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<東京怪談・PCゲームノベル>


文月堂奇譚 〜古書探し〜

宮小路皇騎編

「このお店、か……。」

 一人の青年が手に持った手紙に書かれた地図と見比べながらそっとつぶやく。

「古書店、文月堂…間違いないな。」

 自らの前にある古めいた『古書店文月堂』と書かれた看板を再確認すると青年、宮小路皇騎(みやこうじ・こうき)は店のなかに入っていった。。
店内に入り中を見渡し、自らが探しているものがどこにあるのかを確認するために店内を確認する。
店内はそれほど広くはないが、所狭しと本の山でしめられていた。

「これは、あいつが見たらとても喜びそうな店だな…。」

 ふと皇騎の口からそんな事がついこぼれる。
そんな皇騎の姿を見つけて、店番をしていた隆美が声をかける。

「いらっしゃいませ、どのような本をお探しですか?」
「ああ、ちょっと難しい本を探していてね……。」

 皇騎はそう切り出して、自らが探しに来た本の概要を皇騎は隆美に話す。

「なんか難しいわね…、ちょっと私の方でも探してみるわね。」
「よろしくお願いします。」

 隆美も本を探しに動き始めたのを見て皇騎は小さく呟く。

『まさか初対面の人間に【アレ】の事を話す訳にはいかないからな……。』

 そんな事を思いながら、皇騎も本の山を一冊一冊手に取り始める。

「やっぱりそれらしい本はなかなかないわね…。」
「そうですか……。」
「ええ、でも魔術の本は確か奥にもまだあったと思うから、私はそちらを探してみるわね。」
「わかりました、では私はこちら側をじっくり見てみる事にします。」

 奥の部屋に入っていく隆美を見送りながら、皇騎はそう答える。

………
…………
……………

「な、なによ、これはっ!!」

 しばらく静寂が続いた後、奥の部屋から隆美の叫び声が聞こえてくる。
それを聞いた皇騎は舌打ちをしながら慌てて奥へ走っていく。

「おい、どうした!!」

 隆美の元へ走っていった皇騎が見たものは、自らが探していた本が淡い光を発している姿だった。

「ちっ!封印がとけかかっているのか…厄介な。」

 皇騎はすばやく印を結ぶと隆美が取り落とした本と隆美の間に割って入る。

「大丈夫ですか?お嬢さん。」
「え、ええ、手に取った瞬間に急にその本が光を発して……。」
「やっぱりこのお店にあったんですね、しかも封印がとけかかってるとは…。」
「封印、ですか?」

 隆美は本と向かい合ってる皇騎の様子を訝しげに見る。

「ああ、すみません、この本はちょっと訳ありだったので探していたんですよ。
ただ思ったよりも早く事態は進行していたようで……、ご迷惑をおかけしてすみません。」
「後で、事情は説明してくれるのよね?」
「ええ、それは構いません、でもその前に現状をなんとかしないといけないですね。
少し聞きたいのですが、この本に何かしましたか?」」
「あ……、それは…。」

 皇騎のその質問に少しばかり答えにくそうにする隆美であったが本の中身を早く知るために自身のリーディングを使った事を話す。

「それでですね、封印が解けるきっかけになったのは。」

 ため息を小さく一つついた皇騎だったが、徐々に光の強さを増している本と再び真剣な表情で向き合うと再び印を結ぶ。

「我、汝を再び封印すっ!!」

 しばらくの間、本と皇騎の間で力のぶつかり合いの後、徐々に本はその光を弱めていった。
そして皇騎が印を収めた後、その本はすっかり放っていた光を失っていた。

「これで再封印は終わりました。」
「お、終わったんですか?」
「ええ、取りあえずこれで大丈夫だと思います。
それでこの本は私の方で引き取らせていただきますね?」
「え、ええ…。」

 皇騎の言葉にただただ頷くしかない隆美であったが、ふと我に戻った様に皇騎に問いかける。

「あ、そういえばその本一体なんだったの?」
「ああ、この本ですか?そういえば事情を説明すると言ってしまってましたね。」

 思わず言ってしまった自分の言葉に苦笑しながら、皇騎はこの本が元々宮小路家にあった式神を封印してあった本である事、禁書にあたるような本であることなどの説明をする。

「そ、そんな本だったんですか。」
「ええ、そうなんですよ。」

 隆美がカウンターにて皇騎の説明を聞いてかなり驚き少し怯えた表情を見せた後、皇騎はそれ以外にも数冊の本を買うと隆美に勇気付けるように微笑みかける。

「ちゃんと再封印しましたし、私がちゃんと管理するのでもう大丈夫ですよ。
そういえば、このお店には尋常ならざる力を持った本もまだある様ですし、私個人も気になる本も結構あったので今度から贔屓にさせていただきますよ。」

 そう言って皇騎はゆっくりと文月堂を後にする。
その出て行った姿を思わず見送ってしまった後、慌てて隆美は我に帰る。

「あ、ありがとうございました。」

 そう言った隆美の声に応じる様に遠ざかる皇騎は片手を軽く挙げながら歩いていった。


Fin

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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≪PC≫
■ 宮小路・皇騎
整理番号:0461 性別:男 年齢:20
職業:大学生(財閥御曹司・陰陽師)

≪NPC≫
■ 佐伯・隆美
職業:大学生兼古本屋

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■         ライター通信          ■
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 どうも初めまして、新人ライターの藤杜錬です。
この度は『文月堂奇譚 〜古書探し〜』にご参加頂きありがとうございます。
宮小路さんの家にあったという書はこのようになりました。
皇騎さんは中々奥が深いキャラクターさんの様でうまく描写できているか少し心配ではありますけど、お気に召していただけたら幸いです。
それではご参加ありがとうございました。

2004.10.03
Written by Ren Fujimori