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<東京怪談・PCゲームノベル>


Strangers in New York -gates of the unknown-


    01 prologue

 あちこちと、気の向くまま、足の向くまま
 ニューヨーク、ニューヨーク
 北はハーレム、南はサウス・フェリー、真ん中はセントラル・パーク
 それからなんて言ったって、美術館は外せないよね。
 メトロポリタンにグッゲンハイム、ホイットニー、クロイスターズ、MoMAは改装中だっけ?
 とにかく、ニューヨーク・シティの美術館を数え出したらキリがないよ。でも滞在期間はちょっぴり贅沢に二週間だから、その気になればコンプリートできるかな? なんて。元キュレーターとしては有名どころは押さえておかないとね。
 と、いうわけで。
「つきあってね」
 ――語尾にハートマークをつけてにっこり微笑むと、ブライアン・マクロイは、え、と固まった。
 目測六フィート以上の長身で、アメフトでもやっているんじゃないかというガタイの持ち主だが、マリオン・バーガンディをぽかんと見下ろすその表情は妙にあどけなく。
「……俺、ゲージュツとか、さっぱりわかんないよ?」
 ブライアンは何とも情けない返事をした。
「だって一人で美術館巡りしたって寂しいじゃない?」
 マリオンは、ふわふわと花を撒き散らさんばかりの笑顔。
「俺、明日から留守にするんだけど――」
「あ、それから美味しいご飯作ってね。一人暮らしならお手の物でしょ?」
「俺の主食、ハンバーガー――」
「楽しみだなぁ」
 にこにこ。
「ええっと」
 にこにこ。
「…………」
 押しが弱いというよりはお人好しなブライアンは、何も言えなくなって黙り込んでしまった。

    *

 ジョン・F・ケネディ国際空港より北上すること数十分。ブライアンが運転するフォードの助手席。
『猫の世話をする代わりに宿代タダ』の依頼を受けて遥々日本からやって来たマリオン・バーガンディは、ふんふんと鼻歌を口ずさみながら、徐々に姿を現していく鋭角的なビル群を眺めていた。
「あちこちと気の向くまま足の向くまま、ニューヨーク・ニューヨーク、だね」
 マリオンは、黒髪に色素の薄い瞳が目立つ、外見だけで言えば十八歳ほどの少年である。
 マリオンの特徴だけを頼りに空港へ迎えに上がったブライアンは、実に一時間三十分の間、待ちぼうけを食らう羽目になった。別に飛行機が遅れたわけではない。ニューヨークは快晴だ。問題があったとすれば、友人の英語力と、ブライアンの日本語力が同レベル(しかも低い)だったことくらいで。
「……日本人が来るのかと思ってたよ、俺」
 つまり意思の疎通が図れていなかった、と。
「え、なんか言った?」
 と可愛らしく首を傾げるマリオンは――日本人ではないどころか、英語圏の人間ですらなかった。そんなものは名前を見れば一目瞭然ではないかと言われればそれまでなのだが。あろうことか、ブライアンは依頼請負人の名前を確認していなかったのである。間が抜けているにも程がある。確認するしない以前に、教えない友人も友人だ。
 十三時間のフライトの後ではふらふらになっていてもおかしくないのに、マリオンは時差ボケを抱えている様子もない。何でもファーストクラスでやって来たらしい。で、早々に高級ワインを持ってこさせて、離陸一時間後には夢の中だったとか。快適な空の旅をお約束します。なんてったって一番高い席ですから。
「日本人を探してたから、見つからなかったんだ」
 ブライアンは溜息混じりに言う。
「日本人じゃないって聞いてなかったの?」
「もしかしたら聞いたかも……聞き取れなかったのかな……」それにしても、とつぶやく。「辰彦のトモダチって、皆金持ちなのか?」
「ほえ?」
「ファーストクラスなんて、俺には一生無縁だよ……」
「狭いのは嫌だって言ったら、辰彦さんがキャンセル待ちのファーストクラス取ってくれたんだよ。実費でも良かったんだけどな」
「…………」
「私、生活水準高めなのです」
 邪気のない笑顔できっぱり言い切られ、生活水準ばっちり底辺のブライアンは、とても切ない気持ちになった。
 ――ブライアンの運転する車は高速を降り、一路、レキシントン・アヴェニューの110stへ向かう。


