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<東京怪談ウェブゲーム アトラス編集部>


骨と奏でる諧謔曲

「三下くん、ちょっと。」
 何時もどおりに慌しいアトラス編集部の午後。
 自分のデスクの前に座ったまま、編集長の碇は取材に出かけようとしていた三下をにこやかな笑顔で手招きした。彼女の手には、今しがた届いたばかりの郵便物の一つが、しっかりと握られている。
 嫌な予感を感じたのか、三下の背中を嫌な汗が、流れ落ちていった。
「あ、あの……僕、これから取材に…」
 碇の笑顔の裏に隠された何かに怯えながら、三下は蚊の鳴くような声で呟く。その言葉に、たちまち、碇の柳眉が跳ね上がった。
「呼ばれたら、さっさと来る!」
「は、はいぃっ!」
 三下は、取材道具を自分のデスクの上に放り出すと、壊れた人形のように、ギクシャクした動きで碇の前に進み出た。その彼の目の前に、碇が手にしていた茶封筒が突きつけられる。
 読め。
 声に出さなくても、碇の目が雄弁に語っていた。
 もう逃げられない…碇に睨まれて観念した三下は、封筒を受け取ると、その中身に目を通していった。
「科学博物館で、幽霊騒動……ですか。」
 手紙の差出人は、科学博物館の警備員らしかった。文面には、毎晩のように館内を何かが走り回っている音がする、幽霊かもしれない、と書かれている。
「そのようね。差出人の言を信じれば、だけれど。でも、真実なら記事になるわ。」
「はぁ……。」
 碇のデスクの上に、封筒を置きながら、覇気の欠片もない返事をする三下。対照的に、にっこりと微笑む碇。そして、碇の唇が言葉を紡いだ。
「取材してらっしゃい。」
「ぼ、僕がですかぁあ?!」
「他に誰がいるっていうの。あ、そうそう。キミ一人じゃ不安だから、誰かに同行して貰いなさいね。」
 しっかり取材してくるのよ。
 そう念を押して、自分の仕事に戻った碇の前を辞しながら、三下は貧乏クジを引いてしまった不運を呪いつつ、ガクリと肩を落とすのだった。


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(本文)

