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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


霊界の魔女は仮装がお好き?

よう、久しぶりだな。日々元気に生命活動を続けているか?
俺のほうはというと、心臓は止まり血管は凍り、おまけに体全体が透けている状態だ。
俗に言う幽霊というやつだが、俺自身は気にしていない。なんたってウン十年前からこの姿だからな。
慣れというものは素晴らしいと思わないか?
…俺は別に思わない。慣れというものは諦めと同意語だと俺は思う。
人間、諦めたら終わりなのだ!

しかし!幽霊だろうと何だろうと、これだけ周囲に変態どもが集まってくると…
さすがの俺も如何しようもない。
諦めるしかないのか、と思いたくもなるのも仕方のないことだ。
周囲を見渡せば、360度変態変態変態…ここは変態の見本市か?いい加減にしろ。

そもそもこうなったのも…俺の周囲で浮かんでいる妙な小娘のせいなのだ。
露出度の高い、豊満な体型を強調するような黒いワンピースを着て、
頭には先端がとんがった、これまた黒い帽子。
くせのある長い金髪を宙に漂わせながら、俺の周囲をふよふよと浮かんでいる。
確か、名前はヴェスタとかいったか。三途の川の橋渡し…とかしているらしい。
俺も初めて聞いたときは、この女頭がおかしいんじゃないかと思った。
しかし本人は至極真面目なようで(性格はちゃらんぽらんだが)、
実際俺と同じように実体がなく、まともな人間とも思えない。妙な女だ。
しかし、この女が…全ての元凶なのだ!
急に俺の前に現れたかと思うと、
「ここって寂しいネっ!賑やかなほうがワタシ好きヨっ!」
 とかなんとか喚いて、次々と、変態どもを…呼び出しやがった。

この頭のおかしい女が言うには、人間界ではそろそろハロウィン…
とかいうイベントが行われるらしい。
こいつは普段霊界で、死者の行き来を管理しているのだが、
元来お祭り好きな性格で、今年はふらりとやってきたそうなのだ。
そしてなにやら辛気臭く(うるさい、余計なお世話だ)している俺に目をつけたらしい。
俺にどうしろと言うのだ、と叫んでみたが、この女には全く効果無し。