    02 American local dishes

「『猫の額』っていう日本語知ってる?」
 ブライアン・マクロイのボロアパートに踏み込むなり、マリオン・バーガンディは、何気に失礼なことを相変わらずの可愛らしい笑顔で口にした。
「ネコノヒタイ?」
「うん。小さくて可愛らしくて素敵っていう意味。ブライアンの部屋みたいにね」
「ふーん。日本語って面白いね」
 誉められていないどころか、さり気なく皮肉られていることにまったく気づいていないブライアンである。
 確かにブライアンの部屋は狭い。どのくらい狭いかというと、シングルベッドにテレビを置くともういっぱい。勉強机を入れる余地はない。都会の住宅事情が垣間見えるような間取りである。
 マリオンが借りるのは一回り大きい部屋のほうで、言うほどは狭くない(中流階級の人間からすればごく一般的な広さだが、マリオンはどちらかというと上流階級の人間なので、多少狭く感じた)。外観から想像したほど酷い部屋ではなかったが、ブライアン曰く冬は地獄なのだそうだ。隙間風が酷い上に暖房が効かず、シャワーが二分に一回は水になるらしい。
 白猫のエリザベスは臆病で警戒心が強かったが、それでも来訪者に興味はあるらしく、食器棚の上からマリオンの様子を伺っていた。
 マリオンはにっこり微笑み、エリザベスに手を振った。エリザベス、ことベスは、にゃあ、と鳴いて尻尾を一振り。彼女なりの挨拶らしい。素っ気無いけれど。
「猫、可愛いね」
「だろ?」
「暗いところでも良く目立ちそう。真っ白で」
「夜中に帰ってくるとびびるよ。幽霊みたいで」
「幽霊呼ばわりされてるよ、ベス」
 白猫ベスは、言葉を理解しているかのような素振りで再びにゃあ、と鳴く。不本意だにゃあ、とか言っているのだろうか。
「今日はベスも交えてご馳走だね。二人と一匹しかいないけど、歓迎パーティー、してくれるよね?」
「……俺が料理するの?」
 ブライアンは、何かとんでもないものでも見たという顔になって訊く。
「もちろん」
 マリオンは元気に答えた。
 妙な間が空く。
「……チャイニーズ・フード好き? この近くに美味い店があるんだけど」
「ニューヨークに来てまで中華は食べたくないな」
「俺の手料理より美味いと思うんだけど」
「料理しないの? 一人暮らしなのに」
「料理はルームメイトの担当で」
「そのルームメイトは?」
「マリオンと入れ違いに帰国しちゃったよ……」
「頼りないなぁ」
「マリオンは料理しないのか?」
「いつも作ってもらってるから、加減が微妙なんだよね」
 ブライアンは、困ったなぁと後頭部をかきつつ冷蔵庫を開ける。住宅事情の悪さを無視したアメリカサイズの冷蔵庫を後ろから覗き込むと、ダイエットコークにスプライトのボトルだけが、しっかり二本ずつキープされていた。調理できそうな食材はあまりなく、冷凍庫には冷凍食品が詰め込まれている。二週間くらいは持ちそうな量。
 何とも侘しい冷蔵庫の扉を閉めると、ブライアンはマリオンに向き直った、
「……マリオンってさ。いわゆる金持ちだよな?」
「そうだね、世間的にはそう言うと思う」
「ファーストフードとか無縁?」
「あんまり食べないよ。身体に悪そうだもの」
「それじゃ、折角アメリカに来たんだから、今日はアメリカらしくピザの出前にしよう!」
「えー?」
 マリオンは唇を尖らせた。
「ピザ美味いよ! ニューヨーカーはピザが大好きなんだ、うん! アメリカン・フードと言えばピザだよ!」
「ピザってイタリアの料理じゃないの?」
「気にしない!!」
「うーん、なんか騙されてるような気がするな」
「さて、デリバリーサービスに電話電話っと!」
 ブライアンは有無を言わさず受話器を取り上げる。冷蔵庫にマグネットで留められたピザ屋のチラシを見、番号をプッシュ。早口で注文を捲くし立てる。
「三枚も頼めば十分足りるよな」
「多いと思うけど……」
 あ、ブライアンが食べるのか。納得納得。毎日ピザとかハンバーガーばっかり食べていると大きくなれるんだね。油断すると横にも大きくなっちゃいそうだけど。
「……ねぇベス。君のご主人様って、いつもこんなもの食べてるの?」
 エリザベスはにゃあと鳴いた。まったく困ったご主人様だにゃ、とでも言いたげだった。