博物館の妖しき夜へ―――。

■1

 何時も通りの慌しい月刊アトラス編集部の昼下がり。面白い事件がないものか、と学校帰りに、ふらりと立ち寄った梅・成功(ちぇ・めいごん)は、編集部の喧騒に紛れて聞き覚えのある悲鳴に読んでいた雑誌から視線を上げた。
 甲高く鳴り響く電話のベルの音、受話器ごしに何やら話し合う声、忙しなく動き続けるコピー機、耳障りなほどに聞こえてくるキーボードを叩く音、そして紙ずれ。
 この場所で、いつも聞いている音と光景が、彼の目の前にある。その中に、誰もが意図的に避けて通っているに違いないと思われる空間があった。編集長である碇のデスクの周りだけ、ぽっかりと穴が開いているように人気がない。否、デスクチェアに腰掛、キリリと眉を吊り上げた碇本人の他に、もう1人、青ざめた顔の三下がデスクの前に立ち尽くしているだけだ。成功が、先ほど耳にした悲鳴は、ここから発信されたものらしい。成功は思わず、耳を澄ました。
「博物館の事件を取材って事は、もしかして、僕、泊り込みなんでしょうかぁ…?」
 今日も相変わらず、おどおどした仕草をしながら、三下が情けない声で碇に問いかけている。その問いを間髪入れずに、碇の凛とした声が粉砕した。
「もしかしなくても、泊り込みよ。夜中に起きている事件なのに、泊り込まなくて、どうやって取材するっていうの。」
「むむむ、無理ですよぉ〜〜、そ、そんな所に泊り込むなんて…。何か出たら、どうするんですかぁ〜」
「……オカルト雑誌の編集者が、博物館に泊り込む程度で怯えないで頂戴。第一、何かが出ないと記事にならないじゃないの。」
 おろろろ〜ん…と、今にも号泣しそうな様子で泣き言をいう三下を、碇が冷たく一掃する。忙しいんだから、いい加減にしろ!と、彼女の目が雄弁に語っていた。そんな2人のやり取りを、少し離れた場所で観察していた成功は、苦笑いしながら手にしていた先月の月刊アトラスをマガジンラックに放り込んだ。2人の会話の端から、博物館で何か事件が起こっているらしい、という事が読み取れたからだ。どんな事件かは知らないが、アトラスが取材に乗り込むのなら、退屈だけはしない事件に違いない。そう考えて、成功は、無視を決め込む人々の間を縫うように横切ると、ガクリと落とされた三下と深いため息をつく碇に声をかけた。
「あのさ、さっきの話、ちょっと聞こえてたんだけど。俺、付き合ってやっても良いぜ、三下さんの取材。夜の博物館なんて、面白そうだしさ。」
「ほ、本当ですか、成功さん!ありがたいですぅ〜」
 成功の言葉に、三下が、たちまち、
ぱぁああっと顔を輝かせる。が。
「その代わり…」
「その代わり、ですか?」
「成功報酬で、焼肉おごりってコトで。」
 ニヤリ…と意地の悪そうな笑顔で、成功は、一瞬にして、三下の希望を笑顔ごと打ち砕いた。天国から地獄へ、気分的に急降下させられ、パニックを起こしかける三下が、デスクの碇にすがりつく。
「は?…えぇっ?!そ、そんな、聞いてないですよー?!編集長、どうしましょう〜〜、僕、給料前で、財布が…でも、1人で取材も嫌で、えぇっと…」
「キミの取材でしょ、三下くん。スクープを取れるなら、焼肉くらい、安いものでしょう。」
 五月蝿そうにすがる三下に、碇が追い討ちをかける。ガクリと項垂れる三下の肩を、後ろから満面の笑みで成功が叩いた。
「どうする?三下さん」
 振り向かなくても背後の成功がどんな顔をしているのかが、彼の声で分かる。
「…よろしくお願い致します」
 その声を聞きながら、三下は喉の奥から絞りだしたような声で、そう言った。
「よっしゃ、それじゃ、行こうか、焼肉さ…じゃない、三下さんの事は俺がしっかり守るからさ!」
 焼肉、やきにく〜♪と、鼻歌を歌いつつ、成功は項垂れたままの三下を引きずりながら、事件の現場に向かうのだった。


