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<幻影学園奇譚・学園祭パーティノベル>


プールサイドはどきどきパニック☆

 祭りの余韻を躍らせる鮮やかなファイヤーストームが揺れる。
 赤々と世界を染め上げる輝きを受け、それぞれの想いを胸に佇む学生達。去来するのは、名残惜しさか、感慨か――それとも安堵か嘆きか。
 なんだか、微妙に学園祭を惜しむには、不思議な言葉が羅列されたが、その辺はこれからおいおい語るとして。
「楽しかったですね」
 隣に立つ男にぴったりと――それはもう、腕どころか足まで絡めて必要以上に大密着――寄り添い、桐谷・佐保は言葉ではとても表現できないほどの美しい笑顔で微笑んだ(言葉で表現できないので、当然文章でも表現できません)。
 罪作りなのは『超』がつく彼女の美人っぷりだ。しかしところがどっこい、現実世界では桐谷・龍央という息子まで産んでる彼女が、実は――あ、いえ、これ以上はなんだか天候が怪しくなってきたので割愛させて頂きます。詳しくは彼『女』の個別ページをご覧下さい。
「主様(ぬしさま)が楽しかったのなら、俺も楽しかったよ」
 最愛の人の至福の笑みに目尻を緩ませ、桐谷・獅王が佐保の細くしなやかな腰に手を回す。
 この学園においては成長期の青年になっている獅王の腕は、ほんの少しだけ頼りなさを残しており、いつもより気を遣うようにゆるりと体重を預けた佐保は『主様』という呼称に可愛らしく頬を膨らませた(←実はこの辺、獅王ヴィジョン)。
「あなたはいつまでたってもその呼び方を改めてはくれないのね」
「主様は主様、だからな」
 主様……ってことは、貴方は下――失礼しました、ただいま適切でない表現が使用されそうになったため、取り急ぎ一部を削除させて頂きました。後は皆様のご想像にて各自お楽しみ下さい(ぺこり)。
 とまぁ、先ほどから地の文で余計な注釈が入っているが、要するに獅王と佐保がラブラブモード大全開で、ファイヤーストームも恥じ入っちゃいそうなほどの、桃色オーラを発しているという事だ。例えば、彼らの背後で、彼らの一人息子が滝のような涙を流し続けて悲嘆に暮れていたとしても。
「………俺の……俺の幸せって……」
 一つになって長く伸びる両親の影にずっぽり覆われながら、きちんとした体育座りでグラウンドに鎮座ましまし龍央少年。彼の尻に敷かれたこの場に非常に不似合いな漆黒のレースで飾られた座布団は、幼馴染である原咲・蝶花からの差し入れらしい。
 この学園に入ってからというもの、彼にとって何が一番の不幸の原因になったかというと、実父である獅王と全く同じ年齢になってしまった、ということだろう。元々似通った顔立ちの二人だったのだが、同い年になってしまうと、それはもう大変愉快に鏡とのご対面状態。けれどもやはり侮れないのは亀の甲より年の功、獅王の方が雰囲気イイ男オーラを発していた。見た目同年代の両親に撫でくりまわされる思春期の青年の心の葛藤たるやいかに! 皆さまも容易に想像がつくことであろう――つまり、周囲の目から見ればとても愉快状態だったのだ。他人の不幸は蜜の味って言うものね。
「せめて……せーめーてっ、あのウルトラクイズさえなければよかったのっっ」
 というわけで、龍央少年リクエストにより、そのウルトラクイズをファイヤーストームヴィジョンで振り返ってみましょう〜。
「振り返らんでいいわっ!」
 いんや、君のパパのご注文でもあるし。
「あぁあぁあぁあぁあぁぁぁぁぁぁぁっ」
 龍央、グラウンドにでっかいのの字を書いた。両親の密着シルエットは……(頬染め視線逸らし。そのままフェードアウト)


  **  **  **


「はい、どうぞ(微笑)」

 【本日のスペシャルメニュー、コースご案内】★。、::。.::・'゜☆。.::・'゜★。、::。.::
 1番:うっふんコース
  ちゃいな服。燃える真紅は恋の色。スリットは太ももギリギリ、大人の魅力。

 2番:どきどきコース
  せーらー服。こすぷれ定番。襟とスカートは濃紺。襟は2ライン。

 3番:ちくちくコース
  なーす服。清楚な白なのに、なぜか心はぷすぷす擽られ、ちょっぴり倒錯。

 4番:ひらひらコース
  すっちー服。各種ある中から本日はエプロン着用時をチョイス。マニア垂涎。
 ★。、::。.::・'゜☆。.::・'゜★。、::。.::・'゜★。、::。.::・'゜☆。.::・'゜★。、::。

