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<東京怪談ウェブゲーム 界鏡現象〜異界〜>


秋篠神社奇譚 〜付喪神〜

------<オープニング>--------------------------------------

「はぁ、いくら害はないといってもやっぱりこれは困るよね……。」

 神社の境内を見ながら秋篠宮・静奈(あきしのみや・しずな)はそっとつぶやいた。
彼女の巫女の勤める秋篠神社の境内には人の姿は巫女装束に身を包んでため息をついている綺麗な銀髪の少女、静奈だけだったが何故かその周りからやたらとやかましい音が聞こえていた。

 神社の境内は、人とは異なるどこか愛くるしくもある不思議な者達の遊び場となっていた。

「隆美さんの義妹さんの所為だっていうのはわかるんだけど、まさか人に害をなしていない付喪神達を殺すっていうのもなんだか寝覚めが悪いしね……。
それにおじいちゃんから硬く戒められてるし、かといってボクの力じゃ彼らをあっさり殺してしまうし……。」

 そう言って事の起こりを静奈は思い浮かべた。
それはこの神社と懇意にしている古本屋にとある少女が住まうことから始まった。
その少女は元吸血鬼で現在は一人の人間として生活していた。
そして、この神社の特殊な空気のためか少女の本来持つべき力の為か、それは判らないが彼女がここにくる度に付喪神の類を呼び寄せる結果となっていった。

 だがあくまでもここは神社である。
いくら人に危害が出ていないとはいえ、彼らを居させるにはいささか問題があった。

 静奈は神社の方を向きながら、中に安置してある神器を思い浮かべる。
秋篠神社に代々伝わる「神弓【刹魔】」はここにいる付喪神達を追い払うだけの為には力が強すぎた。
ただ神社という場所だから、というだけでいる物たちを追い出そうとするだけでその力は余りにも強すぎた。

「仕方ない、ボクの力じゃどうしようもないし、協力してくれる人を探そう。
追い払ってさえくれればあとはボクが結界を強くすれば良いだけなんだし。」

 そう言って静奈は立ち上がる。

そしてその数日後、秋篠神社の前には下のような張り紙がしてあった。


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求む!協力者。

付喪神を追い払ってくれる人を募集します。
滅するのではなく追い払う仕事です。
やり方は自由、報酬は応相談。

                                  秋篠神社

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------<秋篠神社奇譚 〜付喪神〜>--------------------------------------

 休日の秋篠神社の境内には数人の張り紙を見て集まってきていた人影があった。
その場に立っていたのは守崎啓斗(もりさき・けいと)、呂洞賓(りょ・どうひん)モーリス・ラジアル、海原みなも(うなはら・−)の4人であった。

 待ってる間に周りを楽しそうに動き回る付喪神達を見ながら啓斗は顎に手を当ててぽつりと呟く。

「滅するのではなく本当に追い払うだけで良いんだな?
…でも追い払うというのは付喪神の本質を考えると、少し考える余地があるかな。」

その啓斗の呟きを洞賓が聞き止める。

「確かにキミのいう通りだね。
まぁ、その点に関してはいざとなれば俺が何とかできるから、心配するなよ。」

 そういって洞賓は啓斗の肩にそっと手を置く。
そして4人がその場で指定された時刻になるまで待っていると奥から一人の巫女装束に身を包んだ少女がゆっくりと歩いてきた。

「皆さん表の張り紙を見て来て下さった方達でしょうか?
ボク……じゃない私はこの神社で巫女を勤めさせていただいている、秋篠宮静奈(あきしのみや・しずな)といいます。
皆さん、本日はお集まり頂きありがとうございます。張り紙にもありました通り、この境内にいる付喪神さん達をここから出て行ってもらうのに手伝ってもらおうと思ってきていただきました。
ただこの付喪神さん達も何か悪い事をしたとかそういう訳ではありませんので、できるだけ穏便に事を収めたかったので、皆さんにお願いしようと思いました。
よろしくお願いします、私が手伝える事があれば手伝いますし、ここにある物で使いたい物があれば言ってください、よほどの物でなければお貸しできますので。」

