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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


調査コードネーム:乙女フィールド
執筆ライター  :ゆうきつかさ
調査組織名   :草間興信所
募集予定人数  :1人〜

------<オープニング>--------------------------------------

「乙女フィールドだと!? なんだ、そりゃ! 気色悪い!」
 飲んでいたコーヒーをブハッと吐き出し、鬼頭・一哉(きとう・かずや)が久遠・美麗(くおん・みれい)を黙って睨む。
 美麗から会いたいという電話があり、仕方なく銭湯の前で待ち合わせをして話を聞く事になったのだが、あまりにも突拍子もない事を美麗が口走ったため、思わずコーヒーを吐き出してしまったらしい。
「‥‥笑い話じゃないわよ。事態は深刻なんだから‥‥」
 不満そうに一哉を睨み、美麗が疲れた様子で溜息をつく。
「乙女フィールドが発生したのは今から数日前の事。最初は単なる気のせいだと思われていたんだけど、乙女フィールドが次第に大きくなるにつれその犠牲者は増えていったわ。まるで悪い夢を見ているように‥‥。乙女フィールドは内部にいる時間が長ければ長いほど乙女化していく領域の事で、フィールド内に入ったとたん少女マンガのように瞳がキラキラと輝き、自分が乙女化する事を否定すればするほど症状が悪化していくわ。そして無意識のうちに砂糖を吐くような台詞を吐いたり、可愛らしい仕草が増えたりするそうよ。‥‥心はずっと冷静のままでね」
 犠牲者となった男の写真を突きつけ、美麗が事の重大さを一哉に詳しく説明する。
「だったら近づかなきゃいいんだろ? そのフィールドにさ。悪いけど忙しいんだよな、俺も‥‥」
 パンダ印のコーヒーを自販機で買い直し、一哉が面倒臭そうに愚痴をこぼす
 本当は何も用事はないのだが、早くこの場から立ち去りたいため、美麗に嘘をついたらしい。
「‥‥無理よ。こうしている間も乙女フィールドは凄まじい勢いで、その範囲を広げているんだから! 全人類が乙女化するのも時間の問題だわ!」
 妙に乙女チックな親父達をバックに浮かべ、美麗が涙まじりに嫌々と首を振る。
「全人類乙女化計画‥‥か? コントだな、そりゃ」
 呆れた様子で美麗を見つめ、一哉がコーヒーをゴクリと飲む。
「本当に何も分かっていないのね! あなたの住んでいるアパートにまで、魔の手が迫っているのに!」
 一哉の住んでいるアパート(現在家賃滞納中)のある方角を指差し、美麗が深刻な表情を浮かべて呟いた。
 美麗の指差した方向にはピンク色をしたドーム状のフィールドが出来ており、そこが乙女フィールドである事を主張しているようだ。
「そりゃあ、大変だな‥‥ってマジか! ヤバイじゃん。起きたらおめめキラキラか!? そんなのありえねぇって! ‥‥マジ怖ェ!!」
 再び飲んでいたコーヒーを吐き出し、一哉がパニックに陥り悲鳴を上げる。
「だから助けて欲しいのよ。‥‥借金だってまだなんだしさ」
 一枚のお札をチラつかせ、美麗が一哉を誘惑した。
「チッ‥‥、分かったよ。で、どうすりゃいいんだ? 何でもやるぜ!」
 観念した様子で溜息をつき、一哉がお札を掴み取る。
 財布の中には小銭のみ。
 明日の食事は試食品。
 そんな状況の中でこのお札は手に入れる事は、砂漠の中でオアシスを見つけたくらいに凄い事だ。
 そのため一哉の判断は間違っていなかったと言えるだろう。
「話が分かっているじゃない。‥‥いいわ、教えてあげる。その方法はただひとつ。乙女フィールドの中心に行って、手乗りパンダの持っている水晶球を壊す事よ!」
 待っていましたとばかりに瞳をキラリと輝かせ、美麗が乙女フィールドを指差しニヤリと笑う。
「手乗りパンダって‥‥まさか、前に探していたアレか! それじゃ、黒幕は飼い主って事じゃねぇか! だったらそっちを潰した方が早くねえ?」
 驚いた様子で美麗を見つめ、一哉がポケットの中からチラシを掴む。
 ここに書いてある住所は間違っていたが、事件に関わっていた探偵社から話を聞けば、何か分かると思ったからだ。
「‥‥残念だけど飼い主なら殺されたわ。きっと彼も利用されていただけなのよ。そのせいで何処かの探偵さんも今回の事件を追っているらしいわ。責任を感じているのかも知れないわね。自分達の見つけたパンダが事件に関わっているのだから‥‥」
 そして美麗は悲しげな表情を浮かべ、乙女フィールドを見つめるのであった。
 
