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<東京怪談ウェブゲーム アンティークショップ・レン>


この鏡見ずべからず

 アンティークショップ・レンの店の中に一つ、人が全部映るほど大きな掛け鏡がある。しかし、それは綺麗な布で覆われて鏡としての役目を果たしていない。
「どうして? ずっと布を? 名前もないし」
 と客が訊くが、蓮は、
「布は埃よけのためだよ。それには名前はあるけどおしえられない。買ったあとに教えるもんでね。その時は返品、保証しないよ……命の保証も」
 確かに、この店というのは“曰くありげ”の品物を置いている。呪い、魔術の付与されたものと様々であるが。

 ある日、その鏡は売れた。かなりの裕福な人物が気に入ったらしい。
「そんな良いモノがあるとはな!」
 それから数日後、その人物と、家の住民全てが惨殺死体で見付かった。
  今その鏡がどうなっているかは分からない。通常の警察の動きがおかしくなったためである。

「全く、だから言ったのに……」
 蓮は、新聞をたたんでキセルをふかす。
「さて、なんとかあの鏡を回収しないとねぇ……」
 鏡に映らない吸血鬼の方が良いけど血を吸われるのはこまるしなどと笑いながら、回収して貰うため電話をかけた。
「鏡を回収して欲しいんだけどさ、何、礼は弾むし、来たらその鏡の効果を教えてやるわよ」



1.鏡ってどんなものですか?
「面白おかしい困り方しておりましたから来ちゃいました」
 と、海原みそのが漆黒の魔女姿で店に現れた。
「従姉への代理です♪」
 対照的に榊船亜真知はいつもの人形のように可愛い振り袖姿でやってくる。
「亜真知は相変わらずだね。でも、みその」
「はい?」
 蓮の言葉に小首を傾げる人魚巫女。
「ハロウィンはもう終わったんだけど?」
「雰囲気を醸し出すために、ですわ♪」
「ははは、あんたらしいねぇ」
 そして最後の回収に応じた少年のような少女が来る。
 男装の麗人蒼王翼。
 特例か何か裏の関係でF1レーサーになれたのだろう。が、常識的に“表の世界”だとこの年齢でなることは無理だ。幾ら神として人間以上の肉体能力があったとしても、である。その辺事は置いておこう。
 男装の麗人になっていても、当の3人は彼女の正体を知る。“流れ”と“理力”、“女の勘”だ。
「蒼王翼です。蓮さん回収の手伝いに来ました」
 蓮に丁寧に挨拶する。
「あらら」
「3人ですのね?」
「まぁ、難しい仕事なんだろうねぇ」
 お気楽な反応を示すみそのに亜真知に蓮。
 翼は首を傾げる。
「あまり困っておられないようですが?」
「ウチの商品は購入したお客の自己責任だけど、このまま大事になる前にこっちで回収しておきたいんだよ」
 翼の問いにキセルをふかして応える蓮。
「う〜ん」
 緊迫した空気がないので翼は居心地が悪いらしい。

 蓮自らがお茶を用意して、話が始まる。
「では」
「そろそろ」
「さっそく」
「その鏡ってどういう効果なのですか?」
 と、3人同時に蓮に訊く。
 似たような年齢なのかタイミングが合ったようだ。
「そこでクイズ。なんだろうねぇ?」
 意地が悪い(?)蓮。
 いや、実際は試している。
 一体鏡が何であるか自分で推測し、其れに対応した行動することが重要なのだ。
「映った人物の“闇の部分”を具現化し、殺害するものかと」
 と亜真知。
「性格が正反対の能力など全く同じ自分が鏡から出てきて襲うものでしょうか?」
 と、みその。
「……」
 鏡の回収のことだけしか考えていなかった翼は言葉がでない。
「そうだね。映った者を襲う点でみそのも亜真知も正解だよ」
 満足そうに微笑む蓮。
「オポジション・ミラー:映った者の同能力、同装備をコピーし相手を攻撃する、防犯鏡なんだよ。この所、異世界からの品物が来るんでね。普通は鉄製で反射面も鉄製だけどね。姿見の大きさで壁掛けというのは“あっち”では業務用何だろうねぇ」
 と、効果を説明する。
「うーん、それだと、慎重に行動しないと行けませんね」
 予想が的中した二人はお茶を飲んでから真剣に考える。
「そんな、トンデモナイ物を……。とは言っても、蓮さんは警告されていたそうですからボクが口出すことは出来ないか」
 翼は、自分なりに行動を考える。
「報酬は、みそのは体験談と他に面白いお話しがいいかねぇ」
「はい、そうですわね。このお人達で働く場合ならば簡単すぎて“御方”のお土産話がつまらなくなりますわ」
 と、のんびりみそのは蓮に言った。
「吸血鬼だけどボクは血を吸わないから、心配しなくていいですよ」
 と、翼は蓮に言うが、
「あの言葉、本気に捉えたの?」
 クックックと蓮は笑った。
「え? あの……」
「蓮様は意地悪な御方ですよ」
 クスクス笑うみそのだった。
 毎度、謎の曰く付きな物体を扱う蓮にとって、吸血種やいまなら神だって関係がないのだ。
 昔は、魂の一部を込めたカードを収集していたのだから、吸血種と知り合いという可能性もあるのだから。