    03 Go to MET!

 ニューヨーク・シティは、ウォール街や国連本部など、国際社会の要とも言うべきいくつもの機関を要した街である。
 が、もちろんそれだけではない。娯楽には事欠かないし、なんといっても芸術に携わる者にとってはこれほど刺激的な街もないであろうという――
「メッカだよね」
 マリオン・ガーバンディは、街頭で入手したニューヨークガイドを開き、きらきらと目を輝かせながら言った。
「美術館も凄いけど。ミュージカルにオペラにクラシック。何年いても飽きないよね」
 出かけるはずだったのになぜかガイド役を務めることになったブライアン・マクロイは、マリオンの手元を覗き込み、あのさ、と切り出す、
「それ、全部回る気……?」
「二週間あるからね」地図はマリオンの書き込みで真っ赤だった。「でも美術館の作品を全部見て回るのはさすがに無理があるよね。メトロポリタン美術館なんて、所蔵品数だけでいったら300万点以上だし」
「そうですか……。それで、本日のご予定は?」
 ブライアンは半ばげっそりとした口調で訊いた(審美眼を持たないブライアンにとって、美術館巡りのお供はほぼ拷問に等しい所業であった)。
「今日のメインはメトのヨーロッパ絵画です。ふふふ。ヨーロッパ絵画には時間をかけるのです」
「モナリザとか?」
「モナリザはルーブル美術館所蔵だよ」
「最後の晩餐とか……」
「ダ・ヴィンチの? それはサンタ・マリア・デレ・グラーツィエ聖堂の壁画」
「……他に何がある? ヨーロッパ絵画って」
 ぶっちゃけその程度の知識なのであった。
「色々あるけど」マリオンは悪戯っぽい笑顔を浮かべた。「贋作疑惑の美術作品を見てみようと思って」
「贋作疑惑?」
「ちょっと前に、レンブラントの真作と贋作を一緒くたにした展覧会なんていうのが開かれたのです。レンブラントの作品の真贋を見分けるのは難しいんだよ。メトロポリタンのコレクションの中にも、まだまだ偽物疑惑の作品がたくさんあるっていう話だし」
「へぇ……。偽物が堂々と飾られてたりするわけ?」
「それを調べたり、絵画の修復を行ったりするのが私のお仕事なのですー」
「……マリオンって学生じゃなかったのか?」
「何を言いますか。歴とした学芸員だよ。元だけど」
「今は何をしてるんだ?」
「財閥所有の美術品管理。私が管理している作品の中には、オークションへ出したら億は下らないものもたくさんあるよ」
「せ、世界が違う……」
「あ、そだ。二週間もお休み貰ったんだから、総帥へのお土産も考えなきゃね。何が良いかな。レコードとか喜ばれるかしら。でも最近って、ネットで何でも手に入るからお土産に困るよね。一緒に考えてくれる?」
 マリオンはご機嫌である。
 この調子で二週間引き回されるのか、俺。ブライアンは悲哀たっぷりの溜息を一つ。
「いっそのこと、メトの美術品でも買い取ってくれば……?」
「おお、それは良い思いつき!」マリオンはぱっと顔を輝かせた。「300万点もあれば掘り出し物が紛れ込んでいるに違いない!」
「待て待て待て、ジョーク! ジョークだから!」
「そうだ、レンブラントの偽物疑惑作品で、前から気になってるものがあったんだった。真作だったら欲しいな。贋作でもそれなりに価値がありそうだけど。いくら積めば落とせるかな?」
「ジョークだから!!」
 凸凹コンビはぶっ飛んだ会話を交わしながら、メトロポリタン美術館へ向かった。