「で、何なんだ。これは」
 ぴきり、と音がしそうな程あからさまに彼が表情を引き攣らせたとしても、誰も決して非難はするまい。だって、どう考えたってそれは理不尽だった。降って湧いた災難、当該者以外には愉悦の種(←どっちかっていうとこっちの方がウェイトを占めるかもしれない)。
 相沢・久遠は秀麗な眉を潜めて低い唸り声を上げる。
 スタンプを集めるべくやって来たプールで、突然目の前にこんなレースぷりぷりぷりてぃーメニュー一覧をつきつけられたら。
 しかも、列は長蛇を成していたのに、なーぜーかっ!! まさに何故か!? 自分の番になってこんなもんを差し出されたらならばっ。
 危うくうっかり本性が出そうになるくらいに、ぴきぴきっと。
 だから当然、彼の背後に渦巻く陰謀が、彼を生贄に差し出したとは、ゆめゆめ思うまいっ!(力説)
「あー……つまり、何だ。どれか選べということか?」
「いえ、相沢先輩には無条件で此方をお渡しするようにと……」
 ビロード製の漆黒の布袋。それには白糸で縫い取りが。
 『うっふんコース』
「……下手だな」
「そうですね。私もそう思います」
 布袋の品位に対し、かがられた文字は異様に汚かった。多分、小学校の家庭科の授業で、初めて裁縫を習った子供くらいの出来だ。あいたたた。
「誰が用意したんだ?」
「分かりません。私はただ通りすがりで、ここからこれを皆さんにお選びいただき、渡すように仰せつかったので……」
 つまりは天の陰謀確定。人生、諦めが肝心。巻き込まれましょう、骨の髄まで。例え、学生証を持っていなかった人の代わりに送り込まれたがゆえの悲劇であろうとも。
「えと、じゃ俺は籤でも引けばいいのかな?」
 ゆらーりゆらり、と陽炎のような深刻さを漂わせ、ビロード布袋を抱き締めている久遠の――なんだかんだで物凄く彼は律儀だったと思う。やはり世界には抗いがたい力が働いているのだ、合掌――背後から、ひょいっと顔を出したのはプール対策で既に学校指定の水着に薄手のパーカーという格好で準備万端の夏野・影踏。
 その表情は既に事態を楽しんでいる感じに見受けられる。何はともあれ、人生は楽しんだ者勝ちと即思考を切り替えられる彼の長所は、おめでたい性格。いや、めでたいんだから長所でしょう、絶対に(断言)。
「あ、はい。ここに準備してある籤を……残りは3本しかないんですけど」
「うーん、メニューが4番までしかないもんね。じゃ、残りの参加者は………」
 影踏、振り返る。
 そこにいたのは獅王。次は――佐保だったはずが、いつの間にか龍央。偉大なるは母親の権力。
「えっと、俺から引いてもいいかな?」
「あぁ、かまわんぞ」
「俺はかまうっ! っつか、なんで俺を巻き込むんだ!!!」
「龍央v せっかくだから楽しまないとvvv」
「そうだぞー、龍央(にこー)。主様もあぁ言ってるんだから(佐保の腰に手を回し)」
「そうそう。それに私には秘密アイテムがあるのよ」
「って、そこでイチイチくっつくなよ! 俺と同じ顔してんだからっ!」
「あ? 同じ顔して後から生まれてきたのは龍央だろ? お前に俺を責める権限はないぞ」
「そうそう。それに龍央だって、赤いパーカーに学校指定の水着姿なんて、気合充分状態じゃない♪」
「こーれーはーーーっ、あーーーがーーーっ!!!」
 さて、桐谷ファミリーの愉快な会話はこの辺で打ち切っておきまして――龍央少年の惨敗で終わるのが目に見えてるし――現場中継に戻ります。
「ん、それじゃ俺から籤を引かせてもらうね」
 影踏、段ボールで作られた腕の出し入れの場所だけ口を開けられたメニュー決定ボックスに、ぴろんっと腕をつっこむ。
 ひやり。
 ぬるり。
「……は?」
 なんか触った。妙なモノが。
「えっと……これ、間違いなく籤ボックスだよね?」
「と、思いますけど」
 箱の端から、謎の緑色の液体ぽたぽたぽた。
「……えーっと、誰からこれ預かったんだっけ?」
「通りすがりの人……です。名札をつけてらっしゃらなかったので、お名前は分かりませんでしたが」
 ………したぽたしったん。ぽたぽたぽた。
 じゅー。
「って、最後の『じゅー』って何だよ! 『じゅー』って!!」
「『呪ー』ですか? あ、地面が少し焦げてますね」
 さすがの影踏もいぶかしみ始める。だって、当然だろう。地面が焦げたら(←問題はそれだけじゃない気もするけれど、気にしない方向で)。
 自分はいったい何を触ったんだ、と思うと………ぷるぷる小型犬状態の影踏が完成しても仕方あるまい。
 ぴるぷるぷる(←怯え)
 したぽたじゅー(←謎物体)
 しくしくしく。
「……蝶花せんぱ――あ、今は蝶花さん、でしたね。えとえと……蝶花さん、それ……奇怪謎生物研究会の出し物用の箱だったそうです。籤ボックスはこっちだそうです」
 若干、ご都合主義的登場の仕方が気になるが、その辺は目を瞑ってください、ごめんなさい。
 そういうわけで、ぴるぴるぷるぷる、したぽたじゅー、に新たに加わったしくしくの主は、いつの間にか一帯と同化しまくっていた蝶花に、擬音の通りほろほろと涙を流しながら、謎物体を滴らせる箱より一回りは小ぶりな箱をついっと差し出した。
「……間違い?」
「えぇ。蝶花さんにそれを渡していった方が、後から楽しそうにこちらを持ってらっしゃいました」
 できれば、加わりたくなかった。この奇怪な一団に。
 私はただ静かに学園祭を楽しめたらそれで良かったのに。
 紀田・結城は蝶花に新たな箱を手渡し、即座に踵を返そうとする。こういうことは、遠目で眺めている方がきっと安全なのだ。近寄っては巻き込まれる――妖精さんも、そう警戒信号を発している。
 が、その目論見は当然阻止される運命にある。なぜなら彼女もこの物語の参加者の一人なのだから。
「結城さん、これ誰から?」
 引き止められた。
「だから、蝶花さんが最初にそれを受け取った方から(涙)」
「どんな方だったか覚えてる?」
「………あれ?」
「ね、思い出せないのは何故かしら?」
「……………えっと……」
 必死に何か答を探そうとする常識人、結城。しかし天の陰謀が渦巻くこの場で、それは無力に等しい。というかですね、皆が常軌を逸してる中で、常識を固持し続ける方が、ある意味いっちばん奇怪だと思うのだけれども。
『結城をその辺の変態と一緒にするなー』
 変態とは失礼な! ん? 今の声は何処から!??!?
『ふふん、結城以外に姿は見せないもんね』
 えと、多少面倒ですのでサックリ説明してしまいましょう。結城嬢には風の精霊が憑いております。その名もエアリエル。全長15cmくらいの愛らしいヤツ。
『全長って言うなー。身長って言えー』
 結城嬢とは会話も出来ます。妖精さんです。だから「妖精さんとお話してるのv」とか「妖精さんが見えるの」って結城が言うことがあっても(言わないけど)、それは「あー…あの娘、可哀想にねぇ……」って同情視線を向ける必要はないんです。
『妖精をバカにするなー!』
「……どうでもいいけどさ、話がさっきから全然前に進んでないんだけど? これでいいの? このまま終わる気?」
 ナイスツッコミありがとう! 影踏くん。
「いや、地の文章に感謝されてもあんまし嬉しくないし」
 何時の間にやら、謎の物体に触れてしまった手をプール脇にあった消毒槽に漬けて、綺麗さっぱり殺菌完了してきた影踏。
「あ、そうでしたね。このまま終わったら大変です。というわけで、はい籤をどうぞ、です」
「蝶花さん……切り替わり、早すぎませんか?(ほろり)」
『結城、ガンバレー!!』
 かくして、その場に居合わせた不幸な男性参加者――本当に不幸かどうかは、ちょっとどころかかなり不明だけれど――四人全員にステキ衣装が行き渡ったのである。
 あ。
 謎の通りすがりについての追求は却下。運命ってそんなに簡単なものじゃないんだよ♪(運命かよ!)