 静奈はそう説明し、集まった四人の事をじっと見つめる。

「何か、判らない事があったら言ってくださいね、それから一応この書類に皆さんの名前を記入してください。

 そう言って静奈がクリップボードに挟まった紙を皆に手渡していく。
合間合間に皆それぞれ簡単な自己紹介をしていく。

「あ、私は海原みなもといいますが、あの境内のお水使わせていただいても宜しいでしょうか?先ほどここにあるものは使って良いとの事だったので…。
あと報酬の件なのですが、その…静奈さんが来ているものをお古で良いので頂けたらと思いまして、あ、頂けなくても一回だけでも着させて頂けたらとおもいまして…。」
「あなたが静奈さんですか、いつも紗霧さんからお話は聞いてますよ。
話に聞いていた通り可愛い方ですね。
あ、私はモーリス・ラジアルと申します、この仕事が終わったら是非あなたと一緒にお茶でも頂きたいですね。」
「俺は守崎啓斗だ。この仕事に関してなんだが、付喪神ってのは本来誰かに使って貰いたいから存在するものだ。
だから、無理して追い払うのではなく、何かしら別の方法をとるのも良いんじゃないか?と思うんだが、どうだ?」
「あ〜そうそう、そこの啓斗君がいう通り付喪神っていうのは本来悪いものじゃないから、って君なら知ってるか。
あ、俺は呂洞賓だよ、まぁ、しがない術者ってところかな。」

 そう言って静奈がクリップボードに挟まった紙を皆に手渡し、四人が記入した紙を静奈に渡すその合間に皆それぞれ簡単な自己紹介や自分の希望などを述べていった。

 そして皆の自己紹介などが終わった後、付喪神達を実際にどうするかの簡単な話し合いが行われた。

「まずは、どうやって集めるか、と集めた後どうするかなんだけど、私は付喪神達を捕まえる事のできる檻を作る事ができるからそこに集めれば良いと思うのだけど、そこでどうやって集めるか、なんだけど…。」

 モーリスはそこまで言って、みなもの方をそっと見る。
それは今までも何回も一緒に不可思議な事件と関わった事がある二人だった為に、それぞれが考えてる事がなんとなくだが予想がついていたからだった。
そして、モーリスの言葉を受ける様にみなもが言葉を続ける。

「私はそこにある水を使って、付喪神さん達を傷つけずにモーリスさんの作った檻の中へ追い込む事ができると思うんです、水をあてたら不味そうなものには出来ないと思うのですが、追い込むのは私に任せていただけないでしょうか?」

 二人は皆に自分達の考えている付喪神達の捕まえ方を説明する。
それを聞いた静奈は少し疑問に思った様子で二人に問いかける。

「それじゃ水で追い払えないものはどうするんですか?本の付喪神さんとか?」
「それは俺が説得してみるよ、まがりなりにも付喪神達だから聞く耳を持っているだろうし…。」
「もしそれでもいう事聞かないようだったら、私が何とかしますよ。」

 静奈の問いかけに対して啓斗とモーリスが順々に答える。
そして今まで黙っていた洞賓がそこで声を上げる。

「それじゃ捕まえた付喪神達は、ここに参拝に来る人たちに話して引き取ってもらえば良いと思うし、ダメだったこは俺が何とかするよ。
1柱か2柱くらいならそこにいる啓斗が引き取ってくれるそうだしね。」
「そうですね、それは丁度良いかもしれないですね、ちゃんと集めておけるならボクも問題ないと思うし…。」

 静奈もその意見に対しうなずいて賛成をし、周りを見渡す。

「それじゃ早速お願いしようかな。
ボク…じゃない私は部屋の方でやらなきゃいけない事があるので、何かあったら呼んで下さいね。」

 静奈はそういってゆっくりと建物の中に戻っていく。
後に残された四人は頼まれた仕事のためにそれぞれ動き始めた。


****

 そして数時間後、四人の努力の結果モーリスの作った檻の中に見事に追い込まれ、そのモーリスにお説教されている付喪神達がいた。

 皆に飲んで貰う為のお茶を持って様子を見に来た静奈はその様子を見て、ほっとしたように皆に労いとお礼の言葉をかける。

「皆さん、おつかれ様です。
付喪神さん達を傷つけずに集める事が出来たんですね、ありがとう。
神社としてもボク個人としてもお礼を言わせて貰います。」

 静奈は皆にそう言って頭をそっと下げる。

「それじゃ、あとはこの付喪神さん達をこれからどうするか、ですね。
数日間ここにおいておいて、引き取ってくれる人を探して見つからなかった時はまたその時考えさせていただきますね。」

