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コスプレ屋台でクレープ祭り♪
今日は神聖都学園の学園祭。
だが、勿論本当の学園での話ではない。夢の学校生活での話だ。夢だろうが現だろうが、楽しいものは楽しい。
校内にはいたる所にテントが立てられ、ブースが並び、生徒たちの笑い声が響き、ここコスプレ屋台「怪奇クレープ探偵団」でも楽しそうな……時々叱り声が混ざり、何故か魔女。
「ふひひひ。おいしくな〜れ、おいしくな〜れ♪」
まるでアニメの魔法少女のような黒い可愛らしいレースのあしらわれたドレスを身につけ、黒いとんがり帽子を被ったローナ・カーツウェル。高校生の少女が身につけると何とも萌える……失礼、魔女っ子というか魔女見習い。そんな魔女見習いがディスプレイ用なのか、持ってきた大鍋に向かいお玉をかき混ぜている。鍋の横には焼イモリやらコウモリやら得体の知れない植物の茎に根。何かの粉末など実に怪しい。
「これで魔女風クレープの具はGood !」
「グッドじゃない!危険物は不許可!!」
クレープ生地を焼く為のヘラをローナに突きつけ、飛鷹・いずみは厳しく言う。
そんないずみの格好はアイドル風衣装。いや、十分アイドルとしてテレビに出ても通用するいずみはロリロリな衣装でローナとはまた違った可愛らしさがある。
「危険物なんてシツレイね。そーいういずみはナニをSALEするの?」
「あなたたちがロクなもの作りそうもないから、ちょっと凝ったおいしいものを作るのよ」
「ミーのもおいしいよ!チョーVery sweetな魔女風クレープだよ」
「魔女風っていう時点で怪しいのよ!」
眉をしかめるいずみだが、ローナは気にした様子もなくまた鍋に向かい、鼻歌交じりに歌いだす。
「sweet、sweet、sweet〜♪」
「人の話聞いてないわね……」
「ま、まぁ様子をみてみようよ。ね?」
浴衣にエプロンという涼しげな姿の長身で気弱な大和撫子な美人。今川・恵那は苦笑交じりにいずみをなだめる。
「甘いわね、恵那。私たちだけなら問題はないけど、ここにはローナとピューイもいるのよ?どんなクレープ作るかわかりゃしないわ」
「う……そう言われると……」
言葉につまり、恵那はもう一人の友人を見た。
クレープ屋台のテントの傍に立つ美少女。すらりと伸びた手足に細い腰、細い体には不釣合いなほど豊かな胸は今チャイナドレスに隠れているが、男どもの視線を集めるのは間違いないだろう。そんなピューイ・ディモンは男。その少女のような顔立ちを活かし、女装での手伝いをしているのである。
「いらっしゃいだぴゅ♪おいしいクレープなんだぴゅ〜♪」
ピューイの呼び込みに鼻の下を伸ばした男たちが次第に集まり始める。
「ほらほら、お客さん増えてきたよ。がんばろっ」
恵那に言われ、いずみは大袈裟なため息をついたが、どうこう言っても何か問題が起こりそうな事は確かな予感だし、今は防ぎようがないと諦め、小さく首を振って気分を入れ替えた。
「恵那、私たちだけでもマトモなもの売りましょう」
「うん」
大きく頷いた恵那は浴衣の裾にたすきを掛けた。
「HAY! 魔女風クレープだね、ちょっとマッテテ♪」
「いや、まだ注文してな……」
「ヘイ、お待ち!!」
人の話聞いちゃいません。哀れ男子学生はローナから魔女風クレープを押し付けられた。
その気になる中身は……黒いです。黒い、妙にゼリー状のものに何だかわからない細長い昆虫の足のようなものが混ざってたり、固い種らしき塊があり食えるのか?と男子生徒は手の中のクレープもどきを見つめ途方にくれる。
「あ、あの……待って下さい!」
男子生徒を呼び止めた恵那はひとつ、クレープを差し出した。恵那のクレープは和風あんみつクレープ。真面目で心配性な恵那はローナのイロモノクレープを食べてお腹でも壊したら大変と、魔女風クレープを押し付けられた人を呼び止めては交換を申し出ているのだ。
「そのクレープと交換させて下さい。あ、あの……甘いのお嫌いですか?」
泣きそうなうるんだ瞳で長身の美人に見つめられれ、男子生徒は慌てて首を振りクレープを交換した。
「あ、ありがとうございます!」
恵那の嬉しそうな笑顔に、男子生徒たちはぽけっとダラシナイ笑みを浮かべて恵那に見惚れるのだった。
「ねぇねぇ、クレープ食べていかないだぴゅ?」
学園祭を楽しんでいたカップルを引きとめたピューイ。女も真っ青の女の子らしい仕草で可愛らしいピューイに男の方が鼻のしたを伸ばす。
「おいしいクレープ、嫌いぴゅ?」
小さく首を傾げ尋ねるピューイに、男は慌てて大きく首を横に振る。
「いや、だいっすきだよ!」
「良かったぴゅ♪こっちだぴゅ」
満面の笑みを浮かべ屋台へとチャイナドレスの裾を翻し、駆けて行くピューイをだらしない顔で見送っていた男の頬を思いっきり女は抓った。
「甘いもの、だいっきらいじゃなかったの?!」
「あ、待ってくれよ!」
……可哀想に。ケンカしたカップルは置いておいて、屋台に戻ったピューイは折角勧誘した客が来ず、首を傾げた。
「あれ〜来ないぴゅ」
「Hey、ピューイ。ヒマならユーも何か作ったら?」
ゲテモノ好きあるいは話のネタに魔女風クレープを買う客が増えたようで、忙しそうにクレープを作るローナに言われピューイも屋台の中に入る。
中ではいずみと恵那はもとより、ローナも忙しそうに動いている。
「こら、いい加減にゲテモノ作るの止めなさいよ!」
「ナンデ〜?ホラ、こんなにだいせーきょーだよ♪」