2.各自行動
「風で周辺を探る」
 翼は、冬の風をつかい、探索開始する。
「もし、室内に有るならば、風は詳しく分からなくなるだろうから、その時は……二人に頼む」
「はい」
「回収作業で戦闘にならないようにしないと行けませんわね」
 振り袖姿の亜真知は、モバイルを取り出し、蓮のネット環境を借りて、どこかにアクセスし始めた。
「では、わたくしは風“以外”の流れを読みますわ。魔力の残留、人の流れで……」
 みそのは、レンの屋上で瞑想を開始した。

「あらら」
 別の場所にいるみそのと亜真知は困った顔をする。
「あのかたがおられるのですか……厄介ですねぇ」
「お父様♪」
 
「な、なんだ? こ、風が……何も伝えてこない……え?“超越にして抑止の一?”なんなのだ!」
 風は途中でとぎれる事に翼が驚く。

 一斉に皆が集まる(しかし、みそのさんは何もないところでダイナミックにこける)。
「今回は“お父様”が一時だけ敵になるとは……」
 と亜真知は溜息をつく。
「でも、エルハンド様がおられると言うことは……楽しそうですわ」
 みそのは、鼻歌を交えワクワクしている
「いや、その、“エルハンド”って誰なんだ?」
 吸血種にし“女神”の翼は異常な風の話で驚いている。
「色々お世話になっている神さまです」
「抑止力でお父様が移動したのでしょうね」
 二人は困ったようにしているが、楽しそうである。
「なら、知り合いというなら説得など……するか最悪……」
 翼は隠している武器をどうするかに悩む。
「大丈夫ですわ、今回熨斗をつけて前の事を五倍返しで“ぎゃふん”と」
「あらら、亜真知様もやる気ですわね」
「いいのか?」
 ニコニコ笑う少女に対し、自分より“驚異的上位”存在にどうするか悩む翼だった。

「と、世界の抑止力とではないと仮定しても、“お父様”がおられると言うことは、IO2が関わって来ると思われますね」
 と、モバイルから警察のハッキングをしていた亜真知。
 情報からすると、所轄から上層部に通達し、IO2出動の話を何とかキャッチしたようだが……。どうも書類関係やら、何かと戸惑っているらしい。
「しかし、IO2と警察庁と警視庁は折り合いが悪いので、おそらくエルハンド様ご自身が自主行動に出たのだと思われますわ。あの方が鏡を破壊する可能性もありますから、説得か“ぎゃふん”でしょうか?」
 みそのがにっこり微笑んでいる。
「“ぎゃふん”って? ボクはどうすればいい? キミたちは知り合いと戦うわけにはいかないだろ?」
「回収の時にあなた自身の能力で映らないようにして下されば。あと、支配能力で他の警備の方々の無力化などを」
「そうだな……」
「季節柄済みましたが、ハロウィンで」
 にっこり微笑むみそのさん。
 更に、ニコニコして何を考えているのか分からない亜真知サマ。
「慎重に何もない方向が良いかと思うんだけど?」
 翼はぼやいた。
「冗談ですって」
 亜真知とみそのは苦笑する。
 あと、翼には疑問点が。
――何故蓮さんは直接、彼に回収を頼まなかったのか……
 である。

