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<東京怪談ウェブゲーム アトラス編集部>


無明の剣

#0
「え?ボクが、ですか?」
 アトラス編集部にて碇麗香(いかり・れいか)から話を回された桂(けい)は驚いたように聞き返す。
「ええ、他に手の開いている人がいない以上、あなたに頼むしかないのよ。
そういう訳で頑張ってきて、あ、人手が欲しい時は経費は出るからその点は安心してね。」
 そうして桂の手元には編集長である麗香から渡された資料の封筒だけが残るのであった。
「やれやれ、困ったな……。でもやれといわれた以上やるしか無いもんな、まずは細かい内容を見てみるしかないか。」
 桂は自分のデスクに戻ると手渡された封筒から中に入っている書類を取り出す。
 その中にはここ最近、神奈川のある旧家の倉の中から見つかった、様々な骨董品の取材での指令が書いてあった。
「様々な骨董品って、とてもボクだけじゃ手に負えそうに無いな……。」
 そんな事を呟きながら資料を見ていると後ろから声がかかる。
「へぇ、面白そうな取材じゃないか、是非俺も混ぜてもらおうかな?」
 桂はその声を聞くと、そちらを向くことなく答える。
 「あ、その声は司くんですね、良ければ一緒に来て見ますか?」
「そうだな、何か楽しそうだし、付き合ってみるかな。それにしてもこの量は二人じゃ終わりそうに無いな…。」
 デスクの上においてある資料を見ながら、司があきれたような声を出す
「確かにそうかも、それじゃネットを使って協力してくれる人を探してみましょうか。」

 その日の夕方、アトラス編集部の出しているHPに一つの告知が乗った。

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             アルバイト求む

仕事内容:骨董品の取材への協力、分類作業など。

場所日時:11月○日 田島亭現地集合

日給:○○○○円

連絡先:希望者は編集部に連絡した後、当日現地集合
アトラス編集部(03−XXXX−△△△△)
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 桂が広告を出している間に、司がその判っているものの中のリストの一品に目を留める。
「へぇ、こんな物まであるのか、こういうものには何かある事が多いんだよな…。
なかなかに楽しそうな取材になりそうだ。」
 司のその視線の先には『無明の剣』と書かれていた


#1
 駅前にある無料ネットサービスのカフェにてとっくに冷え切った店で一番安い珈琲をちびちびと飲みながら、訪問販売に使っているノートパソコンを使ってインターネットを見ていたシオン・レ・ハイはふと、とあるホームページにてバイトの募集をしているのに目を留める。
「おや?これはバイトの募集ですね。ふむふむ、この内容なら俺にもできそうですね、では早速申し込みに行くとしましょうか。」
 シオンはそう言って残っていた珈琲を慌てて全部飲み干し、今まで広げていたパソコンを閉じ立ち上がる。
「全は急げと良いますからね、幸いアトラス編集部までは近いですし、折角のお仕事他の人にとられたら大変ですからね。」
 カフェを出たシオンは一直線にアトラス編集部へと向かって歩き出す、しかしその時点でシオンは気がついていなかった、この仕事が現地集合だという事に……。
 アトラス編集部のホームページの告知を見て、モーリス・ラジアルはふと引っかかるものを感じ、その現場に行ってみようと思いたつ。
 連絡はあとからでも良いと思い、自分の車が止めてある駐車場まで歩き出した処で同じ屋敷に住んでいる池田屋兎月(いけだや・うづき)とばったり出会う。
「モーリス様、いかがしました?」
 どこか急いでる様にも見えるモーリスの気配に不思議そうな顔で問いかける兎月。
「ああ、実はアトラス編集部で少し気に成る事があってね。」
 そう言って事の経緯を簡単に話すモーリス。
「なるほど、そういう事でしたらわたくしめもお役に立てるかと思います。モーリス様に同行してもよろしいでしょうか?」
「ええ、私は構いませんよ、あなたが来てくれるのでしたらずいぶん助かると思いますし。」
 兎月に優しく微笑みながらそう話すモーリス。
「それじゃ私は移動するための車を回してきますけど、兎月君はどうします?」
「それではわたくしめはその間にそこにお手伝いをしに来る方々のために何か軽くつまめるお菓子でも包んできます。」
「判りました、それじゃそれも楽しみにしてますね。」
 モーリスはそう言って兎月と別れ、自身は駐車場へと向かう事にした。
 駐車場についたモーリスは兎月の事を待つ為もあり、アトラス編集部へ手に持った携帯で連絡を取る。
 『アトラス編集部ですか?私はモーリスと申します、今回そちらで行われる骨董品の整理のお手伝いをさせていただこうと思いまして……は?シオンさんが?はぁ、わかりましたそういう事でしたら……。』
 アトラス編集部へ連絡を取ったモーリスは一つため息をつき乗ろうとしていた2シーターのスポーツカーではなく大人数の乗れるセダンへと歩を進める。
「全くあの人は、何やってるんでしょうかね。」
 アトラス編集部に連絡したモーリスはシオンがアトラス編集部にて誰か運んでくれる人が来てくれるのを待っているという話を聞き、彼も一緒に田島亭まで連れて行くために車の種類を変更したのだった。
 セダンに乗り込んだモーリスは兎月の事を連れてアトラス編集部に向かうのであった。

