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<PCシチュエーションノベル(ツイン)>


上手な桃の食し方


 切っ掛けは如神が薔薇の咲き誇るきれいなお屋敷に迷い込んだ事。
 気後れしてしまってもおかしくない程の場所だったのにもかかわらず、そこに住む人達はとても優しくお茶まで振る舞ってくれたのである。
 更には気が向いたら、いつでも遊びに来てもいいとまでいってくれた。
 社交辞令でもなんでもなく、本当にそう言ってくれたのだと言う事は如神にも解る。
 それからと言うもの、すっかりこのお屋敷に話とお茶をしに来るのが好きになってしまった如神は度々お屋敷に遊びに来ているのだ。
「こんにちは〜」
「いらっしゃい、ちょうどいい所でしたね」
 元気のいい如神に、モーリスはタイミングのいい事だと笑いつつ庭へと案内してくれる。
「ちょうどデザートが出来て、これからお茶をする所だったんだよ」
「おちゃっ!」
 パァッと表情を輝かせた如神に。
「君はお菓子のある所に来るのが上手いね」
「うんっ、ありがとう〜」
「今日は桃を使ったお菓子だそうですよ」
「わあ〜いっ、楽しみーー!!! 俺、桃大好きなんだ」
 モーリスの言葉に如神は意図も容易く飛びついた。



 庭の中でも如神の体調を考えて木陰の気持ちいい所にテーブルセットが置かれ、その上に並べられたお菓子の数々。
「うわ〜〜、幸せ〜。ありがとう哥々〜」
「お礼は作った人に言いにいきましょうか」
「うんっ、でもどこに居るの?」
「大丈夫、後で私も一緒に行きますから」
「よかった」
 両頬を抑え、幸せそうに満開の笑顔でお菓子を眺める。
 きれいな器に盛りつけられた桃のパフェと出来たての桃のクレープは、まるで如神が来るのを予測していたようなメニューだ。
「ではどうぞ」
「は〜いっ、いただきまーす。でも、どっちから食べよっかなぁ?」
「好きな物からで良いんですよ」
「そっか、そうだよね」
 注がれたお茶を飲んでから、夢中でスプーンとフォークを動かす。
「おいしーー」
「よかったですね」
「うんっ」
 桃のデザートにばかり目がいっている如神には、モーリスの笑みの意味が先ほどから少しばかり違って来ているのにも気付かない。美味しそうにデザートを食べる如神を見る目は、楽しげで何かを企んでいる表情だというのに。
「まだまだ沢山ありますから」
「うんっ!」
 飾り付けられたフルーツとアイスをすくい取り一緒に口へと運ぶ。
 甘くてひんやりとしたアイスと甘い果汁たっぷりの桃、どちらも新鮮なもので食感も良い。
「しあわせ〜」
「クレープもどうぞ」
「ありがとうっ」
 目の前に置かれたクレープのなんて魅力的な事。
 小さく一口サイズ……よりは少し大きめに切り取ったクレープを口一杯にほおばる。
 ほかほかのクレープと甘さ控えめの生クリーム、とろりとした食感の桃。
 どれもこれも絶品。
「あれ?」
 お菓子に集中していた如神は、たった今気付いたのだ。
「どうかしましたか?」
「うん、哥々は食べないのかなって? この桃とっても美味しいよ」
「そうですね」
 楽しげに笑うモーリスは如神の手に触れ、スルリと撫で上げる。
「桃も、とても美味しそうですが……私は君の桃が食べたいですねぇ」
「え? なに??」
 意味がさっぱり解らずに首を傾げる如神。
 桃が食べたいと言われてもいま如神は桃を持っていないし、ここに如神が作ったデザートがある訳でもない。
 直ぐ近くにある桃と言えば、デザートに使われている物だがちゃんとモーリスの分もある。
「ええ、なになに〜? さっぱりわかんないよーー??」
「ちゃんとありますよ」
「どこに?」
 やっぱり考えても解らないと首を傾げた如神の頬にキスを一つ。
「ああ、ほら……付いてますよ」
「わあっ」
 ほっぺたに付いたクリームを舌で舐めとられ、くすぐったさに身をよじったがそれも直ぐの事。
「きれいになりましたよ」
「ありがとう、哥々〜」
 スッと体を離してから如神に笑いかける。
「桃ならちゃんとありますよ、目の前に……」
「どこどこ?」
 キョロキョロと周りを見る如神をひょいと抱え上げ、モーリスの膝の上へと乗せてしまった。
「ここにありますよ、ちゃあんとね」
 腰を支えていた手が背中に移動し、さらに下へと撫で降ろされて行く。
「ひゃあっ!?」
 くすぐったくて身をよじる如神をしっかりと抱き締め、ほとんど動きを取れない間に更に大きくなる手の動き。
「く、くすぐったいよ。何??」
 まだ何か起きているかが解らずに手足を動かしても、開いてはモーリスだからと結局は些細な動きにしかならなかった。
「こういう味わい方も、あるんですよ」
「ええっ、哥々っ、ああっ!? 駄目だよそんな所。桃は、さっきのって……っ!」
「もう頂いていますよ。もぎたての、新鮮な物を……これからというのが正しいかも知れませんがね」
「………ええっ!?」
 ようやく何を言っているかに気付き、さっと顔を真っ赤に染める。
「だ、ダメだよそんなっ! やあっ、なで回さないで! くすぐったいよぅ」
「くすぐったいだけ? 他には?」
「哥々……ひゃああっ!」
「ずいぶんと敏感のようだね」
 悪戯な手の動きにビクリと体が跳ね、きれいに反り返る背中。
 どう感じているかなんて、言わなくても解るだろう程に如神の体は雄弁だった。
「ほ、他に……?」
 ぞわぞわする感覚を堪えるように、夢中になってモーリスのスーツを握りしめる。
「そう、他に」
 尋ねられながら柔らかい所を揉みしだかれ、その度に体が震えてしまう。
「くすぐった……い、だけだよう……哥々〜」
「もっとくすぐったくしてあげよう」
「えっ? ひやぁっ!」
 腰を支えていた手が背中を撫で上げられ、背中から全身へと甘い痺れのような物がじんと響くように伝わってくる。
 ビクビクと震える手でスーツを握る手に更に力を込める。
 すがるる事ができるのは、ここしかないのだから。
「可愛い反応をするね、君は」
「哥々、哥々っ……!?」
 カチャリと前のボタンを外され、驚いて声を上げる。
「大丈夫、きれいに食べてあげるから」
「……ひゃあっ!! ああっ!?」
 庭の片隅からは、如神の声が途切れることなく聞こえ続けていた。



 今はうたた寝をしている如神の髪を撫でつつ、モーリスが満足げに微笑む。
「ごちさうさま、如神君」
「ん、んん……っ」
 耳元で囁きかけるとピクリと可愛らしい反応が返ってくるが、大分疲れさせてしまったからしばらくは起きないだろう。
「とても美味しかったですよ」
 ネクタイを締め直し、如神の髪を撫でるとスルリと落ちるリボン。
 三つ編みに結われていた髪が、すっかりほどけてしまっていた。
 途中から引っかかっていただけに過ぎなかったのだから、ここまで持てば十分だろう。
「ここでは風邪を引いてしまうからね」
 リボンを拾い上げ、軽くキスを一つ落とし軽い動作で抱き上げる。
「んんっ、哥々……」
「続きは部屋で……かな」
 まだまだ足りない。
 とびっきりのデザートなのだから、ぜひとも部屋でおかわりを。