 静奈がそう皆にそう話す事で、一応この依頼は終わる事となった。


****

 そして数時間後、四人の努力の結果モーリスの作った檻の中に見事に追い込まれ、そのモーリスにお説教されている付喪神達がいた。

 皆に飲んで貰う為のお茶を持って様子を見に来た静奈はその様子を見て、ほっとしたように皆に労いとお礼の言葉をかける。

「皆さん、おつかれ様です。
付喪神さん達を傷つけずに集める事が出来たんですね、ありがとう。
神社としてもボク個人としてもお礼を言わせて貰います。」

 静奈は皆にそう言って頭をそっと下げる。

「それじゃ、あとはこの付喪神さん達をこれからどうするか、ですね。
数日間ここにおいておいて、引き取ってくれる人を探して見つからなかった時はまたその時考えさせていただきますね。」

 静奈がそう皆にそう話す事で、一応この依頼は終わる事となった。


****

「あの報酬の件なんですが、さっきも言ったんですけど、お金ではなくて静奈さんのお古の巫女装束をいただけないかな?って…、思うんですけどダメでしょうか?」
「え?本当にこの緋袴を?」

 静奈が驚いたように返事をする。
そしてしばらく考えていた静奈をみてみなもが慌てた様に手をばたばたと振る。

「あ、いただけなくても、その一回だけで良いので着させて頂けないかな?って…。」
「そういう事なら……ちょっと待ってね。」

そう言って静奈は奥に入って行く。
そして戻ってきた静奈は一着の真新しい緋袴を持ってくる。

「ちょっと私が来ているのとは違うんだけど、忙しい時のお手伝いさん用のやつなら着ても良いと思うからこれで良いなら着させてあげられますよ。」
「本当ですか?それで良いので是非着させてください。」

 みなもは嬉しそうに返事をする。

「それじゃ、こっちに着て、着替える所に案内するから。」
「はいっ」

 そう言って歩き始めた静奈にみなもは嬉しそうについて行く。
そしてしばらくして、巫女装束に身を包んだみなもが嬉しそうに出てきた。

「あ、静奈さんできたら記念撮影とかお願いできませんか?」

 そう言って、みなもが鞄から取り出した携帯用のカメラを静奈は受け取ると、神社を背景にカメラを構える。

「それじゃ撮りますね、良いですか?」
「うん、お願いします、静奈さん。」

……
………
…………パシャ!

 小気味の良いシャッター音が聞こえた後、嬉しそうにカメラを受け取ったみなもは、ふたたび奥で自分の服に着替えて戻ってきた。

「それじゃ静奈さん、今日は色々楽しかったです、また今度何かあったらお手伝いしますね。」

 そう言って静奈に挨拶をするとみなもは満足そうな笑みを浮かべて神社の境内の階段を降りていった。

Fin


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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≪PC≫
■ モーリス・ラジアル
整理番号:2318 性別:男 年齢:527
職業:ガードナー・医師・調和者

■ 海原・みなも
整理番号:1252 性別:女 年齢:13
職業:中学生

■ 守崎・啓斗
整理番号:0554 性別:男 年齢:17
職業:高校生(忍)

■ 呂・洞賓
整理番号:3702 性別:男 年齢:999
職業:神仙・八仙

≪NPC≫
■ 秋篠宮・静奈
職業:女子高校生兼巫女


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■         ライター通信          ■
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 どうもこん○○わ、ライターの藤杜錬です。
この度は『秋篠神社奇譚 〜付喪神〜』にご参加頂きありがとうございます。
いつも依頼へのご参加ありがとうございます。
巫女装束はさすがに差し上げる訳にはいかないと判断させて頂いたのでこういう形になりました。
ご希望に添えず申し訳ありません。
一応秋篠神社は霊力とかそういうものを大事にしている神社という設定なので。
今までの文月堂ともども秋篠神社の方も楽しんでいただけたら、と思います。
もしよければこれからもよろしくお願いいたします。
それではご参加ありがとうございました。

2004.09.07
Written by Ren Fujimori