    *

 入り口で入館料を支払い、荷物を預け、まずはピンポイントでヨーロッパ絵画へ。建物そのものが芸術、というようなエントランスを抜けて、二階へ向かう。
 ――ところで、メトロポリタン美術館を舞台にした児童文学がある。十二歳の少女とその弟が、メトロポリタン美術館に『家出』をするというストーリーなのだが……、
「ほんと、これなら住めちゃうよね」
 閉館間際になったら美術作品の裏に隠れてさ。暗くなってから、無人の美術館を大冒険。それって素敵じゃない?
「実行しようなんて言わないよな? な?」
 ブライアンは必死になってマリオンを諭した。
「実行したいところだけど、さすがにくたびれそうかな。私、あんまり体力ありませんし」
 ……体力があれば実行していたに違いない、とブライアンは思った。
 いつ何を言い出すものやらと冷や冷やするブライアンを連れ回し、いちいち専属の学芸員顔負けの解説をして歩き回っているうちに、数時間なんてあっという間に過ぎてしまった。
 そんなこんなで一休み。広々とした中庭でベンチに伸びる。
 マリオンは閉館間際まで回る気満々だったのだが、ブライアンはすっかり食傷気味な様子だった。それじゃ私は後から帰りますね、ということで途中で(役に立たない)ガイドと別れ、後半戦は一人で臨むことにする。
 美術館ガイドを片手に気になる美術品は片っ端から見て回り、気に入ったものがあれば十分はぼんやりと眺めていた。本当は一時間でも二時間でも眺めていられるところだけれど、それをしていたら日が暮れてしまう。本当に気に入った作品はやっぱり手に入れるしかないよね、と頭の中で算盤を弾くマリオンである。
「んー、満ち足りた気分」
 ――芸術は偉大だ。人類の叡智の結晶が、この美術館。
 マリオンも彼の主も、美しいものには目のない性質だ。
 音楽、絵画、文学、――人類にしか到達し得ないもの。
 誰に教えられるでもなく始めたこと。芸術を味わう権限こそが、人間であることの意味じゃないのかな、とまで考えてしまったりして。
 長い年月を超えて今ここに存在する絵画は、言葉ではなく、色や形で様々なことを物語っている。
 そこから読み取れるもの、湧き上がる感情のことを考えれば、
「真作でも贋作でも、価値は変わらない気がするね」
 光と影が交錯するレンブラントの美しい絵画を眺めながら、そんなことをつぶやくマリオンであった。