 事件現場。
 鏡の能力でどうすることも出来ないと分かった以上、回収作業は能力者に任せることになるのは当然だ。
おそらく事故現場はそのままになっており、駆けつけた警察なども数名“鏡の自分”に殺されているだろう。その事を知ったエルハンド・ダークライツ。実はIO2本部で、呑気に新蕎麦を食べているとき、FAXが警察から届いたのを目撃し、「こりゃいかん」と急いで現場に向かったのだ。
 周りの記憶と情報操作をし、自分と“親しくしている人物以外”を遮断する結界を張り、鏡を遠回しで調べたのである。
「困ったことにこの鏡は“アーティファクト”か……。流石に、“制約上”私の役目は此処で被害者が出るのを防ぐだけ……。可能なら……破壊したいところだが……蓮が回収するようだな」
 結界に、風が届く。しかしかき消される風。
「ふむ、私が知らない者が風を操ったか……」
 あとに“流れ”の力を感じ、
「みそのがいるのか……?」
 仕方ないので、エルハンドは先見で誰が来るか視る。
「亜真知、みその、む、吸血種の戦女神……?」
 回収目的ならばあまり問題はないが、何通りかの“道”で困ったことになる。
「さて、亜真知にみその……私と遊ぶのか?」
 苦笑するエルハンド。
 一応、情報操作で何とか別の物(犯人や証拠、鏡のルート)に仕立てるなど可能だし、話だけで解決なら其れにこしたことはないのだ……。
 その後のことは“この世界の存在の判断”に委ねる事。エルハンドはこの“制約の下”に此の世界に滞在しているのだ。故に、補助としての存在である。その代わりに世界の安定のために抑止や世界の危機に“世界”を救えるよう、この世界の純粋に良き心を持った若い命に“天空剣”をこの世界に広める事が出来るのである。


3.平和的解決?
 回収作業は泥棒宜しく、裏手からが基本。しかし、事件現場から1kmの空間内に入ったとたん、みそのも亜真知も違和感を覚えた。少し結界範囲を拡大しているらしい。
「あら、気付かれちゃいました♪」
 相手が相手だから仕方なかったようだ。笑ってしまうふたり。
「あれ、翼様どうされました?」
 見えない壁で、立ち往生している翼。
「先に進めない……解呪も何故か……効かない」
 外部遮断結界で悪戦苦闘している。
「あらま」
 少女二人は顔を見合わせる。
 二人は神とかなり親しいので、違和感だけで済む。只能力が少しおさえられている感覚だ。
 エルハンドはかなり警戒しているのだろう。多元宇宙で、別の存在を危険視するのは当然であろうか?
 流石に、可哀想だと思った亜真知は、エルハンドの携帯に電話する。
「お父様」
[亜真知? 結局来たのか?]
「鏡を回収に来たんですけど。あのもう一人通させてくれませんか?」
[……]
 5分ほど話をして、
[うむ、良いだろう]
 その声で、翼は通れるようになる。
「何て強力な……力なんだ? 此処までの力を持って何故?」
 空間に入ったのは良いが、翼は汗だくになっている。
「かなり、警戒しておられますわ。慎重に……あの方は怒ると怖いのですよ」
 みそのは翼に言う。
「……わかった」

 そして、既に現場はエルハンドの世界になっているので堂々本人の所に向かう3人。
「来たか」
 入り口で黒いコート姿の銀髪男がいた。
「お父様♪」
 エルハンドに抱きつく亜真知。
 エルハンドも彼女を優しく抱きしめる。
「蓮から頼まれたのか? しかし厄介な代物を拾ってきたもんだ」
 流石に苦笑している。
「お久しぶりです。エルハンド様」
「久しぶり、みその。相変わらずコスプレが好きなのだな」
「はい♪」
 みそのは魔女姿でくるりとまわってお辞儀する。
「初めまして、蒼王翼という者です」
 いつもなら、滅多に丁寧な言い方はしない(らしい)翼だが、圧倒的な力を感じ気圧されている。
 エルハンドはコレでも化身なので、本体は故郷にある。それだけでも翼を警戒恐怖させる“存在”とし、立っている。
「……はいれ。回収なら良いだろう。しかし、下手な真似はするな。あの鏡の前ではどんな法則の書き換えは出来ない。絶対言語でもな……」
 と、神はドアを開けて案内する。

「そこまでの力を持っているのにどうして店の依頼に応じて持ってこないんだ?」
 そのまま鏡を放置しているエルハンドに訊く翼。
 エルハンドは困った顔をしたこういった。
「その気になれば持っていけるが、コレでも“世界”から行動は制限されているのだ。せめて出来るのは、“抑止力の一”としサポートするのみだな。其れも程度による」
 と。
 首を傾げる翼。
「いずれ分かる」
 そのまま案内するエルハンド。

