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お昼休みにデザートを 〜幻影学園版〜
昼食を終え、腹ごなしにのんびりしようかとモーリスは校内を歩きながら、何処か居心地の良さそうな場所を探しつつ歩を進める。
何処か落ち着ける……いや、楽しめる場所でもいい。
「モーリス先輩、こんにちは」
「こんにちは」
すれ違う生徒達と挨拶を交わし、軽やかに繰り返されていた靴音が不意に止まる。
「あれは……」
心なしか弾む声。
軽く金の髪をかき上げながら外を見る。
目的は外の空気や景色ではなく……そこにいる一人の少女。
窓に手をかけパチリと鍵を上げて窓を開くと、サァっと涼しくなり始めた空気が流れ込んできた。
外にいるのが想像通りの子である事を確認してから、モーリスは緑の目を僅かに細めて笑う。
「これはまた……タイミングのいい事ですね」
艶やかな黒髪の少女……蒲公英はお弁当を食べ終え、一息吐いた所なのだろう。
膝の上で広げていたハンカチの上に空になったお弁当箱を乗せて片づけ始めている。
「良いタイミングのようで……」
普段は姉妹やクラスメートと一緒にいるのだから、幸運な事だとクスクスと小さく笑みをこぼす。
その間に蒲公英は陽が移動したからなのだろう、木陰の方に移動し眠くなってきたのか小さなあくびを一度。
「これは楽しい事になりそうですね」
この分なら、ここから向こうに移動する間にどうなっているか?
そんな事を考え、口元に笑みを浮かべる。
「学園祭の続きといきましょうか、最後の……ね」
のんびりと歩きながら、モーリスは悪戯めいた口調で呟いた。
案の定。
モーリスが蒲公英の元に付いた頃には予想通りにウトウトと気持ちよさそうに微睡みかけていた。
暫く前に、図書館でああ言った事があったばかりだというのに無防備な事だとまるで他人事のように思ってみたり。
眠りかけだと確認してから、蒲公英の傍らに膝を付き黒髪をすくい取り髪に口付ける。
「……?」
「ここでも良いんですけれどね」
さっき、自分がここにいる蒲公英を見つけた時の事を考えると……今居る場所は人目が多くて、モーリスのしようとしている事にはいささか不向きだ。
これまでにも数度色々としているだけあって、二人が一緒にいるだけでも飛んでくる人物が居るのである。
「もっと、良い所へ行きましょう。せっかくのデザートですからね」
「……んっ」
小さく声を上げた蒲公英の髪をサラリと撫でる。
「軽いですね……まるで羽根のようですよ」
蒲公英を抱き上げ振動で起こさないように気を付けて少し奥へと移動する。
ここなら、校舎からは見えないだろう。
安心してゆっくり過ごせると言うものだ。
「さあ、始めましょうか」
「………え?」
うっすらと目を開いた蒲公英はいまだ夢現の中なのだろう、僅かに首を傾げはしたものの帰ってきた反応はたったのそれだけ。
この状態の少女は、逆らうという術を知らない。
ツウッと指先で頬をなぞり微笑みかける。
「楽しい事ですよ」
「……な?」
膝の上に蒲公英を乗せ、頭から背中にかけて流れる髪を梳くように撫で指で梳かす。
「綺麗な髪ですね……」
「ん……?」
耳元で囁き、耳元にかかる髪を梳きながら首筋に滑り落ちていく掌。
髪も肌も、とても心地よい。
「肌も……」
そのまま撫で下ろされた掌はブラウスの衿のラインを伝い、流れるように一つ目のボタンを外す。
「リボンも外さないと触る事は出来ませんから、手伝ってください」
「……は、い?」
ぼんやりとした瞳のまま、モーリスのお願いにゆっくりとした動きですると小さな音を立ててリボンを解く蒲公英。
「とても上手に出来ましたね」
更にもう一つボタンを外し、はだけさせた場所から手を差し入れ……肩から胸元にかけて肌触りを楽しむように触れていく。
「んっ、ぁ……」
引きかけた体を腰に手を回して抱き寄せる。
「まだ、始まったばかりですよ」
開いた胸元に軽くキスをすると腕の中の蒲公英の体が微かに震えた。
「………ぁ…ん、っ」
指先や唇が触れるたびに、蒲公英からは可愛らしい反応が返ってくる。
