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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


調査コードネーム: パンダと猫の意外な関係
執筆ライター  : ゆうきつかさ
調査組織名   : 草間興信所

------<依頼内容>--------------------------------------

「真夜中の猫集会にパンダが迷い込んでいるだとぉ!?」
 飲みかけのビールを吐き出し、鬼頭一哉(きとう・かずや)が大粒の汗を流す。
 久遠美麗(くおん・みれい)から面白い話があると言われて近所の自販機までわざわざやって来たのだが、あまりにも突拍子のない話だったため、目をマンマルとさせている。
「そんな驚く事はないんじゃない。一応、飼い主が探しているのよ」
 真剣な表情を浮かべながら、美麗が駅前で配っていたチラシを渡す。
 そこには可愛らしいパンダの絵が描かれており、近くの動物園から逃げた事が説明されている。
「こんな動物園‥‥聞いた事もないぞ! それにここに書かれている住所って空き地だろ。ツッコミ所が満載じゃねえか! ‥‥たくっ」
 空になった缶ビールを逆さにし、一哉が疲れた様子で溜息をつく。
「だったらこの何とか探偵社ってトコに連れて行けばいいんじゃない? そこの人が配っていたんだしさ。何か理由があるのよ、きっと」
 一哉があまり乗り気でなかったため、美麗が不満げな表情を浮かべる。
「そこまでこだわる理由がワカラン。どうせ謝礼金にでも、目が眩んだんだろ?」
 ジト目で美麗を睨みつけ、一哉がチラシを読み返した。
「ゲッ‥‥、こんなに貰えるのかよ!? これだけ貰えりゃ、しばらく遊んで暮らせるな」
 驚いた様子で目をこすり、一哉が謝礼金の金額を数えなおす。
「だったら言いたい事は分かったでしょ? 早く借金を返してね。約束の日はとっくに過ぎているんだから☆」
 胸の谷間から請求書の束を取り出し、美麗がジト目でジリジリと迫る。
「分かったよ! 払えりゃいいんだろ。そのパンダを見つけてさ。そんな馬鹿デカイ奴がウロウロしていたら、すぐに見つかるだろ」
 ようやく事態が飲み込めたため、一哉が不満そうに鼻を鳴らす。
「ふふっ、甘いわね。そのパンダ‥‥手乗りサイズよっ!」
 勝ち誇った様子で笑みを浮かべ、美麗がえっへんと胸を張る。
「どんなパンダじゃ、そりゃ〜!」
 そして、この時から一哉の苦難が始まるのであった。