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●乙女フィールド 1/3
「乙女って、乙女ってウルサイわね。‥‥甘いわ‥‥甘すぎるわ! 私は元々が清純な乙女なのよ! よって何の実害も‥‥うう、ゴメン。帰っていい?」
 フィールド内で乙女化していく親父達を目の当たりにしてしまい、村上・涼(むらかみ・りょう)が涙を浮かべて踵を返す。
 親父達はまるで醜い芋虫が羽化するようにして、恐ろしい変化を遂げている。
「ここにいるだけで面白い漫画が描けるような気がします♪ ネタもたくさんあるようだし、見ていて飽きませんからね」
 目の前の光景をスラスラとスケッチしながら、名前 描舞・治(びょうぶ・おさむ)がニコリと微笑んだ。
 ネタ的には80年代当時に流行ったものなので使い古したものばかりだが、その中にもキラリと光るネタがあったため、そのままスケッチブックに描いて残しておく。
「‥‥なるほど。なんというか、懐かしい世界なのね。きっと、あの中だとあのパンダさんも違和感なく溶け込んでるだろうなぁ。‥‥思えば依頼でメイド服着せられたり、バニーにさせられたり、猫耳つけられたり、色々としてるのよね‥‥」
 治のスケッチをしみじみと見つめ、シュライン・エマ(しゅらいん・えま)が苦笑いを浮かべて呟いた。
 色々と嫌な予感が脳裏を駆け巡っているのだが、ある程度の展開は予想する事が出来るため、気にせずフィールドの中を進んでいく。
「乙女化計画‥‥ようやく私もこのフィールドの恐ろしさが分かりました。多くの人々を惹きつけ、巨大化していくこのフィールドの正体が‥‥」
 くわえていたパンをポトリと落とし、久良木・アゲハ(くらき・あげは)が我に返る。
 危うく乙女フィールドに取り込まれそうになっていたためか、右手には見知らぬ先輩の落とした部室の鍵が握られていた。
「‥‥危なかったわね。これ以上、ここにいたら危険よ」
 これ以上アゲハが乙女化しないようにするため、エマがアゲハの頬をパチンと叩く。
 乙女フィールド内は強力な幻覚作用があるため、あまり長く留まっていると心を取り込まれてしまうらしい。
「分かりました、エマ夫人!」
 何故かテニスウェア姿でエマを見つめ、アゲハが瞳を眩いばかりに輝いている。
 まるで空に輝くお星様のように‥‥。
「‥‥おかしいわね。さっきまで彼女は制服を着ていたはずなのに‥‥。はっ! この縦巻きロールは何っ!?」
 いつの間にか自分もテニスラケットを握っていたため、エマが青ざめた表情を浮かべて髪を触る。
「や、やっぱり帰る! こんな所にいたら瞳がキラキラしてきたり、微妙に鋭角的過ぎる顎とかになるんでしょ! 放せ! 帰る! おうちかえしてー!!」
 いつの間にかエマの外見が金髪縦巻きのお嬢様風に変貌を遂げたため、涼が物凄く嫌な予感に襲われ外に向かって走り出す。
「もう遅いですわ、涼さん!」
 普段の彼女は想像も出来ないほどお嬢さまチックな声を上げ、エマがお約束とばかりに転んだ涼を指差した。
「遅くないもん! 絶対に帰る〜! ‥‥あれ? この格好は‥‥」
 既にバレリーナの格好をしている自分に気づき、涼が大袈裟に驚き妙な効果音を響かせる。
「‥‥どうやら手遅れのようですね」
 乙女フィールドの影響を受け始めた涼を見つめ、治が再びスケッチを描いていく。
 一応、治も乙女化しているはずなのだが、どんな格好になってもスケッチを描いているため、それほど悪影響は出ていない。
「み、認めないわ、絶対にっ! あっ‥‥トゥシューズの中に画鋲が‥‥」
 最後の抵抗とばかりにトゥシューズを脱ぎ捨て、涼が転がった画鋲を見つめてペコンとヘコむ。
「‥‥諦めましょう。受け入れてしまえば、それほど悪い世界じゃありませんわ」
