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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


本日開店・草間動物園

1.
「・・・薄力粉?」

それを見つけたのは運悪く草間零であった。
零は、袋に入ったその粉を裏返しにし、中身を確認した。

「・・・水と混ぜ合わせ、好きな型で抜き焼くとクッキーになる・・・」

フムフムと零は頷いた。
ここのところの閑古鳥の鳴きようはそれは酷いもので、兄である草間武彦はろくな食事も取れていない。
だからここで零がそんな兄にクッキーを作って食べさせようと思ったことを誰が責められよう。
零はその粉を使い、クッキーを作った・・・。

「ほう。珍しいな。おまえがクッキーなんて作るのは」

帰ってきた草間は驚きはしたものの、色々な動物型に抜かれた可愛らしいクッキーをためらいもせずに食べた。
そして、変化は起こった・・・。

「な、なんだこれはーーーーー!?!?!?」


2.
「どうしたの!?」

その叫び声を聞いて奥で仕事をしていたシュライン・エマは何事かと飛んできた。
そして彼女は見てしまった!
振り向いた『それ』は既に草間の形をしていなかった。
横では目の前で起こった出来事についていけていない零の姿。
と、唐突に来客を告げる大音量ブザーがなった。

「こんちわ〜。暇なんで遊びに来ました〜」
「悠宇君! そんなこと言っちゃダメだったら」
威勢良く入ってきた羽角悠宇(はすみゆう)と初瀬日和(はつせひより)がじゃれながら入ってきつつ、草間の姿を見て固まった。
「・・・」
「・・・」
言葉もない二人。
「あの・・これは・・・その・・ククク、クッキーを・・・」
しどろもどろに零が説明しようとするが、どうやら零自身も混乱しているらしく言葉が上手くまとまらない。
と、草間に最大のピンチが訪れる。

「こんちゃー、遊びに来たでー。ん? 何かええ匂いするなぁ・・」

さらに暇を持て余したと思われる門屋将紀(かどやまさき)が入り口で固まっている日和と悠宇を掻き分けてやってきたのだ。
だが、どうやら彼の目に草間は映っていないらしい。
「この匂いはクッキーやな! ええタイミングでおじゃましたわ♪ いっこもらってもええ?」
くんくんと部屋のにおいを敏感に感じ取り、すばやくクッキーにロックオン。
将紀の手がクッキーに伸びかけた時、ようやく零の声が出た。

「そのクッキーを食べて、兄さんが動物になっちゃたのですーーー!」

そう。
エマが見たもの、それは動物の体をつぎはぎのように掛け合わせたキメラ・草間の姿であった・・・。


3.
「・・・っということは、つまり。武彦さんはクッキーをわしづかみにして食べてしまった・・・ということね?」
事の顛末を零から何とか聞きだし、エマは考え込んだ。
猫の顔、オウムの羽、ウサギの体、豚の尻尾、そして鹿のようにすらりとした足にはいつも草間がはいているズボン。
どうやら草間のいつものシャツはキメラになった時に破れてしまったらしく、足元に無残な姿を残すのみ。
零の話を信じなかったわけではないが、どうやらこのキメラが草間であることには間違いないようだ。
「これだからここに出入りするのはやめられないんだよなぁ!」
ニヤニヤとやけに嬉しそうな悠宇を「こら」と日和がたしなめた後、こんな提案をした。
「尻尾が出てるのに窮屈そうですから、服を一時的に手直ししましょうか?」
ニコニコと屈託のない笑顔。どうやら本気らしい。
「日和ちゃん? できれば元に戻る方法を模索して欲しいのだけど・・・?」
「・・・あ・・・」
間の悪い空気が、エマと日和の間に流れていく。
「なぁ。おっちゃん、おっちゃん?」
微妙に心弾ませたような声がして、思わず草間が振り向いた。

『バクバクバク・・・』

「あぁ!? ま、ま、将紀君が・・・」
零が蒼白な顔で指差す方向をエマは見た。
そこには・・・

「なぁ? おいしい?」

ニコニコと純真無垢な笑顔の将紀が振り向いた草間の口にクッキーを大量に放り込んでいたのだ。
「ま、将紀君! ダメよ!」
日和が慌てて将紀を止めたものの、時既に遅し。
草間は放り込まれたそれらを全て飲み込んでしまっていた後だった・・・。
「・・・面白すぎるな・・・」
笑いをこらえ、ボソリと呟いた悠宇。
「零ちゃん! このクッキーの原材料の入ってた袋とかは? もしかしたらそれに何か書いてあるかもしれないわ!」
「は、はい! 探してきます!」
エマの声に零が台所へとクッキーの粉が入っていた袋を探しにワタワタと走って行った。
その間にもさらに草間の変化が始まっていた。
徐々に怪しげな姿へと変貌していく草間。
顔は猫耳を残し狐の顔へ、体は徐々に小さくなり、手が熊のものへと変化した。

「おっちゃん、かっこええ〜!!」
羨望の眼差しで将紀が草間を捕まえようと手を伸ばす。
だが、その手をすり抜けて草間はパタパタと翼を羽ばたかせた。
エマは一つ一つのパーツを見極め、そしてため息をついた。

