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<幻影学園奇譚・学園祭パーティノベル>


学園祭ステージ【輝け!我らのレッド・スター☆】


●〜開演15分前〜

 前評判も上々、14日火曜日の学園祭の出し物の目玉と言っても過言ではない。
本日ここ体育館ステージでは”特撮友の会”主催による…
『ヒーローアクションショー』が開催される事になっていた。
当初の予定では5人組の戦隊ものだったはずなのだが…
どこでどうなってこうなったのか、ヒーローは一人。しかも、ヒーローではなく…ヒロインと言う展開になっていた。
それがまた逆に学園祭にやってきた人たちの興味を誘ったのか…
開演前にして列が出来るほどの大盛況となっていたのだった。
「はい、それでは最後の打ち合わせです。生徒さんは名前と役柄を言って下さい」
 学園祭を仕切る担当者が、楽屋と言う名目の体育館倉庫へやってくる。
一応、気持ちを盛り上げる為に敵と見方で部屋は仕切ってあるのだが、声は筒抜けだったりして…。
「はい!今回は主演の”レッド・スター”役の、赤星・壬生です!宜しくお願いします」
「えーっと…役…役はその…一般市民役…の、三春・風太…1年C組です」
「3年のシオン・レ・ハイです…ショッカ…いえ、敵のその他数名と演出を担当しますので…」
「同じくミーは敵役のローナ・カーツウェルです!ニンジャ!クノイチ”お楼(おろう)”役で…ヨロシクネ」
「その、お楼の姉役で棍棒の”お縁(おえん)”役の如月・縁樹です…ヨロシク!」
 ヒーローものなのに、えらく和風なのは脚本家の趣味なのか。
疑問に思いつつも細かいところはとりあえずこちらに置いておくことにする担当者。
続いて声をかけたのは、妖艶な雰囲気をとてつもなくかもし出している、悪の女幹部役、黒澤・小百合。
「ウフフフフフ…”ブラック・リリィ”様とお呼びなさいな…」
もうすっかり役に入り込んでいて、隣に座っているボス役のCASLL・TOの膝元に手を添えて座っている。
「さあ、帝王様…我らの出番です…」
「うむ…」
 CASLLはゆっくりと立ち上がると、重そうなゴテゴテしたいかにもな衣装の裾から腕を突き出し、
「我ら帝王軍団に栄光あれ!!」
 こちらもすっかり役に入りきった状態で、声を張り上げたのだった。
ちなみに、今回の司会進行に白羽の矢が当たったのは舜・蘇鼓。
スパンコール付きの金色スーツに大きな蝶ネクタイ。大木凡人か?!と言いたくなる程の存在感だった。


●〜開演:特撮友の会主催『ヒーローショー【輝け我らのレッドスター】』〜

<シーン1:ファンシーショップ”Roter Stern”>

 ここは都内某所にある小さなファンシーショップ。
女の子向けの様々な雑貨が販売されていて、それなりの人気を誇る店である。
しかし…その店にある隠された秘密を知る者は…少ない。
「エンジュちゃーん、ローナちゃーん、ただいまー」
「あ、お疲れ様ですミオさん!」
 店内に、制服に身を包んだミオと言う名の女子高生が入ってくるや否や、店員であるエンジュとローナの姉妹が顔を上げた。
そしておもむろに店のレジの裏にある秘密のボタンを押すと…店の壁が移動し、謎の扉が出現したのだ。
ミオは迷うことなくその中へと入っていく。姿が見えなくなったのを確認し、姉妹は再びボタンを押す。
すると、そこには先ほどと同じただのファンシーショップの壁が出現したのだった。

<シーン2:秘密基地>

「おかえりミオ。偵察はどうだったんだい?」
「おじさ…いえ、シオン博士〜…やっぱり高校生との両立って辛いです」
 ミオはカバンを無造作に置くと、ソファの上に腰を下ろした。
一見すれば普通の家のリビングルームに見えるこの部屋にも実は秘密がある。
今でこそ平和な一つの部屋であるが、ひとたび緊急事態になると壁が反転し巨大スクリーンに、
そして床もひっくり返り、大きなテーブルとモニタ画面装備の作戦室が出現するのだ。
それらすべてを開発したのはシオン博士と呼ばれるミオの伯父である。
 シオン博士と偉そうに言ってはいるが、金持ちのお坊ちゃんのように見えてその実はかなり貧乏人だ。
俺は以前、封筒の糊付けのアルバイト募集の記事を真剣に見ているところを見たことがあるから間違いない。
「そんな事今言わなくてもッ!!!」
 先を続けよう。ミオは幼い頃、悪の帝王に両親を奪われ…伯父のシオンに引き取られて育てられたのだ。
そして、いつか必ず悪の帝王を倒す事を近い、改造手術を受け正義のヒロインとして生まれ変わったのだ。
 しかし、事件のない普段は女子高生として生活しているため、かなりハードである。
ちなみにファンシーショップの店員はシオンの娘たちである。
「大丈夫だミオ!お前の活躍で帝王軍団はほぼ壊滅と言うところまで来ているのだ…!
あとは帝王直属のブラック・リリィとそのしもべである”楼縁姉妹”を倒せば帝王も…」
「うん…そうよね…もうすぐお父さんとお母さんの仇が討てる…頑張るよおじ…じゃなかったシオン博士!!」
「そうだ!その意気だミオ!!いや、”赤い彗星・レッドスター”よ!!」