■2

 ゆらり…と、白く冷たい床の上で、長く伸びた黒い影が揺らめいている。
 ゆらり、ゆらり。正体は科学博物館の高窓から落ちる街路樹の影に他ならないが、人気のない夜の館内で揺らめくそれは、どことなく不気味で不吉な印象を植え付ける。例え、その正体を十分承知していたとしても…。
 床の上で奇怪なダンスを踊る影を踏みつけて、3つの足音が博物館の中を歩いていく。この博物館で起こっている騒ぎを取材する為に、アトラス編集部から来た、梅・成功(ちぇ・めいごん)、シオン・レ・ハイ(−・−・−)、そして三下忠雄の足音だ。先に博物館に到着していた、成功と三下にシオンが加わり、事件をリークしてきた警備員の協力もあって、夜の館内を回っているのだ。
「な、なんか不気味ですねぇ…」
 そう言って、三下が、ぶるりと一つ身震いしながら心底寒そうな表情を作る。丁度、恐竜の骨が並ぶ展示室に入った時のことだ。非常灯と懐中電灯以外、明りのない博物館内に浮かび上がる展示品の数々は、確かに不気味だった。何しろ、巨大な恐竜の骸骨が、暗い眼窩を幾つも向けているのだから。思わず、前を行く成功と、横を歩くシオンの方へ僅かに寄っていく三下に、懐中電灯の明りを天井に向けてクルクルと回しながら、シオンが笑いかけた。
「そんなに怖がらなくても、大丈夫ですよ、三下さん。全部、化石なんですからー。」
「そうだぜ、化石っていうか、この辺の恐竜の骨なんて、レプリカなんじゃねぇの?」
 後ろを振り返り、情けない三下にため息を付きながら、成功も言う。2人に言われて、些か気まずそうにしながら、三下は周りを見回した。やはり、怖い。恐竜の骨が、深夜近くに動き回っている自分たちを、まるで侵入者でも見るように見下ろしているような気がする。居たたまれないような気分にかられて、三下は身を縮込ませたまま、成功とシオンに遅れないように歩きだした。
「それにしても、本当に騒ぎなんか起きてるのかぁ?」
 先頭を歩く成功が、唇を尖らせながらぼやく。既に、手元の時計は、23時を回っている。警備員の話では、夜な夜な何かが走り回っている…筈なのだが、未だに物音1つしないのは、どうした事なのか。昼間のうちに、すべての展示場に仕掛けた、成功の目の代わりともいえる鏡にも、全く反応がない。
「警戒されちゃいましたかねぇ…。」
 シオンが、考え込むようにしながら、ぽつりと呟いた。やはり、3人揃って歩いたのが不味かったか、いやいや、それとも、懐中電灯だけで歩き回ったのが不自然だったのか。そんな事を言い合いながら進む2人の後ろで、三下の声が、あっと声をあげた。
「どうしたよ、三下さん。」
 突然の声に、振り向いた成功が声をかける。その隣では、同じく振り向いたシオンが不思議そうな顔で三下を見ていた。
「あ、あの、僕、成功さんの足を踏んじゃったみたいで…」
「はぁ?なに言ってるんだよ。第一、俺の方が先に歩いてるんだから、踏めるわけないって。」
「あ、そうですよねぇ…じゃぁ、シオンさんでしたか…すみません〜」
 成功に否定され、隣のシオンに向かって頭を下げかけた三下に向かって、シオンも首を横に振る。
「私も踏まれてませんけど…」
「え、でも、確かに、さっき、ゴリ…って」
 ちょっと待て、足を踏んで、ゴリって音はないだろう?!
 三下の言葉に、成功とシオンの顔が思いっきり引きつった。そんな彼らの反応に、三下が不思議そうに首をかしげた、その時だった。僅かな重みが、彼の方にかかったのは。思わず、自分の肩に目をやる三下。そこには、白く骨ばった…否、骨だけの手が置かれていたのだ。
「ヒィイイイイイイーーーーーー」
 三下の情けない悲鳴が、博物館の中に幾重にも木霊する。そのまま、白目を向いて、ヘタリこんだ彼の後ろに、その手の持ち主の姿が浮かび上がった。
 それは、白い…骨格標本のような骸骨だった。そいつが、歯をカタカタ言わせながら、三下を見下ろしている。
「ありゃー、驚かせちまったか?悪ィ悪ィ。大丈夫かね?」
 そんな風に骸骨が三下に向かって言ったような気がした。が、その声で、余りに突然の展開に唖然としていた成功とシオンが我に返った。瞬時に、1歩前に踏み出した成功が、骸骨の頭を狙って蹴りを入れ、その隙にシオンが三下の腕をつかんで、骸骨の傍から遠ざける。
「ちょ、ちょっと待てって!俺は、敵じゃねぇよ!」
 骨だけの体で、なぜそんな素早く動けるのか、成功の予想以上に早い動きで、彼の蹴りを避けながら骸骨が慌てたように声を上げる。
「アンタら、博物館の騒動を解決しにきたんだろ?!俺ぁ、ちょいと頼みたい事があって、出てきただけなんだよ。」
「そういう事言うヤツほど、信用できないんだよ。お前が原因じゃないって保障はないだろ?!」
 そう言った成功の目が、きらりと光る。そして、彼の左足が今まで以上に鋭く、骸骨の頭を狙って繰り出される。だが、彼の足は空を切った。成功の足が当たる寸前、骸骨がバラバラと床に崩れ落ちたからだ。人体を形成していた骨が、一瞬で床の上に山となる。その山の上で、カタカタと頭蓋骨が歯を鳴らした。
「ふぃ〜、危ねぇな。もうちょっとで当たる所だったじゃねぇか。」
 床の上の骨の山が一人でに動き出し、元の骸骨の形をとる。そして、きちんと元の形に収まると、ずれてしまった頭蓋骨の座り具合を直しながら、骸骨は、言った。
「俺は、アンタらの敵じゃないんだ、寧ろ、俺も被害者さ。話だけでも聞いて損はないと思うぜ。なぁ、そっちの兄さんも、そう思うだろ?」
 骸骨が話題を振ったのは、三下を壁際に運び、寄りかからせたシオンだった。三下の状態を確かめていた彼は、その言葉に立ち上がって骸骨の方に体を向けた。
「そうですねぇ…。まぁ、事件の手がかりも無いことですし、聞いてみませんか、成功さん。事が起これば、それから対処しても、こちらは2人、手遅れということはないでしょう。」
 そうシオンに言われて、成功は一つ肩をすくめると、構えていた腕を解いた。その様子をみて、骸骨が安堵の息をつく。
「助かったぜ、兄さんよ。とりあえず、自己紹介しとこうか。俺は、スカル・ジョン。白骨のジョニーとでも呼んでくれ。」
 言いながら、骸骨――スカル・ジョンがポーズを作るが、所詮は、骨格標本。圧倒的に似合っていない。
「名前はいいから、さっさと用件を言えっての」
 横から、成功がボソリと突っ込みをいれ、シオンが苦笑いを漏らした。
「分かったよ。今、ここの博物館の特別展示で、何やってるか知ってるかい?」
「特別展示…?」
 スカル・ジョンは、そういいながら、恐竜の骨が置いてある台の隅に腰掛けた。
「人体展、だろ?確か、2階の展示場だったよな」
 鏡を仕掛けた時に、全部の部屋を回っていた、成功がそういうと、スカル・ジョンは大きく首を縦に振った。
「そこに展示されてる人体模型があるんだが、そいつのせいで、困ってるのさ。今回の特別展の為に外から連れてこられたヤツなんだが、毎晩毎晩、俺たちに悪戯し放題だ。」
「もしかして、今回の幽霊騒ぎの原因は、その人体模型…なんですか?」
 シオンの問いかけに、力いっぱい、骸骨は首を縦に振り下ろす。勢いの付きすぎた動作に、不安定な下顎が、カタカタを僅かに音を立てた。
「最悪だぜ、あんなタチの悪いのは。恐竜の奥歯は引っこ抜くは、アウストラロピテクスの人形の爪は持っていっちまうわ…。ほら、俺の右手も見てくれよ。」
「あぁ、小指がないですねぇ…」
「…持ってかれたのさ。」
 そう言いながら、ガクリとスカル・ジョンは肩を落とした。非常灯の明りに、その影が長く伸びる。
「俺たちは、本物の骨じゃねぇよ。博物館の展示の為だけに作られた偽物だ。でもよ、客にちゃんとした姿を見せるのが、俺たちの務めなんだよ。こんな姿じゃぁ、勤めも果たせねぇ。頼む、アイツに奪われたもの、全部取り返してくれ!」
 この通り!!!
 スカル・ジョンに拝み倒されて、2人は、顔を見合わせた。全く、妙なことになった…という思いが、お互いの顔から読み取れる。
「仕方ねぇなぁ…。分かったよ、取り戻してやるよ。」
 ガリガリと髪の毛をかき回し、ぷいっと横を向きながら成功が言う。その言葉を、シオンが継いだ。
「それで、その人体模型ですけど、何時頃動き出すんです…」
 シオンが言いかけた時だった、その言葉をさえぎるように、ガタン、ドスンという音が2階から響いてきたのは。
「始まりやがった…」
 何かを床にたたき付けるような音に続き、ドタドタを複数の足音が2階を駆け抜けていく。
「…騒ぎが起きてるとは聞いてたけど、こんな大騒ぎなのかよ…。」
 呆れた…という風に呟く成功の横で、スカル・ジョンが骨の顔に苦々しい表情を浮かべたようだった。
「大方、ナウマンゾウの骨格標本にでも、悪戯したんだろうよ…。絶対、そうだぜ、この盛大な物音はよ…。」
 ナウマンゾウ。氷河期時代の象で、日本では野尻湖で発見されたものが有名。背までの高さは、1.9m〜2.7m。
 そんな説明文を思い出して、2人の顔から、サァーっと血の気が引いていく。人体模型だけでも手を焼きそうだというのに、怒り狂ったナウマンゾウまで相手にはしたくない。
「とりあえず、人体模型を捕まえれば万事OKな分けですよね。成功さん、今、何処にいるか、分かりますか?」
 シオンに言われて、成功は2階の展示室に仕掛けた鏡に意識を集中した。一瞬ののち、彼の脳裏に、ナウマンゾウの牙を片手に2階からの階段を駆け下りる人体模型と、後ろを追いかけようとして、大展示室と書かれた扉に挟まれたゾウの姿が浮かび上がる。
「2階の大展示室の外、人体模型は階段を下りていったな。ナウマンゾウは、扉に挟まれて動けないみたいだ。」
「人体模型は1階に来ますか…なら、これが役に立つかもしれませんね。」
 そう言って、シオンは荷物の中から、ロープを取り出すと、にんまりと笑った。