死なばもろとも・・・いっそ食べてみようかしら?
でも、せめて取説くらいは見ておきたいわよね。

「シュラインさーん! 袋見つけました〜!!」


4.
「どれどれ?」
悠宇と日和がなにやら草間を捕まえようとしているのを背に、将紀とエマと零は顔をつき合わせて袋の後ろの説明書きを読み始めた。

『拘束ッキー: 以下の形に抜いて焼くことによって食べた者の行動を拘束することができる。
 ○ / 半径3メートル内でしか動けなくなる
 △ / 手を上に上げっぱなしになる
 □ / 足の動きがツーステップになる
 使用上の注意 * 効果を除去したい場・・・ 』

ここで丁度袋が破られており、文章の続きが読めなくなっている。
だが、最後に書かれた手書きの文字にエマはため息をつかざるを得なかった。

『 全国草間武彦ファンの会・一同より 』

「・・・またなのね・・・」
わいわいと騒ぐキメラになった草間をちらりと見たエマは再びため息をついた。
「なぁ、治るんやろ? おっちゃん」
エマのため息に嫌な雰囲気を感じ取ったのか、将紀が身を乗り出してエマに訊ねた。
「どうも本来の使い方と違うみただし、途中から破れててなんとも・・・」
「・・・ボク子供やから、全然わからへん♪」
にっこりと笑う将紀。
どうやら誰かが何とかしてくれるのを期待していたらしい。
「わ、私、続きを探してきます〜!」
零が蒼白な顔をしてまた台所へと引き返した。
事の重大さに責任を感じたらしい。

死なばもろとも・・・同じの食べてみようかしら。

ひょいっと猫型のクッキーをつまみ上げ、パクッと口の中に放りこんだ。
サクサクとした食感だったが、いまいち旨みにかけるクッキーであった。
「しゅ、シュラインさん!? どうしよう・・・悠宇君!」
慌てる日和の目の前で、エマの体が徐々に変化を起こしていく。
なんだかくすぐったい様な痒い様な、頭の2ヶ所がそんな感じに疼いた。

「シュラインねぇちゃん! 猫耳や!!」

将紀が叫んだ。
エマは冷静に頭の上を手で触り、その猫耳を確認した・・・。


5.
「同じものを1つ食べてこの程度の作用か。・・・ってことは、武彦さんよっぽどいっぱい食べたのね」

顔が猫化することはなく、頭に生えたのは猫耳のみ・・・などと冷静沈着に症状(?)を分析するエマ。
「ねぇちゃん、意外と大胆やなぁ」
将紀に感心され、エマは苦笑した。
と、キメラを追い掛け回していた悠宇が言った。
「零、風呂場借りるぞ」
「どうしたんですか? 羽角さん」
ガサガサと台所で袋の切れ端を探していた零がパタパタと飛んできた。
「いや、なんか煙草臭いし・・・このさいだから洗ってやろうと思ってさ」
「わかりました。あ、でも今袋を探してて手が離せないのですが・・・」
困ったように零が言ったが、悠宇はヒラヒラと手を振って「大丈夫だから、借りるな」と風呂場へキメラ草間を強制連行して行った。
「悠宇君! シュラインさん、将紀君。私も悠宇君のお手伝いしてきますね」
ぺこりと頭を下げ、日和も風呂場へと悠宇を追いかけて行った。

「ありました〜!! 袋の一部です〜!」
台所から嬉々として零が戻ってきたのはそれからすぐであった。
「どれどれ」
エマと将紀、そして零が期待を込めてその繋ぎ合わされた袋を覗き込んだ。

『効果を除去したい場合は水を掛けて3分待つこと』

「・・・水?」
一同がそう呟いた時、風呂場から日和の悲鳴が聞こえた!
「どうしたの!?」
パタパタと音を立て、風呂場へと直行するとそこにはびしょ濡れの悠宇と顔を覆った日和、そして人間に戻った上半身裸の草間が立っていた・・・。


6.
「ったく、酷い目にあった・・・」
「それはこっちの台詞だ」
拭き拭きと頭のタオルで水分を拭いている悠宇と草間。
「とにかく、無事に元に戻れてよかったわ」
ほっとしたエマはそういうとにっこりと笑った。
「ひとまず、お茶入れてくるわね」

るんた♪るんた♪と軽い足取りで台所へと向かうエマ。
しかし、何かを忘れているような・・・?

台所の扉を開けたとき、エマは何を忘れていたかを思い出した。

「ね、猫耳・・・・」

ガラスにかすかに映る自分の姿を見たエマは、しばし呆然としていたのであった・・・。


−−−−−−

■□   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  □■

0086 / シュライン・エマ / 女 / 26 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員

3524 / 初瀬・日和 / 女 / 16 / 高校生

3525 / 羽角・悠宇 / 男 / 16 / 高校生

2371 / 門屋・将紀 / 男 / 8 / 小学生


■□     ライター通信      □■
シュライン・エマ様

この度は『本日開店・草間動物園』へのご参加いただきありがとうございました。
皆様の予想通り、動物になってしまいました草間。
参加者様のご意見を取りまとめてこのような姿へと変貌しました。
誰か1人ぐらいは食べてくださるだろうと思ってはおりましたが、まさかエマ様が食べていただけるとは思っておりませんでした。
猫耳はいかがでしょうか? 水を掛けて3分ほどで治りますので心ゆくまでお楽しみいただければと・・・。(笑)
それでは、またお会いできる日を楽しみにしております。
とーいでした。