<シーン3:帝王軍団・アジト>

 都内に果たしてこのような場所があるのか甚だ疑問は尽きないかもしれないが、
ここは鬱蒼とした林の少し奥まった場所にある小高い山のふもとの洞窟である。
いささか説明的過ぎるかもしれないが、なにぶんセットが貧相ゆえに口で説明しなくてはならないのだ。
 裏話はさておき、洞窟そのまた奥…妖しげな煙が舞い上がる中、三人の女たちが向かい合い、帝王が現れるのを待っていた。
一人は露出のやたら高い黒と紫系の衣装を身に纏った幹部、ブラック・リリィ。
あとの二人は、棍棒使いの姉、お縁と火遁の術を得意とするお楼の、くの一楼縁姉妹。
どことなくファンシーショップの店員と似ているかもしれないがそこはそれ、人員の都合と言うものである。
細かい裏設定などはないので、大人のおともだちは推測しないようお願いしたい。
 さあ、先ほどから余談が増えてしまっている気がするが…どこからともなく落雷の音が響き始め、
洞窟内は青白い光に包まれる。そしていっそう濃い霧が立ち込めたかと思うと、帝王の玉座に人影が現れ、
リリィと楼縁姉妹はその場に膝をついて傅いた。そう、帝王の登場である。
『お前たち…またレッドスターにやられたそうだな…?』
「はっ!申し訳ございません…こちらに手違いがございまして…」
『言い訳など聞きたくはない!!』
 怒号と同時に雷に撃たれ、三人はたまらず床の上に倒れ付す。
『いいか…次はない…次は無いのだぞ!!わかっておるのか?!』
「は…っ…帝王様…必ず…必ずや次は我ら楼縁姉妹が…かのにっくきレッドスターめの首を…」
『信じてよいのだな?』
「忍びに二言はございませぬ」
『ならば信じよう…しかしいい機会だ…リリィよ…お前にも動いてもらいたい事がある』
「はい…!帝王様の仰る事なら、このリリィ…なんなりと」
『楼縁達が動いているその間に…エヴァを捕らえて来るのだ!』
「…エヴァ…星の姫ですね?確かに奴を捕らえればレッドスターは手も足も出ません」
『エヴァの周りには手強い連中がいるはずだが、お前なら出来るはずだ』
「お任せください帝王様…このブラック・リリィ…貴方様の為ならば命も差し出しましょう…」
 リリィはニッコリと微笑みながら帝王の手を取り、軽く口付けをする。
そして立ち上がると同時にマントを翻し…霧の中へと姿を消していったのだった。