 事件現場の死体は片づいており、鑑識のマークやチョークで死体位置のマークが書かれている。鏡はそのまま壁に掛けられている。
「これが……」
「オポジション・ミラー」
「おおきいですわね」
「不用意に前に近づくな。アーティファクトなので先ほど言ったように、法則のねじ曲げでも映ることは避けられない」
 エルハンドは言った。
「なら、エルハンド様はどうやって?」
 みそのは訊いてみた。
 するとエルハンドは3メートルの棒を取り出したり、念動の魔術を発動したりして“何をどうやったのか”見せた。
 つまり、事象を書き換える神さえも映ってしまうかなり危険な鏡だったのだ。
「なるほど……」
 みそのも亜真知は納得する。
 翼は今のところ疑問に思うばかり。
「一部でも鏡の正面からみるとコピーが襲いかかるようだ。気を付けろ」
「は〜い、お父様」
 亜真知は、反対側に鏡に映らないよう、簡単な板張りに理力で強化してから身体を庇い移動する。
 全体的に外見がどうなっているか確認するためである。みそのの流れの探知で有れば“本物”と出ているが、念のためだ。
 そのあと、理力で作った鏡を“鏡”正面に重ね合わせた。
「コレで大丈夫かと」
 合わせ鏡での封印。
 翼がそのまま、大きな鏡を壁から外す。
「あっけないな」
「まぁ、エルハンド様も皆様もお強いですから」
 少し不満げなみそのさん。
 一寸悪戯したかったのですけど……。
「念のためシーツでくるんで持って帰りましょう」
 

「エルハンドさん、後はどうするんだ?」
 翼は神に訊く。
「なんとか有耶無耶にする。ダミーは別の所から作れるだろうし」 
「ならいいけど。ボク達は回収目的だから」
 翼は鏡を持ってかえる。吸血種の力があるため一人で持ち運べる。
「後は任せておけ。IO2や、他の退魔組織が許容していない能力者が大手を振るわけにも行かん」
「むう……」
「私がこうして力がふるえているのも、“世界”との“手続き”を手っ取り早く済ませられたおかげだ。そろそろ、IO2がやってくるだろう、急いで逃げろ」
 エルハンドは、3人を促す。
「では急ぎましょう」
「ワレモノ注意ですけどね」
「ではこれで」
 丁寧に運ぶ3人を、エルハンドは見送った。
「ギリギリセーフか?」
 IO2のエージェント達が黒い車で駆け込んできたのだった。
「呪物はどうされました?」
「それは〜」



4.解決?
 回収帰還した3人。
「うーん、すこしつまらないですわね」
「洒落にならない事でも考えたのかい? みその」
「はい♪」
 蓮のニヤリとした言葉に、にっこり笑うみそのさん。
「いや、本当にヤバい代物だとおもったから……」
 翼はいう。封印されていても鏡の強力な力を肌で感じ取り、恐れた。
「でも大丈夫でしょう? 自分と戦って勝つ自身があるなら」
「映すつもりだったのか?!」
 焦る翼。
「まぁ、わたしも“お父様”映そうと思っていたんですけど……。其れだとあの周辺が壊滅してしまいますし……。あそこまで厳しいお父様に熨斗付き5倍がえしは怖いので止めました」
 亜真知サマも怖いことを考えていた。
「しかし、アーティファクトのオポジション・ミラーとはねぇ」
 蓮が封印された鏡をみる。
「流石に、神がそこまでする危険物なら、展示は止めておこうか。また買われると回収に困るし」
「ダミーなどはないでしょうか?」
「いいねぇそれは」
 相変わらず心が読めない蓮の笑み。
 一応、回収は出来たので、ゆっくりお茶をして、のんびりと雑談する4人だった。


 結局、あの鏡の事件は有耶無耶になり、強盗犯の犯行とされたのだった。

 後々、電話で、
「あまり困った代物は売るなよ」
 と、エルハンドから言われた蓮だが、
「そう言うのを扱うのがうちの商売よ。まぁ気を付けるさ」
 と、笑って答える。
「困ったもんだ」
 溜息をつく神だった。


End

■登場PC
【1388 海原・みその 13 女 深淵の巫女 】
【1593 榊船・亜真知 999 女 超高位次元知的生命体・・・神さま!?】
【2863 蒼王・翼 16 女 F1レーサー兼闇の狩人】


■ライター通信
 滝照直樹です。
 参加ありがとうございます。
 色々、展開を考えましたが、お二人方が慎重だったので慎重行動で無事回収できました。
 参加者様の能力に反映してエルハンドが来ましたが、何とか流血沙汰もなく平和的なお話しに。強力な能力に対抗して、“世界”が干渉する事についてのお話しを“彼”を元に書いてみました。
 みそのさまの“御方”のお土産話にはあまり面白くないかと思われますが、本文中に有るとおり洒落にならない結果になりますので、ご了承下さいまし。
 亜真知サマもお疲れ様です。似非親子対面とか書いてみました。

 蒼王翼様、初参加ありがとうございます。

 では機会が有れば……

 滝照直樹拝。