 ★。、::。.::・'゜☆。.::・'.::・'.::・'.::

「で、ここで皆さんに何をして頂くかと言いますと!」
 足元がすーすーする。すこぶるすーすーする。ちょっとの風がこんなにも気にかかる。何が楽しくて、女性というイキモノは己の肉体をこんな危険な状況に晒していると言うのか。
「なんでここに持ち込まれたのか分からないんですけど」
 さらに言うなら、この靴! 足の形にぴったりフィットどころか、強引に変形させるんじゃないかと心底疑いたくなるほど、履きにくくって歩きにくい。
「まぁ、起こってしまったことを今更言っても仕方ないですもんね♪」
 しかし、なんでこんなに胸元に詰め物をする必要があったんだ? 足元が見えなくて不便な事この上ないんだが。
「というわけでー、ウルトラクイズinプール突発イベント! 緑色の物体を増殖させてるメアリーちゃんを捕獲せよ! が間もなく開始です!!」
「って、なんで僕らがそんなことをしなきゃいけないんだい?(ぴききっ)」
 心の独白が、ついに音声を伴った。
 真紅のシルクに煌くスパンコール、輝く金糸で優雅に羽ばたく鳳凰を刺繍されたチャイナドレスを身に纏った久遠が、進行役の少女を思いっきりどついた。
 危険を察知したのか、蝶花は結城と対岸のプールサイドでレースをふんだんに使用したビーチパラソルを広げてティータイム中。
 なお、プールに出没するはずの怪奇大好き瀬名・雫嬢も事の重大さを察してか、雲隠れ中である。人間、引き際を見極めるのが肝心なのだ。
「引き際が肝心って、引いてる隙すらなかったろ。 えぇ? この状態でどーやって引けっつーんだよ!」
 あらいやん、せっかく美女に仕上がった久遠さんってば、そんなの怒っちゃ傾国の美女っぷりが魅力半減v 頭からぴょっこり耳が生えちゃいますよ?
 元々フリーのモデルとして雑誌を賑わせている久遠には、ギリギリスリットのチャイナドレスを着こなす素養が充分あった。はっきり言って、似合っております。ドキドキスリットから垣間見える生足(!)が、チラリズムの極めつけ。脛毛は処理をせずとも気にならない――に違いない。だって胸元どれ見ても綺麗なんですもの――すらりと細い引き締まった美脚に、それと知らずにプールサイドを歩く男子学生の視線が釘付け♪
「えと、でも相沢さん。ナンシーちゃんを捕獲しないとクイズ始まりませんよ?」
「……名前、変わってないか?」
「気のせいです」
「いや、気のせいじゃないだろ」
「――とにかく、モンローちゃんを捕まえないとクイズが始められないんです」
「……また変わっただろ………」
「だって、ステファニーちゃんがクイズ用の問題集を咥えてプールに飛び込んでしまったんですもん♪」
「いったいどれが名前だ! っつか、そもそもなんでそんな得体の知れないモンに問題集を持ち逃げされんだよっ! しかもなんでプールの中にっ!!」
「うーん、やっぱりなんか溶けそうな雰囲気ですよね」
 くるり。
 も一回くるりんターン。
 ピラリとエプロンが舞い上がってかなりいい感じ。
「だけど、問題集を回収しないとクイズは始まらないし……」
 くるりんりん。
「……あのよ、夏野つったっけ。なにクルクル回ってんだ?」
「え、だって面白いじゃないですか」
 此処にももう一人、異様にすっちー服(エプロン版)が似合う男がいた。170cm強の身長は、長身の女性と言っても何ら問題ない。白地にブルーのストライプのシャツに、空色のネクタイ、紺のタイトスカートをぴしっと着こなせば、ぱりっとしたキャリアウーマンの完成。
 それにすっきりシンプルエプロンを身につけた影踏は、ターンする度に舞い上がるのが楽しいらしく、さきほどからプールサイドでくるくる回っていた。この気持ち、女性ならなんとなく分かるだろう! あの翻る感じがなんとも堪らないのだ。
「――目覚めるなよ?」
「え? 何にですかー(にこー)」
 実は微妙に目覚めてる?
「ところで、そっちの二人は何やってんだ?」
 チラリと視線を馳せる。見たくないものを、一瞬垣間見るような、そんな逃げの視線で。
「だって、乙女の夢を壊しそうだったんですものv」
 じょり。
「だよなぁ。やっぱりやるには身も心も捧げないとな」
 じょりじょり。
 じょーりじょりじょりじょりっ。あ、ちょっと肉も切れた。
「あら、どうしましょう……えいっ」
 ぺろり、と艶めかしい濡れた輝きを帯びた可愛らしい舌が(←獅王ヴィジョン再び)つぷっと獅王の脛に浮かんだ赤色の雫を舐めとる。
「いや、主様。そこまでしなくていいって。それにほら、どっちかって言うと俺が看護する側だし」
「あら、そう言えばそうだったわね」
 微笑みあう獅王と佐保。その風貌は――正直、なんだか表現によっては18禁コードに引っかかりそうな気がするが、解説せぬわけには行くまい。んあ? さっきからこの二人の描写のトコだけ、妙な色気を醸しだしてないかって? うーん、趣味(きぱ)。
 獅王が身に着けているのは純白のナース服。しかもその手のお店で扱っていそうな、超ギリギリのミニ。ありえないくらいキワドイ。あとちょっと上にズレたら激しく危険だ。
 そして佐保。彼女は……えっと……持参? さっき言ってた秘密アイテムとはこれのこと? 胸元に『3年B組(改行)きりたに・さほ』と黒マジックで書かれた白い布製の名札をつけた濃紺のスクール水着。ラインの一本も入ってない、すっきりシンプル色気皆無のアレ。なのにどうして、こんなに鼓動が高まるのだろう?(どきどきどきっ)
 で、その二人がくんづほぐれつ何をやってるかと言うと。
「その表現、怪しいだろ」
「いやん、妖しいですって、あなたv」
「そりゃぁ、主様の魅力の前には誰だってひれ伏すさ」
 木製の学習椅子に獅王を座らせた佐保が、せっせと獅王の脛下を刈っていた。それはもう、綺麗さっぱりツルンと卵肌になるくらい。
「あのよ……男としてのプライドは?」
「薄い(?)君に言われたかぁないね。そもそも主様がしてくれる事なら、俺には全て至福なの。分かる?」
「しくしくしくしくしくしくしく」
 久遠の冷静な突っ込みに、サラリと獅王が返す。響いてきたのは、ものすごーーーっく悲しそうなさめざめ啜り泣き。
「俺はっ……俺は、こうもっと真っ当な学園ライフをだなっ!」
「あなたv これで完璧よ。後はこの水で流して……」
「主様、その緑色に染まった水はちょっと傷口に染みそうだぞ?(笑顔)」
「あたたかい家庭、普通の両親(そもそも普通って何だ)に、学業も運動能力も平々凡々な俺」
「学業は平凡でしょう? あら、大丈夫よ。だって水がわたくしに悪さをするはずがありませんものv」
「それもそっかー」
「なんでそこだけ突っ込むんだよ!! っていうか、オヤジ! 自慢してひけらかすな、その足!! 母さんも! 上着くらい羽織ったら――」
 桐谷・龍央、神聖都学園2年生。現実でも悩み多き17歳。現在もれなく清楚なせーラー服姿。膝丈のプリーツスカートがマニアの心を擽る。だからスカートと同じ色のハイソックスの生地の隙間から、ちょっぴり脛毛がはみ出していても、当然の如く黙殺する方向で。っていうかね、そっちの方が絶対に普通なのよ。どう考えても他の三人――一名は強制的に処理されたのだけど――の方が、ちょっぴりおかしいの。だから少年よ、そんなに涙する必要はない(肩ぽむり)。
「違うっ、俺が嘆いてるのはそっちじゃなくて! いや、それも充分に悲しいけれど、それよりもっと人として実の親には失ってほしくないものとかあるだろ!!?」
 ずびしっと両親を指差す龍央。しかしその先には、愛息子に向って二人揃ってあっかんべーと舌を出す獅王と佐保の姿。
「野暮な息子だなぁ、お前。そんなんだから子供って言われんだぞ」
「龍央、長い人生楽しまなくてはもったいないわよ?」
「うわぁぁぁぁぁっ、俺は俺はっっ、おーれーはぁぁーーーっ」


