き付かれ、今はその住居スペースでこうして力を使っている。
 依頼を手伝う気でこなくとも。
 これも事件に巻き込まれたというのだろうか。
 セレスティは自嘲気味に小さく微笑む。
 この青年がどうしてこんなことになったのか。
 それはたぶん、シュラインが知っている。


「たぶん。彼があんな風になったのはこの人形のせいだと思うの」
 シュラインはそう言って、テーブルの上に一つの人形を置いた。
 セレスティはそれに視線を向けた瞬間に、禍々しい人形だ、と思った。
 深い土色の体に刻まれたギザギザが、何とも胸の内の嫌な部分を突いてくる。
「彼が言うには。この人形に何か、そうねえ。呪いとでも言うのかしら。そういうものがかかっていると」
 シュラインはそこまで説明してから軽く首を振った。
「私にも良く分からないから。上手く説明出来ないんだけれど。そういう、非科学的な物を信じる柄でもないし」
「なるほど。しかし、この人形の外見では、そういう可能性もないとは言い切れなくなりますね」
「そうなのよねえ。まあ、気味が悪いから悪者だとか、見た目が悪いからまずいとか。あんまりそういう決め付け、好きじゃないんだけれど」
「それでも、この人形のことも調べなくてはいけないのですね」
「ええ。そうなの」
「人形の中身や、外装に何か文字が刻まれていたということは?」
「うーん。中身まではちょっと……外は一通り見たつもりだけど」
 歯切れの悪いシュラインの言葉にセレスティは少し、笑ってしまう。
「これを壊してしまうのは、気味が悪いですか」
「呪いなんて信じてなくてもね。例えほんの少しの可能性でも、人は嫌な物なのよ」
「なるほど。そういうものですか」
 セレスティは小さく頷き、何気無く人形をその手に取った。
 その時だった。
 人形の体から、得体の知れない何かが流れ出し、自分の皮膚を舐めねぶられているような感触がした。それは何とも忌々しい感触だった。
 セレスティは思わず、手を広げ人形をその手から払い落とす。
「ん? どうしたの?」
「あ。いえ」小さく、首を振った。
 意図して触れていないのに。
 セレスティは内心でそんな言葉を呟く。
 それはまるで、人形自らが、その中にある情報をセレスティの中に流し込んだかのようだった。
 自ら? 情報を流し込む?
 頭の中で自問する。上手く理解する前に、突然全身が総毛立った。
 背筋に悪寒が走り、セレスティは思わず眉を顰めた。
「ちょ。ちょっと、どうしたの? 顔色が急に」
「大丈夫です」
 震える唇でなんとかそう言った。
「すみません」
 微かにそう呟くことしか出来なかった。

×

 あの時、確か黒いものが見えた。
 いや、黒しか見えなかったと言うべきか。
 セレスティはゆっくりと瞳を開ける。
 部屋は相変わらず真っ暗で、まるで水辺に差し込む光りのようにチラチラと青い光りが漂っている。それは、セレスティの持つ力の波動だった。
 あの日、草間興信所で人形の忌々しい力に触れてから体調が余り思わしくなく、こうして自室の奥に閉じこもっている。
 あの青年がどうなったのか。気にならないわけではなかったが、今の自分ではどうしてやることも出来なかった。
 革張りの椅子をユラユラと回転させながら、空を漂う光の筋を追う。
 その時ふと。
 紫檀のテーブルの上に置かれた水晶に、不穏な影が過った気がして、セレスティは視線を落とした。占いをする時に用いられる水晶で、人の顔ほどの大きさがある。
 立派な丸い水晶だった。
 その中央に、黒い稲妻のような光りが交差した。
 不穏な、影。
 これは。
 セレスティは体を正し、テーブルに向かう。
 あの人形と何か関係があるのだろうか。



