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<東京怪談ノベル(シングル)>


おうちが一番
「ふぇ〜〜、やっと終わったぁ〜〜。」

今日もせっせと、お仕事お仕事。
朝から色んな所へ小包の配達。
今日は件数が多くて、結構時間もかかっちゃった。
そりゃ私はこの自慢の紫の翼があるし、体力にもちょっと自信が有るんだけど……。
う〜ん、さすがに疲れたなぁ。
なんでも屋も、楽じゃないよぉ。

もうほとんど日は落ちちゃってる。
夕焼けと夜の闇が混ざり合ってて、とっても綺麗な空。
普段ならこんな綺麗な空を見ながらのんびり飛んで帰るのも良いんだけどね。
家までは、結構な距離。
目に浮かぶのは、小さいながらも愛しい我が家。
あぁ、一刻も早く部屋でゴロゴロしたい〜〜!!

うん、こうなったらアレを使うしかなさそうね。
空間転移で我が家にひとっとび!
「よ〜し。」
何もない空間に、そっと手をかざして精神集中。
手のひらから光が溢れ、だんだん時空が開いていく。
でも……目の前が急に、一瞬白くなった。
ううん違う、なんか歪んだみたいにも見えた。
「あ、あれっっ?!」
って異常に気付いたときには、もう遅かった。
ふらりと倒れ込んだのか、それとも吸い込まれちゃったのか、解らないまま私は時空の裂け目に入って行っちゃったみたい。
「うそ〜〜、待って待ってぇ〜〜!」




どすん

「あいたたたぁ〜〜。」
思いきりお尻から落ちちゃった…。
「え〜っと、ここどこだろ。」

とりあえず私の部屋じゃないのは分かる。
こんなこと滅多にないんだけど、どうも瞬間移動に失敗しちゃったみたい。
さっきちょっと目眩みたいなのを起こしたの、きっとあれが原因だよね。
きっとあれで転移先がズレちゃったんだ。
それでなくても疲れてるのに、ついてないなぁ〜…。

うん、でもこうしていてもしょうがない。
ぱたぱた、とスカートの埃をはたいて私は起きあがった。
目を凝らして周りを観察。
う〜ん、暗くてよく見えないんだけど、この雰囲気は前にも来たことがある感じがする。
えっと、そうだ思いだした!
ここ、師匠の魔法薬屋さんの倉庫じゃないかな。
前に商品整理のお手伝いをしたときに入ったことがあるんだよね。

「なぁんだ、これなら家まですぐだ〜、よかったぁ。」
ほっと一安心。
私は家に着いた後のことを考えた。
まずお風呂に入って、おいしい御飯を食べて、それからそれから――。

上の空で歩いていた私。
そのせいか、ただたんに疲れてたからなのか……。
「ひゃっ!」

どすん

「に、2回目だよぉ〜〜いたたたた。」
足がもつれて、その場にまた尻もち。
やだなぁ、お尻がアザになっちゃったりしてないかなぁ。

それにしても、さっきなんか割れるような音がしなかった?
も、もしかして商品何か壊しちゃったのかも。
大変だ〜師匠に怒られちゃうよ〜。
すぐに立ち上がって、またパタパタ服のほこりをはたいたんだけど……。

今度はなにか、別の音が聞こえる。
しゅーっていう感じの音と、ぴきぴきっていう感じの音。
なんだろ、やっぱりなにか壊れちゃったのかなぁ。
「とりあえず、電気つけて探さなきゃ……。」

なんだか身体が少し重くなったような気がするけど、それどころじゃないよね。
手探りで、壁を伝っていくと、スイッチを発見。

ぱっと部屋の中が明るくなった。
「よし、さっそくさっきの音の正体を……っ!!!」
振り返った私は、声も出せないで硬直。
だって、だって――。
「私の尻尾ぉ、尻尾が〜〜〜!!」

ぴきぴき音をたてながら、どんどん綺麗な水晶に変わっていく私の尻尾。
側に落ちてた薬の瓶を慌てて拾って見てみると――。
「水晶……呪薬っ?!ど、どぉしよ〜〜〜!!」

もしかしてこのままじゃ私はおいしい御飯どころか、あったかいお風呂どころか、ここで水晶像になっちゃうの?!
やだよそんなの〜〜!

待って、冷静に、落ち着いて考えるのよ私!
「呪薬ってことはきっとその呪いを解く薬もあるはずで、ううんあって、お願い〜〜。」
うわ〜ん、こんな状況で落ち着けるわけないじゃない〜!

あたふた薬棚を探している間にも、どんどん水晶になっていく私の身体。

今日一日、一生懸命働いたのにこんなのってないよ。
早くお家に帰りたいだけだったのに。
「助けて、神様仏様師匠さまぁ〜〜〜!!」




すっかり水晶像になった私には、涙も出ませんでした。
そしてそんな私が師匠に発見されるのは、次の日の朝の事でした――。



『おうちに帰してぇ〜〜〜!』


END

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■         ライター通信          ■
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初めまして、ノベルを書かせていただきました光無月獅威です。
口調などファルスさんらしさと、可愛らしさが失われないよう気を付けましたがいかがだったでしょうか?
元気なファルスさん、とても楽しく書かせていただきました。少しでも楽しんでいただければ光栄です、
本当に、どうも有り難う御座いました。