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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


恐怖の体質改善委員会!!


○オープニング

 この街には、何故か変な人たちが多く出没する。ここにもまた、二人ほどその手の人たちがいた。
「あぁ聞こえる、聞こえるぞ!救いを求める子羊たちの声が!!」
「はい博士!」
 白衣を着た初老の男性と、綺麗な黒髪を揺らす美人が何か変なことを言っている。…男はともかく、女のほうは黙っていればマトモなのに…。
「では行くぞ助手一号、今日も世のため人のためー!!」
「はい博士!…あの、なんで委員会なんですか?」
 女の質問に、博士と呼ばれた男が白い歯をキラーンと輝かせながら答えた。
「なんとなくだ!」
「素敵です博士!!」
 なんなんだこの二人。


「…ま、そんなわけで、最近この界隈で妖しげなことをしては人の体質を変えようとする二人組みが出ているらしい。心霊体質だと言っては電撃を浴びせかけてアフロにしたり、便秘体質だと言っては例の激辛スナックを食べさせたり…かなり迷惑してるみたいだ」
 草間興信所のロビー、草間武彦は深く溜息をつきながら報告書をテーブルの上に置いた。
「で、あんたたちにはそいつらを捕まえて欲しいんだ。やたらと逃げ足だけは素早いようだから気をつけてくれ。…しかし、なんでうちにはこんなのまで依頼がくるのかねぇ…」
 草間は、どこか遠い目で窓の外を見つめた。
「なら、その人たちにその変なことにに好かれる体質を変えてもらったらどうですか?」
「やめろ、俺は変なことに好かれてもないし、そんなやつらとも関わり合いにはなりたくない!!」
 零の言ったことは、草間にかなりのダメージを与えた。草間の心の叫びが、興信所内にむなしく響きわたった…。



○草間、試練の一日

「しかし…」
 草間が、ロビーを一度見回して呟いた。
「このメンバー、大丈夫なのか…?」
「今までそれでなんとかなってきたじゃない」
 そんな草間の前に、シュライン・エマが少し笑いながらコーヒーカップ一つを置いた。そしてその隣で独自に作った事件の報告書に目を通し始める。
「退屈しなくていいと思うけど?」
 まぁそれは確かに、と草間はコーヒーに口をつける。その二人の前で、やたらとビシッとポーズを決めながら悩む男が一人いた。
 氷野権持、その業界では泣く子も黙る負けなしスーパー検事、そんな彼が大いに悩んでいた。
「あ、あの、氷野さん?」
「日本は病んでいます!」
 話しかけたシュラインに、権持はまったく脈絡もない返事を返した。
「…はい?」
「そう、病んでいるのです!全く嘆かわしい、そのなんたら委員会は言うに及ばず日本における凶悪犯罪の発生件数が年々上がっています!これはひとえに」
 以降あまりに長いので省略。シュラインは話しかけたがためにそのくそ長い彼の熱弁を聞かされる羽目になった…合掌。

 そんな二人をよそ目に、草間の後ろにはやたらと気合の入るちびっ子一人。
「フフフ…草間興信所が誇る少年少女探偵団団員のミーに任せるネ!ミーの手にかかればアクノビガクなんてチョチョイノチョイネ!」
 少年少女探偵団団員(らしい)のローナ・カーツウェルは気合一杯だった。何がどう悪の美学が関係しているのかは分からないが、とにかく彼女の中では彼らは悪の手先らしい。いや、確かにそうかも知れないけど。
「そうですね、頑張りましょう。捕まえればお礼に夕食ぐらいはだしてもらえそうですし」
 そしてその横で頷く清掃員の男…シオン・レ・ハイだった。今回のバイトは清掃員らしいが…清掃員がいいのか、掃除せずにこんなところで頷いてて。っていうかご飯が目的ですかあなた。
「それはノープロブレムね☆」
 いや、君には聞いてない。
「問題はありません!」
 いや、問題はありまくると思いますシオンさん。

 そんな彼らとは別に、一人ただ悩む少年がいた。なにやら端っこの方でブツブツと呟いてはまた考え…ちょっと危ない少年に見えてしまう。草間も一瞬少年に目をやったが、すぐさま逸らしてしまった。あまりに気まずかったらしい。
 梅・黒龍15歳。普段は少しひねくれたプライドの高い少年なのだが、今日ばかりはちょっと事情が違っていた。それは、彼の体格が理由らしい。その、あまり高くない背が。弟よりも低い背が。確かに、成長のいい今日の男子としては、彼の身長は低かった。
「体質改善…極々期待は薄いかもしれないけど…もしかしたら…!」
 気づけば、彼の姿はロビーから消えていた。

「ほんとに大丈夫なのか…?」
 一人呟く草間の前に、一人の女性がやってきた。
「別にこんなやつらくらいならお前だけでもいいんじゃないか?」
 ニヤリと笑いながら言う黒・冥月に、草間は「俺だって暇じゃないんだ」と返した。
「体質改善か…どうせだからお前の生卵嫌いを治してもらったらどうだ?」
「ならお前はそのデカイ胸をどうにかしてもらえ、ったく、男の癖に女みたいな体型しやがって。お前男なんだ……」
 自分の弱点を指され、言い返した草間はそこまでいって腹を抱えて蹲った。よく見れば、冥月のコブシが思いっきりめり込んでいた。それはもう、骨を砕く音が聞こえてきそうな勢いで。
「誰が、なんだって?」
 ジロリと見下ろす冥月。しかし、草間は言い返せなかった。聞こえてくるのは地の底から聞こえてくるような呻き声ばかり。
「はぐぅぉぉぉぉぉぉ…」
 朝から零に核心を突かれたり、自業自得とはいえ思いっきり殴られたり…今日の草間、あまりに哀れすぎる。
「武彦さん、まぁ今回は自業自得だし、ね」
 シュラインが合掌。今回ばかりは同じ女性として冥月の気持ちがよく分かるらしい。