「と。いうわけでね。とにかく今は、地道な作業をするしかないみたいなのよ。能力を持つ人が触れるとどうも……駄目みたいだし。私には良くわからないんだけど」
 シュラインは眉根を下げたまま、そう説明した。
「だからね。とりあえずはあの人形の写真を撮影して民俗学者の知り合いに送ってみようと思うのよ。それであの人形の正体が分かれば、何とか糸口が見えるだろうし。外見で判断してあげるのはかわいそうだけれど。この人形、どう見ても不穏だわ」
「でも。どうなのかしら」ウィンは、突然スケッチブックを開いた加藤の手元にチラリと視線をやってから、シュラインに向かい言った。「だいたい。人形を持ったからと言って体調を崩すなんて人、聞いたことがないわ」
「そうなんだけれど」シュラインは頬に手を当て、眉根を下げる。その横顔はまるで、母親のようだった。「セレスティさんのあんな顔みたの始めてだったし。彼は何もいわなかったけれど……そう、彼。依頼人の彼もね。医者に連れてってみたのよ。セレスティさんに逢わせる前に。けれど。栄養失調と言われただけで、その原因はとにかく不明。実は依頼があってから数日、彼をうちで預かってたんだけれど。その時もどんなに彼にご飯を食べさせてもね、体重は減る一方だったのよ」
「それで。今は? 帰したんですか? と。いうか。彼は、一人暮らしなんですか?」
「そう。一人暮らし。でもね。もちろん。私だって彼をずっとうちで面倒見てあげたかったけれど、ここは興信所だし、まあいろいろとバタバタする時もあるから。こちらから彼の家に通ってあげることにして、彼は家で休養するように。言ったの」
「なるほど。そうだったんですか」
「そうなのよ。やっかいよねえ。こういうのって」
 シュラインはほとほと困ったという顔をした。
「自分の身が危険に晒されるとかね。何か、人道的な。人を相手にした依頼なんかだったら、私もやりようがあるし、困ることもないんだけれど。こんな風に原因が分からないまま、人の命が削られて行くのは見てられないのよね」
「言いたいことは、分かるわ」
 ウィンはシュラインの意見に賛同する。
 子を身篭ってから。いや、それ以前からもそうだったが。もっとそれ以上に。
 自分の危険よりも人の危険を案じてしまうようになった。
 人を愛しいと思えば思うほど、人の命の重さがこの身に圧し掛かってくる。
「あのォ」
 口を開いたのは加藤だった。緊張感のない声だ。
「僕。この人形、知ってます」
「え」
 突然、脈絡もなく口を挟んだかと思うと、加藤はスケッチブックから顔を上げてもう一度言った。
「僕。この人形のこと、知っていますよ」
「ほ。本当かい、加藤くん」
「はい」
 飄々というより温度のない声で、加藤は言う。
「家にある資料に載ってたんじゃないかなあ。南アフリカあたりの少数民族が、儀式の時に使う人形だったと思いますよ、たぶん」
「そ。そ」
 シュラインが驚きに目を見張り、食いつきそうな勢いで加藤に詰め寄る。
「そ。その資料、アナタの家にあるのね」
「ええ。あります」
「家は、何処?」
 加藤は折り目正しく自分の住所を口にした。
「それって。晃君の家の近くだわ」
「晃?」
「ああ、依頼人。寝込んでる依頼人よ」
「なんだ。そうだったんですか」
「じゃあ」ウィンは言った。「私は兄に聞いてみましょうか」
「え? なにを?」
「サイコメトリーよ。何か分かることがあるかも知れないし」
「でも。それはセレスティさんが」
「彼と兄の能力とはまた全く違う物なのよ。あの人は人形に触れた。そうでしょう? 兄は、人に触れることが出来るわ。つまり、依頼人である晃君でしたっけ? 彼に触れて、その記憶や情報を引き出すことが出来る。眠っている間に感じたことなんかも。何か、参考になることがあるかも知れない。それにね。師匠としてあの人がどれだけ成長したかも見てみたい部分もあるの」
「眠っている間」シュラインは顎を摘みながら、小刻みに数回頷いた。「じゃ、じゃあ。一応、お願いしてみてくれる?」
「ええ。任せておいて。そうね……とりえあず」
 ウィンはそこで言葉を切り、加藤のスケッチブックに目をやった。「それ。下さらない?」
 指を差したそこには、禍々しい人形が如実に模写されていた。
 先程から彼がペンを走らせていたのはコレだったのだ。時間は短かったが、人形の出す禍々しさはびっくりするほど鮮明に表されており、その完成度にウィンはちょっとした悪戯を思い付いてしまう。
「はぁ、いいですけど」
 加藤は何でこんなもの、と言いたげにそのページを切り取りウィンに差し出した。
 それを受け取り眺める。
「本当に上手く描写してあるわ。この、胴体の部分の気持ち悪さなんて信じられないくらい」
「彼の描く絵画を見たら、その描写力にもっと驚くはずですよ」
 横から十ヶ崎が口を挟む。その時ばかりは眼鏡の奥のクールな瞳を、少年色に輝かせている彼は少し可愛らしかった。
 本当に、絵を愛しているんだな、と感じられる表情だった。
「そうね。今度、一度お伺いしてみようかしら。個展」
 社交辞令ではなく、本当に行ってもいいかな、という気になっていた。
 何かを模写するのが上手い人間ならば沢山居るのかも知れないけれど、何かを表すことが出来る人間はきっとそう多くない。
 絵画のことにそれほど詳しいわけではないウィンでも、それくらいのことは分かる。
「ええ。是非」十ヶ崎は優しい笑みを浮かべ頷いた。「彼の絵には。何かがあるんです。例えば……何かを描く時。それをそのまま描写、あるいは模写したのでは、人の感情を動かすことの出来る作品などにはならない。しかし、彼はね。そこにつけるべき+αが何なのか、ちゃんと知ってる人間です。人の心を動かす何かを、持っている人間なのですよ」
 ウィンは息ともつかぬ声をあげ、頷く。それから加藤に目を向け、最後にテーブルの上にあったチラシに目をやった。
「楽しみにしてるわ。個展」
「はい……ありがとうございます」
 素直に喜べばいいのかどうか分からないといった風に、加藤が会釈した。
「じゃあ。その為にも、依頼をさっさと解決しましょう!」
 強引とも思えるまとめ方をして、シュラインが手を叩く。
「後ほどここに集合ということで宜しいでしょうか。僕は彼、加藤くんの家に行き資料を持ってきます」
「じゃあ。私は晃君を連れてくるわね」
「私は兄のマンションに行く」
「よし」
 シュラインが立ち上がる。
「何かあったら、携帯に連絡し合いましょう」
 物事が進むと決まった時の彼女の表情は、とても生き生きしている。


