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<東京怪談ノベル(シングル)>


宇宙を翔るSL列車に乗っている美人はアフロ

 いや、誰がそんなことを言っているのか、そこまでしてアフロに拘るのか?
 どっかのショタ恐怖症のTV局長の仕業というのは言うまでもないが、その意志を受け継いでしまった者が居る。
 あやかし荘・管理人室で、お茶を飲みながら嬉璃ととある話をしている本郷源である。
 ピンク色のアフロを被り、アフロについて熱く語っているのだ。
 嬉璃の方はと言うと、苦笑しているしかなかった。

 ――じつはじゃ、嬉璃殿、あの有名なSLに乗る美人はアフロなのじゃ

 そんなこと嬉璃は信じたくもないが、面白い話なのだが。

 だいたい、そのSLの話はかなり頑固な漫画家のものではないか、と思う嬉璃。
 結構拘ることで有名だし、自分の全作品の歴史を大統一したり、どっかにある奇妙な建物の館長を務めていたりする(もちろんデザインも彼自身)。(彼が描いた)宣伝電車も走る勢い。理由は簡単だ、納得いかない事に文句が言えるし、自分の思い通りに出来るからだ。中は有料児童遊戯施設だが、一応オモチャなどの歴史コーナーもあるらしい。
 
 
「はなしをきかせてもらうかの」
 嬉璃はお茶を飲みながら興味深そうに言ってみた。
「じつはじゃな、あの女性は長い帽子はアフロでな、隠すために黒いマント、いやコートをきているそうじゃ」
「ほほう」
「ただ、帽子を外すと全部ストレートに見えるのじゃが、そこが曲者でな、アフロの上にカツラを被っている」
「ではアフロの意味がないのぢゃ」
「それは、世間一般にアフロが認知されていないからじゃ。擬態というところじゃ」
「ふむ」
 お互い、一息ついてお茶を飲み和菓子をつまむ。そしてお互いのお茶を淹れなおした。
「カツラがはまるほどアフロは小さくあるまい」
 嬉璃が、突っこんでみた。
「そこじゃ。流石嬉璃殿」
 と、満足そうに笑う源。
「彼女のアフロはとても小さいのじゃ、頭下半分はストレートなのじゃ」
「意味がないのう」
 そう、意味がない。
 そんなことではお金がかかるし、第一アフロにすること自体に何の得がある?
「隠れアフロファンと言うことじゃよ。はずかしいのじゃ。それに真実を知ったら、悲しい事じゃが、ファンが引いてしまう。まだアフロが市民権を得ていないからのう」
 溜息をつく源。
「ふむ」
 ま、もっともだと思う嬉璃。
「未来の宇宙を翔る美人。その実体は人間や星々のエゴを少年に考えさせる指導者真・アフロブラックじゃ」
「……」
 沈黙する嬉璃。
 完全に自分の世界にはまっている本郷源の話に延々付き合わされている。
 其れは其れで楽しいおとぎ話であるが、

――別の意味で不安ぢゃが……。

 と、煎餅を食べる嬉璃。
 もし、事実であるならより一層面白いかもしれない。
 ことわざに“事実は小説より奇なり”と……。


「その美人はアフロの時は黒いコートと言うがの、黒いコートと言えば、別の作家ぢゃが有名なモグリの医者も実はアフロなのか?」
「いや、居候にして助手の方が実はアフロじゃ」
「その訳は?」
「あの髪型は不自然。自分を人間の姿にしてくれた医者は頭を守るために隠しアフロにしているのじゃ」
「ほほう」
「助手はその事を知らないのじゃ。つまり隠れた愛」
 それ以外の数々のアフロ疑惑が浮かび上がる。
 源のアフロ論をずっと聞く。分からないところはやはり的確に訊いていて、源は満足そうに解説するのである。
 そこまでしてアフロが良いのかはさておき、厄介な物体がアフロ詰めしてくる事を嬉璃は恐れた。
 必ずこのアフロパープルがやってきて
「皆もアフロを被るのじゃ〜!」
 と、走り回るだろう。


 突拍子のないが平和なお茶話。些細なことだが事実とすれば大事になる小ネタ。
 アフロであれば、お茶と言うより、韓国の麦コーラかチェリーコークでスパムサンドとが雰囲気でるという。しかし、韓国麦コーラだと、多分一部の人はぶっ倒れるだろうし……。
 ま、お茶もお茶請けも、美味しくなくては行けないし、そしてお話しも面白くなければならない。

 そんなわけで、あやかし荘管理人室は、そこの主が学校から帰ってくるまでアフロ美人の謎に迫る事で盛り上がっていたのだった。


End