「さて、それじゃ…」
 権持から開放された後、目を通していた報告書を机でトントンとまとめ、シュラインが席を立った。資料には赤いマークが目立つ。どうやら例の二人組の行動で問題のあるところをチェックしていたらしい。
「行きましょうか。どう考えても間違いだらけのことをやっているし、さっさと止めなきゃね」
「そうだな。こんなやつらはさっさと片付けるに限る」
 冥月がそれに頷く。ちなみに彼女の足元ではまだ草間が蹲っていた。気持ちの悪い呻き声をあげ続ける彼に、ツッコミという名の蹴りが入ったのは言うまでもない…酷い。
「まぁこのメンバーならあまり苦労せずに捕まえられると思いますよ!」
 自信たっぷりに言うシオン。というか、あんた掃除はいいのか。
『…まぁ、確かにこのメンバーなら怪しげな装置で勝手に寄ってきそうだものね』
 シュラインはちょっと失礼なことを心の中で思ったりした。でも多分草間もそう思っているだろう、なんという適材適所か!なお、ツッコミは却下です。
「では行きましょう、彼らは然るべきところで裁かれなければいけません!」
「そうネ、ミーが『真実は何時も一つとは限らない』とか言って捕まえてやるネ!」
 ドギャーンと効果音つきのポーズで言い放つ権持、そしてちょっとヤバイ発言をするローナ。
「そ、それじゃ行きましょうか…」
 本当にこのメンバーで大丈夫なのだろうか、とシュラインはまた心の中で呟いた。お姉さん、その心配は大正解です。
 こうして、約一名ほど足りないメンバーは興信所を出て行った。
「あ、そうそう」
 そこで、シュラインが思い出したように振り返った。
「零ちゃん、武彦さんの場合は体質じゃなくてきっと業か縁なだけだと思うわ」
「あ、そうなんですか…それはそれでかなりどうかと思いますけど」
 零がまた身も蓋もないことを言ってしまった。その言葉に草間は…。
『シクシクシクシク…』
 あ、泣いた。



○捕まえろ、噂の二人組!

 さて、そんな一行とは離れ、一人街中を歩く黒龍。ただ、自らの願望を叶えたいがために。
『背が高くなるなら…ボクは悪魔にでも魂を売る!』
 なんかやたらと心中燃えているが、多分無駄。
『キャー!!』
 そんな彼の耳に聞こえる、一際甲高い悲鳴。『きた!』と思った瞬間、彼は走り出していた。
 彼のたどり着いた先には、今まさに怪しげな装置を女性に押し付けようとする胡散臭い二人組!なんというか、変態二人組な感じだ。
「どっせーーい!」
「「にぎゃーーー!!」」
 黒龍、そんな二人組に走る勢いそのままにドロップキックを放った!分かりやすい放物線を描いて二人は空を舞う。
「あ、あの、ありがとう…あれ?」
 助かった女性は一言お礼を言おうとして…既に黒龍がいないことに気がついた。当の本人は、飛んでいった二人組を追いかけていたりする。

 二人はそのまま、近くの公園に落ちていった。そして程なく黒龍がそれに追いつき、男の袖を掴んで立ち上がらせた。
「き、君は何だね、私たちがせっかくあの女性の体質を改善してあげようと…」
「頼む、ボクの背を高くしてくれ!」
 男の言葉に答えず、というか、思いっきりぶった切って黒龍は土下座した。
「三つ子の弟よりも背が低くて…これじゃ情けなくてしょうがないんだ、何とかしてほしい!」
 その言葉に、男と女はひそひそと相談を始めた。
「どうしましょう博士?」
「いや…背って言われても、それ微妙に体質じゃないじゃん?」
「そうですわよねぇ…」
 あんたら、なんでこういう時だけまともなことを。というか、博士口調変わってる。
「でもあの身長はいくらなんでも可哀想ですわ、私よりも低いですし…」
「だよねぇ、あれじゃ男として生きていけないっていうか」
 そこまで言うかあんたら。ちなみに当の黒龍は…米神がぴくぴくと。要はキレかかっていた。二人の会話は全部丸聞こえらしい。しかし、藁にも縋りたい思いなので必死に我慢していた。
「よし分かった少年、私たちがその願い叶えてあげよう!」
「ほ、本当か!」
 博士たちの宣言、それは、勝率の低い賭けだったかもしれない。しかしその少年には、その言葉はまさに天からの贈り物!一気に黒龍の目が輝く!
「さぁこれにぶら下がりたまえ!」
「…は?」
 そんな彼の前に用意されたのは、鉄パイプが適当に組み合わされたちょっと背の高いアレだった。
「…って、ぶら下がり健康機じゃないか!」
「何を言う、これ一台で女性の健康無問題(もーまんたいと読みましょう)なんだよ君!」
 いや、背を高くしてあげるんじゃなかったのか。というか黒龍君は男の子です博士。
「ふ…ふふふ…やっぱりこんなことだろうって思ってたよあぁ…ボクの背が伸びないのもあんたらのせいだ!!」
 遂にキレた黒龍君、いや、どう考えても後半八つ当たりじゃんというのは言わない方向で。
 彼の周りに幾多もの玉が浮かび始める。それがやがて星座の形を成し、そこから鎖が生まれた。玉を星座の形にすることで、様々な効果を得るのが彼の能力だ。今浮かんでいるのはアンドロメダ座で、強靭な鎖を発生させて相手を絡めとるものだ。その鎖が博士と助手に巻きついた!
「な、なんだこの鎖は!」
「博士、装置に凄い反応が!」
 助手がその手に持っていたストップウォッチのようなを覗き込み叫んだ。どうやらそれが例の怪しげな装置らしい。しかし、黒龍そんなことを言う二人を気にもかけず、再び玉を生み出し、星座の形を成させる。次なる星座は…射手座、彼が扱う星座の中でも最高の破壊力を生み出すものだ。
「ボクの身長…なんで伸びないんだーーーーー!!」
 かなり情けない絶叫とともに、黄金のエネルギー波が博士と助手を襲う!
「「ぎゃぁぁぁぁぁ!!??」」
 哀れ二人は空の彼方へと消えていった。
「…ッちっくしょーーーー!!」
 黒龍の悲しい叫びだけが、誰もいない公園に響き渡った…。