002



 インターホンの音と共に現れた彼女は、ユウの顔を見て一瞬眉根を寄せ、けれどすぐに何故か苦笑と共に溜め息を吐き出し、「お邪魔するわね」と言って部屋に入り込んできた。
 誰なの? とも聞かれなかったので、ユウは自分の名前を名乗ることはおろか、相手の名前を聞くことすら出来ず、後に続き部屋に戻った。
 それが、数十分前のこと。
 今はリビングのソファで、ケーナズ・ルクセンブルクが眉を寄せていた。
 今までに見たことがない、深刻な横顔をしている。
 じっとガラステーブルの上に置かれた紙と睨めっこしていたかと思うと、「これを。私が、か?」掠れた声でやっとそう言った。
「そうよ。それを、アナタが」彼女は勝気な声で答えた。
 寸分迷わぬ、キッパリとした口調だった。
 ユウはケーナズの足元でじっと膝を抱えながら、彼女は一体誰なのだろう。ケーナズの何なのだろう、というようなことを脳の半分で考えている。
 そしてもう半分では、今話し合われている内容について考えている。
 聞くな、と言われたわけでも、あっちへ行け、と言われたわけでもないので、勝手に話は聞かせて貰っている。要約すればとにかく、ケーナズのサイコメトリーという能力を、草間興信所の調査依頼のために使ってくれないか、ということだ。
 しかし問題は、その対象にあった。
 サイコメトリーなんて能力は、テレビでしか見たことがないユウだったが、とにかく何となく凄い疲れそう、というイメージがある。さらにその対象となる物が、気味の悪い、しかも何だか曰くつきの、触っただけで呪われそうな人形だったのだ。そんな物、ケーナズに触らせたくもない。ましてや、イメージだが相手の記憶や何だを読み取るサイコメトリーなんて能力を使わせたいわけがない。
 そうは、思うのだが。
 口を出してもいい。という声もないので、ユウはとにかくじっと膝を抱えて見守るしかない。
「これは本当に、その……人形とやらを忠実に再現したものなんだろうな?」
「ええ。間違いないわ」
「何か……そうだな。オーバーに描かれているとか、だな」
「ないわ。そのままよ」
 ケーナズと同じ、ラメを散らしたかのように黄金に輝く、しっとりとした長い髪をした女性は、大きなお腹を撫でながら小さく笑った。
 その横顔は、上品で尚且つ圧倒的に美しい。色気なんて言葉は彼女にとって不釣合いで、とにかく圧倒的な「美」があるだけだ。
「もしかして、怯えてらっしゃるのかしら」
「呪われでもしたら、たまらんからな」ケーナズは素直に苦笑する。
「あら。お兄様の口からそんな言葉が出るだなんて。師匠として、幻滅致しますわ」
 彼女はフフフと笑う。
 ユウは思わず、素っ頓狂な声を上げてしまっていた。
「お。お兄さま?」
 それからハッとして口を押さえ「ごめん」と言う。
「別に謝ることじゃない」
 肩を竦めたケーナズが今更知ったのか、と言わんばかりの目を向けてきた。
「だって」
 聞けなかったんだもん。
 ユウは口ごもり、下を向く。
「彼女は私の双子の妹だ」
「ウィン・ルクセンブルクです」上品な仕草で小首を傾げ、彼女はやっと名前を名乗ってくれる。
「あ。えーっと。ユウで、す」
 フルネームで答えるべきなのか一瞬戸惑い、結局いつも呼ばれている名前を口に出してしまう。しかしすぐに悔やんだ。それはまるで愛称チックで、例えばペットであるとかそういうことが、妹さんにバレてしまってはどうなんだ、と考えたからだ。
 しかも。そもそも。
 こんな所に僕が居候していること自体、おかしいんじゃないか? 妹さんは、兄貴の趣味を知っているのか? いやっていうか。趣味も何も、それは僕が勝手に片想いしているだけなのだけれど。そういうことはバレちゃ駄目なんじゃないか?
「なんだ。お前は。急に小難しい顔をして」
「し。してないです、よ」
 ナハハハ、とユウは一人でただ笑う。
 それから、ケーナズのことを何と呼ぼう。自分とケーナズの関係を聞かれたらどう答えよう。などということを勝手に考え、脚本を作った。
 それを素早く完成させてから、手をパンと叩き合わせ場を仕切りなおす。
「あーっと。そ。そうだ! あー。せ。先輩。お。お茶でもいれますか!」
「先輩?」
「いやあ。居候させて貰っちゃってるからなあ。先輩には本当、いつも世話になってて。なんつーか、ほらあの。仕事の。そう! 仕事のね。アレなんですよ」
 ちょいと奥さん、と言わんばかりの手をウィンに向けた。
「仕事の、アレなの」
 ウィンはただ、ほんわかと笑う。
「そうなんですよ。仕事のナニが。アレで。もう。ハハハハハ」
「どうしたんだ、お前は」
 訝しげな顔をしてくるケーナズに、ユウは一生懸命ウインクを飛ばす。
「は?」
「いやあ。もう。先輩、こんなきれいな妹さん居るんだったら紹介して下さいよお。って、結婚してらっしゃるっつーの!」
 ケーナズの肩をバシンと叩きいなしておいてから、ユウはそそくさと立ち上がる。
 ついでに何となく、気味の悪い絵もササッと持ち去った。こんな物を置いたままで、ケーナズが変な目に合うことになったら嫌だからだ。
「先輩、キッチン借りますよ!」そしてそのまま、キッチンへと逃げ込んだ。
×
「意味がわからん」
 ケーナズが小首を傾げる。
 ウィンはただただ、笑いを噛み殺すのに苦労していた。あの、ユウという青年の気遣いが、余りに滑稽だったからだ。
 しかし、その滑稽さの中に兄に対する思い遣りや愛しさも溢れているように見えて。
 ウィンは少し、彼に同情する。
 部屋を訪れた当初は、また兄の悪い癖が出たのかと呆れたものだが。
 なんだ。
 彼が兄を愛しているのか。
「彼とは、何処で?」
「うん? ああ。何処というか。まあ。なんだな。付き纏われて、困ってるんだよ」
 小さく息を吐きながら、ケーナズは肩を竦める。
「妹の立場から言えば。そうね。何処の馬の骨とも分からない子達と、手当たり次第関係を結ばれるよりはよっぽど安心だわ」
「手当たり次第はないだろう。手当たり次第は」
「どうでしょう」
 素知らぬ顔をしてやって、ウィンはゆっくりと立ち上がる。
「おい」
「いいじゃない。少し、彼とお話したいの」
「勝手にしろ」
「言われなくても勝手にするわ」