 アトラス編集部でモーリスが来る事を知らされたシオンは嬉しそうにビルの入り口で待っていると、目の前を高級なセダンがキッとブレーキ音を立てて止まる。
 その止まった車の助手席から兎月が姿を現す。
「シオンさんですね?田島亭までお連れいたしますよ。」
「いやー助かります。私もお仕事お手伝いしようと思ったのですが、そこまで行く手段が無くて困っていたんですよ。」
 そう人懐こい笑みを浮かべ兎月の誘いに従ってセダンの後部座席に乗るシオンであった。
 シオンが乗ったのを確認するとモーリスは車を走り出させた。

 そして田島亭では、入り口の所で司と桂が先に来ていた幾島壮司がモーリス達が到着するのを待っていた。
「遅いですね、そのモーリスとかって人達。」
 どこかぶっきらぼうに司達に話しながら、道を眺めている壮司が走ってくるセダンを見つける
「あれ?あの車じゃないですか?」
「どうやらそうみたいですね、これでようやく仕事が始められます。」
 車の事を確認した桂が壮司に相槌をうつ。
 しばらくして車が止まり中からモーリス、兎月、シオンの三人が出てくる。
「遅くなってすみませんでした、少し道が混んでいまして。」
 車を運転していたモーリスが皆を代表して謝る。
「この位の遅刻だったら大丈夫ですよ、作業が間に合えば良いんですから。」
 どこか同性から見てもドキッとするような微笑を浮かべながら桂がそう話す。
「でもこれ以上遅らせる訳にもいきませんからそろそろ行きましょうか、もう先に倉出しは終わっているので、後は取材だけなので。」
 そう言って桂はゆっくり門の中に入って生き残った面々もそれに続いて行った。
 一行が門を通り倉の前にある庭に行くとそこには未整理、整理済み問わず様々な骨董品が地面に引かれた新聞紙の上に所狭しと並べられていた。
「かなりあるだろうな、とは思っていたがこれほどとは……。」
 並べられた骨董品の山を見て壮司は思わずもらすが、その後壮司が心の中で呟いた言葉はその場にいた誰一人として想像する事もできなかった。
『これだけあれば……、ひょっとして【あれ】もあるかもしれないな……。」
 そんな事を考えている壮司をよそに桂が今日の仕事についての説明を始める。
「今日の仕事はここにある品々の分類、が主な仕事です、特に曰くがありそうな物はここのご主人の許可を頂いて、取材させてもらおうと思ってます。それじゃかなり量があって大変でしょうけど頼みます。」
 その後桂と司が各人に分類の仕方を説明し、皆が了承の返事をした所でその日の作業が始まった。

 作業を始めた壮司は分類作業をしながら、自らが捜し求めるものが無いかチェックをし始めた。
 それは【心臓】や【腕】などの人体を模した彫像の類であった。
「ふむ、これは1−Aで古伊万里の焼き物、これは2−C、江戸時代の硯……本当に何でもありだな。脈絡が無いというか何というか……。」
 手馴れた仕草で、自分の担当の骨董品をチェックして行く。
 ノートに内容を書き込み一つ一つ分類して行く。
 そしてふと手に取ったものが目に留まる。
「おや?これは……?。」
 そう言って目に止まった物は人の右腕を模した彫像であった。
「まさか、な……。」
 思わず呟き自らの【左目】に力を集中させる。
 ゆっくりと壮司の【神の左目】が光を放ち、その彫像を観察する。
 しばらくその彫像を観ていた壮司だったが、しばらくして落胆の表情に変わる。
「やっぱりな、これはただの彫像、か……。しかし、これはどういったものだから全くわからんから不明、と。」
 そう言って落胆の表情を浮かべたままその彫像の分類をする
 しばらくそうやって様々なものを分類していったが、とある古鏡に目が止まる。
 見た目にはただの青銅製の古代の鏡であったが、鑑定屋をやっている勘がただの鏡では無いと告げていた。
「こいつは、ひょっとして何か……?」
 壮司は再び【左目】に力を集中させる。
「なんだか詳しくは判らないが、何かしらの力を持ってるな。少し危険な感じもするが……。」
 その古鏡から受けたどこか危険な印象に少し警戒心を持ちながらも壮司はその鏡に惹かれるものを感じていた。
「とりあえずこの鏡の分類はしておいて後で交渉だけはしてみるか……。」
 そう壮司は決めるとその鏡を自分の判り安い所に置き、再び分類作業に戻って行った。