<シーン4:中央公園〜楼縁姉妹〜>

 都内の公園にて、友人と待ち合わせをしているミオの耳に、誰かの悲鳴が聞こえてくる。
いじっていた携帯を慌ててポケットに押し込むと同時に声の方へと駆け出した。
「…ああっ…なんでこんなところに海が!?」
 そこは本来ならばカップルがボートを楽しむ小さな湖であるはずなのだが、
今目の前に広がっているのはまぎれもなく広大なる海。どこからどこまで海なのかわからないが海だった。
そしてその海の上には、おそらくデートを楽しんでいたであろうカップルが何人も漂っている。
明らかに誰か人の手による仕業ではない事を察知したミオは、近くにある木陰へと走りこんだ。
そして先ほど仕舞った携帯を取り出し…赤い色で『☆』と書かれたボタンを押す。
 そのボタンはシオン博士の下へ直接コールをするボタンで、
シオン博士はそのコールが届いたと同時に、携帯電話の電波を利用してミオに変身スーツを転送するのだ。
ちなみにミオの指紋により作動するため、誰かが拾ってボタンを押しても何も起こらないからご心配なく!
「シューティングスターパワー…メイクアップ!!」
 まるでヒーローものと言うより変身少女もののような掛け声ではあるが細かいところは気にしない。
そんな掛け声と共に、天空から一筋の赤い彗星が飛来しミオの全身を包んでいく。
真っ赤に燃え上がるようなその中で、足、腕、銅、胸…と順にスーツが装着され…
最後に、巨大な星…絵に描いたような星の形をした星を両手で受け取るミオ。それはミオの手に触れると同時にマスクへと変わる。
 ミオは誰に見せるわけでもなく、ニコッと笑みを浮かべ…マスクを装着した。
全身を赤く染め上げた正義の女戦士”レッド・スター”の登場である。
説明すれば長いが、本来は一秒もかからずこの行程が行われている事を付け足しておこう。
「とうっ!」
 レッドスターは掛け声をあげて飛び上がると、溺れているカップル達のもとへ降り立つ。
ミオには星の力が備わっており、空を飛ぶことも可能なのだ。海に落ちないようにカップル達を助け出すと、丘の上へと次々に避難させて行く。
全てのカップルを助け終えた頃を見計らってか、公園の時計塔の天辺に人影が現れた。
「久しぶりだなレッドスター!」
「お前は…楼縁姉妹!」
「今までお前に倒されていった仲間達の仇、このお縁が今日こそとらせてもらうぞ!出でよシャークマン!!!」
「キ―――!!」
 お縁の掛け声と、お楼の投げた煙玉が同時に炸裂し、その中からサメの怪人が姿を見せる。
うむ、どうやらただの着ぐるみではないか、しかも中身はシオン博士ではないかという意見が出ているようだが、あくまでも帝王怪人である。
「行けシャークマン!昔、倒されたお前の親友、イソギンチャックの仇を取るのだ!!」
「シャー!!おのれレッドスター!!」
「なにっ!?サメの癖に空を飛ぶのか!?」
 海の中から空中へと飛び上がるシャークマンに不意打ちを食らい、一瞬よろけるレッドスター。
しかしどうやら勢いで飛び出しただけで別に空を飛べるわけではないらしく、そのままボチャンと海へ落下するシャークマン。
「手っ取り早く片付けたほうがいいわね!」
 レッドスターはふう、とため息をつくと遠慮なく海の中へと飛び込んでいく。
なんだい子供達?!海中ではサメ型怪人の相手の方が有利だって?!いい反応だ!!安心したまえ!
レッドスターは先のイソギンチャックとの戦いの後、シオン博士に海中戦でも戦えるよう改造を受けたのだ!
「なんだと!?」
「そういう事!だから残念だけど、あたしの勝ちね!!」
「なにをー!!!うけてみろ私の最大必殺技フカヒレアタ―――ック!!」
「レッドスター海中必殺技!”徳島名物・鳴門のうずしおキーック”!」
 おおっと!二人の放った必殺技は、真ん中でぶつかり合い海中へと消えていく!
「くっ…やるわね…ならばこれはどう!?”瀬戸内名物・レッド・タイド(赤潮)ビーム”ッ!」
「な、なにいいいい!?そ、そんなバカなあぁぁぁ……」
 シャークマンはまともに攻撃を食らい、叫び声と共に海の奥へと沈み込んでいく。
「ふっ。いかにシャークマンと言えども魚介類…赤潮に敵うわけないわ」
 怪人が倒されたせいか、それまで広がっていた海が嘘のように消えていつもの公園が姿を見せる。
レッドスターはボート小屋の屋根の上に立っていた事に気付き、とりあえず地面に着地した。
その瞬間、足元に爆音が鳴り響く!!ちょっと火薬多すぎやしないか!?まあいいか…。
「レッドスター覚悟!」
「くっ…不意打ちとは卑怯な…!」
「問答無用!!」
 お楼の投げた火薬玉の炸裂と同時に、お縁が肩に乗せている傀儡人形”乃依”から武器を取り出し接近戦を仕掛けてくる。
次々に繰り出される棍棒の威力は、生身とは思えない程の攻撃力を持っていてレッドスターは防ぐ事が精一杯。
「姉者!お避け下さい!」
「うわああっ!?」
 そんなお縁ばかりを相手にしていると、お楼から今度は水流攻撃を受けレッドスターは地に倒れこむ。
その隙を逃さず、お縁は乃依から巨大な木製の木槌を取り出すと思いっきりレッドスターへと振り下ろした。
「お楼!埋めてしまうのよ!」
「お任せを!」
 水の次は木と土なのか、巨大な岩と丸太をどこからともなく出現させて、木槌の上から何層も重ねていくお楼。
さしづめ生き埋めと言うところであろうが…なかなかどうして残酷な展開である。
「ああっ!?レッドスターが!!」
「何者だ!」
 おおっと…戦いに気を取られている間に、いつの間にかレッドスターファンの少年が迷い込んできていたらしい。
いつもおなじみのフータ少年が驚いた顔をして、レッドスターの埋まっている脇に尻餅をついていた。
「…貴様…いつから…」
「ああ!?ご、ごめんなさいごめんなさい!ボクはただ通りかかっただけで…」
「いい機会だったな小僧…レッドスターの最期を看取ったのですから」
「そ、そんなっ…レッドスターがこれくらいで死ぬわけないじゃないか!」
「なにを言う?!貴様!!」
「なあ?みんなそうだよな?!レッドスターはこんな事でやられたりしないよな?!」
 少年は必死な顔と声でみんなに呼びかけているぞ!
そうだ!みんなだ!そこにいるキミ達のことだ!!さあ、みんなでレッドスターを応援するんだ!!
「頑張れレッドスター!!みんなも一緒に!!」
「うるさい!黙れ!!黙らないと貴様も…」
「レッドスター!レッドスター!!レッドスター!!」
 おおっ!?声が聞こえる、みんなの声が聞こえるぞ!!きっと大きな力になるだろう!!