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●手乗りパンダを探せ! 3/3
「手乗りサイズのジャイアントパンダというものは、地球上の進化体系の中には存在していないはずです。人の手によるものなのか、異世界の方なのか、未知の技術によったものなのか、ラクスはとても興味深いです」
 頭の中にジャイアントパンダとレッサーパンダが交互に過ぎり、ラクス・コスミオン(らくす・こすみおん)がハテナマークをピコピコさせる。
 色々な進化の過程を予想する事だけは出来るのだが、どれもシックリこないため自分の目で確かめておきたいらしい。
「大熊猫って云うくらいだから、そんな邪険にしなくてもいいのにね。何か悪戯や襲ったって云うわけではないし‥‥」
 昼間のうちに手乗りパンダの情報を集め、マリオン・バーガンディ(まりおん・ばーがんでぃ)が疲れた様子で溜息をつく。
 手乗りパンダが現れた事で街がパニックに陥っているため、だんだん頭が痛くなってきているらしい。
「‥‥確かに漢字だと猫の字入ってるものねぇ。自分で猫だと勘違いしてるのかしら。身体も小さいし」
 興信所調査員として依頼に参加し、シュライン・エマ(しゅらいん・えま)が手乗りパンダの写真にライトを照らす。
 問題のパンダは大きさが猫並しかなく、チワワのような円らな瞳が特徴だ。
「それじゃ、お土産を持って猫達の集会にお邪魔しますか。もちろん笹もお土産に♪」
 猫缶とマタタビ入りの猫用クッキーを両手に抱え、マリオンが手乗りパンダの大好きな笹を担いで公園を目指す。
 現時点では猫達がどんな会議をしているのか分からないが、差し入れを持っていけばヨソモノといえども邪険に扱われる事はないだろう。
「これで収入が入れば武彦さんの食事事情も暫くは安泰かしら。最近お野菜も高いし、なるべく稼いでおかないとね。‥‥ん?」
 資料としてもらった手乗りパンダの情報を読み返し、エマがピタリと動きを止める。
 エマの貰った資料の中には手乗りパンダについての情報が書かれているのだが、その生態は謎に包まれており、大抵の場合はみかん箱の中で『みぃみぃ』と鳴いている所を誰かに保護されているらしい。
「みかん箱ってところが気になりますね。もしかするとその箱自体が何か特殊な装置なのかもしれませんし‥‥」
 エマから資料を見せてもらい、ラクスがボソリと呟いた。
 みかん箱についても色々と情報が書かれているのだが、空を飛んだり変形したりするという妙な補足が書かれているため、ラクスの中にある危険センサーがひどく反応しているようだ。
 ちなみに手乗りパンダの入っているダンボールは特別製でステルス機能だけでなく、合体してパンダーロボになるらしい。
 必殺技の中にはロケットパンダなる技の詳細が書かれており、掛け声とともに腕からジャイアントパンダを飛ばす技と説明がされているのだが、動物保護団体から抗議があったらしく今は封印されている。
「なんだか頭が痛くなってきましたね。一体、このパンダの飼い主は何者なんでしょうか? ‥‥悪の秘密結社の総帥とか?」
 ワイングラス片手に手乗りパンダを愛でるガウン姿に親父が浮かび、マリオンが青ざめた表情を浮かべて溜息をつく。
 どちらにしても手乗りパンダの公開されている『パンダーランド』と呼ばれる動物園も実在していない事が分かったため、依頼人が何処か胡散臭い人物である事は確かだろう。
「依頼人がどんな人だったのか、武彦さんなら知っていると思うけど、依頼人のプライバシーを守らなくちゃいけないから、たぶん教えてはくれないと思うわよ。もちろん、私が知っていたとしても秘密にしておくけどね」
 含みのある笑みを浮かべ、エマがマリオン達から資料を回収する。
 エマの持っている資料の中にはマリオン達にも見せなかった物もあるため、依頼主に関係した情報もそこに載っている可能性が高い。
「あの猫さんに集会の行われている公園まで案内してもらいましょう」
 猫集会にむかっていた猫達を見つけ、ラクスが公園までの道案内をお願いした。
 猫達は『にゃおん』と首を傾げていたが、ラクスのウルルンとした瞳に胸を打たれ、快く道案内を引き受ける。
「‥‥どうやらここのようですね」
 しばらく猫達の後ろをついていき、マリオンが猫達の集まる公園に辿り着く。
 猫集会の行われている公園では何匹もの猫達が『不況による野良犬の増加』について熱く議論が交わしており、マリオン達の姿に気づくと一斉に睨んで全身の毛を逆立てる。
「私達は別に怪しいものじゃないわ。‥‥これがその証拠よ」
 自分達が敵ではない事を示すため、エマが懐からマタタビを取り出し猫達に渡す。
 道案内をしてくれた猫達もエマをフォローしてくれたため、彼女が決して怪しい人物でないと理解した。
「‥‥何か知っている事はありませんか? どんな小さな事でも構わないんですが‥‥」
 猫集会を仕切っているメス猫に話しかけ、ラクスが少しでも手乗りパンダに関する情報を得ようと試みる。
 メス猫はラクスの言っていた言葉があまり理解できなかったようだが、マリオンの持っていた笹に反応したのか、手乗りパンダに関する情報を必要としているのではないかと予想した。
「何か知っているようですね。あっ‥‥、これは私からの気持ちです。あと皆さんの分もありますよ」
 猫耳のカチューシャをメス猫に手渡し、マリオンが仲間達にも同じ物を配っていく。
「私は遠慮しておくわ。ガラじゃないし‥‥」
 マリオンから受け取ったカチューシャを見つめ、エマが苦笑いを浮かべて首を振る。
 確かに猫耳のカチューシャは可愛らしいのだが、自分の中にある大切なものが翼を生やして飛んでいってしまうような気がしたため、エマは遠慮しているようだ。
「ラクスも‥‥遠慮‥‥しておきます‥‥」
 マリオンに話しかけられた事でビクンと驚き、ラクスがエマの後ろに隠れて激しく首を横に振る。
 ラクスは男性恐怖症のため、なるべくマリオンを意識しないようにしていたのだが、猫耳のカチューシャを渡されそうになったため、心臓が飛び出しそうなほど怯えているようだ。
「そんな事を言わずに是非‥‥」
 ウルルンとした瞳でふたりを見つめ、マリオンが寂しそうな表情を浮かべて頼み込む。
「そんな事を言われても‥‥出来ないものは‥‥出来‥‥分かったわ。‥‥つけるだけよ。その代わりラクスちゃんもつけてね」
 マリオンの小動物的な視線に屈し、エマが恥かしそうにカチューシャをつける。
 まさかこんな場所で猫耳のカチューシャをつけるとは予想もしていなかったため、魂の抜けたような表情を浮かべて溜息をつく。
「えっ‥‥、ラクスもですか!?」
 キョトンとした表情を浮かべ、ラクスが自分の事を指差した。
「私だけに恥かしい思いをさせないで‥‥」
 恥かしそうに頬を染め、エマがコホンと咳をする。
「わ、分かりました。これで‥‥いいですか‥‥」
 エマの鋭い視線に気づいたため、ラクスが恐る恐る猫耳のカチューシャを頭につけた。
「これでみんなお友達です。ほら、猫さん達も心なしか喜んでいるようですよ♪」
 嬉しそうに手を叩き、マリオンがニコリと微笑んだ。
 猫達も猫耳のカチューシャをつけたマリオン達のまわりを囲み、嬉しそうにニャーニャーと鳴いて歓迎する。
「それじゃ‥‥本題に入っていいかしら。私達は手乗りパンダを探しているの。えっと‥‥このくらいの‥‥パンダね」
 猫達に分かるように身振り手振りを駆使し、エマが手乗りパンダの居場所を聞く。
「確かここにいたはずですが‥‥」
 マリオンの言葉に一匹の猫が反応し、手乗りパンダが連れ去られた事をミャアミャアと語る。