「あ、相沢先輩が龍央先輩慰めてますね」
 一方その頃、優雅なティーパーティ組はと言うと。
「あら……本当。激写……」
「蝶花せ――蝶花さん?」
 結城お手製のスコーンに薔薇のジャムを纏わせ、薫り高いロイヤルミルクティーと共に、秋特有の少し涼しくなった風に髪をなびかせながら、ゆっくりとした時間を楽しんでいた。
 因みに、ビーチパラソルと一緒に持ち込まれたテーブルセットの上に、なんだか場違いな一眼レフカメラがあるのは、特に気にすべきポイントではないはず。
「……一番値がつくのは知名度から行っても、相沢先輩だろうからって頼まれたの」
 カシャリ。
 赤いチャイナ服の美女の勇姿がフィルムに焼き付けられる。こうやって一つ一つ思い出というのは積み重ねられていくのだ、きっと。多分。Perhaps.
「値って……いったい誰から?」
 カシャリ。
 また、一枚。風がスリットから吹き込み、タイミングよくドレスの裾が舞い上がった瞬間。
「最初に箱を預かった方から。世の中、不思議が多いわね」
「……そう、ですね」
 確かに世の中に不思議は多い。こんなプールサイドでひらっとティーパーティが開かれているのも一つの不思議だ。それに関しては疑問を抱いている者は皆無だったりするんだけれど。
 つまりは、みな、何処かで少しづつ不思議という事で(結論)。
「……本当は、少しくらいはクイズに参加したかったんですけどね」
 結城、対岸で繰り広げられている地獄絵図を遠い目で眺めながら頬杖をつく。
 ただのクイズだったら、参加してみたかった。正直、人と争うような事とか、クイズ自体得意ではないのだけれど。
 それでも、こんな風に皆と同じ時間を楽しく共有できるのは、滅多にない機会だから。自分なりにがんばろうと思っていた。
 銀のスプーンで白磁のティーカップの縁をカツンと弾く。喧騒とは程遠い、涼やかな音がカシャリというシャッター音に混ざる。
「でも……やっぱり、あの勢いは怖いです」
 多分、それ正解。妖精さんも結城の肩の上で、激しくうんうん頷いている。
 ネタにされるのは男衆と、ノリノリ(死語)の女性だけで充分だ。ほんの少し、ここまでネタの香りは漂ってはいるけれど。
「あ――夏野さんがひっくり返ったわ」
 蝶花の声に、結城はしっとりと沈み込んでいた自分の世界から、はっと顔を上げた。