* * *

「とりあえず、分かれて探したほうがよさそうね」
 街に出た一行は、三組に分かれて行動を開始した。
 一組目はシオンとローナ、二組目はシュラインと権持、そして最後は単独のほうがやりやすそうだからと冥月。
「それじゃ、私たちはちょっと調べ物があるから」
「知り合いにいい人がいます、そちらの方に」
 シュラインと権持はそのまま何かを調べるためにどこかへ行ってしまった。
「じゃあ」
 そして冥月は何時の間にやら消えていた。
「それじゃガンバルネ!」
「はい、頑張りましょう!」
 そして、一番心配な組が行動を開始した。

「さて…」
 シオンは少し何か考えた後、持って来ていたゴミ袋の中から何故かバナナの皮を取り出した。そしてまた少し考えてそれを二つセットで道端に置いていく。いや、清掃員が街を汚してどうするよあんた。
「ユーはナニしてるネ?」
「ふっ…彼らの行動範囲を予想して、そのルートに罠を仕掛けているのです。これならば確実に彼らを捕まえることが出来るでしょう!名付けて『達磨さんが転んだ』作戦!」
 不思議そうな顔のローナに、シオンが胸を張って答える。
「オー、それはパーフェクト!」
 んなわけないでしょ。
『……ぁぁぁぁ……』
「ムッ!?」
 そんなちょっとお馬鹿な二人の耳に、何処からか悲鳴が聞こえてきた。空を見上げれば、そこには物凄いスピードで飛んでくる二つの影!
「くぅ…助手一号、緊急着地パターンαだ!」
「分かりました博士!」
 会話の内容から、それが例の二人組だということはすぐに分かった。ローナがそれにピクリと反応する。
「ワッツ、緊急着地パターンα!?」
「何か知っているのですか?」
「全く知らないネ!」
 なんだそりゃ。
 そしてそのまま博士と助手は白衣を思い切り広げ、足を曲げる。どうやら白衣で少しでもスピードを落とそうとしているらしい。そしてそのままの姿勢で地面に着地する!
 ズシャァァァァァァ!!
 すさまじい音を立てて二人組が道路を滑っていく。それは何処か飛行機の着地シーンを思い出させた。
「…普通の着地なんですね」
 シオンの呟きごもっとも。まぁ確かにあの加速度などを考えると、こうやって滑っているだけでも凄いことなのだが。
「今日も華麗に着地完了!」
「さすがですわ博士!」
 滑りながら上機嫌の博士と助手。あんたら普段からこんなことやってるのか。
 しかし。その光景に当のシオンすら忘れていた恐るべきトラップが、彼らを今まさに襲わんとしていた!
 要するに、バナナの皮。
「ハーッハッハッハッハッハハハハハハハァァァァ!?」
 高笑いをあげながら滑っていた博士がまずバナナの皮を踏み、そして隣を滑っていた助手も一緒にもう一つのバナナの皮を踏んだ。まだまだスピードが出ていた二人は盛大に転び、そのままの勢いで吹っ飛んでいく!
「アハ、大成功ネ…?」
「…まさか引っかかるとは…ん?」
 喜ぶローナ、そして実は幾らなんでも引っかからないだろうと心の中では思っていたシオンの目の中に、博士たちがこちらに飛んでくるのが見えた。
 あ、気づいたらもう手遅れなんてことが多いから、皆さん気をつけましょう♪
「「「「にぎゃぁぁぁぁぁぁ!?」」」」
 まさに人間ボーリング状態、そのまま四人は仲良く道路を吹っ飛んでいくのであった。



 ドッコーン♪
 やたらと景気のいい音が響き渡り、冥月は顔を上げた。その先には、何処までも同じようなビル街が続いていた。
「…あっちか」
 すっと、その体が静かに動いた。