 カウンターの前に立ち、何やらいそいそと茶を沸かす青年の後姿を盗み見る。
 彼の髪は、透き通るような茶色だった。染め直しを丁寧にしていないのか、根元の辺りが黒くなっており、あれではまるでプリンのようだ。
 無理矢理髪を脱色したり、ナチュラルな状態ではないものを、ウィンは余り好まない。そして、ケーナズもきっとそうだろう。
 ウィンとケーナズは、好みのタイプがとても似ている。男性においても女性においても、だ。そして二人とも。生まれたままの艶やかな、アジア人の黒髪が、好きだ。
 あんなプリン頭、絶対ゴメンだわ。
 その背中を観察しながら、ウィンは思う。
 華奢な背中のラインは悪くないと思う。体のサイズもきっとそんな悪くない。肌の色も良いだろう。
 けれど余り、頭や気の回る男は好きじゃない。
 他人の目から見てる時は、気の回る人も頭の回る人も悪くはないし、友人としてならきっと良い。けれど、それがどうにも恋人眼で見ると廃れてしまう。
 もっと無鉄砲で、もっとオバカで。もっとナチュラルな。
 きっとそういうものは「純真」という言葉と置き換えられるからだ、と思う。
 対して気が回る、頭が回るこということを、例えそれが優しさなのだとしても、心の何処かで「姑息」と捉えてしまうところがあるのだろう。
「ユウさん」
 突然、声を発してやるとその華奢な背中がビクリと震えた。
「あ。ああ。びっくりした。ウィンさん……な。なンすか?」
「私もお手伝いしようかと思って」
「あ、いえ。大丈夫ですよ。僕、一人で」
 苦笑する声を無視して、ウィンはユウの隣に立つ。
 それからそっと囁くように言った。
「兄ね。黒髪が好きなの」
 突然、何を言い出すんだとばかりにユウが目を見張る。その顔を今度はちゃんと見据えて、ウィンは言ってやる。
「兄は、黒髪が好きなのよ」
「は。はあ」
「わざわざ茶色に染める必要があるとは思えないわね」
「あの」
「何かしら」
「いえ……」
「ここに良く遊びに来る人。私の夫なのよ」
「え!」
「黒髪の可愛らしい人」
 そう言ってやると、ユウの眉間にギュッと皺が寄った。思い当たる人物が居るのだろう。
「兄の趣味は知っているわ。彼、私と全く同じ好みのタイプをしているの」
「そ。そう……なの?」
「そうなのよ」
「じゃ。じゃあ。僕の髪が黒になったら」
「そんな簡単な問題でもないけれど」ウィンは苦笑する。「そうねえ。兄は今少し、恋愛に臆病になっているんじゃないかしら」
「恋愛に、臆病」噛み締めるようにユウは呟く。
「だからね。そう、焦らないで良いんじゃないかしら」
「あの」
「何かしら?」
「あのね。僕、ちょっと考えたんよね。例えばさ。明日、死ぬかも知れない世の中じゃん、今って。っていうか、今だけじゃなくて、人なんて皆、いつ死ぬか分からないものじゃんさ」
「ええ。まあ、そうね」
「そんでね。だからこそ思ったんだけど」
「だから、焦るっていうことかしら?」
「ううん。逆でさ」
「逆?」
「例えば、明日死ぬかも知れない時にさ。あの人とケンカしたりさ。それから、そうだな。僕が我儘を言って彼を怒らせて、追い出されたりしたりしたらさ。そこで一緒に居れないまま、僕の人生終わっちゃうじゃん」
「それで?」
「だから。何か。結構最近は、このままでいいかなあ、って思うんだよね。まあ、不安だってあるんだけれど。今がさ。楽しかったらそれでいいんじゃん、みたいな感じで。ナニゲに過ぎてく時間みたいなさ。二人は誰の物でもないけどさ。まあ、それでも一緒に住めてンし。あの人は僕を抱かないけど。何か。一緒にテレビ見てる時とか。妙にイイ感じで。幸せ感じるのは僕の勝手だし。みたいな……なんか」
 ユウはそこでブルブルと首を振る。
「良くわかんないけど。まあ。とにかく。このままでいっかってこと」
 そう言ってはにかむように笑う。
「じゃあ」ウィンは少し気分が良くなり、人差し指をユウの前に立ててやる。「いいこと教えてあげるわね。まず、兄は納豆が大嫌いなの。それから。煽てると可愛いエプロンなんかをつけて、料理をしてくれちゃうわ」
「げえ! 料理ィ?」
「そう、料理。今度、見せてあげましょうか?」
「見たい〜! 納豆を前にして、ムカついてるあの人も見てみたいなあ」
「見せてあげるわ。簡単なんだから」
 ウィンはフフフと小さく笑い、パチンとウインクをしてやった。