 お嬢様スマイルでニコリと笑い、アゲハがガッツとばかりに拳を握る。
 乙女フィールドに随分と毒されているためか、アゲハの口調はその時の状況に応じて変換されているようだ。
「そうよ。認めてしまえば‥‥って、私は今まで何を‥‥。しかもこの制服‥‥」
 紫色の妙なフィールドに触れた途端、エマが我に返って辺りをキョロキョロと見回した。
 乙女化している時の記憶は残っているようだが、彼女にとっては認めたくはない事実らしい。
「ようやく我に返ったのね。早くここから逃げ出しましょう! ‥‥ってあれ?」
 ホッとした様子でエマの腕を掴み取り、涼がエマの異変に気づいてハッとなる。
「おーほっほっ! 騙されましたわね。敵を欺くには、まず味方から! このフィールドから抜け出したくば私と勝負して勝ちなさい!」
 途端にテニスコートが出現し、エマ達の格好が変化した。
 テニス部のライバル同士という設定のためか、ふたりの間にはバチバチと火花が散っている。
「私を賭けてふたりの先輩がいがみ合うなんて‥‥。ああっ、アゲハったら罪なオンナ‥‥」
 瞳をウルルンとさせながら、アゲハがふたりの戦いを見守った。
「これって随分とコアなネタですね。‥‥もう絶版なのに」
 感動した様子でふたりの戦いを見つめ、治が元ネタに気づいてニコリと笑う。
 乙女フィールドで引き起こされる現象の大半は、80年代当時の少女マンガが元になっているため、辺りには何処か懐かしい空気が漂っている。
「だからって私を巻き込まないでよ。はうっ‥‥いつの間にか服装も変わっているし‥‥」
 自分の格好が変化している事に気づき、涼が困った様子で溜息をつく。
 何とか自分を維持しようと頑張っているのだが、少しでも気を抜けば乙女化しそうでとても怖い。
「こんなにギャラリーも集まっているのよ。これ以上、私に恥をかかせないで‥‥」
 やけにオーバーな演技で声を上げ、エマがラケットを構えて涼を睨む。
「‥‥マズイ事になったわね。このままだと‥‥みんな危ないわ」
 だんだん乙女化していくエマに怯え、涼が大粒の汗を流して後ろに下がる。
 すべて幻の類である事は理解しているのだが、あまりにもリアル過ぎてどれが嘘なのか分からない。
「私は別に大丈夫ですよ♪」
 満面の笑みを浮かべながら、治がスケッチを描き終える。
「いや、じゅうぶん毒されているし! ‥‥仕方ないわね。こうなったら最後の手段よ。ていっ!」
 治にすぐさまツッコミをいれ、涼が頭を抱えて溜息をつくと、エマめがけてラケットを投げ飛ばす。
「きゃっ!」
 お約束とばかりにラケットが頭部に命中し、エマが妙な演出と共にスローモーションになってパタリと倒れる。
「ひどいわ、涼さん! エマ先輩は不治の病なのに‥‥! この大会を逃したらコートに立つ事はもう出来ないのよ!」
 衝撃的な効果音と共に、アゲハがエマの秘密を告白した。
「‥‥いいのよ、アゲハさん。わたくしは負けたのだから‥‥。けほけほっ」
 本当は不治の病で無いエマも、乙女フィールドの影響なのか、大量の血を吐き視線を逸らす。
「でも、お姉様っ! こんなのって‥‥」
 完全に乙女フィールドと同調したためか、アゲハの周辺だけ演出が妙に濃くなった。
「ふたりとも冷静になってね〜。バッチリ取り込まれているから〜」
 苦笑いを浮かべながら、涼が拳を震わせる。
 既に我慢の限界を超えたため、今にも爆発しそうな雰囲気だ。
「そう言えばふたりとも画風が変わってますものね。ほら、顔もちょっと面長だし‥‥」
 いかにも少女マンガに出てきそうな風貌に変化していたため、治が納得した様子でふたりの世界を覗き込む。
「‥‥本当ね。辺りに百合の花が‥‥って、なんでそこまで冷静にいられるのよ! 物凄くピンチなのに!」
 治があまりにも動揺していなかったため、涼が納得のいかない様子で睨みつける。
