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<東京怪談・PCゲームノベル>


∞真剣修練

 蓮の間。
 猫やら例の謎生物やらがいっぱい集まる異空間世界。
「む、正式に天空剣門下生に?」
 新蕎麦食べながらのエルハンドの一言。
 親しい仲では彼が大の蕎麦好きなのは有名である。
 其れはおいておき、間抜けなようにも見えるエルハンド。
「はい、わたくし天位覚醒しました以上、神の力を制御したいのです。基本に戻り修行したいのです」
 天薙撫子は事情を言った。
「ふむ、おい茜」
 エルハンドは、珍しく刀の手入れをしている茜を呼ぶ。
「何?」
「確か撫子の名簿、正式門下生になっているはずだが?」
「“表の方”だけだよ?」
「ふむ、抜刀道のほうか。“正式門下生”として書き換えろ」
「は〜い、分かった」
 丁寧に刀を置いて、茜は名簿に記載する。
「抜刀道の方ばかりだったな。考えてみれば」
「あ、はい」
「制御には時間がかかるからな、心身共に鍛えて行かないと」
 エルハンドは父親のような笑みを浮かべる。
「次の稽古日に、いいか?」
「わかりました」
 お互い、真剣な目で話が終わった。

 一方、義明は他の門下生と長谷神社にて試斬用の“茣蓙”作りに精を出していた。


 さて、当日。
 撫子は真剣さに気合い入れているようで、凛々しく稽古着姿に髪を軽く三つ編みにして右肩から前に流している。
 相変わらず天然師範代のほうは剣を学ぶとき、真剣であった。
 それでも稽古が始まる前は談笑している。とは言っても剣の話が多いのは当たり前であった。
「気合い入ってるね、撫子」
「はい、義明くん」
 恋人同士ではあるが、兄弟子として接する撫子。
「では始めるぞ」
 エルハンドは門下生に言った。
「ハイ!」
「整列!」
 義明の気合いの入った声が道場に響いた。
 稽古の始まりである。
 竹刀ではなく木刀での素振りをし、天空剣の“斬”を基礎とした形と抜刀と納刀を練習する。のちに、真剣で茣蓙を斬るのだ。気を抜いたら大けがになる。護身剣での手合わせなど滅多にしない。

 エルハンドは定位置で皆を見ており、形の悪さなどを指摘している。
「腰を低く!」
「そうそう」
 形の練習のあと、試斬にはいるのだ(刀礼など礼儀作法も忘れてはならない)。
 此処で真剣をもち、基本の型で(袈裟→斬り上げ→水平)で茣蓙を斬っていく。他にはエルハンドの斬り方を忠実に真似る事もある。
 綺麗に斬った門下生には拍手で褒めることなど、結構アットホームである。
 これが“表の天空剣”の修練である。

 普通の門下生は試斬を終えた後、礼とエルハンドと義明の話を聞いて、掃除と礼をして立ち去る。
 1時間休憩の後……ここから、“本当の天空剣”の修行にはいるのだ。
 此処では、3名しか居ない。エルハンド、義明、撫子だ。
「さて、撫子は神格を覚醒し、それを己の意志で放出、制御することからだ」
 エルハンドは前よりまして真剣になる。
「義明、見本を」
「はい」
 義明は立って瞑想しているように見える。
 とたん、彼特有の“気”が身体を包み、それが放出される。
「最初の覚醒はどうしてもこういう状態になる。俺は訓練して、10%放射に抑えているけど。其れを内部覚醒にするにはかなり精神を要するから」
 先天性の神格覚醒者はそういった。
「頑張って、撫子さん」
「はい」
 以心伝心か、やり方が分かったような撫子。覚醒した時かなりの量の防御障壁が出来るはずだが。
「はい、分かりました」
 撫子は
「己の心の底にある力の放出、其れの切り替えが出来ればよい。武道では撫子の方が一日の長だしな」
「確かに」
 見守る剣士。
「はっ!」
 撫子が覚醒したときにあらゆる結界が解呪される(しかし、道場などには影響はない模様)。
 姿は、従妹の正装に3対の翼。
「100%解放をすると、そのうち身が持たなくなるが、仕方ないことか」
「は、はい」
「まずはそこから制御だな」
 エルハンドは苦笑している。
「えっと、どうすれば……」
「念だな」
 キッパリ言い切る師範。
「暫くは瞑想によるイメージコントロールが主になるぞ。神格覚醒を制御するには時間がとてもかかる。義明が其れを知っているからな」
「昔はよく、道場を壊してました……」
 エルハンドはニヤリと笑い、義明は遠い方向をみて、その恥ずかしい記憶を消したいようだ。
「はうう……頑張ります」
 なかなか難題のようだ。
 覚醒、制御、覚醒放出、神格付与など様々な制御などを流石に人間の身である撫子も義明も疲れ果てている。
「本日は此処まで」
「ありがとうございました!」
 と本日の神格制御修練は終了。

「右腕、大丈夫ですか?」
 と、着替えて来た撫子が義明に訊いた。
「大丈夫。少し痛むけどね。撫子、これからも厳しくなるよ」
「大丈夫です。必ず制御して、義明くんと共に……」
 どんどん撫子の顔が真っ赤になっていく。
 このままだと、頭の上でお茶が沸かせます。
「言いたいことはわかったから」
 愛しい人を抱きしめる義明。
 霊木は祝福するように枝を揺らしていた。