さあ、もっともっと大きな声を出すんだ!!さあ!!
「―――やあねぇ…そんなに言われちゃ照れちゃうじゃない」
「なんだと―――っ!?」
「ああ!レッドスター!!」
「こんにちわ、フータ君!あなたの声、聞こえたわ!ううん、みんなの声、聞こえたわよ!」
「貴様、どうやってあそこから抜け出したのだ?!」
「簡単な事よ…あたしには鋼も砕くこの拳がある!地面なんて一撃よ!」
 公園の照明塔の上に立ち、腕を組みポーズを取るレッドスター。
 どうやら彼女は木槌を食らう寸前、地面を砕いてそれをかわしたようだ。
しかもその後、地中を掘り進み別の場所から見事逃げ出す事に成功したらしい。
「さ、今度はこちらから反撃させてもらうわ」
 レッドスターは腕を高く掲げると、天空の星をびしっと指差した。
「ファイナルウェポン作動…!」
「あの構えはレッドスターの最終攻撃技!天空の星の力を借りて隕石を落下させると言う必殺技!
その名もレッド・メテオ・シューティングスター!!あれを喰らったらひとたまりも無いぞ!!」
 フータ君の言う通り!楼縁姉妹は咄嗟に逃げる態勢を取ったようだが時すでに遅し!
レッドメテオシューティングスターの攻撃範囲は広く、そしてまさに流れ星のごとく速いのだ!!
どっごーん!!………うーん、やはり少々火薬の量が多いような気がするのだが…それはさておき。
レッドスターの必殺技は楼縁姉妹に直撃し、二人はその場に倒れ付した。
「おのれ…レッド…スター…」
「もう観念なさい!あたしだって命まで取ろうなんて思ってないんだから」
「姉者、我らくの一、敵に情けをかけられるくらいなら…」
「その通りだわ…お楼…我らのこの命、捧げます…帝王様っ!!」
「待ちなさ…!!」
 レッドスターが止めるよりも早く、お楼の自害用の火炎爆弾が炸裂し二人は煙に包まれる。
マスク越しではあるが、レッドスターの切ない気持ちと、帝王への怒りが伝わってくるようだ。
「勝ったね!レッドスター!!」
「ありがとうフータ君。怪我は無い?」
「大丈夫だよ。それよりレッドスターは?」
「あたしは大丈夫!だって無敵のレッドスターですもの」
「うん!そうだよね!レッドスターは強いもんね!」
 ぽん、と肩に手を置いて微笑みかける…マスク越しなので見えるわけではないが…レッドスター。
フータも嬉しそうに笑顔を浮かべガッツポーズを作ってみせる。
レッドスターはここで一段楽した事だし、そろそろ帰ろうかなと肩から手を離し…
「おーっほっほっほっほっほっほ!!」
「?!この高らかに響き渡る高飛車で耳障りな声は――!!」
「失礼な小娘ね…私の美しき声にケチをつけるなんて…まあいいわ…その程度の感性なんでしょう」
「ブラック・リリィ…!」
「よくも楼縁姉妹を!と言いたいところだけれど、私はどっちでもいいの…むしろお礼が言いたいわね」
「なんですって?!」
「帝王様のおそばにいていいのは私だけだもの…あんなこそこそした連中、居なくなって清々するわ」
「……おまえっ…仲間になんて事を…!!」
「嫌だわ…仲間だなんてひとまとめにしないでちょうだい?」
 リリィは灰色の羽根のついた扇をバシっと音を立てて開くと怒りもあらわにレッドスターの前に舞い降りた。
いきなりどこから?というツッコミは後生だよ、そこのキミ!
ちなみにこのリリィ!どう見てもボディコン好きの姉さんタイプだが実際はかなり地味な風紀委員をやっている。
しかしこの役を見る限りだとそれも演技の可能性が大きいぞ!?
「黙りなさいそこの司会者っ!!まあそんな話はいいわ。それより、貴方にいいお知らせがあるの」
「ふん!あんたが言うような話にいいものなんて今まであったかしら!?」
「酷い言いようねえ…ま、そんな事を言えるのも今のうちよ…きなさい!縄跳び兵!」
 リリィの張り上げた声に従い、どこからともなく現れたのはショッ…いや、違う違う…
帝王軍団の兵士達である。全身真っ黒なタイツにウサギの耳をつけているその風貌だけでも奇異なのだが、
さらに恐るべきは縄跳びをしながら出現すると言う事である。はっきり言って、すさまじい光景だ。
しかしあなどるなかれ!これがなかなかどうして厄介なのだ!
キミもおぼえはないだろうか?長縄跳びの中にタイミングがつかめずなかなか飛び込めないときを。
縄跳びをしている友達のそばに近づくとき、思わず身構えて目を閉じそうになってしまう事を!!
あたったところで大怪我するわけでもないのだが、とにかく嫌なのだ。痛そうなのだ。
「くっ…その他大勢を出したところで、あたしに勝てると思うの?!」
「勘違いしないで?置き土産だから。本題は、こっち…」
 奇声をあげてひたすら縄を跳びながら近づいてくる縄跳び兵を、レッドスターは避けつつリリィに近づく。
しかし、リリィは扇を広げると高く飛び上がりいつの間にか出現していた巨大な塔に着地する。
その塔の天辺には…十字に貼り付けられ意識を失っているエヴァ・ペルマネントの姿があった。
「…え、エヴァさんっ?!星の姫様?!どうして…」
「ほーっほっほっほ!貴方がここでサメ相手に遊んでいる間にこの娘はいたいだいたわ♪」
「守護神たちが居たはずなのにっ!」
「そんなもの…この私と帝王様にかかれば大したものじゃないわ…ま、そういう事だから」
「待て!姫様を返せ!!!」
「帝王様は取り引きしたいそうよ?明日の正午、あなた一人で”帝王城”にいらっしゃいって」
 帝王城というのはちなみに帝王の住まう城の事であり、
洞窟の奥深くにあるあのアジトとはまた違う…要するに本拠地である。
東京湾沖のどこかにあるという噂なのだが、誰一人到達した事はないらしい場所なのだが…。
「―――あたしが行けば姫は返してくれるのね…」
「ええ?!危険だよレッドスター!!!」
「大丈夫よ、フータ君。あたしは必ず姫を取り戻して帰る…リリィ!!必ず返しなさいよ?!」
「もちろん…約束は守るわ」
「わかったわ!だから決して姫様には手を出すんじゃないわよ!?」
「私はそんな野蛮な事は嫌いだから…安心しなさい?それじゃあね…」
 リリィはそういうと来た時と同じように高らかな声をあげてどこからか発生した霧に紛れて姿を消していく。
エヴァの姿もあの妙な塔も霧と共に消え去り、残ったのは縄跳び兵達だった。
「ふんっ…雑魚はその辺に埋まってなさい!!!」
 レッドスターは襲い来る縄跳び兵たちを次々となぎ倒し、地面に埋めていったのだった。
まああらかたの縄跳び兵は自らの縄に足をひっかけて自滅していってくれたのだが…。