「シット…」
 ローナが頭を振りながら体を起こすと、目の前にはボロボロになったシオンと、同じくボロボロの白衣を着た二人組。その女の手にはストップウォッチのようなものが見えた。
『オー、これが噂のウォンテッド!』
 ローナ心の中でガッツポーズ、遂に少年少女探偵団の力を見せるときがやってきたのだ!
「いつつつ…」
「博士、大丈夫ですか?」
 そんな彼女の前に、例の二人組が立ち上がる。そして、一緒に倒れていたシオンも声もなく立ち上がった。頭を打ったのか、しきりに首をゴキゴキと鳴らしているのがなんとも不気味だ。というか、目がうつろ。どうやら意識がないらしい。
 しかし、ローナはそんなシオンのことは全く気にしていなかった。今彼女の目に映るのは二人組のみ。
『フフ…これは絶好のチャンスネ、ここでチェックメイトといくネ☆』
 怪しくキラーン☆と光るローナの瞳。そんな彼女の前で、助手の持っていた装置がいきなり『ピーピー』とはげしく反応する!…妙に安っぽい音だが気にしないように。その反応を示したのは…紛れもないローナだった。
「博士、この子供に凄い反応をしています!」
「何、この子に何か変な体質があるのか!」
 この発言、結構人を傷つけると思うので、皆さん言わないようにしましょう。でも実際のところ、ローナは酷いことを言われていることに気づいてなかったりする。…なんだか。でもちゃんと自分に反応しているということは分かっていたりするので、ローナはここで芝居を打って出ることにした。
「ゆ、ユーたちが噂のウォンテッドね!ミーに何をするつもりネ!?」
「いやいや、君の変な体質をおじさんたちが治してあげようと思ってね?」
 少女は少し怯えたように体を振るわせる。その少女に迫る怪しい二人!どう見ても変態ですな、はたから見ると。
「というわけで、レッツ改善〜♪」
 何がとういうわけなのかどうか分からないが、とにかく改善実験が始まるらしい。
「ちなみに博士、この子の体質は?」
「よく分からんが、この子の遺伝に関することだろうな。とりあえず、細胞にちょこちょこやってみる?」
 軽い口調で手をワキワキ。というか、なんでパッと見でそこまで分かるんだ博士!もしかしたら、この人本当に天才なのかもしれない。
「や、ヤメルネ、ミーはいい子にシテルヨ…」
 フルフルと弱くいやいや。そっちの気がある人が見たらもう興奮間違いなしな演技だった。ローナたんはぁは…と、ヤバイ解説は置いておいて。
「ふふふ、これは君のためなのだ」
 怪しく迫る博士、もうこのまま変態道を突き進めばいいのに。そしてそのままローナの手を捕まえ、助手のところへ引っ張っていく。
「それじゃちょっとお注射しますね〜」
 テキパキとその細い腕に消毒を施し、助手がにっこり微笑んだ。その手つきを見れば、素人ではないということがすぐに分かる。
「痛くないですからね〜」
 そしてプスッと注射器が。実は中身はただのブドウ糖だったりするが、ローナも助手も知りはしない。
『きた、ここネ!』
 ローナは心の中で叫び、そして…
「げぶはぁ!?」
 派手に喀血した。えぇぇぇ!?
 いや、これは彼女なりの作戦なのだが。
『どうネこの見事なパフォーマンス、これなら敵どころか味方も騙されるネ!』
 しかし、どうやらその味方がいまだ意識を失ったままだということには頭がいってないらしい。まぁどっちでもあまり関係なさそうなものだが。
 それはさておき、喀血(ただの血糊だが)の後ピクピクといかにもヤバ気にひくつく少女。これにはさすがに博士と助手も動揺を隠せない。
「は、博士どうしましょう…博士の言ったものを注射したんですが、この場合責任は…?」
 助手、さり気に責任逃れ発言。
「むぅ、よもやただのブドウ糖で…っていうか、ブドウ糖なら普通ヤバイことがあるわけないし…今のうちに逃げ?」
 待て博士、それは非常にまずい。それじゃ殺人未遂では?
「じゃあ逃げるべ?」
 微妙に北海道出身を匂わせながら博士超ダッシュ、あっという間に車を追い越していく!…この逃げ足、最早速い所の話ではないような気がする。
「あ、博士待ってくださいー…これ、輸血用です」 
そして、助手も何かの缶を血まみれの少女の前において博士を追いかけていった。速さについては同上。あんたら速過ぎ!
『……』
 ローナがむくりと起き上がった。元々演技なので体に支障はない。しかし、彼女は泣いていた。
「ひ…酷いネ…これがボケゴロシというプレイデスカ…?」
 どうやら血まで吐いたのに放っておかれたことが相当悲しかったらしい。彼女の心理としては、血を吐いた人間を放って置けるか、やれるものならやってみろ!というのがあったらしい。要はボケたのにツッコミがない寂しさ?
彼女は滝のような涙を流しながら、足元にある缶を持ち上げた。
 100%トマトジュース、リコピンもたっぷりだね。これで体も健康だ♪
 それを見て膝から崩れ落ちるローナ。
「ミーのパフォーマンスは…トマトジュース一本のお代ネ…」
 ローナ、撃沈!!