「あ、いえ、俺はっ!」
「あら、遠慮する必要はないのよ?」
「おう遠慮するな。俺の主様自慢のボディラインを堪能してくれ」
 舞台は再び賑やかな方に戻る。決して危険な集団の方、とは言わないで。
 で、何が起こっているかと言うと、だ――佐保が影踏の腕に自身のそれを絡め、にっこり微笑んでいた。ふっと視線を影踏が下ろせば、そこには夢のような胸の谷間。
 獅王はというと。自慢の佐保を他人に見せ付けるのを楽しんでいる節がある。
 生贄に選ばれた哀れな子羊……というか、小犬な影踏は、うっと鼻を押さえてしゃがみ込む。
 心臓が爆発しそうなほど、早鐘を打つ。女性より、どちらかと言うと男性にトキメキをおぼえる影踏をして、佐保の放つ色気は凄まじかった。
 というか、よく考えれば彼『女』は――以下、佐保さんの個別ページの設定参照。特に性別欄。子供も産めちゃうんだから、世の中進歩したもんだ(ちょっと違う)。
 その時、異変は起きた。
「……こ……こっちなら耐えられそうです」
 スチュワーデスがスチュワーデスになった。ってか、単なる女装だったはずが、影踏が女性になった。姿形がそっくり入れ替わった。
 現実を書き連ねているだけだと、なんだか現実感がわかないので、ここでまたご都合的な説明を。
 影踏には、前世帰りを起こせるという特殊能力があるのだ。それは発作的に起こるものであり(多少のコントロールも可能だが)その変体質のせいで影踏は昨年、勤めていた会社を辞めざを得ない状況に陥った事さえある。まぁ、今は今で再就職できているようなので、深刻に考える必要はないと思うのだが――って、突然姿形が入れ替わるってのは、ものすっごい問題な気が……
 まぁ、そんなこんなで。
 佐保の刺激的ボディに耐えかねた影踏は、前世ボディに変異することで、この現実に立ち向かおうとしたのだ! なんたる健気な!!
 しかし、現実は彼に非常に冷たかった。それはもう、ブリザード並に。
「つまらないわ」
「そうだな。女装は男がするからこそ面白い」
「その意見には僕も賛成だな。普通の女性がその格好をしていても、別に面白くない。僕にその手の趣味はないしな」
 ……論点はそこにあるんじゃないと思うのですが。
「あぁっ、相沢さんまでっ!!」
 桐谷夫妻のツッコミは予想済みですかいっ!
 可憐な18歳くらいの、佐保と張り合えそうなほどの美少女に姿を変えた影踏が、がっくりと肩を落す。
 唯一、目の前で起こった怪異に真っ当な反応を示してくれそうな龍央は、思いっきり目を背けていた。どうやら現実から逃避しているらしい――無駄な努力なのにねぇ。だってよく考えてごらんなさい、貴方は誰から生まれてきたと思っているの?
「こうなったら……こうなったらっ――インパクト勝負です!」
 ずびしっ、とポーズをつけた影踏。天を指差し変身ポーズ。そのままくるりんと一回ターン、ひらりと踊るエプロン。
 びりべりばりべりっ。
「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉ!」」」
「これで、どうですっ!!!」
 びりびりびりびりりいっ。
 はち切れた。きつめのすっちー衣装が、内包した肉体の圧力に耐えかねて、あちこち裂ける。布の切れ間から覗くのは、見事なマッチョボディ。
「うわぁぁぁぁ………っ」
 感嘆の声を上げる閲覧者(獅王・佐保・久遠)の声に、思わず顔を上げてしまった龍央が、見てはならない物を見てしまった! というような悔恨の呻きを漏らす。
 だって、目の前にあったのは悲惨な姿になってしまったスチュワーデス衣装を纏った、欧州系男性、しかも30代っぽい筋肉だるまだったのだ。
 ぷるぷる小犬っぽかった影踏が、ぱっちり目でふさふさ髪の毛だった影踏が→マッチョメーン♪
「これは流石に驚きですわ。ちょっと触らせて頂いても宜しいかしら?」
「俺も俺も! ふわー、見事な肉体美だなぁ」
「そっち系の雑誌でモデルやれるんじゃないか?」
 褒めちぎられて、まんざらでもないらしい影踏は、お約束の筋肉美ポーズをプールサイドで疲労する。腹筋、割れてます。胸筋、ぴくぴく動かせます。ノリがとってもいいです。素敵です。
「ふんっ、ふんっ、ふんっ」