「暖かくなってきたようですね」
淡いピンク色に染まり始めた肌を見て楽しそうに微笑するモーリス。
「暑いでしょう?」
もう一つ舌のボタンに手をかけながら、スカートからブラウスの裾を引き出していく。
「ほら、これで楽になりましたよね?」
カカオが良く見えるように髪をかき上げると、既に顔まで真っ赤に染まっている蒲公英に楽しそうにモーリスが笑う。
「ずいぶんと可愛らしいですね」
「……ゃ、っ……」
さっと顔を隠しうつむき体を前に屈めると……この位置からでは、開いた胸元からはっきりとシンプルな作りの下着や白い腹部までもが見えてしまうのだが……この少女はその事にすら気付かない。
楽しいと思えるのだが、反面もっとと考える。
「顔を上げて……」
「……な…なん、です……か」
震えるか細い声に、更に色々として来たくなってしまうのだ。
「気持ちのいい事ですよ……」
耳に口付けながら小さな声で話すだけでピクリと反応する体。
良い反応だと楽しげに笑い、スカートからスラリと伸びた足に手を触れ徐々に撫で上げていく。
「……ぁ、あ」
掌の刺激に蒲公英はきゅっと目を閉じ、モーリスの手に自らの手を重ねる。
それは止めようとしての行動だったのかも知れないが……モーリスにとって重ねられた柔らかい掌はこの楽しい遊びを更に煽るためだけの物だ。
「本当に可愛らしいですね」
そっと髪を梳き、長く伸びた黒髪にもキスを落とす。
「……か、わ……?」
「はい、とても魅力的ですよ」
微笑みかけ、モーリスの指先から滑り落ちていく髪がスカートの上へと落ちる。
その髪を追いかけるように動いた掌がそっと足をなぞり、とうとうスカートの中までへと滑り込んで行った。
「……っ!」
今まで以上の刺激にしがみついてくる蒲公英を抱き締め返し、張りのある柔らかな肌の感触を楽しむように奥へと進める。
「……ゃ」
「緊張しないで、あなたも楽しんでください」
その方が楽しいのだからと告げる事したが、内容までは理解出来たかどうかは解らなかった。
ムリな事を言っているという自覚はちゃんと解っている上で、この行動である。
ゆっくり慣らすという手もあるにはあるのだが。
「今しか出来ませんからね」
スッと撫で上げた手がピタリと止まる。
人の気配が近づいてきたのだ。
隠そうともしない大きな足音が。
「蒲公英ー、何処だーーー! 出てこいモーリス!!」
「……」
蒲公英を抱き寄せて声を潜めて苦笑する。
どうやら時間切れのようだ。
「残念ですが」
「………? っ!」
震える蒲公英から手を離し笑いかけるが……真っ赤になってうつむいたままの蒲公英。
「………」
「そろそろ時間も来ますからね」
昼休みが終わる合図のチャイムの音。
ボタンを留め、乱れた服をちゃんと着せ治す手際の良さはさすがモーリスというべき物だろう。
あまり、褒められたものではない事は確かだろうが。
「終わりましたよ」
最後に受け取ったリボンを結び治し、元通り……?
「ああああああ! やっぱりっっ!!!」
とは行かなかったようだ。
出てきた蒲公英を見つけるなり、先ほど二人を捜していた声の主が大きな声で悲鳴を上げながら駆け寄ってくる。
「大丈夫か!?」
「あの……えっと……っ」
カアッと、今まで以上に真っ赤になってうつむく蒲公英をみてからきっとモーリスを睨み付ける。
それも当然の事だろう。
服こそきちんと着て居るとは言え、真っ赤になった頬や火照った首筋。
蒲公英の反応もくわえれば、何もなかったという方が難しいに決まっているのだから。
「モーリス!!!」
「少し遊んでいただけですよ」
「す、少し!?」
「蒲公英さん、またゆっくりと遊びましょう」
「………あの、その」
サラリと言ってのけるモーリスは、やはり楽しい反応だと笑いを堪える。
「………!!! お前はーーーーー!!!」
叫びをうち消す様に鳴り響く二度目のチャイム。
「さあ、戻りましょうかそろそろ授業ですから」
お昼休みはもうお終い。
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