<シーン5:再びファンシーショップ>

「お前一人で来いとは明らかに罠だな…それでも行くのか?」
「行くわ。当たり前じゃない」
「でもミオさん…ここのところ毎日戦ってて…疲れているんじゃ…」
「心配御無用よ!ありがと!そのためにちゃんと毎日身体も鍛えてるんだから」
 ファンシーショップの秘密基地にて、シオン博士と二人の娘を交えての作戦会議を開始するミオは、
雑魚とは言え数が多く、それなりに負傷した手当てを受けていた。
何故かシオン博士の額に縄跳びが強打したような痕があるが気にしないでいただきたい。
「決心が硬いのならば止めはしないよ、ミオ」
「おじさん…」
「その代わり少し時間をくれないか?お前の為に最終装備を施してやりたいと思う」
「え?!」
「ミオさん!安心してください!ボク…じゃない、私も手伝いますから!!」
「エンジュちゃん…」
「任せて下さい!パパとエンジュと一緒にリーサルウェポンを作ります!」
「ローナちゃん…」
「まあ、そういう事だ…だからお前は今日はゆっくり休みなさい。いいね?」
 シオンは優しく微笑むと、ミオの肩にぽんと手を添える。
エンジュとローナは膝に置いたミオの手にそっと自分たちの手を重ねて微笑んだ。
思わずあふれ出そうになる涙を必死で飲み込んで、ミオは精一杯の笑顔を三人へと向け…
「わかったわ!ありがとう!絶対に勝つからね!」

<シーン6:”帝王島”>

 帝王城…そこは東京湾のはるか沖に位置する孤島にあると言われている。
しかしその周囲には一年中を通して黒い霧に覆われていて、常人では入ることはおろか、
近づく事さえもできないと言われている。
「ミオ…私たちはここまでしかお前を送ってやることは出来ない…」
「大丈夫よ、おじさん!ここから先はあたし一人で充分だから」
「パパ、そろそろ船の計器に影響が及んでしまう海域になったわ」
「…ミオ…いや、レッドスター!地球の為に…戦ってくれ!!」
「おじ…いえ、シオン博士。そのためにあたしがいるんです…必ず帝王を倒してきます!」
 とうっ!と掛け声をあげ、ミオはシオン博士の船の舳先から上空へと飛び上がった。
太陽の光をあびた瞬間ミオはレッドスターへの最後の変身をする。
そして再び舳先に降り立った時、そこには華奢な女子高生の姿は無く、赤いボディが輝いていた。
レッドスターは一度だけ、シオン博士達に振り返ると、そのまま高く跳び海の中へと入って行く。
「必ず、帰ってきてね…」
 その姿を、エンジュとローナ、二人の姉妹が寄り添うように見送ったのだった。


<シーン7:”帝王城〜最終決戦の地〜”