 それから、抜刀道に制御訓練と続く訳だが、流石に撫子の成長ぶりは目を見張るものがあった。
「あれから1ヶ月、実家でも修練していたか」
「俺の場合破壊神並みに物壊していたからなぁ……」
「ぼやくな、あの時は設備もお前の心自体も安定してないんだ。気にするな」
「むむ」
 と、師弟同士の会話が、蓮の間で行われていた。
「愛の力かもね〜」
 と、ハリセン娘の一言。
「そうだろうな」
 反論しない剣士2名。


 もちろんプライベートの時の撫子は撫子で、義明に甘えたり甘えられたりといった、甘い関係。
 何かのトラブルで突発的な覚醒もなくなり、平和であった。
 しかし、義明の右腕は未だに治らないことは撫子にとって気になるところ。
「だいぶ、落ち着いてきたね、撫子」
「はい、師範や義明クンのおかげです」
「でも、まだ注意するべきところはあるかな、お互い」
「あはは」
 腕を組んで歩く二人だった。

――本当は、その辺も〜天然〜治したいんですけど……(撫子の心の声)


 ある日の稽古日。
 通常修練が終わった後の、本当の訓練にて
「では、覚醒してから手合わせだな」
「いきなり、無茶なまだ1ヶ月程度なのに」
 義明は焦る。
「ええ〜!」
 撫子も驚いている。
「一度覚醒してどう変化しているかトータル的に見るのだ」
「師がいうならそうしましょう」
 不安を覚えながら刀を構える。
 お互い現代刀の業物であるが、神格に耐えるほどの物はそうそう無い。
 お互い、神格を覚醒し真剣での修練。
 義明と、エルハンドがいつもしている訓練なのだ(現在、右手負傷であまりしていないが)。
「お願いします!」
 神格覚醒している撫子の姿は微かに翼が見える程度になり、胴着もそのままである。
 もちろん、義明は身体に青白いオーラが纏っているだけ。
 手合わせは、剣道よりも激しく、障壁の壊し合いになる。道場内はその嵐に吹き荒れていた。
 動じないのはエルハンドのみ。
 しかし、
「きゃぁ!」
 撫子は何もないところで滑ってしまった。
 刀が放り出される。
 その先は刀を振りかぶって当てようとする義明。
「わ!」
「!!」
 エルハンドは目を大きく見開く!

 しかし、大事に至らなかった。
 咄嗟の判断で義明は剣を止めた状態で撫子を支える。勢いで当然、お互い倒れ込む。
 業物の刀二振りはエルハンドの力で何とか無事。誰も怪我はない。
「……大丈夫か?」
 エルハンドは落ち着きながらやってくる。
 そして、
「心にまだ甘さがある! もし、義明でなかったら……」
「師匠……!」
「む……」
 義明がエルハンドを止めた。

 今回の修練はひとまず終わった。

「ご、ごめんなさい」
「いや、汗かなにかで滑ったんだろう。大事にならなくて良かった」
 泣いている撫子を慰める義明。
「無茶をする、師も」
 少し怒っている義明。
「義明くん……」
「その泣き顔じゃ、他の人に何を言われるかわかったもんじゃない……。実は近くに、アパートを借りているんだ……」
「……!」
「暫く、休もう」
「……はい」
 優しい彼の腕に彼女は身体をたくし、一路、義明のアパートに向かった。


 翌日、
 朝日とスズメの鳴き声で、撫子は起きた。
 隣にはまだ眠っている恋人が居る。
「ありがとう、義明くん」
 彼女は彼の頬にキスをする。

「義明くん、義明くん。ごはんですよ」
「むにゃ? あさか〜」
 良い香りの朝ご飯が並んでいる。
「早くしないと、学校におくれますよ」
「うん、良い香りだ。ありがとう」
 急いで、着替える義明。
「さて、お互い頑張って一日を」
「はい」
「いただきます」
 二人は談笑しながら、朝ご飯を食べて、出かけるのであった。


End

■登場人物
【0328 天薙・撫子 18 女 大学生(巫女):天位覚醒者】

【NPC 織田・義明 18 男 神聖都学園高等部・天空剣剣士】
【NPC エルハンド・ダークライツ ? 男 神・天空剣剣士】

【NPC 長谷・茜 18 女 神聖都学園高等部・巫女(長谷家継承者)】

■かわうそ?通信
|Д゚)ノ せんせー! 今回も砂糖ですか?!
|Д゚)ノ せんせー! 糖度はどれぐらいですか?
|Д゚)ノ■ これは写真を撮らなくてはなりませぬ!(ぉぃ
エルハンド「何の写真だ? 何の?」
|≡≡3 遁走(エルハンドが怖いので)
義明「あ〜♪ 新婚さん気分っていいなぁ♪」(幽体離脱しかけ)
茜「あー! よしちゃんの魂が抜けていく!!」
エルハンド「ほっとけ。元の肉体に戻る。暫く余韻に浸らせておけばいい」
茜「何時アパート借りたのかしら?」(小首)