 飛び散る汗、華麗に宙を舞い、すっかり緑色に染まりきったプールに飛沫を上げて落ちる。じょわっと怪しげな音を立てて、湯気が上がったような気がするが、参加者にとって完全に眼中外になっているようだから、どうでもいいか。
「「「おぉー」」」
 賞賛の声は、時として人を暴走させる。いや、もう充分暴走してるとかは言わないで。
 獅王、佐保、久遠の声援(?)に背中を押されたのか、突然影踏はプールサイドを走り出した。目指す先には、優雅にティータイムを楽しむ少女達の姿。
 どうやら、彼女達にも褒めて欲しいと思ったらしい。
「……プールサイドは走ったらいけないって言われなかったかしら?」
 事態の変化に気付いた蝶花がポツリと漏らす。ツッコミ所が微妙にズレているのは、それも彼女の感性だ。
 お嬢様って、箱入りだから常識を超越するんだよね。
「いっ……いやぁぁぁっ」
 あれ、こっちのお嬢様には常識があったようです。
 想像してみましょう。とんでもない格好をした外人さんなマッチョメンが自分を目指して、輝く汗を撒き散らしながらプールサイドを駆けてくる姿を。はい、冷静に。
『結城に何をするんだーっ!』
 風の妖精、本領発揮。
 結城が襲われると勘違いしたエアリエル――実際、襲われてるようなもんだ。視覚的暴力で――が、ふわりと宙に舞う。
『痛いの痛いの、飛んでいけーーっ!』
 うん、確かにちょっと痛い。種類は違うけれど――っていうか、これはマッチョメンに対する差別なのではっ!? いや、マッチョメンが問題ではなく、そのマッチョメンがびりびりに破れたすっちー服を着ていることに問題があるのだ(自問自答)。
「いやぁぁ〜〜〜んv」
 結城にしか聞こえないエアリエルの風を使役する声がプールに響いた刹那、渦を巻く突風が駆け抜けた。
 が――しかし。悲鳴があがったのは、影踏からではなく、もっと遠いところ。
「………」
 獅王の目尻が下がる。
「あっ、いやそのっ」
 久遠が慌てて目を背ける。
「―――っっっ!!」
 声に振り返った影踏が、華麗な放物線を描きながら鼻血吹きつつ卒倒する。
「――オヤジ! にやけてる場合じゃねぇだろっ!!!」
 現実から逃避していた龍央が、慌てて現実に復帰する――が、その頬も紅潮している。
「いや、だってなかなかこういうシチュエーションはないだろ」
「あってたまるかー! 変態オヤジーーーー!!」
「変態とは失敬な。裸エプロンと水辺でポロリは男の永遠の浪漫だ」
 言い切りやがりました、この男。
「あら、でもやっぱり見せていいのは貴方だけv」
 ぱしゃーーーん。
 さて、ここまで書けば皆さんある程度はお分かりだろう。そうなのだ、エアリエルが起こした風が、あろうことか佐保が着ていた水着の肩部分を直撃し、器用に、実に器用にそこだけカットして行ったのだ! 当然露出する乙女(?)の柔肌。
 そんな上手い(美味い?)話、あってたまるか! とお怒りの声が聞こえてきそうだが、これもまた運命、黙って受け入れてはくれないだろうか。
 ちなみに最後に聞こえた飛沫が上がる音は、佐保が緑色のどろどろした液体で満たされたプールに飛び込んだ音――え? このプールに……?
「誰が受け入れるか! って、母さん!!」
 龍央の絶叫がプールに響く。どんな母親でも彼にとっては唯一無二の母親だ。例え――この先、佐保さんの個別ページ参照(しつこい)。
 だが、最愛の人の激烈ピンチを前に獅王は全く動じなかった。分かっていたからだ、この後どうなるか、を。
 人々の顔から最初の衝撃が去らぬ内に、それはさらなる驚愕の表情に取って代わられた。
 激しく上がる水飛沫。プールの中身を全て巻き上げて、宙へと舞い上がったのは美しい光沢を放つ鱗に全身を覆われた巨大な竜。
『貴方〜、そういえば今日は『あなたの隣の百物語』の再放送があるんだったわ。というわけで、わたくし、先に帰っておりますわねー』
「おー、晩飯楽しみにしてるー」
 竜神さまはB級ホラー番組を観るために、そのままのお姿で学校から去って行かれました、とさ。残された人間の呆然っぷりには目もくれず。
 なお巨大佐保が去った後、卒倒した影踏(いつの間にか通常モードに復帰)の頭の上に、彼女が身につけていたスクール水着の残骸が、そして謎生物アデリーちゃんが龍央の顔面に残されたらしい。
 ちゃんちゃかちゃん♪