「…ん…」
 それと時を同じくして、何やら脳内でお花畑に行っていたらしい役立た…ゲフン、もといシオンの意識が戻ってきた。首をゴキゴキと鳴らせば、気分爽快おめめパッチリ!
「私は…あの二人は…」
 きょろきょろと見渡してみるが、既にその場には二人の姿はなく、ただ遠くに轟音とともに砂煙が上がっているのが見えた。無論、二人が走る音だ。
「…!ローナさん、大丈夫ですか!」
 と、そこで倒れこんだローナをシオンは見つけた。抱き起こしてみれば、服にはベッタリと血が付着し、うつろな目で涙を流しながらブツブツと何か呟いていた。そして、手にはトマトジュース。
「ローナさん、しっかりしてください!ローナさん!」
 ゆすってみれど、彼女から反応は返ってこない。相当何かがショックだったらしい。「そうですか…あの二人に…!」
 そっとその小さな体を横たわらせて、シオンは立ち上がった。その瞳に、強い意志を込めて。
「あの二人は私が捕まえます…天国で見ていてください…ローナさぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」
 シオン、夕日に向かって絶叫。なんつー近所迷惑な、っていうか勝手に殺さないように。
 そうと決まれば、シオンの行動は早かった。近くにあったMTBにまたがり(それは盗難です)、彼女が遺してくれた(だから勝手に殺さない)トマトジュースを一気飲み、そうすれば元気ハツラツなんたらC!!
「待ちなさーーーーーーい!!」
 そしてペダルを踏み出せば、世界は風だけになる。彼は今、ツール・ド・フランスの選手よりも速く風を切っていた…。

「博士、変な人が追いかけてきます!しかも装置の反応ビンビンです!!」
 凄まじいスピードで走る博士たちの後方には、物凄い表情で追いかけてくるシオンの姿が。いや、あなたたちも相当変だと思いますが。ていうか、ビンビンって。
「待ちなさいーーーー!!」
 シャカシャカシャカシャカ!!←必死にペダルをこぐ音です。
「な、なんなんだ君はー!?」
「ローナさんの敵を討つべく馳せ参じたシオン・レ・ハイ、ハイは返事のハイッ、元気よくどうぞ!!」
「博士、この人意味分かりません!」
 だからあんたたちも大概意味が分かりません。
「ローナさんのかたきぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」
 ジャカジャカジャカジャカジャカ!!←やっぱり必死にこいでます。
 そのままさらにペダルの回転は増し、博士たちに追いつくかと思われたその瞬間、
「今晩の夕食ゲットぉぉぉぉあぁぁぁ!?」
 シオンは博士たちを追い越し吹っ飛んでいった。よく見れば、道路に何かあったらしい。高速で走っているときに何か踏めば、自分の足で走ろうがMTBで走ろうがヤバイことに変わりなく、その結果シオンは吹っ飛んでいったらしい。
「…夕食ってなんでしょうか、博士?」
「…カニバリズムか?まぁいい、今のうちに逃げるべし!」
 シオン、博士の中で人食主義に決定。
 そして、そのカニバリズム・シオン(違います)は、
「夕食…逃がしませんよ…!!」
 どっかで無駄に燃えていた。ローナの敵討ちはどうしたあんた。



* * *

「本当、見事なまでに間違いだらけの療法ね」
 シュラインが何かめくりながら呟く。
「全くです。体に毒になるだけですね、これでは」
 権持もそれに頷いた。
 彼らが出てきたのは、とある大学病院。どうやらそこで、博士たちのこれまでの改善行動、もとい迷惑行為を検証していたようだ。
「これだけ検証できれば、後は捕まえれば彼らをどうにかできるかしら、スーパー検事さん?」
「勿論、任せておいてください!」
 彼らを捕まえた後が、権持の本当の出番なのだ。無論、権持もそれは理解している。キラーンと効果音つきで歯を輝かせながら、権持は微笑んだ。