×


 平和なはずの日常に。
 それは突如として振ってきた。

 そしてそれは準備を整え
 猛威をふるう。


×



003



 加藤は部屋に入るなり、以前住んでいた部屋よりも大きくなった収納スペースをひっくり返し、資料雑誌を持って、正に差し出した。
 それを受け取った正はその場でざっと中身に目を通す。確かに、草間興信所で見かけた人形が掲載されていた。
「なるほどね。これのことだろう?」
 フルカラーの写真が掲載されたA4版の雑誌の中ほどに、その人形の記載はあった。
 しかし良く良く見ると、草間興信所で見たものとは何かが少し、違う。
 何が、と問われれば分からないのだが、何かが違う。もしも、ここに載っているのが原型なのだとしたら、草間興信所で見たものはこれを模写しようとしてしきれていないような。
 そんな違和感が漂う。
 暫く写真をじっと見つめて、明らかに違う一つのことを発見した。
 瞳の色だ。
 草間興信所で見た人形は、気味が悪いほど澄んだ青だった。
 けれど写真に載っている幾つかの人形にはそんな瞳の色の物などない。
「奇妙だね、これは」正は呟いて目を上げる。「まあ。人形だからそれぞれ少しくらいは違うんだろうけど……」正は、思わずそこで言葉を切った。
 加藤の顔が、驚くほど青白くなっていたからだ。元々色白な方ではあったけれど、そんな次元では無く、真っ青だ。血の気がない。
「ど。どうしたんだい、きみ。顔色が悪いよ。突然」
「いや。なに、か」
 そこで加藤は言葉を切り、立ちくらみでもしたかのようにフラリとその場に崩れかけた。正は、咄嗟にその背中を支える。
 そして、ハッとした。
 何だ。
 彼は。
 こんなに細かっただろうか。
「暢!」
 奥の部屋から顔を出したらしい柏木が声を上げる。
「ど。どうし。どうしたんですか!」
「僕にも分からない」
 正は出来るだけ静かな口調で言う。
「わか。分からないって正さん!」
「落ち着いて下さい」
 落ち着いて。
 自分にも言い聞かす。
 突然倒れた加藤は、そのまま息も絶え絶えに体の力を抜いて行く。正の腕に加藤の体の重みが、いやそうは言ってもそれは、恐ろしいほど軽い。
「彼が」
「え?」
「彼が変な物を見始めたのは、何時のことなんだい?」
「そ。そんな。急に言われたって」
「君は見ていないのかい? その、変なものというのを」
「み。見ていません!」
 最早泣きそうな声で柏木が答える。正は加藤の体をゆっくりと床に下ろしそこへ横たえておいて、考えた。
 さきほどの。
 人形と何か関係が?
 そういえば、さっき。
 シュラインは依頼人の家がこの近所だとは言っていなかったか。
 加藤が一体、何を見たのか。それは加藤自身にしか分からない。
 その加藤がこの状態だ。一体、どうすれば。
 その時、耳を劈くような甲高い悲鳴が、部屋全体を突然満たし、正は驚いて柏木の顔を振り返る。その視線は下を向いていた。加藤を見ているのだ。
 加藤を、見て。
 視線を落とした正は、その光景に思わず息を飲む。その後、朝に食べた物が、胃から急激に這い上がってくるような強烈な吐き気に襲われた。
 気管が酸っぱい唾液で満たされる。
「なんて……ことだ」
 吐き気を飲み込みながら、正は掠れた声で呟く。
 加藤は。
 仰向けのまま白目を剥いて、口から緑色の液体とも固体ともつかないものを凄い勢いで吐き出していた。それは余りに見るに耐え難い、グロテスクな光景。
 一体、どうなってるんだ!
 気を確かに持て。
 正はパニックに陥りかける自分に渇を入れる。隣から強烈な嗚咽が聞こえ、柏木がダッと走り出した。トイレのドアが開閉する音がする。
 とにかくこのままでは。
 彼は、死んでしまうのではないか。
 この光景よりも何よりも、正はその思いつきに恐怖を感じた。