また一つ客に魔女風クレープを渡しながら、ローナは言った。
「そんな客は物好きなだけで、どうせ一口二口食べたら捨てるに決まってるわ。クレープ生地だってタダじゃないのよ!」
「エ〜?そうかなぁ? Every one!ちゃんと全部食べてくれるよネ〜」
ローナの呼びかけに歓声をもって答える客たち。
それに呆れたようにため息をつき、いずみは髪を掻き揚げた。
「ほんと、バカばっかり。お腹壊しても知らないんだから」
「い、いずみちゃん……お客さんにバカって……」
わたわたと小声でいずみをたしなめる恵那。それでもいずみは冷ややかな表情を崩す事無く、尊大な態度で鼻を鳴らした。
「バカにバカと言って何が悪いの?大体ここはクレープ屋台よ。それなのに、何で男ばかり集まってるのよ。どうせ、ピューイに騙されてノコノコついて来たんでしょうが、他にやる事はないわけ?」
歯に衣着せぬ、とはまさに彼女の事だろうが、いずみはひとつ間違っている。何もここに集まっている男子たちはピューイの呼び込みで群がっている訳ではなく、それぞれお目当てがある訳で……明るくノリノリの魔女っこローナもなかなか良いが、大和撫子な恵那も捨てがたい。チャイナドレスのピューイは格別だし、可愛い顔をにこりともさせず、ずばずばと物を言ういずみはその手の隠れファンがいるらしい。
なので、それぞれのファンが群がっている訳でピューイだけのせいではない。だが、それに気づいていない、いずみはブツブツと文句を言いつつナタデココを巻いたトロピカルクレープや海老やビーフンを具にしたベトナム風クレープを作っていく。
「できたぴゅ〜♪」
周りの騒ぎを気にせず、マイペースに隅の方で自作クレープを作っていたピューイは得意気に笑んだ。
「ナニ作ったの?」
尋ねたローナに手作りクレープを突き出し、自信たっぷりにピューイは言った。
「ダイエットクレープだぴゅ!」
「What!? ダイエットクレープ?」
オーバーすぎるリアクションで聞き返すローナはまじまじとピューイの手に握られたクレープを見た。
「では、このローナ様がテイスティングしてあげよう♪」
そう言いつつ、ぱくりとかぶりついたローナは、一口二口咀嚼し、そして目を白黒させてテントの中を走り出した。どうやら、あまりのお味にパニクってるらしい。吐き出す場所を求めてグルグル狭いところを駆け回るローナにいずみの怒声が飛ぶ。
「走り回るんじゃない!ホコリが立つでしょうが!!」
「☆×■▽◎〜〜〜!?!?!?」
「ろ、ローナちゃん!!大丈夫?ど、どうしたの、ローナちゃん!?」
オロオロと立ち尽くす恵那の背後で不思議そうにピューイは食べかけのクレープを見た。
「変ぴゅね〜おいしいのに……あむ」
納豆&キムチという自作クレープを何の抵抗もなく一口でぺろりと平らげたピューイは味覚がおかしいのか……それでも、底なし食欲をもつピューイは再びクレープ生地を取り、自作クレープ作成に取り掛かる。
「次は何をいれようか迷うぴゅ〜♪」
鼻歌でも聞こえてきそうな上機嫌でマイペースにクレープを作っては、自分の口に放りこむピューイ。
顔を真っ赤にし、げほげほと咳き込むローナの背を心配そうに擦る恵那。
呆れたように、どうやら無視を決め込んだらしい、いずみ。
四者四様。コスプレ屋台「怪奇クレープ探偵団」は騒々しくも楽しく学園祭を盛り上げるのだった。
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 】
【1936/ローナ・カーツウェル/女性】
【1271/飛鷹・いずみ/女性】
【1343/今川・恵那/女性】
【2043/ピューイ・ディモン/男性】
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■ ライター通信 ■
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学園祭パーティーノベルに発注していただき有難う御座います。
お届けが遅くなりました事、お詫び申し上げると共に
皆様に楽しんで頂けたらと思います。
>ローナ様
初めまして。壬生ナギサと申します。
ノリ重視という事で楽しく書かせて頂きましたが、如何でしたでしょうか?
ご希望に少しはそえたでしょうか?
かなり、口調に苦戦したのは……シークレットです(笑)
>いずみ様
初めまして、壬生ナギサと申します。
格好良く慇懃無礼に書かせて頂きましたが、イメージに合ってますでしょうか?
クレープのアイディアは成る程、生春巻きも似たようなものかも……と感心しました。
結構おいしいかもしれませんね。
>恵那様
はい、壬生ナギサです。初めまして。
おどおど震える子ウサギのような大和撫子美人というイメージで書かせて頂きました。
呼び方は私のイメージで、ちゃんづけです。
このメンバーと一緒だと気苦労が絶えませんねぇ(笑)
>ピューイ様
二度目のご参加有難う御座います。
ピューイくんのチャイナドレス姿……きっと似合いすぎて違和感ないんでしょうね(笑)
そして、納豆&キムチは普通のクレープ想像して食べるとそのギャップに悶絶する事請け合いかと……(笑)
今回は幻影学園奇譚と言うことで、全員年齢は高校生を想定して書かせて頂きました。
読む際もいつもの設定より年齢を上げて、想像しながらお読み下さいませ。
それでは、またお会いできる事を楽しみにしております。
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