「どう考えても…あいつらだよな…」
 さて、場面は変わる。冥月が前を見ながら呟いた。彼女の目には、砂埃を上げながら疾走する二人組の姿が映った。
 右、白衣を着た医者風の男、左、看護婦風の女。どう見てもあれしか犯人だと思えない。
「見つけてしまったらしょうがないか…」
 けだるそうに、彼らの進行方向に立つ。
「博士、前方に反応が!」
 またピーピーと激しい反応を示す謎の装置!しかし、その安っぽい音だけはどうにかしてほしい。
「何、それは本当かね助手い…っぶふぅ」
 博士、前を見ないで走るものだから冥月に激突!といっても冥月は特に微動だにしなかった。
「何か柔らかいねぇ…?」
「…何やってる?」
 ムニムニムニ。感触としてはマシュマロのそれか。無論それは冥月の胸であり、次の瞬間には拳が博士の顔にめり込んでいた。
「あぁ博士!私というものがありながら!?」
 あんた何爆弾発言。ちなみに博士は鼻血を流しながらも冥月と対峙していた。
「お前らが噂の二人組か…おとなしく自首すれば罪も軽いだろう、そろそろやめておいたらどうだ?」
 無駄かなと心の中で思いつつ、一応は説得してみる。
「何を言う、私たちがやっているのは世の中のためなのだ!」
「そうです、女狐の分際で博士に意見を言うなんて百年早いですわ!!」
 もっとも返事は予想できたものだったが。というか、助手の答えは単なる逆恨みでしょ。
「…誰が女狐だ?こんな変態、こっちから願い下げだ」
 その言葉に、冥月もさすがにキレかけ、助手の首根っこを持ち上げる。『あーん!』とか言ってばたつく姿がちょっと可愛かったり。
「ここら辺でやめておけば、穏便に済ましてやるぞ?」
 鋭いその視線に少したじろぐ博士、しかし彼の情熱の炎はそんなことくらいでは消えなかった!
「まだまだ世界には私を求める声があるのだ、やめるわけにはいかーん!!」
 そう思っているのは博士と助手くらいのものだと思います。というわけで、博士脱走。助手を助けてあげようよ。
「ちっ…」
 それを見た冥月は、助手を放り投げて意識を集中させる。その瞬間、博士の影が動き、その足へと絡みついた!
「な、なんだこれは!」
 なす術もなく倒れこむ博士。冥月が自らの力でその影を動かしたのだ。
「さぁ、逃げられないぞ?」
 放り投げた助手にも同じように影を絡みつかせながら、じりっとにじみ寄る。
「くっ……と、そこだ!」
「…!?」
 博士の手から光が!動きのない博士に油断していたのか、それをもろに受ける冥月!
「どうだ、微弱な電流で血行改善!」
 いや、あんたこの期に及んでそれはどうなのよ?
「これで君も私のやっていることの素晴らし…ん?」
 ズゴゴゴゴゴ…。
 どっかの漫画で見たことのあるような効果音が、冥月の後ろに浮かんでいた。よく見れば、彼女の髪の先のほうが縮れている。どうやら、電流が強すぎたらしい。
「私はやめろと言った…人の言うことは聞いたほうがいいと思うぞ?」
 声が、怖いくらいに優しい。そして、顔を上げれば、その目は完全に座っていた。
「ひっ…!?」
 その姿はあまりに怖い、怖すぎる。恐怖のあまり、博士はまた逃げ出そうとした。
「逃げるなよ。何もしないと言っているだろう…」
 しかし、その足にしっかりと絡みついた影がそれを許さない。
「何怖がっているんだ?」
 その影が、今度は冥月の腕に絡みつく。その細い腕は、その瞬間から凶器と化した。腕が振るわれるたび、木々が薙ぎ倒される。その木が博士や助手の前に倒れこんできた。
「ひっ…き、君、やめたまえ!?」
「何か言ったか?」
 今度は槍状になった影が、その足元に突き刺さる。しかも、何本も。普通の人間なら恐怖のあまり失神してもおかしくない状況だ。
「さぁ…逃げないのか?」



「…シュラインさん、あそこを!」
 権持がビシッと指差せば、そこには立ち上がる煙。
「一体何が起こってるの…?」
 真剣な顔でそれを見つめるシュライン。言うが早いか、彼女は走り出した。権持もその後を追う。



「さて…こんなに街の景観が壊れてしまったのもお前たちのせいだな。ならお前たちに直す義務があるわけだ、そうだろ?」
 じろっと二人を睨みながら冥月が言った。いや、直接壊したのはあなたです。かなり無茶苦茶なことを言ってます。
「そ、そんな…なんでそんなこと」
「そうなるだろ?」
 じろっと睨みつけられて、助手が『ひっ』と小さく悲鳴を上げる。これじゃもうただのいじめじゃないだろうか?