 目の前の猫はウニャウニャと鳴いているだけなので、何を言っているのかよく分からないが、ここから南の方角に飛んでいった事を何とか伝えようとしているらしい。
「‥‥空飛ぶ何かに連れ去られたようですね」
 何となく事態が最悪な方向にむかっている事を理解し、ラクスが困った様子で汗を流す。
 猫達の持ってきたマタタビ時計を見る限り、それほどの時間は経っていないと思われるが、完璧に話の内容を理解したわけではないため少し不安が残っている。
「まだ間に合うわ。‥‥急ぐわよ」
 手乗りパンダの連れ去られた方向を見つめ、エマがライトを照らして走り出す。
「本当に大丈夫なんですか?」
 貴重な情報を教えてくれた猫に猫缶を渡し、マリオンが慌てた様子でエマを呼ぶ。
「考えている暇があったら走りなさい。本当に手遅れになる前に‥‥」
 険しい表情を浮かべながら、エマが激しく唇を噛み締めた。
「‥‥ん?」
 走っている途中で何かに気づき、ラクスがピタリと動きを止める。
「何をのんびりしているの? こんな所で‥‥あれ?」
 ラクスを叱ろうとしたのだが、意外なものが目に入ったため、エマが驚いた様子で汗を流す。
「これって手乗りパンダですよね?」
 みかん箱の中に入っていた手乗りパンダを抱き上げ、マリオンがホッとした様子で溜息をつく。
「間違いないわ。‥‥本物よ」
 写真と実物を交互に見つめ、エマが本物であると確認する。
「どうしてこんな場所に‥‥」
 納得の行かない様子でパンダを見つめ、ラクスが首を傾げて呟いた。
「まぁ、いいんじゃない。手乗りパンダが見つかった事だしね」
 そしてエマはマリオンから手乗りパンダを受け取り、何かから開放されるようにして猫耳のカチューシャを外す。
 恥かしそうに頬を染め‥‥。

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号/ PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

 0086/シュライン・エマ/女/26歳/翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員
 4164/マリオン・バーガンディ/男/275歳/元キュレーター・研究者・研究所所長
 1963/ラクス・コスミオン/女/240歳/スフィンクス

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■         ライター通信          ■
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 どうも、ゆうきつかさです。
 今回のお話はみっつに分けて書かれています。
 ひとつひとつ違う書き方をしてみましたので、興味があれば他の2本も読んでみてくださいね。