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<東京怪談・PCゲームノベル>


茜の心を癒す人 中編

 あの、路地裏であった少女・長谷茜と出会ったあなたは、暫く彼女を世話することに。その中で彼女の悲しみなどを受け止めて、心を通わせていく。

「……私、どうすればいいのかわかんないよ。何もかも真っ白で……こわい」

 まだ、先にある運命に立ち向かえるだけの強さを持っていないようだった。
 彼女を元気に出来ることは出来るだろうか?


 長谷平八郎は、愛する娘の捜索を続けている。
 彼も分かっていた、今無理矢理連れ戻しても娘は昔のように元気になってくれないと……。しかし、一目見たいのであった。



 アレからと言うもの、茜はふて腐れていた。
 勝手知る人の家。メイド服趣味男の家、しかもメイド服を常に着ている女性付き。
「ココまで来ると、変態よね」
 と、やはり彼女の事情など半信半疑。
 その彼女とは、既に“めいどのあくま”として一部関係者にあだ名が付けられている内藤祐子である。
 其れが皮肉にも、幼なじみの義明かかわうそ?というあたり運命じみているのだろうか?
 しかし、そのあだ名のことは茜自身現時点では知らされていない。

「流石の大雨の中、でていくのは無理か……」
 と、茜は窓から空を眺めて溜息をつく。
 メイド服や妖しい服以外にも此処の主の家は普通の女性服もおいているので、其れを着こなしていた。
 デザイナーの卵のような事をしている。其れは後々彼女も正確に知ることになる。
「あめばかりですね」
 祐子は、明るいいつもの感じで茜に言った。
「そうだね……私の所為でもあるけど……」
「??」
「あ、う、なんでもない……」
「そうですか」
 すこしションボリする祐子。
 本当に此処の主は帰ってくることはないが、毎日茜は緊張感が続く日々を送っていた。
 いつ、アレが帰ってきたらどうなることかと、怖さと怒りがあるのだ。
 なんかもう、自分の使命云々より、アレの深き縁ある者に助けられる(母親は別かも知れない)のは悲しいものだった。
「でも、異世界……多元宇宙に色々“落っことしている”みたいね……あの人」
 ふと、冷静に考えると、彼女の感覚に穴があると全ての感情と理屈が一致し理解した。
 そんな可哀想な人に自分の不安定な感情をぶつけて良いのだろうか? やはり、こっそり抜け出した方がいいのだろうか悩んだ。
 
 結局、彼女の心の現れに似た天気が激しく悪化するので更に数日が過ぎる。


「おかしい……探知できない……。この世界のレコード外なのか?」
 平八郎は式神での探知をして、この大雨の中、愛娘を捜していた。
「平八郎様!」
 と、数名の男女がやってくる。スーツ姿だったりラフな感じの者もいたりする。
「別のMaterial-plane系魔力の残留思念を発見しました。そこに茜お嬢様の霊気もありました」
「そうか……」
 どうも此の数名は彼の弟子らしい。長谷神社の紋章ピンをつけているのだ。
「茜を見つけても、儂に連絡だけをするんじゃ。無理矢理連れ戻さなくてよい」
「しかし……」
「分かっておろう……。この家出はアイツ自身との闘い……。逃げている様でもまだ何とか闘っているのじゃ」
 平八郎は、雨が振る天を見上げ言った。
「……普通なら、自……」
 と、弟子の一人が何か言いかけて口をつぐんだ。
「……」
 そう……、失恋というきっかけで様々な思惑が彼女の意志力を殺ぐ。そんなことでは、彼女が今後生涯背負う“責任”“使命”に耐えきれない。なら、完全に逃げるなら最後の意志力を絶望の力にし……自らを殺めることになる。それは、肉体そのものなのか、心だけなのか、その両方なのか関係なしに……。己との戦闘とは極端に言えばそう言うものであるのだ。
「霊木が其れを憂い、泣いておる」
 今の守護者は呟いた。



 珍しく、爽やかな気分になって茜は起きた。
 女の子の気持ちというのは、秋の空に似ているとか言われる。其れだろう。

 面白いことに、空の天気も快晴である。

 日々の生活がそうさせたのかどうか分からないが……。
 考え込んでいるだけでは結局は駄目なんだとか、行動だよねと色々考えていたのだろう。もっとも結局祐子の言った通りに、最悪のアレは帰ってこないので、安心したのかも知れない。更に、祐子は優しく茜を世話してくれたり、天然ボケなのかドジをしたりと、茜を笑わせたり別のことで困らせていたりしたのだ。

 そう言う事で、こんな出来事の一つを……。
「眼鏡が無くなったんです〜。ご主人様におこられます〜」
 おたおたと、頭に眼鏡を置いて(カチューシャにうまく引っかかっている感じ)あたふたしている。
「もう、伊達眼鏡だからいいじゃない」
 溜息をついて、関西出汁のきつねうどんを作っている茜。天然の軟水があったから其れを使うことにしたのだ(もちろん食用)。
「だめです〜!」
 なきだす、あくま。
「もう……其れ態と?」
 と、茜はうどんをさっと作り終えてから、彼女が頭に乗せている“さがしもの”をとって祐子に見せた。
「あ、ありましたぁ! ありがとうございます」
 茜に抱きつく祐子。
「く、くるしい〜」
 怪力で抱きしめている祐子。さすがあくまである、まる

「外に出かけませんか?」
 と、あいかわらずのほほんとして明るい祐子が、茜を起こしに来たとき言う。
「そうね……久々だもんね。こんなに晴れたのって」
 意外な返答。
「よかったです〜」
 ニコニコして本当に喜ぶ祐子だった。