そういうわけで、現在俺は頭を抱えているのだ。
誰か…この馬鹿女を追い出してくれ!俺の平穏のために。



               ★




「…えっと、幽霊さんですか?」
 本日何度目かの深いため息をついた俺に、ふいに声がかかった。
あん?と振り返ってみると、そこには一人の少女。
珍しい青みがかかった長い髪に、瞳。
年齢は13歳ほどだろうか、まだ幼さが残る顔立ちが愛らしい。
「初めまして、海原みなも(うなばら・みなも)といいます。あの書き込みくださった幽霊さんですよね?」
 と首を傾げて俺に尋ねてくる。
俺はというと、少々面食らっていた。
まさか…こんな幼い少女だったとは。
「せやねん、あんたがみなもか。まあ、ちゃんと来てくれて助かったわ」
 ははは、と無意味に空元気を放ってみる。
どうにもこうにも…ここ最近の精神的疲労で、俺はほとんど消滅しかけなのである。
幽霊なんざ精神力で持ってるようなものだから、直にダメージがくる。
別にこの世に未練はないが、こんなもんで無理矢理成仏なんてことになったらたまらん!
「あの…大丈夫ですか?」
 思わず頭を抱えた俺を、心配そうに覗き込みみなも。
俺は大丈夫だ、というように手を振って、ふと思った。
「そういやあんた、俺の姿見えとんのか。なんや、そーいう…霊能力?
とかゆーもん、あんたももってんのか?」
 人は見かけによらんなあ、と俺は半ば感心してみなもを眺める。
だが彼女は、笑って首を振り、
「違いますよ。あたしに霊視能力はほとんどありません。
あなたが幽霊さんと拝見したので、ほらこれ…」
 そういって手に提げたかばんから、小さな小瓶を取り出して中の水を振る。
「霊水を目薬にしてもってきました。これならインスタント霊視が出来るんです」
 便利でしょ、と笑って答えた。
俺はそんな彼女を見て、少なからず恐怖を覚えた。
…今の世の中、インスタント除霊なんかも存在するのだろーか。
いやまったく…恐ろしい世の中になったもんだ。
無論、幽霊にとっては、だが。
「それで、幽霊さん…。その、ヴェスタさんはどこに?」
 そう言って、みなもはキョロキョロとあたりを見渡した。
ここは古都、京都は四条の橋のたもと。
俺は最近ねぐらにしている大木の幹のあたりに所在無げに突っ立っているわけで、
みなもは肝心のあのイカレ女が見当たらないので不思議に思ったのだろう。
俺は、はぁぁぁと深いため息をつき、額を押さえた。
「俺が知るかっちゅーねん。あの女なら、なにやら喚いてどっか消えてもうたわ。
ここらへんなら、ちょっと飛び回れば『トモダチ』が沸いて出るゆーてな」
「まあ!」
 みなもは驚いてか、目を丸くした。
そして俺を嗜めるような口調で言う。
「だめじゃないですか、女の方を一人で放っておいたら。
ヴェスタさんはまだこの辺りに慣れてらっしゃらないんでしょう?
ならばここはやはり、幽霊さんがちゃんとエスコートしないと…」
「あ・の・な」
 俺はみなもの言葉をさえぎって、彼女に透明な右人差し指を突きつけた。
「俺はあいつを招待しとるわけでもないんや。
あいつが勝手にうろちょろしとるんを、何で俺が構ってやらなあかんねん?
そもそも招かれざる客はあいつのほーやねんぞ」
 しかしみなもは、それに負けじとー…というか、きょとんとした目で俺を見上げる。
「…でも幽霊さんは、ヴェスタさんを元の場所に返してあげてくれって言いましたよね。
ならばそれは、ヴェスタさんのことを少なからず想ってるってことじゃないでしょうか?」
「…何でそーなんねや」
 じとっと俺が睨むような視線を送ると、みなもはにっこりと笑って答えた。
「だって、本当に嫌いなら無視しますよね。…つまり、そういうことなんですよ」
 有無を言わさぬ少女の笑顔に、俺は思わず絶句する。
みなもはそんな俺を見て、パン、と手を叩き、
「さあ、そうとなったらヴェスタさんを探しましょう。満足して帰ってもらわなきゃですしね」

