「蝶花先――蝶花さん、こんなオチでいいんでしょうか?」
「……人生、なるようにしかならないわ……」


  **  **  **


「なんてゆーか……無茶苦茶なウルトラクイズだったな……」
 ファイヤーストームを眺める白い頬が茜色に染まる。ばったり出くわした久遠の横顔を見上げながら、影踏は無言でこっくりと頷いた。ちなみにその横顔にちょっとドキドキしていたのは君と僕とだけの秘密だ。
 結局、彼らが参加したウルトラクイズがどうなったかと言うと――彼らが参加していた時間を除いて、特に大きなハプニングもなく和やかなムードで実施されていた……筈、多分。
 とういかです、基本が夢の中の学園なので、何でもありなんです(きぱ)。
「開き直ってんじゃねぇよ、ソコ」
 はうわっ……しくしく、ごめんなさい。
「でもまぁ、楽しかったからいいじゃないですか」
「……本当にそう思うか? 楽しかったか!?」
「えー………っと、ある特殊な意味で、かな。それにほら、竜神なんていうレアなものも拝めたじゃないですか」
 ……拝んでもあんまりご利益とかなさそうな雰囲気だったけど。昔はどうか知らないが、今じゃスクール水着を嬉々として着ちゃう竜神さまだし。
「ま、そういうことにしておくかな」
 確かに普通の人間ならアレは珍しいものなんだろうな、そう自嘲的な笑みを頬に刻みながら、久遠はファイヤーストームの更に遠くに視線を馳せる。
 ……遠い目って癖になるよね――って、茶々は置いといて。うん、せっかくシリアスモードなんだから。
「あら……相沢先輩に夏野先輩」
「お、原咲に紀田じゃん」
「こんにちは。学園祭、終わってしまいましたね」
「こんにちはー。うん、終わっちゃったね」
 新たに加わった、あの凄惨な現場で知り合った顔に、久遠と影踏も柔らかな笑顔を返す。人の縁とは奇妙なものだ。例えどんな形で結ばれたものであろうと、そこからどう続いていくかは誰にも分からない。
 分からないから、面白い。
「そういえば……相沢先輩。申し込みもう三桁突破してましたよ」
「は?」
「相沢先輩の赤チャイナドレス姿の写真。校門横の掲示板にさっき張り出されたらしいんですけど……」
「私達がさっき通りかかったときには、既に物凄い人だかりが出来てました」
 淡々とした口調の蝶花の言葉の続きを、少し申し訳無さそうな表情をした結城が引き受ける。いや、全く持って結城に罪はないのだが。
「……それはつまり、何だ。昨日のあの姿、撮られたってわけか?」
「えーっと……その……」
「えぇ、通りすがりの人に頼まれて、ばっちり。フィルムを写真部に渡してあげたら、プロ級だって褒められたわ……」
 言葉を濁した結城に、今度は蝶花がさらりと続けた。勿論、申し込みが殺到しているのは、例の風にチャイナドレスの裾が舞い上がった瞬間のあの(←強調)写真だ。お客様は――いや、これ以上は書く必要はないかな。うん、多分皆さんのご想像通りだから。
「わーい、俺も記念に買いに行かないと♪」
 スキップしそうな勢いで影踏がくるりんと回れ右をして、校門付近に向って走り出す。とっさに彼を捕まえようとした久遠の右手は、空を切るだけに終わる。駆け出した小犬を捕獲するのは、とっても難しいんです。
「えっと、これも記念だと思って」
「撮られるのは慣れてるからいいけどな。でも、微妙な記念だな」
 仕方ない、と肩を竦めて苦く笑う久遠に、それもそうですね、と結城が返す。
 あ、気がついたけど常識人、一人じゃなくて二人だったかも。でも片方は女装しちゃったんだから、やっぱり常識人に混ぜなくてもいいですか?
「――明日はきっと晴れですね」
 気を取り直した結城が、空を見上げて呟く。
 徐々に闇色に染め上げられていく空には、ぽつぽつと小さな光の粒が生まれはじめていた。
「そうね……きっと、いいことがある……そう、信じましょう」
「そう願うとするか」
 それは夢の世界か、それとも現実か。
 敢えて言葉にすることなく、三人はそれぞれが思い描く新たな明日へ希望を繋げていくのだった。

 なお。掲示板に到着した影踏が、自分のすっちー服姿写真も飾られている事に気付くのは、あと少し先のお話である――ついでに、それを見た彼が悲しんだか、それとも喜んだかも予測不能の未来に入れておいて頂けると嬉しい。

 ☆。、::。.::・'゜★。.::・'.::・'.::・'.::