 弁当を二人で作り、いざ外に。しかし、
「わたし、どう行けばいいのか分からないので茜さんにおまかせします」
 と、明るくもの凄いことを言う祐子。
「……もう! くすす」
 怒り出すと思ったが、溜息をついてから笑う茜。
「何だかんだ言って、祐子さんには色々お世話になったから……。私が知っている範囲で散歩しようか」
「はい♪」
 二人は出かける。
 茜は極普通の服で、祐子はいつものメイド服。
 何か不思議な取り合わせ。
 しかし、別段人が驚いて見ることはなかった。違和感がなかったわけではないが……。

 茜が行くルートはこうだった。
 まず、あの最悪な別れ方をした場所。
 幼なじみと初めてキスをした公園。
 色々事件を調べていたネットカフェ。
 三滝尚恭の家跡地。
 『天国の扉』と戦った場所。
 遠くから、あやかし荘が見える展望台。
 そして、妖刀・紅一文字と戦った場所から、近くの公園にたどり着いた。
 昼ご飯をするには遅すぎる15時。それだけ歩いた。
 茜は、その間、過去の出来事を、助けてくれたメイド服の女性に話す。
 おどけてみたり、怖かったよと言いってみたり、怒ってみたりと笑いながら。

「一休みしようか」
「あ、はい、です」
 適当なベンチに座ってお昼を食べる。
 祐子は、茜が殆どの事を話してくれた事に感動していた。
 空っぽなのだ。茜には沢山の経験があった。
 次元から飛ばされ迷子になり、記憶を失った。ただ、失ったと言うより、“落としてしまった”方が正しいのだが、彼女が知るよしもない。
 なので、
「どうだった? あまりパッとしないところばかりだったけど」
 茜が苦笑して言う。
「すばらしいです! 色々思い出が有ることは素晴らしいです!」
 感動をしっかり表に出す祐子。
「わたしは……」
「抜け落ちているからね……記憶が」
「え?」
「異次元の事分かるもん。多元宇宙のことも……。これは難しいから話し変えるね」
「あ、はい」
「失恋したのはもう知っているよね。さっき言ったから」
 茜の言葉に頷く祐子。
 そして祐子は口を開く。
「でも、色々考えて思って、私、茜さんが羨ましいなっておもいました。いいなぁって。でも、金親だろうな、難しいのだろうなって思ったんです。過去の記憶がなく自分の名前と知識〜流石にこの世界は殆ど分かりませんが〜だけですから……。そ…そ…」
 と、色々言いたかったのだが、泣いてしまった。
 茜は彼女の頭を撫でた。実は茜の方が彼女より背が高かった(座っていても色々な要素がある)。
 祐子は、涙を拭いてはなをかみ、真っ赤にくしゃくしゃになった顔で笑い。
「思いっきり遊びましょう! たしか、そう言うときは何もかも忘れてって言うことを知っています!」
「うん、そうだね!」
 食べ終わってから、二人は一緒に何もかも忘れてはしゃいで遊んだ。
「あ、きょうはあのこはここに入ってないのね」
「?」
「ん? 後々分かるから」
 とのゲームセンターでの会話。
 そんなことより、祐子がパンチャーで怪力を使いすぎたため、メータが壊れたので遁走。
 メイド服以外でも似合うからと茜と、いえ、コレが好きなんですと祐子のブティックで妙な言い争い。
 そして夜近くになったので帰宅した。



 少し遅い夕食をとってから、就寝時間。
「茜さんの隣で眠りたいです」
「淋しくなったんだね」
「淋しい……はい、淋しいです。茜さんと一緒にいたいです」
 茜は優しく彼女を抱きしめた。
 前に彼女が自分にしてくれた様に。
「うんいいよ」
「ありがとうです」
 一緒のパジャマで布団を並べて眠る二人。
「あのね、また雨が降ったら、私家に帰るから」
「そう……なんですか?」
「何時降るか分からないけど……近いうちに」
「はい……そのときは……」
「一緒に来ても良いよ、祐子さん」
「はい!」
「おやすみ」
「おやすみなさい」
 二人は眠った。
 
 茜は気が付いていない。祐子に芽生えた感情を。
 恋である。

 ――どうすべきでしょうか?
 「世界の一」はどうすべきか悩んでいた。
 其れを感じ取れる父親は……。
「そうか……自ら戻ってくると……。大丈夫なのか? 茜。迷いは……?」
 不安を隠せなかった。

 まだ、雨は降らない。
 降ったときが、茜の運命がきまる日である。



To Be Continued

■登場人物紹介

【3670 内藤・祐子 22 女 迷子の預言者、というかめいどのあくま】

【NPC 長谷・茜 18 女 神聖都学園高等部・巫女】
【NPC 長谷・平八郎 65 男 長谷神社宮司】

■ライター通信
 何となく、警戒心を解いていく茜。祐子さんとの友情はどうなるか! とおもいきや、祐子さんに何か異変Σ(゚□゚)!! もしや危ない道に、茜が!
 内藤さまが今後どういう振る舞いをするかで、彼女のどれだけ心の傷が癒され、最後の後編でその結果が出ます。異空間書斎〜東京怪談で起きた事件と同じですが、このノベルだけはパラレルです。今後、後編の行動次第で、茜との禁断の関係が深まっていくのでしょう。つうかー百合はご勘弁(;´Д`)ノ
 
 では又の機会があればお会いしましょう。
 
 滝照直樹拝