「あははははっ!ここの『トモダチ』、皆辛気くさいネっ!
どっかの無愛想なユーレイと同じネ!ミンナ消えちゃってイイヨ、ワタシ送ってあげるヨ!」
 けらけらけら、と甲高い笑い声を上げながら、女が杖を一振り。
すると女を遠巻きに囲んで浮かんでいた透明な奴らが、一人また一人と、次々と消えていく。
俺はその様子を見て、思わず怒鳴ってしまった。
「おいこらそこのイカレ女ッ!勝手に何してくれとんじゃ!」
「……むっ!?アナタ誰ヨ、新顔ネ!」
「どこが新顔じゃ!さっき無愛想ゆーてたやんけ!」
 …この女を目の前にすると、思わず血管が吹っ飛んでしまいそうだ。
「ゆ、幽霊さん〜!」
 更なる怒号を浴びせてやろうと俺が口を開いたとき、下のほうからかぼそい声が聞こえた。
む、と見下ろしてみると、手を組み泣きそうになっているみなもの姿。
「こ、こんなところに置いていかないで下さい!」
「あ、すまんすまん」
 俺は苦笑しながら、ぴゅいっと下に降り立った。
そして…腕を組み、辺りを見渡してみる。
「…霊は何ともないあんたでも、やっぱここは怖いんか?」
「そりゃあ…やっぱり不気味ですよ。墓場ですし」
 確かにみなもの言うとおり…ここは墓場だった。
この近くでも名のある斎場。見渡す限り、無機質な灰色の石。
…俺にとっては、ただお仲間が眠っているだけの場所なのだが。
ヴェスタの足取りを追って、ここまできてしまった。
そしてその当のヴェスタは、というと。
「…何ヨ、コノ乳臭い小娘」
 ふふん、と意地悪そうな目つきでみなもを見下ろした。
「ちちくさっ…!」
「小娘…」
 俺とみなもは同時に絶句する。
上空に足を組んで座るように浮かんでいたヴェスタは、風を切るようにみなもの真正面へと急降下してきた。
そして頭の先からつま先まで、舐めるようにみなもの全身を眺める。
「…フン、顔はまあいいケド、胸なし尻なし、くびれなしっ!
ダメネ、コリャ。ワタシの圧勝ヨ!」
 と、何故か胸を張って高笑いをする。
俺は頭が真っ白になるのを感じながら、ヴェスタの頭をぐわしと掴んだ。
「おぉーイ、イカレ女?てめー脳みそはいっとんか?」
「痛い、痛いヨ!離すネ、この無愛想野郎!」
「やっぱ覚えとんやんけ!!」
 俺はぷちぷちと血管が切れる音を感じながら、こう思った。
…やはりコノ女、殺す。
「…幽霊さん。お気持ちはわからないでもないですが…離してあげて下さい。
彼女のお話も聞きたいですし」
「…おいアンタ、こいつに馬鹿にされとんのやぞ?
馬鹿に馬鹿にされて悔しゅうないんか?」
「…それが分からないほどあたしも馬鹿じゃありません。でも…」
「馬鹿馬鹿ウルサイヨ!このカバ!」
「おまえは黙っとけ!!!」
 俺は、はぁぁぁぁぁ、と本日何度目になるか分からない長いため息を漏らし、
仕方なくヴェスタの金髪頭を、パッと離した。
自由になると同時に、ささっとすばやく髪の毛を整えるヴェスタ。
そして、ふいっとそっぽを向いて、
「マッタク!下界は野蛮な奴ばっかネ!ワタシ下りてきて損したヨ!」
「辛気くさいゆーてたんとちゃうんか!いやむしろイヤなら帰れ!」
 俺は、ほれほれ、と手を払った。だがその手を苦笑したみなもが止める。
「…落ち着いて下さい、幽霊さん。さっきも言ったでしょう?
ヴェスタさんに満足して帰ってもらいましょう?あたしはそのために来たんですから」
 そう言って、またも放たれるみなもスマイル。
俺は仕方なく頷くしかなかった。
…もしや俺は、美少女に弱いのかもしれない…。










