 |
納涼肝試し 部活ド魂場
●男の園
そこでは幾人もの仮面を男達が息を潜めていた。
デストロイヤーマスクなのが気になるが、そこは置いておくとして、そこはかとなく漂う腐臭に近い香りが漂っている。腐った雑巾に似た匂いからすると、剣道部か柔道部の部室らしい。
男達は何も言わずに、リーダーらしき男の言葉を心待ちにしていた。
「それでは…毎年恒例のド魂場(ドコンジョー)を行う事を決定する」
「おおう！」
周囲にいた男達は感嘆の声を上げた。
「生意気な下級生に心置きなく粛清と言う名の愛の鉄鎚を下すのだ！」
下級生に愛を送る儀式…嗚呼、その名も『ド魂場』！
ここは数々の試練を乗り越えて生きていかなければならない弱肉強食サバイバル都市――TOKYO。そこで生きていくために新兵達を鍛え上げる、まさしく愛の儀式なのだ。
しかし、アウトドロッパーは何処にでも居るもので、歓喜に満ち溢れながらリーダーを見つめていた男達の中から、こんな意見が聞こえてきた。
「ちゅーかさ…ただの肝試しジャン☆」
「貴ッ様ぁ！ 言うに事欠いて『肝試しジャン☆』…だとぉぅ！！」
「死だ。死をもって贖え！」
「いや、恐怖だ！ こいつに人生最大の恐怖を！」
リーダーは両手を上げ、皆を制した。
「まぁ、待て…制裁などはこの際如何でもいい。学園祭に向けて我々、闇の執行部は活動していかなければならん。そこでだ、我々は合法的な手段を持って『生徒達の行動をまとめたい』と思う…如何かな？」
「賛成!!」
「やるぞ、俺はやるぞぉおお!!」
「執行部長閣下に敬礼！」
男達は次々と立ち上がり、敬礼をする。
「号令はただひとーつ！ サーチ・アンド、ド・魂・場ぉ〜〜〜〜！」
夏の空の下、熱き魂を持った男達が納涼肝試しのために動き始めようとしていた。
●きもだめしデート？
「へえ…今年もやるのか。肝試し。ま、今年は楽しめそうだな」
不城・鋼は掲示板に張ってあるチラシを見て思った。
表向きは普通の肝試しなのだが、裏は部活の統率を行う闇の執行部の強化訓練ｏｒ新人虐めなのである。無論、その中には全ての部活と執行部自身も入っていた。執行部は番長ではないので戦った事は無かったが気になる存在ではある。
去年は肝試しの日に他校の番長と一晩かけての決闘をしていた為、参加する事ができなかった。今年はその分まで楽しんでやろうと鋼は思っていた。
「一人で行くのもつまらないなあ…誰かいねぇかな。…うーん」
「はがねくーん、いっしょにいこうよー」
そこに取りまく配下(不城鋼私設ファンクラブ)の一人が言った。
「そうだなぁ〜」
気の無い返事を返す、鋼。
ふと飛鳥桜華の事を思い出し、鋼は一緒に参加できないかと学校内をを見て回った。ファンクラブも、勿論、ついてまわる。
そして、下校中の生徒の中から探そうとしたが見つからない。
逆に、人並みも我関せずで帰宅しようと階段を降りている途中の飛鳥・桜華が鋼を発見して呼んできた。
「はがねーん」
桜華はファンクラブどもには見向きもせず、鋼のもとに歩いてくる。ファンクラブどもはそれが気に入らないようで、桜華の方を睨んでいた。
「さくら、今年も肝試しやるんだってよ」
「えー、そうなの？」
ニッコリと可愛らしく笑って、桜華は言った。
「あぁ、お前も行かないか？」
「うーん、はがねんが行くなら行くわ〜」
「じゃぁ、一階からいくか…」
取り合えず一階の教室から回る。下校時間と共に肝試しははじまっているのだ。巻き込まれたくない生徒たちはそそくさと帰っていった。
鋼たちは皆で一階を回る。だが、いつものごとこファンクラブのメンバーに囲まれ、桜華と二人で回ることができなかった。