 何者かの声が頭の中で響いている。
 セレスティはこめかみを押さえながら、何かが圧し掛かっているかのように重い腕を挙げ紫檀のテーブルの上にある電話の受話器を取った。
「今すぐ車を回して下さい。今すぐです」
 電話の向こうに居る執事に早口で伝える。
 さきほど水晶の中で見えたことが本当ならば、なんと恐ろしいことだろう。
 セレスティはステッキで体を支えながら立ち上がり、自室を出る。その際、一瞬立ち止まり、引き返し、壁一面に張られたキャビネットの中から、長年使っていなかったそれを取り出した。
 そしてドアの前に立っていた使用人の一人である、浅海忠志という青年を呼びとめそれを持たせる。
「車まで、急いで下さい」
 普段には聞けないセレスティの声色に浅海が弾かれたように返事をする。脇に止めてあった車椅子乗り込んでやると、駆け足で駐車場へと向かって貰う。



 何が起こったかわからず、ウィンはただ立ち尽くすことしか出来なかった。
 突然バッタリと倒れたユウはそのまま息も荒い息を吐き出しながら、蹲るようにして「痛い、痛い」と呟きだした。
「なに、何が? どうしたの!」
 ウィンの声に気付いたのか、ケーナズがキッチンから顔を出す。
「どうしたんだ?」
 その声は暢気にも聞こえる。けれどすぐに、そこに寝そべるユウに気付いた。
「どうしたんだ」
 声が、ほんの少し上ずる。ケーナズがウィンの顔を見上げた。
「わ。私にもわからないの。突然、倒れて」
「突然、倒れた? な。何故だ」
「だから、分からないって」
 叫び声を上げそうになり、ウィンはハッと息を飲んだ。大声を上げることを躊躇ったわけじゃない。
 ただ。
 ただ、ユウの体中から。
 白いワイシャツから。
 真っ赤な物が滲み出してきたからだ。
 ウィンは思わず、後退る。
「見るな!」
 ケーナズの声が飛び、ウィンはハッと目を上げた。
「後を向いていろ!」
×
 荒い声でケーナズが言うと、ウィンはオズオズと身を翻した。その背中に向け、言う。
「そのまま。寝室か。この部屋を出るか」
「そんな」
「振り向くな!」
「だって」
「頼むから」
 ケーナズは出来るだけ落ち着いた声で言う。
「お前は妊婦だ。そんな体で、見るもんじゃない」

「寝室で。待つわ」
 表情は見えなかったが、気丈な声でウィンが言う。
「分かった。早く、行け」

 その背中が去って行くと同時に、ケーナズはもう一度ユウの蹲る体に視線を落とした。
 そしてその壮絶な景色に息を飲む。
 なんということだろう。
 ユウの細い体には、何時の間についたのか無数のミミズが這うかのように細い傷が幾つも走り、それは次第にピリピリと裂け、そこから血が滲み出る。
 きっと、ワイシャツの中でも同じことが起きているのだろう。
 白かったシャツは、今や真っ赤だ。
 男の自分でも、身を引き裂かれそうなのに。こんな姿。妊婦には見せられないに決まってる。
 ケーナズは、ただ呆然とその姿を見下ろしながら冷静でいろと自分に言い聞かし、眼鏡を押し上げる。
 本来ならばとっくに気を失っていてもおかしくはないのに、ユウはただずっと「痛い、よ。痛、い」と呻き続けるばかりだ。むしろ、気を失ってくれたらどんなにかいいだろうとも思う。
 その痛みを代わってやれることが出来たら、とも。
 想像は、分からないだけにこちらの痛みを増させる。
 なんということだろう。
 ケーナズは息を飲み、荒い息を吐き出す。
 どうしたら、いいんだ。



 その光景を見た瞬間、シュラインは軽い吐き気を感じた。
 黒い、あれは。
 ゴキブリだ。
 咄嗟にそんな事を考え、違うと首を振る。
 大の大人一人分ほどの細長い体。そこから伸びる細い六本の足、黒光りする体、背中のつくりなどはゴキブリに酷似しており、黒いネバネバした羽根が伸びている。
 なに。
 なになの……あれ、は。
 狭いアパートの玄関で、シュラインはもう一歩も動けず立ち竦む。
 逃げ出したい。逃げ出したい。逃げ出したい。
 頭の中でそんな言葉がグルグルと回る。
 けれど。
 あの子を助けなくっちゃ。
 思う脳とは裏腹に、体は完全に拒絶反応を起こしていた。全身が総毛立ち、吐き気がする。
 もちろんその生き物のせいもあるが、そこで行われている行為の光景が。
 ウッ。
 シュラインは思わず口を覆う。
 それは。
 昆虫が交尾する姿に似ている。けれどもっと卑猥な、グロテスクな光景だ。
 布団の上に横たわる上山晃の体の上に、黒いそれは覆いかぶさり、ネチネチと不気味な音を立てながら上下運動を繰り返す。
 何をしているのか全く分からない。
 分からないのに、いや、分からないからこそ、恐ろしい。
 どうして。
 一体、何が起き……て……。
 シュラインはその場に崩れ落ちそうになる。何とか堪えようと体の力を入れると、脇にあった下駄箱の上の消臭剤に手がぶつかった。
 あ、っと思う間もなくそれがガツンと地面に落ちる。
 凄まじい音だった。これほどまでに、心臓を圧迫する音があるのかと思うほど。