    04 epilogue

 マリオン・バーガンディは、予定よりも一週間早く帰ってきた。――Escherの面々からすれば、そういうことだった。
 日曜日の午前十時半、営業時間でもないのになんとなく店に溜まっていた常連客とアルバイト店員は、「気づいたらそこにいた」という他ないマリオンの姿にしばし唖然とした後、
「いつからいたの!?」
 二人揃って素っ頓狂な声を上げた。
 ちなみに二人というのは、店員の橘夏樹に、今回マリオンに依頼を持ってきた寺沢辰彦のことである。
「たった今だよ」マリオンはふふっと愉快そうに笑う。「驚いた?」
「全然気づかなかったわよ!?」夏樹は店の扉を見る。「……ちゃんとドアから入ってきた?」
「他にどこから入ってくるんですか、夏樹さん」と呆れ顔で言う辰彦。
「……窓とか?」
「えへへ、ドアでも窓でもありません。空間繋いできちゃいました」
「へ??」
 二人の顔にははてなマークがたくさん浮かんでいる。
「良くわからないけど、……えっと、二週間の予定じゃなかった?」
「ちょっと帰ってきただけだもの。ブライアンもベスも疲れたっていって構ってくれないから、お茶しにきたのです」
「いや、だって、片道十三時間……」
「一瞬だよ?」
「わけわかんないんですけど」
「まあ、気にしないで。ほら、お土産持ってきました」
 マリオンは辰彦の向かいに腰かけると、テーブルの上に土産の品を並べた。
「あ、夏樹さん、紅茶下さい」
「今淹れようと思ってたとこよ」
 夏樹はいまいち煮え切らない表情だったが、ま、いっか、と適当に納得することにしたらしい、紅茶の準備にとりかかる。超常現象の類いには、すっかり慣れてしまっている二人である。
 そんなこんなで、マリオンを加えてのお茶会兼ブレックファーストが始まった。
「お土産、何にしようか迷ったのですけど。お店の名前が『Escher』っていうくらいだから、絵は好きですよね?」
 美術館土産です、とマリオン。それからレコードが数枚、エトセトラ。
 ニューヨークならではのベーグルも添えて、お茶を楽しむ。そこはかとなくニューヨーク風味の食卓だ。
「どこを観光してきたの?」
「主に美術館巡りです。いっぱい行きましたよ。メトロポリタンはまだ制覇できてませんけど」
「あ、そっか。マリオン君は美術の人なのね」
「私の雇い主は、芸術の類いなら何でも好む方ですから。私は美術作品担当なのです」
「ニューヨークは芸術好きには溜まらないんじゃない?」
「メトに住みたいくらいですよう」
「住めそうよね。行ったことないけど、広いんでしょう?」
「はい。とっても広いですよ。目に見える世界よりもたくさんの世界が存在してますしね」
 どういうこと? と不思議そうな顔で、夏樹。
「絵の奥に、もう一つの世界があるっていうことです。異界への入り口っていう考え方もできますよね。違う世界への『扉』が、一箇所に集められているの」
「なるほどねぇ……」
 夏樹は感心したようにふんふんと頷いた。
 そこから行ける世界は、中世であったり、異邦の地であったり、異世界や神話の世界であったりと、様々だ。飛行機の往復切符では行けないところへ、マリオンを連れていってくれる。
 言葉遊びの意味だけではなく、実際に、映像の向こうの世界へ干渉をすることがマリオンにはできるのだけれど。
 ――計画を立てたり、飛行機や電車であちこち移動するのも、旅行の楽しみの一つだし。
「私はそろそろ戻りますね。帰りはちゃんと飛行機で帰ってきます」
 マリオンは席を立った。
 そろそろ正午になる。ニューヨークは夜の十時、ちゃんと部屋の前に空間を繋げなくちゃ。街中にでも出ちゃったら大変。あんまり治安が良い地域とは言えないみたいだし。
「……また行くの? ニューヨーク」
「まだメトを制覇してませんから」笑顔で答えるマリオン。「一週間後に、帰国しますね」
「うん……?」
 二人は釈然としない表情でマリオンを見送った(帰りはきちんと扉から出て行った)。
 釈然とはしない。が、
 ――ま、いっか。
 ニューヨーク土産のベーグルとプレッツェルで、なんとなく満足してしまう夏樹と辰彦であった。

    *

 宣言した通り、きっかり一週間後に、マリオンはアメリカン航空のファーストクラスで帰ってきた。
 あちこちと気の向くままに街を散策して、ニューヨークの空気が身体に馴染んだ感じ。
 飛行機で寝てきたとはいえ旅の疲れは残っているから、一先ずはゆっくり休まなきゃね。
 さて、明日から始まる生活に備えて。
 ――今日は、おやすみなさい。



fin.



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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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■マリオン・バーガンディ
 整理番号:4164 性別:男 年齢:275歳 職業:元キュレーター・研究者・研究所所長

【NPC】

■ブライアン・マクロイ
 性別:男 年齢:20歳 職業:大学生

■橘 夏樹
 性別:女 年齢:21歳 職業:音大生

■寺沢 辰彦
 性別:男 年齢:18歳 職業:高校生


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■         ライター通信          ■
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 こんにちは、ライターの雨宮祐貴です。
 ゲームノベルでははじめまして、ですね。マリオン君のニューヨーク旅行編、楽しく書かせていただきました。すっかりマリオン君のペースに呑まれているブライアンです。
 美術作品についてはさほど詳しくないのですが、絵を眺めるのは大好きです。知識があるのとないのとではまた見方も変わってくるのでしょうが。最近なぜかシュールレアリスムに傾倒しつつある雨宮ですが(笑)、マリオン君はどんな作品が好きなんでしょうか? リンスター財閥美術館(?)に足を運んでみたいです。
 それでは、またどこかでお会いできることを願って。ご参加ありがとうございました!