そして、鋼には気がつかれないよう、桜華は細心の注意を払って、取り巻きににこやかな笑顔と共に『あんた達消えなさい』オーラを発した。
執念ともいえる気迫に押されたファン達はそっと鋼たちから離れ、ダッシュで学校から出て行った。鋼の傍にいれば守ってもらえるだろうが、離れてしまっては肝試しの要員が自分たちを脅かしかねない。ファンクラブの子たちは鋼から離れると一目散に逃げていった。
追い払った後は二人っきり。
出てくるお化けに可憐で可愛い女の子の反応をして、鋼にしがみ付き、デート気分を満喫していた。
●腕白弟々
自分の力を実戦で試す機会としてド魂場肝試しに参加した梅・黒龍は、お化け要員と対峙していた。
「食らえ、龍座ーっ！」
「ぎゃぁぁぁぁ！」
黒龍はふりがざした青龍刀を下ろす。
相手は辛うじて剣を避けたが、流石に炎までは避けられず直撃をくらっている。
この肝試しに脅かす側に参加している人間の中で一番強いのを倒し、下級生と見下している上級生をぎゃふんと言わせることが目的なのだ。
「さあ言って貰おうか、ぎゃふんと」
「ぎゃ…ぎゃふん…？」
「よしっ！」
黒龍は満足そうに笑うと、えへんと胸を反らせた。辺りには黒龍によって倒された執行部の男達が倒れている。
満足した黒龍は教室を出ると、丁度、隣の教室から出てきた鋼たちに出逢った。
「あ、貴様…執行部の連中だな！」
「へ？」
言われた事の意味が分からない鋼は目を瞬かせる。自分よりも小さい黒龍を見下ろした。
「なんだぁ…お前」
「何…ボクを見下ろすなー！」
「はぁ？」
「うるさい！ さあ言って貰おうか、ぎゃふんと。…えーい！」
黒龍は見下ろされるのが嫌だったようで、よく確かめもせずに鋼に飛び掛る。
「ちっ…しかたねーなぁ…。四次元流格闘術…蛟竜雷閃脚ぅッ!!!!」
鋼は全闘気を足に集め、蹴り上げるような回し蹴りを放った。
「ぎゃぁっ…」
「おりゃおりゃおりゃ〜〜〜〜〜〜ッ！」
「ぎゃふん！」
蹴り上げられ、後ろに吹っ飛んだ黒龍は壁に激突し、気を失ってしまった。
ぎゃふんと言わせるつもりが、言わせられてしまい、気絶する寸前に悔し涙を流したのであった。
「ありゃりゃ…」
「はがねん…どうするの〜？」
「しかたねーだろ。保健室連れて行かないとな。さくら、ついて来てくれるか？」
「うん♪」
「じゃあ行くか…」
鋼は黒龍をやっとこさ抱え上げると、桜華と共に保健室の方に向かった。
■ＥＮＤ■
□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■ 登場人物（この物語に登場した人物の一覧） ■
□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
【整理番号 ／ ＰＣ名 ／ 性別 ／年齢／ 職業】
2439／飛鳥・桜華／ 女 ／ １６歳 ／幻獣騎士 兼 女子高生
3506／梅・黒龍 ／ 男 ／ １５歳 ／中学生
2239／不城・鋼 ／ 男 ／ １７歳 ／元総番（現在普通の高校生）
□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■ ライター通信 ■
□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
毎度ありがとうございます。朧月幻尉です。
執行部との闘争より、何故かPC様との闘争になってしまいました（汗）
ひっそりと連載になる事を心の中で確定しつつ、本日はここでお暇いたしとうございます。
ご参加、誠にありがとうございました。
朧月幻尉 拝
|
|
 |