「…冥月ちゃん、これは一体…?」
 その後ろから、シュラインと権持がやってきた。その惨状に少し驚きつつも、しっかりとその視線は冥月の足元の二人組へといっていた。そして、事の顛末を冥月から聞きふむふむと頷く。
「…あなたたちが噂の二人組ね?少しお話いいかしら?」
 シュラインがしゃがみこみ、博士たちを見つめる。
「話というならば聞こう」
 こういうところは結構素直だったりする。そんな二人にシュラインは言葉を続けた。
「まず、あなたたちのやってきた改善…でしたっけ?だけど、どうも見ていると効果がでていないわね」
 報告書を取り出し、彼らに見せる。それにはところどころチェックされた箇所が見えた。
「いい、これは専門家にその効果を聞いてきたところだけど…わかる、全部駄目だって。たとえばほら、あなたたち便秘気味の女性に超激辛スナックを食べさせたでしょう?あれは完全に間違いね。便秘があるときは、辛いものや塩気の多いものは避ける、それが基本じゃない?」
「な、何を!我々のやっている治療は、千人中三人は効果がでたんだぞ!」
 三人って少ないね博士!
「…三人にしか効果が出なかったって、それじゃ被害のほうが多いんだから、ただの迷惑行為でしょう?」
 予想はしていたがここまで…とシュラインは深く溜息をついた。
「ねぇ、なんであなたたちは体質改善なんとことを?それに本当にそういう組織はあるの?」
「何故…?そんなもの、この世に己の体質のせいで嘆く人間が何人いることか!だから我々が立ち上がったのだ!!勿論組織はある!」
「素敵です博士!」
 博士熱弁、助手感涙。もうどうにでもしてください的な感じでシュラインがまた溜息をついた。
「あなたたちの情熱は認めるけど…ちょっと空回りしすぎじゃない?その情熱をうまく傾けられれば、とてもいい結果がでると思うんだけど」
 そしてにっこり微笑む。
「む…むむむ…」
「博士!」
 これには博士もかなりグラっときたようだ。どうやら博士の愛人らしい助手がかなりヤキモチを焼いているが、そっちは気にしない方向で。
「それに」
 ビシッと決めた権持がさらに続ける。
「あなたたちがここでやめて自首すれば、色々と裁判などでも有利になりますよ?刑法第」
 以後長すぎるので省略。とにかく、恩赦や何やらが色々つくと言いたかったらしい。
「なんにしろ」
 そして、ドーンと効果音つきで畳み込んでいく。
「あなたたちがやってきたことは犯罪になります。しかし、警察も鬼ではありません」
 そしてやはりにっこり。
「今なら、私のお力添えも出来ると思いますが?」
「…あの、博士…」
「……」
 それきり、博士は黙り込んでしまった。
「まぁそういうことだ。さっさと自首して、この街の景観も直せ」
 しかし、冥月のその一言がすべてをぶち壊した。
「いーや、我々は自首などせん!そうすればその女に屈したことになる!!」
 博士ズドーン!シュラインあちゃー。
「…おい」
「大体我々の破壊した範囲は、着地の際に破壊してしまったであろう道路、そしてなぜかバナナの皮で吹っ飛んだ際にぶつかったところくらい!勿論その範囲は後で直すつもりだった、ていうかぶっちゃけ少ないじゃん!?」
 あんた、ちゃんとそういうところはあの状況でも調べてるんですね。というか、ぶっちゃけはやめなさい。
「それを自分で破壊したところまで我々に直させようなどとは言語道断!権力の犬などには屈せぬ!!」
 何がどう権力の犬なのかは謎なところではあるが、一応言っていることはもっともである。
「…その話、本当ですか?」
 そして、それに一番反応したのは権持だった。
「うむ、本当だ!」
「ここにばっちり録画してありますー!」
 助手がその手にビデオカメラを取り出してみせる。そんなもの何時の間に。権持もそれを覗き込む。
「…何言ってる。お前らを捕まえるために壊れたんだろうが、ならお前たちが…」
「異議あり!!」
 そのビデオの内容を一通り見終わった権持の鋭い声が、ズドーン!!という効果音つきで突き刺さった!
「冥月さん、もしこのビデオの内容が本当ならば、むしろこれを直すべきはあなただ。特に後半、どう考えてもあなたが暴力による脅しを加えているところは見逃せない。罪人といえど、最低限の権利はある。この行為はつまるところ」
 以降10行以上使いそうなので省略!まぁ要するに、あんたやりすぎだからその分はちゃんと直しなさいと言いたいらしい。しかし、冥月は納得など出来るはずがない。
「…はぁ?なんでむしろ被害者の私がそんなことをしなきゃいけないんだ?」
「まだ言いますか。いいですか?これは…」
「ま、まぁまぁ二人とも落ち着いて…」
 そしてそのまま二人は口論になってしまった。シュラインも必死でなだめるが、全く二人の口喧嘩は終わる様相を見せない。
「…って、あら?」
 そして、気づけば博士と助手が消えていた――――



「全く、我々の行動の素晴らしさを理解できんとは、なんと嘆かわしい」
「そうです、博士のやることは全部正しいんです♪」
 三人から離れた道路を、二人は歩いていた。いやまぁなんでそういう思考になるのかはよく分からないが、とにかくご立腹。そんな二人の前に、
「お待ちなさーい!!」
 あぁもう収集つかないんじゃないかというくらい、よく分からないタイミングで叫び声が。
「何奴!?」
 博士が振り向けば、そこには振り切ったはずのシオン、そして死んだはず(死んでいません)のローナの姿が!その二人が博士たちに近寄ってきた。
「な、なぜあなたたちが!」
 その姿にたじろぐ助手。じりじりとにじり寄ってくるその姿ははっきり言って怖い。特にローナは血糊べったりなので、ゾンビ臭がぷんぷんする。
「ミーたちを…」
 そして、博士たちの前までやってきたところで彼らは、
「仲間にしてほしいネ!」
「お願いします!!」
 なぜか土下座。えー?
「ほら、ルック!ミーの体もこのとおりピンピンネ!それもこれもあのときの博士のおかげネ!」
「その効果の素晴らしさに我々は感動いたしました。これからは是非その活動のお手伝いをしたいと…いけませんか?」
 口々に飛び出す感謝感激雨霰。その言葉に博士の顔も綻ぶ。
「そうかそうか、やっと我々のやっていることを理解してくれるものたちが現れたか!」
「博士、やっと私たちのやってきたことが認められましたね!」
「うんうん」
 助手、ちょっと感涙。でも勿論、それは二人の演技なので、ちょっと可哀想でもあるが。
「博士、少しその装置を見せていただいてもよろしいですか?これからお手伝いをするにあたって必要になると思いますので」
 そんな二人に『まぁどうぞ』と何か飲み物を渡しながら、シオンが言った。
「あ、別にいいようん」
 そしてそれを受け取り、上機嫌で博士がそれを飲み干そうとした瞬間、
「お前ら…さっきのインチキ野郎ども!」
 またこのタイミングか、な感じで叫び声。黒龍だった。
「お前ら、まだ懲りずに何かやっていたのか…!」
 何しろその身長を伸ばしてもらえなかったものだから、恨みつらみの深いこと。それは逆恨みだとツッコむものもいないので余計だ。
「まぁまぁ黒龍君、これでも飲んで少し落ち着きましょう」
 しかし、そんな彼の前に立ったのはシオンだった。手にはやはり、何か飲み物。黒龍はそれを、怒りのままに飲み干した。
「落ち着いてなんかいられない、大体あいつら…」
 と、そこで黒龍の意識はブラックアウト。何が起こったのかも分からないままに、彼は倒れこんだ。
「ど、どうしたのかね?」
「いえ、ちょっと感動のあまり気を失ったようで」
「そうかね、まぁ仕方がないか」
 すっかりシオンたちのことを信用している博士はそれで納得してしまった。根は単純なのだろう、この人。
「では、落ち着いたところで少し休もうか」
「お疲れ様です博士♪」
 そして、そのまま二人同時にその謎の飲み物を飲み干して…同時に倒れた。かなりヤバ気に痙攣までしていたりする。
「作戦成功ですね♪」
「…ユーはこのドリンクに何入れたネ?」
「それはですねぇ…」
 ローナの質問に、何故か小さく耳打ちするシオン。
「…それは、とってもデンジャラスな気がするネ…」
 答えを聞いたその顔は、少し青褪めていた。