 寝静まった博物館の中を無法者が駆け抜ける。地質学展示室、海洋展示室を抜けて、その足音が恐竜たちの眠る部屋に近くなる。そして、足を踏み入れようとした途端。
 人体模型は、思い切り床の上に転んでいた。更に、物陰から飛び出した2つの影によって、体の自由を奪われる。何が起きたのか分かっていない、人体模型に、影の1人――シオンが、ニッコリと微笑んだ。
「作戦成功、といった所ですね。」
 人体模型が転んだのは、シオンによって扉の前に張られたロープのせいだったのだ。更に、人体模型が転んだ後に、そのロープによって、ぐるぐる巻きに縛りあげたのである。
「とんだ手間かけさせやがって。もう、こんな騒ぎは終わりにしようぜ。」
 ニヤリと、笑みを貼り付けて、成功が展示室に仕掛けた鏡に意識を集中させる。鏡が、ロープに縛られて暴れる人体模型の姿を写し取った。鏡面と現実と、2つの人体模型が動いている。やがて、現実の人体模型から、力が抜け、動くのは鏡面のもののみとなった。博物館を騒がせていた人体模型は、その魂を抜かれ、ただの物に戻ったのだ。
「これにて、一件落着ってか。」
「お前がいうな!!」
 そう言って、カタカタと歯を鳴らしたスカル・ジョンに向かって、2人の鋭い突っ込みが飛んだ。