 とりあえずヴェスタを落ち着かせー…むしろ落ち着かなくてはいけなかったのは俺のほうだがー…
墓場の少し開いている区画に俺たちは円を描くように座った。
…といっても、ちょこんと座ったのはみなもだけだったが。
だがちゃっかりハンカチなんぞを敷いているところはさすがといったところか。
「それで…ヴェスタさん。あなたは何故こんなところに?
先ほど、下界と仰いましたが…それに、先ほど行われてた行為は?」
「…アンタ、人のこと訪ねる前にまず自分のコト言うがよろしネ」
 フン、と人を舐めたようなヴェスタの態度に、思わずいきり立つ俺。
たが勿論のごとくみなもの笑顔に止められる。
「…そうですね。あたしの名前は海原みなも、13歳です。
ごくごく、普通の中学生ですよ」
「ウソヨ。フツーの中学生がこんな堂々としてるわけナイネ」
 …まあ確かに、その部分で言うと俺もこの女に賛成だ。
だがみなもは笑って首を振り、
「いえ、普通の中学生ですよ」
 そう念を押すように言った。何故か『普通』を強調したような気がするのは、俺の気のせいなのだろうか…。
 ヴェスタはかすかに眉を潜め、不審そうにみなもを眺めていたが、やがて納得したようで、ふぅと息を吐いた。
「…まあ仕方ないネ!そーいうことにしといてアゲルヨ!」
「それはありがとうございます」
 にっこりと笑うみなも。俺は二人の女を見比べて、間違いなくみなもに軍配があがると思った。
…この少女、なかなかやるな。
「…ワタシの名前、もう知ってるみたいネ。なら自己紹介いらないヨ」
 やれやれ、と肩をすくめて話し始めるヴェスタ。
「ワタシ、霊界から来た。ワタシの職業、三途の川の船漕ぎヨ。
死んで三途の川のほとりにきたヤツ、そン中からイキのイイヤツ選んで船乗せるよ。
それ以外知らないネ。泳いで渡るしかないケド、大概途中で力尽きて沈むヨ。
泳いでるヤツ、櫂で押して沈ませるのもワタシ役目ネ」
 あっけらかんと、なかなか残酷なことを言う。
みなもは眉を潜めて、咎めるように言った。
「ですが…少々酷くないですか?それにイキの良い人って…」
 その言葉に、ヴェスタは、ハンっと鼻で笑う。
「これだから、下界の人間甘いネ。死人の中で罪人、イキ悪いヨ。
そーいうのは大概地獄いきネ。だからワタシ乗せないヨ。むしろ乗せると怒られるヨ。
罪人、地獄いく。どーせどれだけしても死ナナイ、だからワタシ櫂でつつくヨ。
アイツラ、それだけのことされる理由アルネ。ワタシ知ったこっちゃナイヨ」
「はあ…そうなんですか」
 みなもは半ば唖然としていた。ソレを言う俺のほうもだ。
まあ…一つ思ったことは、やはり成仏はしたくない。…それだけだ。
「ワタシ毎日そんな生活送ってたネ。ブッチャケつまらんかたヨ。
船乗せるヤツなんて一握り、大概ほとんど櫂でつつかれる運命。
ワタシほとほと嫌気さしたヨ」
「…で、逃げてきたちゅーわけか?」
 俺は眉を潜めて尋ねた。
だがヴェスタは、一転してけらけらと笑い出した。
「アンタやっぱり馬鹿ネ!ワタシ仕事逃げられるよなもんちゃうヨ!
ただ休暇とりにきただけネ。有給休暇ヨ、何百年以上もらてなかたからネ」
「…なるほど、お休みだったので、下界に来たんですね?」
「そのとーりヨ。………無断だけどネ」
 …勿論俺は、ぽつりと溢した言葉を聞き漏らさなかった。
おいこら、やっぱり逃げてきたんじゃねえか。
 ヴェスタはにらむ俺に気づかないそぶりを見せつつ、ハハハと威勢のよい笑い声をあげた。
「下界きたからには、やっぱりお祭りヨ!ワタシ、元々賑やかなの好きネ。
でもここの連中、ミンナ辛気くさいヨ。やかましいの、この野郎だけヨ」
 …うるせえ、ほっとけ。
「辛気くさいのキライネ、だからそのへんに漂ってる奴ら、まとめて送ってやったヨ」
「……送ってやったって…もしかして」
「分かってるよーだケド。そのとーりよ、霊界送ってやったネ。
今頃ワタシの同僚につつかれてるヨ!」
 いい気味ネ!と高らかに笑う。
俺は一人で、このあたりにいた俺の同類たちを思った。
…そこまで悪人というやつもいなかったが、全員善人ともいうわけでもない。
悠々自適な幽霊生活を送っているところに、いきなり水責め宣告か。
…全く、運が悪い奴らだ。とりあえず拝んでおいてやろう、なんまいだぶ。
「はあ…でも、幽霊さんたちにも事情があるでしょうし…、
無闇に送るのも、少し…」
 苦笑しながら、ごにょごにょと言うみなも。
…良いとも言いがたいが、悪いわけでもない。
そもそも死して尚この世にしがみついていた奴らが悪いわけだからな。
…その気持ち、わかるぞ。
 だが当のヴェスタは、これが当然のことと思っているわけで。
「何言ってるネ!これ、ワタシの仕事よ。
ネンミツに言うとワタシの仕事違うけどネ」
 …じゃあどっちだよ。
「ホントは同僚の仕事ヨ。ワタシ、ボランティアネ。感謝して欲しいヨ…
って、こんなことするために、わざわざ下りてきたわけと違うヨ!!!」