 こうして、噂の二人組は(多少の被害者を出しつつ)捕まえられたのであった。

「これで、この装置の解明も出来ますね♪……あ」
 ちなみに謎の装置は、シオンがあっさりと落として壊してしまったり。をい。





○後日談

「異議あり!!」
 今日も、法廷に鋭い声が響き渡る。
 泣く子も黙るスーパー検事、氷野権持の声だ。そうすれば、数分後には結末が変わる裁判も少なくない。
 そんな彼の後ろに立っているのは、あの日捕まえられたあの二人だった。

 彼は後に語る。この事件は今までの中でも微妙に納得が出来ないと。捕まえる立場だったはずが、何時の間にやら彼らの弁護に回り、そして弁護をも引き受け…まぁ普通の人間なら納得などできようはずもないが。

 何にしても、この事件は無事解決した…はずだった。



* * *

 今日もそこに立つ建物は草間興信所のそれだ。その前に、二人組がやってきた。一人は白衣を着た博士風の男、そしてもう一人は看護婦風の女。
「博士、ここに凄い反応が!」
「ふふふ…では行くぞ助手二号、今日も世のため人のためー!!」
 勿論そんなことは知らない草間武彦が、ロビーでゆっくりしていた。
「…今、何か悪寒が…」
 所謂虫の知らせというやつだろうか。思わずその感覚に総毛立つ。
「武彦さん、風邪でも引いた?」
 そこに、シュラインがコーヒーを持ってやってきた。
「いや、そんなはずはないんだが…」
 そのコーヒーを受け取って、少しそれをすする。
 そんな彼らを、この後悲劇が……!!

 もしかして、続く…?



<END>



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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
【0086/シュライン・エマ(しゅらいん・えま)/女性/26歳/翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員】
【1936/ローナ・カーツウェル(ろーな・かーつうぇる)/女性/10歳/小学生】
【2778/黒・冥月(ヘイ・ミンユェ)/女性/20歳/元暗殺者・現アルバイト探偵&用心棒】
【3204/氷野・権持(ひの・けんじ)/男性/33歳/スーパー検事】
【3356/シオン・レ・ハイ(しおん・れ・はい)/男性/42歳/びんぼーにん(食住)+α】
【3506/梅・黒龍(めい・へいろん)/男性/15歳/中学生】

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■         ライター通信          ■
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 初めまして、へっぽこ新人ライターのEEEです。
 初依頼ということでかなり緊張しましたが、どうだったでしょうか?
 今回はコメディということで、皆さんから楽しいプレイングが送られてきたので、迷いながらもかなり楽しませてもらいながら書くことが出来ました。
 しかし、予想以上に長くなってしまってちょっと読みにくいかもしれません…(汗

・シュライン・エマ様
 今回はみんなのお姉さん役的な感じで動き回っていただきました。個人的に何時も草間さんとの絡みが気になっているので、これからもその活躍期待しています♪

・ローナ・カーツウェル様
 ただ絡めやすそうと言う理由だけで、シオンさんと行動を共にさせてしまいました(ヲイ
 プレイングが面白かったので、書いていて楽しかったです♪

・黒・冥月様
 結局最終的に、冥月さんは街を直すことになったんでしょうか…?(聞くな
 何にしても、シリアスな顔でおかしな事を進めていくのも楽しいものですね(笑

・シオン・レ・ハイ様
 こういう楽しいおじ様は大好きです(笑
 今回はローナちゃんとの凸凹コンビでやらせてもらいましたがどうだったでしょうか?常に叫んでいたような気もしますが、きっと気のせいですね♪(マテ

・氷野・権持様
 今回はほぼお任せのような感じのプレイングだったのであぁいう風に立ち回らせていただきました。
 微妙に空回りしてたりする人とか、見てる分にはかなり好きだったりします(笑
 最終的に冥月さんと対決してしまいましたが、これから二人には遺恨が…?(ぇ

・梅・黒龍様
 身長が足りない少年…それを前面に押し出してみました(笑
 とにかく身長を伸ばしたい、捕まえるよりもそれを優先していたので、一人別行動ということにしてみました。ちなみに、彼はちゃんとぶら下がり健康機を持って帰ったとか何とか(笑


 ではでは、後書きも長くなりましたのでこの辺で。また機会があればよろしくお願いします。