 日もすでに落ちかけた頃全ての分類作業が終わり、取材もあらかた終わった為に皆が一度集められた。
「今日は皆さんお疲れ様でした、皆さんが手伝ってくれたおかげで作業も何とか無事に終える事が出来ましたし、感謝しています。」
 桂がそう言って皆に礼をいう。
「いえいえ、私の方こそ今日は色々楽しい経験をさせていただいたので良かったですよ。」
 兎月が皆にはそうとばれない様に様々な骨董品達と会話ができた事をそうとは言わずに嬉しそうに話す。
「私も今日のこの仕事のおかげで兎ちゃんにご飯を買っていってあげられます。だから感謝するのはこちらの方ですよ。」
 シオンもまた嬉しそうに礼をいう、こちらはむしろ今日払われるお金に対してであるような感じもするのだが。
「俺も少し面白いものを見つける事が出来たからな。そういう意味では感謝している。もしこういう仕事があるならまた読んでもらえると助かるな。」
 壮司は先ほど見つけた古鏡をど交渉するかを考えながらも礼をいう。
「私も最初考えていたほど危険なものが無くてほっとしています。なんにしても皆無事で良かったですよ。」
 モーリスが皆に特に異常も無く終わった事を喜んでいると、桂が本日分の日給の封筒を皆に渡す。
「今回皆のしてくれた仕事に対して少しばかり色もつけてあります。もしまたこういう事があれば是非お願いします。それでは本日はここで解散といたします。」
 紙袋を各人に渡したあと、そう言って帰途に着く桂と司であった。

 そして封筒を受け取った壮司はその封筒を自分の着ているジャケットに中身を確かめ押し込むと、建物の中に入り先ほどの古鏡を譲ってもらえないかの交渉に入る。
「どうしてもこれを譲ってほしいんだけど。金ならちゃんと払う。」
 最初は渋っていた、家の主人であったが、しばらく考えた後こう答えを出す。
「まぁ確かに私の家の倉で眠っていても何の役にもたちませんしね、二百万でならどうでしょう?骨董品でもありますし、その位なら譲って差し上げても構いませんよ?」
 人の良い笑顔を浮かべながらもどこかしっかりしている主人に心の中で苦笑しながら、壮司は答える。
「判った、それでお願いできるか?一応今日現金用意してきてるんで、ここでの支払いで良いか?」
「なんか用意がいいですね。まるでこういう事を想定してきていたみたいだ。」
「まぁ、こういうのに関わる仕事をしているんでね。何かめぼしいものがあれば、とは思っていたよ。」
 金を数えながらそう答える壮司。
 数え終わった現金を渡し、古鏡を受け取ろうとする。
「丁度きっかり二百万の筈だ、確認してくれ。」
 主人は確認すると、頷きこう答える。
「ええ、確かに、それでは交渉成立、と言う事で。」
「ああ、ありがとう。それじゃ今日はこの辺で俺は失礼するよ。」
 壮司は礼をいうとそのまま田島亭を後にする。
 「まぁ、思わぬめっけもんだったかな?」
 そんな事を呟きながら。


Fin

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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≪PC≫
■ シオン・レ・ハイ
整理番号:3356 性別:男 年齢:42
職業:びんぼーにん(食住)+α

■ モーリス・ラジアル
整理番号:2318 性別:男 年齢:527
職業:ガードナー・医師・調和者

■ 幾島壮司
整理番号:3950 性別:男 年齢:21
職業:浪人生件鑑定屋

■ 池田屋兎月
整理番号:3334 性別:男 年齢:155
職業:料理人・九十九神

≪NPC≫
■ 冬月・司
職業:フリーライター

■ 桂
職業:アトラス編集部アルバイト

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■         ライター通信          ■
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 はじめして、ライターの藤杜錬です。
 この度はアトラス依頼『無明の剣』にご参加いただきありがとうございます。
 今回霧島さんのプレイングの結果、他の人とは違う別パートになりましたが如何だったでしょうか?
 うまくらしさが表現できていれば良かったのですが。
 今後『神の左目』がどうなるか気になります。
 それではまたどこかで出会える事を祈って。

2004.11.19
Written by Ren Fujimori