「そうですかね? ふたりとも楽しんでいるようですが‥‥。ほら、いまだって夕日にむかって入っているし‥‥」
 キョトンとした表情を浮かべ、治がふたりのいる方向を指差した。
「また格好が変わっているし! 今度は何っ!?」
 いちいちツッコミを入れるのにも疲れたのか、涼が不機嫌そうにふたりを睨む。
「わぁ、懐かしいなぁ。まさか目の前で漫画の名場面が見れるなんて‥‥」
 とある青春漫画の一場面が再現されたため、治が感動した様子で瞳をキラキラと輝かせる。
「こうなったら私が殺るしかないようね。どうやら設定上、意地悪なライバル役とかみたいだし‥‥。パンダと名のつくものはすべて破壊してやるわ」
 持参した金属バットを握り締め、涼が怪しくニヤリと笑う。
 やけにオドロオドロしい演出が付け加えられているため、涼の表情がまるでホラー漫画の悪役顔になっている。
「パンダ先輩!」
 再び周りの景色が変わり、エマがパンダ顔の先輩に駆け寄った。
 パンダ先輩は妙に面長の顔をしており、やけに鬱陶しいモミアゲが特徴だ。
「キミ達は騙されているわ! どう考えたって変じゃない!」
 さすがにツッコミどころが満載だったため、涼が頭を抱えてパンダ先輩を否定した。
「ううっ‥‥、涼さんは知らないのね。パンダ先輩は飛行機事故が原因でこんな顔に‥‥」
 溢れんばかりの涙を浮かべ、アゲハが悲しそうに嗚咽する。
「きゅきゅきゅー」
 妙に影のある表情を浮かべ、パンダ先輩がアゲハの事を慰めた。
「黙れナマモノ! どう考えたっておかしいでしょうが!」
 納得のいかない様子でパンダを殴り、涼が不機嫌な様子で怒鳴る。
 パンダ先輩は絶えずクールな表情を浮かべているが、パンダ顔なので単なるコントにしか見えない。
「まさか、あなた‥‥知っているの!? あの事故のせいで彼の目はもう‥‥何も‥‥」
 今にも回想シーンが流れそうな雰囲気を漂わせ、エマが涙を流してパンダ先輩をかばう。
「ああ〜、なんて可愛そうな先輩!」
 パンダ先輩と涙を流して抱き合いながら、アゲハが乙女なムードに浸る。
「きゅきゅ〜」
 『もういいんだ』とばかりに首を振り、パンダ先輩がアゲハの瞳に浮かんだ涙を拭う。
「先輩‥‥」
 胸をキュンとさせながら、アゲハがそっと目を閉じる。
 その場面を木の裏から覗き見、悔しそうにハンカチをくわえるエマ。
 面長なパンダ顔が今だけは妙に凛々しく見えている。
「騙されちゃ駄目よ! あり得ないわ! ‥‥こうなったら私が乙女フィールドを破壊してあげる! ‥‥本物の手乗りパンダを見つけてね」
 そして涼は釘バットでパンダ先輩の頭を殴り、瞳を怪しくギラリと輝かせた。
 地面にコロリと転がったパンダ先輩の頭を見つめ‥‥。

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号/ PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

 0381/村上・涼/女/22歳/大学四年、就職活動中
 2977/描舞・治/男/16歳/高校生兼漫画家
 0086/シュライン・エマ/女/26歳/翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員
 3806/久良木・アゲハ/女/16歳/高校生

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■         ライター通信          ■
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 どうも、ゆうきつかさです。
 乙女フィールドの影響下にあるため、設定とは違う口調になってますが仕様なのでご了承ください♪