 自分にツッコむかのように、ぶんぶんと激しく首を振る。
俺はその勢いに、おお、と思わず退いた。
「ワタシ、ぱーてーしにきたネ!ここ、辛気くさいけど呼び出すには最適だたヨ!」
「ぱーてー…パーティですか?でも呼び出すって…」
「ワタシのトモダチよ。ミンナここ気に入ってはしゃいでたネ」
 さも当然、というようにうんうんと頷くイカレ女。
…トモダチって、あの変態どもか?こいつに似て、妙に騒がしかった透明なやつら。
南瓜かぶったヤツもいれば、透ける布みてーなやつも。そして、大量のコウモリ。
…ちょっとまて、そいつら一体どこに…?
 俺はひしひしと悪い予感が押し寄せるのを感じながら、静かにたずねた。
「…ちょっとまて。そのトモダチとやらは…どーした?」
「……ワタシさっき言ったヨ」
 何をいってるか、というような目で見られる俺。
「はしゃいでたね、ミンナ。そのままどっかいっちゃったヨ。
どこいったかなんてシラナイネ。ミンナ遊び盛り…」
「あほかーーーーっ!!!!」
 俺は思わず怒鳴って、ヴェスタをがっくんがっくんと揺さぶった。
「てめーが呼び出したんだろがッ!はよもどせ!むしろてめーもカエレ!
あんな騒がしいのがいたらおちおち寝てられへんやないかっ!!!」
「おっ、落ち着くネ!ワタシ帰ったら、あのコたちも帰るヨ!!!」
「それほんまやろうな!フカシこいとったら承知せえへんぞコラ!!」
「ちょ、幽霊さんまって!落ち着いて下さい!」
 いまだにがくがくとヴェスタを揺すっている俺を、必死な表情でみなもが止めに入った。
「どぅどぅ。ムキになってもいいことありませんよ?」
 何とかヴェスタから引き剥がされ、ぽんぽんと宥めるように肩のあたりを叩かれる。
…いや、もちろんみなもは俺に障ることができないので、肩のあるあたりに手を置いただけだが。
「ヴェスタさんは要するに、パーティしたいんですよね。
ならあたしたちで盛り上げてあげれば、満足して帰ってくれるんじゃないでしょうか?」
「……盛り上げるっつってもなあ…」
 そもそも、パーティとは何だ。宴会のようなものだろうか?
俺はそういうったものとはとんと無縁の生活を送ってきたので、いまいち想像が働かない。
 だがみなもは手をあわせてニッコリと笑い、
「まあ、あたしに任せて下さい。場所は…墓場だけど、仕方ないですね。
とりあえず、はいどうぞ、幽霊さん」
 微笑みながら、みなもの両手が俺の頭の上に回った。
俺が不審に思って頭の上あたりを触ってみると…何故か触れる紙の感触。
不思議に思ってそれを下ろしてみると。
「ふふ、似合いますよパーティ帽」
 …確かにみなもの言うとおり、色とりどりの色紙がちりばめられた、三角形のパーティ帽だった。
「こんなこともあろうかと思って、作ってきたんです。
霊水を振りかけてるので、幽霊さんでもかぶれますよ。
あと、これも…」
 そう言って、ごそごそと自分のかばんの中をあさり始める。
そして取り出したのは、透明な包装紙に包まれた茶色い物体。
みなもはその包装紙を包んだリボンを解きながら、両手に乗せてヴェスタに差し出した。
「よかったらどうぞ。霊水入りなので、ヴェスタさんも食べられますよ」
「…コレ何ヨ?毒なんて入ってないネ?どうせワタシきかないけどネ」
「はいってませんよ、もう。あたしの焼いたクッキーなんです。さ、どうぞ?」
 そう言ってにっこりと、両手の中の包装紙に包まれた美味そうなクッキーを差し出した。














 そして数日後。

 俺は珍しく浮き立つ心を抑えながら、小さな封筒をポストに投函していた。
中に入っているのは、一枚の写真。
数日前の、あの墓場で写した写真。
俺と、あの少女と、墓場の連中と、イカレ女が呼び出した変態どもと…イカレ女と。
写っている中で生きているものが1人だけという、世にも珍しい写真だ。

送り宛ては、勿論ー…海原みなも。












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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

【1252 / 海原・みなも / 女性 / 13 / 中学生】

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■         ライター通信          ■
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海原みなもさん、今日和。ライターの瀬戸太一です。
今回は当依頼に参加していただき、誠に有り難うございました。
ヴェスタの言動で少々失礼な点がありまして、申し訳ありません(汗
少しイッちゃってる人だと思ってやってください。

それでは、またどこかでお会いできることを祈って。