「おほほほほほ!よく来たわねレッドスター!歓迎するわ!!」
「出たわねカラスババア!!」
「カッ…カラスババア?!このブラック・リリィ様に向かって…ババアですって?!」
「そんなどうでもいい話はいいわ!エヴァ姫はどこ?!」
「くっ!自分で振っておきながら流すなんて、いい度胸した小娘だこと!!」
 帝王城の広大なホールの真ん中で、レッドスターは玉座の前に立つリリィと向かい合う。
と言っても、あちらは少し高い位置に立っていて、見下ろされているわけなのだが。
「約束よ!エヴァ姫を返しなさい!」
「わかったわ。私は約束は守りますから」
 パチンと、リリィが指先を弾くと、天井から吊るされたエヴァがゆっくりと下ろされてくる。
相変わらず気を失ったままのエヴァは、静かにレッドスターに抱き止められた。
「さ、約束通りその女は返したから、あなたはこっちにいらっしゃい」
「待て。エヴァ姫を海上にいる者に届けてからだ」
「……それは約束違反じゃない?」
「なんだと?!」
「私はあなたに星の姫を返す、あなたはこちらに来る…これが約束よ?私は約束は守ったわ」
「ここであたしに返しても意味が無い!姫を届けたら必ず戻る!」
「駄目よ」
「じゃあどうしろって…」
「そこに放っておけばいいんじゃなくって?」
 ニッコリと微笑むリリィの表情は、笑顔であるのに冷たく恐ろしい。
レッドスターは小さく舌打ちはしながらも、まあ大人しく返すわけ無いかと苦笑いを浮かべた。
そして、エヴァの身体を肩に担ぎ上げ…。
「必ず戻る!それまで待っててちょうだい!カラスババア!!」
「まっ…待ちなさいッ!!」
 レッドスターは彗星の如き俊足でその場を駆け抜け、一気に城の外へと飛び出す。
海上のシオンの船までエヴァを運べれば、あとは心置きなく戦う事が出来るのだ。
しかし、ここは相手の本拠地である。普段のようには行かない。
『キー!!!』
「出たわね縄跳び兵っ!!」
 今まで、街の中では見たことのない数の縄跳び兵が群を成して襲い掛かってくる。
しかし岩場という悪条件も重なり、そのほとんどが縄に足を引っ掛け自滅しているのだが。
とは言え、質より量と言うか数の暴力と言うか、なんと言うか。
どんなに弱いザコと言えど、やはり束になってかかってくるとレッドスター一人では苦戦してしまう。
特にエヴァを抱えた状態でと言うのは…かなり不利だった。
「くっ…こんなところでやられるわけにはいかない…かといって最終兵器を使うわけにもいかないし…」
「―――助太刀致す…赤い彗星」
「え?!」
 レッドスターが縄跳び兵を右フックで殴り倒した時、不意に背後で声が聞こえ振り返る。
そこには傷を負いながら、縄跳び兵へと攻撃を仕掛けるくの一…楼縁姉妹の姿があった。
「あ、あんた達…生きていたのね!?でもどうして…?!」
「我ら一族は帝王に利用されていたのだ…星に滅ぼされた我らの一族の復活を帝王は約束したはずだった…」
「しかし知ってしまったのだ…我が一族を滅ぼしたのは星の力ではなく、帝王本人だった事を!!」
 悔しそうな顔で、お縁は拳を岩に叩きつける。お楼が心配げにそれを覗き込み、二人は静かに見詰め合う。
「我らの使命は仇を討つ事。しかしそれはお前ではなく帝王なのだ」
「だから赤い彗星よ。今は我らを信じ、星の姫を我らに託してくれないか…」
「必ずお主の仲間である海の上の者達へと無事に送り届ける」
「………つい昨日まで敵同士だった相手を信じろって言うの?」
「信じる信じないは自由だ。信じてくれずともいい。その場合、我らはここで戦い続けるのみ…」
「姉者…私も戦います…例えこの命尽きようとも…」
 二人のやり取りをじっと見つめるレッドスター。
どうするレッドスター!?これは罠かもしれない!二人はキミを騙しているのかもしれない?!
さあ、どうする?!
「信じましょう」
「!赤い彗星…!」
「そんな顔で言われちゃ仕方ないわ…二人ともあたしの大事な仲間にソックリなんですもん」
「仲間…」
「そう。大事な仲間…家族に、ね…」
 レッドスターはかみ締めるように言うと、楼縁姉妹にエヴァを託す。
そして自分は帝王城へ向かって一気に縄跳び兵を蹴散らし、進み始めた。
「…姉者…」
「赤い彗星は我らを信じ、託した…こんな我らの事を信じてくれた…」
「必ず、必ずこの姫を届けましょうぞ!!」
「もちろんだ…この命に代えても…!!」
 楼縁姉妹はレッドスターとは間逆の方向、海へ海へと向かって駆け出していく。
その背に、信頼と言う名の星の姫を背負って…。