 喧騒の一夜が明けて。
 人類の進化をテーマにした展示室で、三下はガラスケースの中の飾られた骨格標本を、不思議そうな顔で見ていた。
「昨日、この骸骨を夢の中でみたんですよぉ。」
 そういう三下の後ろで、シオンと成功が苦笑いを交わす。スカル・ジョンと名乗った骸骨に脅いた三下が、意識を取り戻したのは、事件が収まり朝になった後だったのだ。
「不思議なことってあるもんですよねぇ…」
 そう言いながら、首を捻った三下の腕を成功が引っ張った。
「さぁて、三下さん。仕事も終わった事だし!」
「はい?」
「約束どおり、焼肉食いに行こうぜ!」
「そうそう、私の方もケーキを奢ってもらわないと。」
 シオンも、にっこり笑いながら、成功の言葉に同調する。2人から、そう言われた三下は、目を白黒させながら、情けない声を上げた。
「む、無理ですよぉおお。両方だなんて、そ、そんな…」
「問答無用」
 2人の声が綺麗にはもる。逆らえない響きを持った宣告に、心底怯える三下を引きずって、シオンと成功は足取り軽く、展示室を出て行った。
 そんな彼らの後ろで。右手の小指を取り戻した骨格標本の骸骨が、人知れず楽しそうに微笑んでいた事を、誰一人として知るものはない……。




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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】


3507/ 梅・成功 / 男性 / 15歳 / 中学生
3356 / シオン・レ・ハイ / 男性 / 42歳 / びんぼーにん(食住)+α

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■         ライター通信          ■
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初めまして、成功様、シオン様。
ライターの陽介です。
この度は、依頼にご参加くださいまして、ありがとうございます。
そして、大変長らくお待たせしてしまい、まことに申し訳ありませんでした。
心からお詫び申し上げます。