 ど。どうし。

 シュラインは、身を竦ませる。
 黒い生き物が、まるでスローモーションでもかけているかのように、ゆっくりと振り返った。
 目が。
 合った。
 目だけは黒い光りの中でぞっとするほど澄んだ青だった。

 シュラインは後退り、何とかドアノブに手を引っ掛けて立ち上がろうと試みる。足が戦慄く。
 しっかりしなさい。
 しっかりするのよ。
 自分に言い聞かせ、ドアノブに手を掛ける。使い物にならないくらい震えた全身に渇を入れるも、思うようにならない。
 振り返れば黒いそれが、ゆっくりと歩み寄って来ている。
 仰向けに寝転がる上山晃の横顔だけが見える。顔には、特に変化は見られない。
 こんな時まで自分は、依頼人の心配が出来るのか。
 自分が。こんなに。
 ピンチだって時に。
 壁に背をつけたまま、シュラインはふと体中から震えが引いて行くのを感じた。だからといって体に力が入るわけではない。
 むしろ、逆。
 ああ。ショートしたんだ。とぼんやり、思う。
 その時。
 突然扉が背後から、開いた。
 シュラインはそのままゴロンと表へ転がり出す。
 何が何だか分からないまま、景色がガッと上下した。
 次に見えたのは。
「た。武彦さ」
 草間、武彦の顔である。
「だらしがないなあ」
 一瞬。
 その間延びした声を、たまらなく愛しいと感じた。
「さあ。行くぞ」
 強引に手を引かれる。
 どうしてこういう時、人は振り返ってしまうのだろうか。
 黒いものは、例に漏れず追いかけて来ている。
 いつか見た、アニメ映画のワンシーンをふと思い出した。
「この近くに空き地がある。とりあえずそこまで走るんだ」
 武彦に手を引かれるまま、ただシュラインは走った。



 空き地には、ケーナズ、セレスティ、十ヶ崎の姿があった。
 シュラインは半ば放り出されるように武彦の後ろへと投げられた。
 地面に倒れ込み、あちらこちらをすりむきながらも現金だわ。と思う。
 現金だわ、アタシ。今なら、闘えそう。
 前に立ちはだかる三人の男の背中を見ていると、先ほどまで腰を抜かしていたとは自分でも思えないほど、私も闘うんだから。なんてことを思ってしまう。
 車椅子に乗ったセレスティの横まではいつくばって行き「どういうことなの」と説明を求める。
 しかし「それは後でご説明しましょう」とかわされた。
「なんだ。あれ……は」
 空き地に入って来た黒いそれを見て、半ば呆れるような声で呟いたのはケーナズだ。
 隣を見合わせると、武彦が肩を竦めている。
 黒いものは、先程部屋で見た時よりも少し大きくなっているように見えた。
「あれを。倒せばいいんだな」
 ケーナズが振り返り、セレスティに言う。
「そうです」と頷いたのを見て。真っ先に飛び掛っていったのもケーナズだった。
 サバイバルを片手に黒いものに向かっていく。
 けれど黒いものは、羽根を広げビョンと上に跳ぶ。
 やっぱり! ゴキブリ! と頭を抱えそうになりながらも、シュラインはその姿を少し間抜けだとも感じていた。
 チッと舌打ちしたケーナズが、それを見上げ着地を見極めている。
 彼の足先から火の粉のような物が飛んだかと思うと、彼は目には見えない速さで場所を移動した。そして見事、黒いものを羽先をそのナイフで切りつける。
 緑色の液体が飛び散り、ケーナズの体を濡らす。
 また、チッと舌打ちし、ついでによろよろとした黒いものをケーナズは蹴り上げ、そしてその細い足を踏みつけた。
 じわじわ、力を込めている。
 ブチッという嫌な音の後、それの足が千切れる。
「本来なら。お前の体を傷だらけにしてやりたいところだ。どうやらお前のせいで、うちのペットが負傷したらしいからな」
 残忍とも言える美しい笑顔で黒いそれを踏みつけるケーナズをよそに「十ヶ崎さん」と隣から声がした。声を発したのはセレスティだった。
「では。これを」
 今まで膝に抱えていたらしいそれは、弓道で用いる弓のようなものだった。しかし一歩間違えればハープにも見えなくない。それは一重に、水色のクリスタルのように透けたその素材のせいだろう。
 ただ見れば、とても美しい。
 十ヶ崎は頷きそれをセレスティから受け取ると、まるでそこに見えない矢があるかのように構え黒いものに向け弦を引いた。
「あれは……何なの」
「そうですねえ。私が。人魚であることはご存知でしょう?」
「ええ」
 頷きながらシュラインは、十ヶ崎の後姿に視線を馳せた。
 その弓を構える姿勢は美しいとしかいいようがない。シュンと伸びた背筋、引かれる腕の角度、顎の位置。何を取ってもあれは、素人の構えでは到底ない。
「仄暗い海の底には。この人間の世と変わらないくらい。いえ、それ以上に。獰猛な生き物も潜んでいるのですよ。我々人魚を襲う生き物も、そして共存できる生き物も。そんな時代から私が大切に持っている、まあ。家宝みたいな物です」
「そう……なの。あれは。大丈夫なの。その。普通の人が使っても? それよりもあれに、何というか。効くのかしら?」
「殺虫剤のように?」
「え!」
 思わず、セレスティを振り返る。
 その横顔は、いつものように朗らかにただ微笑んでいた。
「私の顔よりも、向こうを見ていた方が面白いと思いますよ」
「え、ええ」
 促されるようにして視線を戻す。
 ケーナズがピョンと飛びのいたかと思うと。
 十ヶ崎が弦を持っていた妻手を颯爽と放した。