<シーン8:決着の時>

『よく戻ったな、レッドスター』
「帝王…いいご身分ね。部下に薔薇なんかまかせて自分は王座にのん気に座って」
「貴様!!帝王様を侮辱する気か!!」
『いいのだ…リリィよ…レッドスターはそれくらいでなくては面白くない』
「それはどうも。ところで早速で悪いんだけど…あたしも馬鹿正直に約束守ってここに来たわけじゃないの」
『ほう?』
「もう終わりにしない?こんな戦いなんて。意味ないわ」
「星の力を手中におさめ、帝王様の国をこの地に築く事に意味が無いなどとは言わせぬ!!」
 ちょっとばかり説明的なセリフすぎるがまあそこはそれ、置いておこう。
少々シリアスな展開になりつつあるが、ここからがやっと最終局面、我らがレッドスターの対決だ。
さあ、座ってないでみんな、立ち上がってくれ!立ち上がって、みんなのパワーを見せてくれ!!
『残念だがレッドスターよ。お前が邪魔をするなら戦わねばならん』
「……どうしても?普通の人間として暮らす気にはならない?」
『面白い事をいう…この私が普通の人間としてだと?あのような下族共として暮らせと?』
 帝王は腹の底から低く笑い声をあげると、手にしていた杖を高く振り上げた。
『お前を改造してこちらに引き入れるつもりだったが気が変わった…やはりお前は死ぬがいい!』
「そうよ!やられておしまい!!」
 帝王が掲げた杖の先から、激しい稲妻がほとばしり周囲を青白く染める。
しかし、レッドスターは大きく後方へと跳び、間一髪直撃を避けた。
そんな単純な攻防が何度も、何度も繰り返される。
おそらく、レッドスターの体力がが消耗するのを狙っているのだろうが…卑怯だぞ帝王!!
『なんとでも言うが良い…勝った者こそが正義!!勝った者こそが強者なのだ!!』
「ふん…誰に言ってんのかしら…レッドスター・キーック!!」
 おおっ!レッドスターの華麗なる流星脚が帝王の顔面を…
「帝王様に指一本でも触れさせるものですかァ―――!!!」
 直撃しようかと言うその瞬間、なんとリリィが間に割って入り、得意の扇で跳ね返す。
しかしレッドスターのキックの破壊力は以前の比では無い。
シオン博士とエンジュ、ローナが徹夜で仕上げた改造の結果、これまでの三十倍の威力があるのだ。
リリィは扇を構えた状態のままで、勢いに押されて帝王の脇をかすめて城の壁に激突する!
『ほう?少しは楽しめそうだな』
「楽しむ暇も無いうちにやっつけてやるから安心しなさい」
 玉座に座ったままの帝王へ、今度はレッドスター・キックをお見舞いする。
帝王は軽く首を捻り避け、杖をかざし再び攻撃態勢を取る。しかしその時間を与えまいとレッドスターは連続技に入る!
「そうだ!がんばれレッドスター!!!」
「!?その声はフータ君?!」
「そうだよレッドスター!みんなの声が聞こえる?みんなレッドスターを応援してるんだ!」
『な、なんだこの声は…どこから?!』
「星の姫様の力さ!みんなの声を、レッドスターに直接届けているんだ!」
「…って事は…助かったのね…エヴァ姫……楼縁姉妹…ありがとう…」
『くっ!耳障りな!!』
 フータ少年たちの声がよほど気に障ったのか、帝王は立ち上がり杖を振りかざし適当に壁を叩き壊す。
瓦礫の音で、声が聞こえないようにと思ったのだろう。
「帝王、残念だけどあなたは負けるわ」
『なにを…』
「あたしには力強いこの声があるもの…絶対に負けない!」
『―――笑わせるな!!』
 両手を広げた帝王は、マントを風に揺らし宙を舞う。
レッドスターの目前に降り立つと、レッドスターの腹を目掛けて杖を突き出した。
両手で受け止めたものの、その威力はさすが帝王らしくすさまじいもので、大きく吹き飛ばされる。
直撃こそしなかったものの…強く床に叩きつけられ、レッドスターは小さく呻いた。
「やるじゃない…帝王の名はダテじゃないって事ね…」
『この私が貴様のような小娘にやられるはずがないだろう』
 ズシンと重量のある音を響かせ、帝王は倒れているレッドスターへと近寄る。
危険を感じ、咄嗟に飛び退いたその場所へ、帝王は杖から重力派を叩きつけた。砕け散る城の床。
跳ね返った岩がレッドスターを容赦なく襲い、直撃を防ぐ事で精一杯だ。
「うっ…この…程度…」
『弱いな…』
「ああっ!!」
 帝王は杖の先から雷の鎖を発生させ、レッドスターを空中へ縛りつける。
必死で逃れようともがくものの、身動きの取れないレッドスター!
このまま負けてしまうのか!?いいや、我らがレッドスターが負けるはずは無い!!!
「おだまり…!帝王様が勝つのよ…帝王様…が、負けるはずは無いのよ!」
『リリィ、生きていたのか』
「帝王様…私、帝王様の国を見るまではこの命を落とす事など…」
『一撃を喰らったくらいで死に掛けているお前の命など必要も無い』
「て、帝王様…」
『せめて私の王国の人柱にでもしてくれよう』
「そ…そんな…帝王様っ…私、私は…あああああっ!!」
 これはどうした事だ?!帝王はレッドスターに向けている雷を、ブラックリリィにも向けたぞ!?
仲間割れをしているのか…しかし…
「て、帝王…さ、ま…」
『さすがはレッドスター…この程度ではなかなか死なぬようだが、リリィよ…貴様はもう死にかけているようだな』
「……帝…王…さ…」
『大人しくわが国の人柱になれ…!!』
「―――それはアンタよ!!!」
『なにっ!?』
 帝王の雷の戒めを、レッドスターは渾身の力をこめて振りほどこうとしているぞ!?
さあ、みんな!レッドスターを応援するんだ!!みんなの声を聞かせてくれ!!
「そうだレッドスター!僕たちがついてるんだ!!!みんな応援してるぞ!!負けるな!!がんばれ!!」
 レッドスター!この声が聞こえるか!会場の仲間達は、みんな心が一つになっているぞ!!
「アンタ…最低よ…王になる器なんか…無いわ…」
『くっ…何故だ?!何故そんな力が…!!』
「リリィの気持ち知らないわけじゃないでしょう…あたしだって…わかるくらいだもの…」
『な、なに?!』
「―――両親の仇、今まで苦しめられた人達の仇をって思って今まで戦ってきた…
だけど、戦いだけじゃ何も解決にはならないって…話が出来るのなら…それでもいいって思ってた…
思ってたけど…でも…あたしは…ね…人の愛や恋心を踏みにじる奴って言うのが…一番許せないのよっ!!!!!」
 レッドスターが戒めを振りほどいたぞ!帝王はひるみ、リリィは床に落下してく!
すかさずそれを抱え込むと、レッドスターは壁際へとリリィと運び…帝王を鋭く睨みつける。
「あたし、出来るならあんたと話で決着付けたいと思ってた…でも無理のようね」
『貴様ァ!!』
「命をかけた女の恋心がわからない奴なんか…なにを話しても無駄なんだから!!」
 おおっ!出たぞレッドスター・ブーストモードだ!
このモードに入っている間は、いつもの三倍の速さで動く事ができる!
しかし、それも三分の間だけと言う時間制限つきなのだ…。
「今日のあたしはさらに三倍は速いわよ…!ただし、時間制限は一分だけど」
 意味無いじゃないかシオン博士!!なぜもっと気の利いた改造が出来ないのだ!
とここで文句を言っても仕方ない…レッドスターはその素早さを利用して帝王へ一気に近づく。
たとえ帝王とは言え、今のレッドスターのスピードに敵う者など、無い!
「レッドスター・トルネードキーック!!レッドスター・スプリンターキーック!!」
『ぐっ?!がはっ!!』
「レッドスター・ゴールデングローブアッパー!!レッドスター・スクリューパンチ!!」
『ごッ…ごほっ!』
 蹴り上げろ!叩き込むんだレッドスター!!一分と言う時間の中で一気に畳み掛けろ!
「レッドスターがんばれ!!とどめは必殺技だぁ!!」
 フータ少年の声が聞こえたのか、レッドスターは攻撃の手を一瞬止めて天高く拳を突き上げた!
そこから生じた衝撃波が天井を突き破り霧を破り、雲をつき抜けて宇宙に瞬く星へと届く!
「出たぞ!レッドスターの最終奥儀だ!!」
「星よ…あたしに力をちょうだい…!」
 突き上げた拳に、幾千の星の力が集まってくる。
いや、星の力だけではない…世界中でレッドスターを応援している人たちの力が。
そうさ、みんなで立ち上がろう。レッドスターに力と勇気を送ろう。
さあ、さあ!みんなでレッドスターを応援するんだ!!
「ありがとう…みんなの力、感じる…みんなの声、聞こえるわ!みんなの声であたしは強くなれる!!」
 レッドスターは両手を空に突き上げた!いつもなら片手だが、今は違う…両手だ!!
「レッド・スター最終究極必殺技…メテオ・シューティング・シャイニング・ファイナル・レッドスター!!」
『馬鹿な、馬鹿な、馬鹿な…この私があああああ!!!』
ドッゴーン…!!
 すさまじい爆発と共に、帝王の身体は霧へと変わって行く!
レッドスターの放った星の、赤い彗星の力が悪の帝王の黒い霧に打ち勝ったのだ!!!
「…さすがに…ちょっともう限界ね…」
 しかし、レッドスターもかなりの力を消耗していたようだ…その場に膝をついてしまった。
その場に崩れてしまいそうになる彼女を支えたのは…黒い羽根、いや…
「ブラック・リリィ…?!」
「あら…おばさんって呼ばないのね…?」
「どうして…」
「……聞かないで…私は惨めな女には成り下がる気は無くてよ」
「ふふっ…カラスババアらしいわね」
「うるさい小娘だこと」
 敵同士だったはずの二人だったが、満足げに笑みを浮かべ合うと…互いに支えあうように立ち上がる。
帝王の城は崩れ去り、霧も消え去ったそこからは…海に沈もうとする夕焼けが綺麗に映っていた。
いつの間にか、昼の太陽は夕焼けに変わり、夜の月へと変わりつつある…。
「あら…仲間がお迎えよ…」
「リリィ…あなたも一緒に…」
「やめてくれないかしら?私はあなた達の仲間なんかになった覚えはないんだから」
「でも今はもう…」
「―――赤い彗星、リリィ殿のことは我らが看よう」
「!楼縁姉妹…あんた達…」
「リリィ殿は我らの仲間だからな…」
 楼縁姉妹はレッドスターの変わりにリリィを両脇から支えると、小さくレッドスターに頭を下げる。
「ち、ちょっと…私はあんたたちの事を…」
「リリィ殿…我らは仲間でした…そしてこれからも仲間でいたいと思うのです…目的は無くなりましたが」
「お縁…お楼…」
「ではレッドスター殿…もう会うことは無いでしょうが…また会う時まで…」
「ええ、気をつけて!何かあったら呼びなさい!正義のレッドスターがすぐに駆けつけるから!」
 レッドスターは普段は常に無表情な楼縁姉妹が、微笑を浮かべたのをマスク越しとは言え見逃さなかった。
直後、お楼の放った煙玉が視界を遮り…何も見えなくしてしまう。
そして再び煙が晴れた時、そこにはもう楼縁姉妹の姿もリリィの姿も消えてしまっていた。
「―――…元気で…ね…」
「おーい!ミオー…じゃなかった、レッドスター!!」
「シオン博士!!」
 どこか寂しそうな表情で三人を見送ったレッドスターの元へ、シオン博士たちが駆け寄ってくる。
エンジュもローナも、エヴァ姫も、フータ少年も全員一緒だ。
「やったな…レッドスター…」
「うん…ありがとおじさん」
「お疲れ様です…本当に無事でよかった」
「ありがとう…エンジュちゃん」
「パパと一緒にした改造…役に立ちました?」
「もちろんよローナちゃん!」
「一時はどうなる事かと思ったけれど…助けてくれた事、感謝するわよ」
「エヴァさん…」
「やっぱりレッドスターは無敵だね!!カッコイイよ!!」
「フータ君の声、聞こえたよ」
 レッドスターは全員に声をかけると、清々しげな表情でゆっくりとマスクを取った。
マスクの下は、まだ十代の女子高生の笑顔。
その頬を、優しく撫でる潮風は…まるで彼女の戦いの終焉を優しく祝っているかのようだった。