 一方その頃。
「あぁっ……アフロ兎! このもこもこ感! ふわふわ感! 逢ってみたかったんだ(感涙)。……神様は俺のこと、見放してなかったんだなぁ……」
 龍央はどうやって学園に紛れ込んだのかは知らないが、燕尾服を着込み、ついでにシルクハットまで被ったアフロ兎と遭遇していた。
 不幸続きの彼を、ふわりと抱き締めるような、そんな癒しの瞬間。
 でも……まぁ、不幸の星の元に生まれてきている以上、そんな幸福長続きする筈がない(断言)。
「龍央! 煩悩に塗れてないで改心しろ!!」
 背後から、ばっさり。
 なんかよく分からない剣――多分外傷はない――に纏わせた浄化の力・不死の炎で獅王に切りつけられた。
「なっ……なんで……お…俺……な、んだ……っ」
 腕の中を擦り抜けて去っていく幸せの象徴、アフロ兎の背中を、涙で滲む目で見つめながら、龍央はばったりとグラウンドに倒れ伏す。
「非現実の中に在りながら、それを認めず、小さい平凡に拘り続けるお前が一番の夢見がち煩悩最強男だからだ!」
「あなた、素敵v」
 片腕に佐保をぶら下げ、片腕で穢れを払うように剣を宙で走らせる獅王。その姿は確かに決まっていた。出来れば物語のエンドロールに使いたいくらいに。
「うわーーーっ、俺はっ、俺はっ、ふつーに幸せになりたいだけなのにぃーっ!!」
「アフロ兎の何処が普通だよ!」
 ボコ。
 きゅぅ〜………(全画面、ブラックアウト)

 そんなこんなで。
 とりあえずお終い。
 学園祭、皆さんお疲れ様でした!



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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / クラス / オマケ】

【1000 / 桐谷・獅王 (きりたに・しおう) / 男 / 2年B組 / なーす服】

【0513 / 紀田・結城 (きだ・ゆうき) / 女 / 1年A組】

【0857 / 桐谷・龍央 (きりたに・るおう) / 男 / 2年B組 / せーらー服】

【0885 / 原咲・蝶花 (はらさき・ちょうか) / 女 / 1年A組】

【1001 / 桐谷・佐保 (きりたに・さほ) / ★ / 3年B組 / スクール水着】

【2309 / 夏野・影踏 (なつの・かげふみ) / 男 / 2年A組 / すっちー服】

【2648 / 相沢・久遠 (あいざわ・くおん) / 男 / 3年A組 / ちゃいな服】

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■         ライター通信          ■
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 こんにちは。ライターの観空ハツキです。
 この度は皆様の学園祭での一幕を物語化するに際し、ご指名下さいましてありがとうございました。そして、納品お待たせして申し訳ありませんでした。

 えと……何と申しましょうか――いえ、言い訳は致しますまい(開き直り!?)ボケ倒しにご期待頂ける、ということだったので、とにかくボケ倒してみました(タイトルから!)。見事倒れている事を祈ります(ちーん)
 

■桐谷獅王さま
 初めまして。この度はご指名&素敵主発注をありがとうございました。力の限り奥様とラブラブして頂いたつもりなのですが……如何だったでしょうか?更に…こんなアホタイトルがOMC作品一覧に並んでしまう事…お許し下さい;

■紀田結城さま
 こんにちは、再会出来て嬉しく思います――が、今回は強烈な皆様の影に微妙に隠れてしまい、申し訳ありませんでした(汗)私としては、唯一の良心ということで、理性を引き止めるのに大変お世話になりました(ぺこり)

■桐谷龍央さま
 初めまして。……ふ……不幸すぎて申し訳ありません(汗)いや…本当に、ほんっとーに報われなくって(涙)素敵なご両親で羨ましいです。あ、アフロ兎のご指名ありがとうございました。以後は異界でレギュラー化する予定ですので、宜しければ覗いて見て下さい。

■原咲蝶花さま
 こんにちは。結城さんと一緒に再会できて嬉しかったです。今回は少し壊れすぎたような気がするのですが……訥々としたツッコミOKとのことでこうなってしまいました。キャライメージ壊したようでしたら、申し訳ありません。

■桐谷佐保さま
 初めまして。素敵奥様っぷりというか……ナイス竜神さまっぷりなプレイングをありがとうございました! スクール水着には思いっきり吹き出してしまいました(笑)作中、やたらと性別をネタにしてしまい、申し訳ありませんでした(最後の設定欄も★にしてしまいましたし…;)

■夏野影踏さま
 初めまして。面白い設定のPCさんだなぁ、ということで……途中、とんでもない扱いになってしまい申し訳ありませんでした! でも、どうしても「マッチョ」という設定が頭からこびりついて離れず(汗)キャラ性を壊しすぎていない事を祈るばかりです……

■相沢久遠さま
 相沢さんとしては初めまして。女装ネタ投下ありがとうございました(笑)あれを見た瞬間に、この話の根幹は決まったと言っても過言ではありません。個人的には相沢さんのチャイナ姿の写真ほしいなぁ……とか不穏な事を考えつつ(爆)い…行き過ぎていたようでしたら、すいませんでした;

 何やら謝罪たっぷりモードになってはおりますが、少しでも皆さまに笑って頂ける部分があると幸いです。もしくはツッコミ倒して頂けると……
 なお女装して頂きました方々の衣装の選別は、相沢さんを除き厳選なるダイスの神様の指示に従っております(笑)恨みがある場合は、観空ではなく運命の神様をお恨み頂けますと幸いです(責任転嫁?)
 誤字・脱字等も注意しているつもりですが、作中お見苦しい部分があった場合、其方の方もツッコミポイントとして吹き飛ばして頂けますと幸いです(す…すいません;)

 ご意見、ご要望などございましたらクリエーターズルームやテラコンからお気軽にお送り頂けますと幸いです。
 それでは今回は本当にありがとうございました。