004


「え。エイリアン?」
 シュラインは思わず、声を裏返らせる。
「あ。あれが?」
「あれが、です。まあ。正式にはパラサイトエイリアンですが」
 セレスティが平然とした顔で頷いた。
「ことの始まりはあの人形です」
 そこで十ヶ崎が、加藤の家から持ち出したという資料集を広げた。
 そこに、草間興信所にあった人形と同じ型の人形の写真が掲載されている。雑誌を覗き込んですぐ、シュラインはふと違和感を感じた。
 ん?
「良く見てみて下さい。何か、あの人形と微妙に違うと思いませんか」
「そうねえ。何がと言われても分からないんだけれど。何だか、微妙に……」
「僕は。これを見た瞬間。あの人形は何かを模写しようとして失敗した何かのように感じました」
「うん。確かに。それは上手い表現だわ」
「どういった経緯でこの地まで辿り着いたのかは分かりませんが。あれは擬態能力を持ったパラサイトエイリアンです。何故あんなものに化けようかと思ったかまでは分かりませんけれど。とにかく。あの生物の場合。人の生気を吸い生きながらえる人種であることは間違いありません。私があの人形に触れた時、感じた不快感はそのせいだったんですよ。そして更に、あの生物は寄生する。つまり、人の生気を吸い生きながらえ、更に寄生することも出来る、という。最悪のパターンを持っていたんですよ。もしもそれらが全て成功すれば、人の体を持った人の生気を吸うものが誕生してしまうわけです。共食いするかのような光景です。ぞっとしますね。そして。寄生に失敗した場合は、今回引き起こしたような害を人体に与えます」
「今回引きこした?」
 シュラインが小首を傾げると、ソファで気だるそうに額を押さえていたウィンがやっと口を開く。
「いろいろなところでそれぞれドラマがおきていたのよ」
「ド、ラマ?」そのことに対しての疑問は解けないが、ケーナズの部屋の広いリビングに眠る男が晃以外にあと三人も居ることだけは納得できた。とにかく、何らかのトラブルがあったということだろう。
「依頼人の上山晃さんですか。彼の場合は。寄生ではなく生気を吸い取られていましたので、回復するまで時間がかかるかとは思います」
「コイツは、どうなる」
 リビングの床に座り込み、横たわる男達を眺めていたケーナズが声を上げる。
「まあ。三日もあれば全開するでしょう。寄生によって出来た傷は、本体が死んだ瞬間に癒えていますから」
「そうか」
 ケーナズが視線を上げ、壁際に押し黙ったまま立っていた武彦に向かい苦笑した。
「でも。どうして彼等だったんでしょうね」
 十ヶ崎が迷惑だった、と言わんばかりに眉を寄せる。
「どういう、意味?」
「南アフリカの物を擬態するくらいなら、その辺りで手を打ってくれれば良かったのに、と言いたいんだよな。十ヶ崎は」
 武彦にズバリと言われ、いや、それもどうだろう、と言った風に十ヶ崎が苦笑する。正義感の強い彼らしい。
「たぶん。何かしらの法則があったんでしょう」
「なんらかの、法則? それは、何なんですか?」
「さあ。そこまでは」
 その瞬間、セレスティは少しだけ唇をつり上げた。
 もしかして、知ってる?
 そう思ったシュラインの心を見透かしたかのように。
「世の中には知らないでいた方がいいこともありますよ」
 セレスティは、やんわりとそう言った。










END










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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 0086/シュライン・エマ (しゅらいん・えま)/女性/26歳/翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員】
【整理番号 3419/十ヶ崎・正 (じゅうがさき・ただし)/男性/27歳/美術館オーナー兼仲介業】
【整理番号 1883/セレスティ・カーニンガム (せれすてぃ・かーにんがむ)/男性/725歳/財閥総帥・占い師・水霊使い】
【整理番号 1588/ウィン・ルクセンブルク (うぃん・るくせんぶるく)/女性/25歳/実業家兼大学生】
【整理番号 1481/ケーナズ・ルクセンブルク (けーなず・るくせんぶるく)/男性/25歳/製薬会社研究員(諜報員)】



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■         ライター通信          ■
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こんにちは。
 彼は何を拾ったの にご参加頂きまして、まことにありがとう御座いました。
 ご購入下さった皆様と
 素晴らしいプレイングやPCをお任せ下さった皆様の懐の深さに感謝致します。


 それではまた。何処かでお逢い出来ることを祈りつつ。
                       感謝△和  下田マサル