 レッドスターと帝王の戦いはこれで終わりを告げた。
しかし、星の力を狙って、これからも様々な悪と戦う事になるだろう。
負けるなレッドスター!
がんばれレッドスター!!
みんなレッドスターを待っている!!!
ピンチになったらその名を呼ぼう!
正義の戦士!輝け!我らのレッドスター!!!



===ヒーローショー:おわり===


●終演〜終演:楽屋裏にて〜

「皆さんお疲れ様でした…」
「お疲れも何も無いわよ!!もう、出ずっぱりじゃない!」
「赤星さんは主役でしたから…でもボクも大変でしたよ?一人二役だったし」
「そうそう!ユーだけじゃナイね!ミーもイッショ!大変だったヨ!」
 衣装を着たままで、主演の壬生と縁樹、ローナの三人は簡易和室の畳の上に倒れこむように座る。
さらにその後を追うように、小百合もゆっくりと腰を下ろした。
「それにしても黒澤さん、ものすっごい迫力でしたね…もうはまり役でした!」
「え?そうかしら…普段はそんな事無いんだけど…役の為に頑張ったからかな…」
「まるでリリィそのものって感じで…」
「恥ずかしい…」
 普段は地味なおさげ髪の風紀委員だけに、ブラックリリィとのギャップはすさまじいものがある。
学園祭以降、校内で周囲の見る目が変わるであろう事は必至であろう。
「お疲れ様〜ってうわ!ごめんなさい着替え中?!」
「大丈夫よ!フータ君!」
「や、やめてよ赤星先輩〜…ボクはもうそんなんじゃないんだしー…」
 そう言えば、彼もなかなかどうしてはまり役だったと言えよう。
こういうものにはつきものの、”何故か頻繁に巻き込まれる少年”を見事に演じきったのだから。
「そういえばシオン博士はどこ行ったの?」
「シオンさんなら…サメに縄跳び兵に薔薇係に演出に…掛け持ちがハードでそこでのびてます」
「ってうわっ!?なんでサメの着ぐるみなの?!ねえ?!最後のシーンってシオン博士だったのにっ!?」
「オー!ベリーキュート!ミーはシャークマン、ダイスキ!」
 疲れ果ててのびているシオンに、ローナがぎゅっと抱きつく。
しかし、あまりにも疲れ切っている…というか、燃え尽きているらしく反応は薄いのだった。
「シオンさんは置いといて、エヴァさんは隣で休憩中…」
「となると後は帝王様なんだけど…帝王はどこ?」
「そう言えば終わってから見かけませんよね」
「まだ観客の人たちに絡まれてるのかなあ?ボクらでさえけっこう囲まれちゃったし…」
「その可能性ってありますね…CASLLさん、サービス心旺盛ですし…」
「じゃあCASLLさんを待ちながらちょっとお話でもしましょう」
 縁樹の発案に全員が賛成し、実行委員が容易したお茶やジュースを飲みながらショーについて色々と語り合う。
予定外の爆発があったり、やたらと舞台装置が派手になったり、反応しなかったり、
色々なトラブルもなんとかクリアして無事に物語を終えることが出来たのは奇跡に近いであろう。
何故なら、このためだけに集まった者達なのだから。
「だけどあたし一人で主役って言うのがね〜…嬉しいけど疲れたわ」
「仕方ないですよ…皆さん悪役をやりたいって言うんですから」
「黒澤さんが悪役って言い出したのには正直驚いたけど」
「シオンさんのサメ役や縄跳び兵のあのノリもある意味驚いたな、ボク」
「でもミンナ、ベリーベリー楽しかったヨ!ミーはトテモ楽しかった!またやりたいネ!」
「そうね!あたしも機会があればいつでもレッドスターになるわ!」
「わあー赤星先輩、やる気満々だね」
「やあ、盛り上がってるかい?」
 にぎやかに話しているところへ、帝王を演じたCASLLが戻ってくる。
なんとなく、衣装の裾に子供サイズの足跡がいくつかあるが気のせいと言う事にしておこう。
CASLLは全員がまだ衣装のままである事に気付き、急ぎ委員会の一人にカメラを用意させた。
「何かあるんですかCASLLさん?」
「せっかくだから記念撮影でもどうかと思ってね」
「あ、それいいですね!賛成!」
「ミーも写真OKネ!シャークマンもウェイクアップ!」
「は、はいっ!薔薇ですか縄ですかサメですか?」
「黒澤さんもこちらへどうぞ」
「…おほほほほ!仕方ないわね…さあ、帝王様…私の隣へいらしてください…」
「うわっ…なんかなりきっちゃうと早いなあ…」
「よーっし!じゃあ記念撮影ね!!」
「まあまあ、ちょっと待って。一番大事な人を忘れてる」
 CASLLはそう言って全員を一度制止すると、こちらを向いて手招きをする。
……ん?もしかしてそれはこの俺を呼んでいるのか…?
「その通り…さっきから終わってるのにナレーションしてもらってて、悪いね…」
「舜さんが実は一番はまり役って言うかなりきってたのかも」
 そんな事は決してないつもりなのだが…そういうのならばそうなのかもしれない。
「さー!もうナレーションはいいから写真撮っちゃおう!やっぱ主役だからあたしが真ん中よね!」
「じゃあその脇にはやっぱりエンジュとローナかな…?」
「ミーはお楼がいいネ!着替えてくるネ!」
「え?ちょっと…?!どうしよう…それならボクもお縁にしたほうがいいのかな…」
 おやおや、少しバタバタとし始めたようですね。
ですがまたそれも楽しい事です…本当に楽しかったですから。
さて、この後もまだ写真撮影や打ち上げやと色々とイベントや話題は尽きないのですが、
どうやらこの俺、舜・蘇鼓の出番はここで終わりのようです…

 皆様、この度はヒーローショーをご覧いただき誠にありがとうございました!
再演の予定は今のところありませんが…
また次の公演がありましたら、いつでもお声をかけてください。

それでは…楽しい学園祭を…!






〜〜〜終わり〜〜〜



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■   登場人物                  ■
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1年A組
【2098/黒澤・早百合(くろさわ・さゆり)/女性/ブラック・リリィ】
1年B組
【1936/ローナ・カーツウェル(ろーな・かーつうぇる)/女性/ローナ=お楼】
1年C組
【2164/三春・風太(みはる・ふうた)/男性/フータ少年】
2年A組
【2200/赤星・壬生(あかぼし・みお)/女性/ミオ=レッドスター】
3年B組
【1431/如月・縁樹(きさらぎ・えんじゅ)/女性/エンジュ=お縁】
3年C組
【3356/シオン・レ・ハイ(しおん・れ・はい)/男性/シャークマン=縄跳び兵=その他諸々】
【3453/CASLL・TO(キャスル・テイオウ)/男性/帝王】

【3678/舜・蘇鼓(しゅん・すぅこ)/男性/司会=ナレーション】


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■         ライター通信          ■
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 この度は初のパーティノベルに参加いただきありがとうございました。
学園祭の出し物と言う事でどんな出し物があるのだろうと楽しみにしておりましたところ、
このようなステキなヒーローショーを任せていただいて特撮友の会の皆様には感謝しております。(笑)
実際の学園祭での出し物の脚本を担当したような気分で楽しく書かせていただきました。
皆様それぞれプレイングを拝見していて、うまくキャラクターがかみ合う事に驚きつつ、
ほとんどアレンジする事もなく、素直にキャラクターは作らせていただきました。
全編ギャグにしようかなとも思ったのですがそこはかとなくシリアスも織り交ぜさせていただきました。
 戦隊ものになるのかなと思いきや、なんとヒーローを選んだのが赤星様一人だけと言う事で、
ならばライダー系の主人公は一人で…しかもヒロインで、と言う事で進めさせていただきました。
設定として、如月様とローナ様のお二人には敵の姉妹と見方の姉妹の二役をやっていたき、
黒澤様には思いっきりはじけた敵の女幹部を…本当に楽しゅうございました。
 そして、場の盛り上げを買って出てくださった三春様と舜様。
こちらも思いっきりテンションも高くノリノリ(死語)で書かせていただきました。
CASLL様はボスと言う事で最後には華々しく散っていただき感謝しております。
そしてシオン様に関しても、細やかな裏方の心遣い…感謝しております。
 兎にも角にも、どの方をとっても…とても楽しく動いてくださいまして、
まるで実際にそのヒーローショーを見ているような気分になる事が出来ました。
 このような楽しい学園祭の出し物に参加させていただき、本当にありがとうございました。
またヒーローショー開催の折には、いつでも声をかけて下さると嬉しいです。(笑)

:::::安曇あずみ:::::

※誤字脱字の無いよう細心の注意をしておりますが、もしありましたら申し訳ありません。
※ご意見・ご感想等お待ちしております。<(_ _)>