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<東京怪談ウェブゲーム 界鏡現象〜異界〜>


スノー救出の際出来る殲滅の十字


 見惚れる程に美しい、クロス。サークルより、トライアングルより、プラスの形状は胸によく刻まれる、ああなんて人は偉大なのだ、昔よ、感謝します。
 人を吊るすのに、これ程相応しい形はあろうか。
 十字架、それが、男の目の前。磔、日本でもあった。
 男は綺麗な青年だった、糸目で、温和そうな表情である。言い寄られれば心を渡してしまいそうな。
 だが、それは危険だ、彼が愛す者は、
 死体だ。
「いい加減に答えてくれませんか」
 しかし十字架に張り付けられた者は、このような質問から解る通り息がある。
「五日も其の侭では、貴方も辛いでしょう」
 喉、潤う程度にしか、泥水をすすらせてもらえない状況、いやその泥水さえ、本当は飲みたくも無いのだけど、
 生きろ生きろとうるさいのが、磔の彼女の下で、重い石を乗せられている。
 そしてうるさいそれ、質問されてないそれの方が身動きの取れない侭、語る。
 大鎌の稼動部分は口、だけ、『おの、れ』それは喋る大鎌だ。今磔にされている、少女の小柄より遥かに大きい、
 だが、それは、少女の武器である。
 ダークハンター、スノー。
 どれくらいか昔に、呪物である大鎌ヘンゲルと契約し、不老と死に難い身体、そしてこの馬鹿でかい大鎌を振るう力を手に入れた彼女――契約内容、この鎌が砕ければ彼女は死ぬが、この鎌があれば彼女は強くなる、
 離れれば、唯、死ににくい体、
 拘束するには充分な。
『殺す、だけでは済まさんぞ、おのれの肉でこの世の地獄見せたるぞッ』
 保護者なやうな、親父臭い声が足元から聞こえても、男は温和に笑った侭だ、地獄、か、
「そこには、死体があるのでしょう」
 そう言って、笑って、
「いくら我慢しても、ここには誰も助けに来れない、場所は森の中とまぁ平凡ですが、護衛が千も木の陰に散らばっている。その気になれば十年だろうと百年だろうと、嫌、」
 貴方も不死だから永遠に。
 そう言って、男は突如服を脱ぎ、肌を見せた。
 腐れている。
 ゾンビだ。
 だが顔は相変わらず優しくて、「千体のゾンビに囚われたお姫様、答えて欲しいのですよ、私はね、王にならねばならいのですよ、そして王には、妃が必要です」
 だが妃は貴方じゃない、私が欲しい妃は、
 圧倒的能力を持つ、
「レイニー・アーデッド」
 それは、
「彼女の遺体を、何処に埋めましたか?」
 スノーが二年前殺した、空想具現化という能力を持つ少女。
 だが、スノーは答えない、冷たい瞳で、彼を見た侭。
 ゾンビである青年は無言で彼女の頬を叩き、叩き、くちやかましい大鎌を、踏んづけ、踏んづけ、

 そして五日目にして変化は起こる、
 森の、東、西、南、北、それぞれの地点、
 計四人が中心に向かって行進を初め、そして、


◇◆◇

 北。

◇◆◇


 何一つ不思議等無い。草木の眠りが月の光を浴びている事、それは、森が夜を迎える時の宿命。何一つ不思議等無い。大気がその区域だけ薄くなりまた他所から補充される、それは、空気を吸い吐く者が移動するに伴う当たり前。そして、何一つ不思議等無い、
 二百五十のゾンビ――死者の群れ、等、
 不思議等ではない。至極当然で、ある。この世界では、この異界では、死が時計の針のように森羅万象に内在するこの場所ならば、生きてる事に死が宿るのも、そして、死んだ事に生が宿るのも、何が不思議であろうか、そしてそのゾンビ供は、ゆうらりとくうらりと、或いはとてつもなく雄雄しく、鯨飲するが如く、
 生きてる者を、貪ろうとするのは自然。
 、
 そして、
 何一つ不思議等、無い、
 着物の女が、二百五十の手にかからぬのも。
 不思議等、無いのです。黒い着物の女に、何十も、何十も、ゾンビ達は向かっていくのだけど、生きる事を捨てた力が、彼女の頭を砕こうとしたら、
 ゾンビの頭、割れる。
 足を食いちぎろうとしたら、足が壊れる。心臓をすすろうとしたら、心臓が無くなる。それらは死者の群れである、そうなった所で、ちいとも痛くなどは無いのだけど、
 不思議だと、不思議な事だと、二百五十のゾンビの河を、無傷で女が行くのは、
 かつての彼女は叫んだのだろう。
 ……なのだけれども、
 何一つ不思議等無い――

 それは一條美咲なのだから。

 一條美咲。
 親しい者の死の連鎖により引き起こった、自我の崩壊と引き換えに手にしたのは、元の天真爛漫の逆さのような新たな人格と、世界を理解してしまう能力、そして、構成を支配する能力。世界をあたかもパズルのように組み合わせる能力。その範囲は時にさえ及ぶとも言われ――最悪の力と、IO2等に目を付けられ、
 今だって、ほら、力のベクトルを、相手に返すだけ。(唇を奪おうとしたものの、歯が裂けた)
 それだけで彼女は鉄壁だった。死人の群集は波。寄せて、砕ける。そして彼女は歩いてる、歩いているのです。彼女は、殺戮の臭いに寄せられる女、それに向かって《なんとなく》と、ふらり、と。
 かつての彼女なら、こう叫んだか。死《人》という者は存在しない。あるのは、死体。もうけして動かぬ死体。何度涙を流そうと、何度、癒しの力を振舞おうと、動かぬ躯。
 ならば、今己に纏わりのは何と、そう、何と、ああけれど、
 彼女は随分と興味を無くしてしまって――


◇◆◇

 二百五十の死体を、まるで着物のように、重ね着して、
 つまりはそれを引き連れた侭、蝶の羽根のやうに引き連れた、侭、

 ――唐突な話
 彼女は世界を理解する能力がある。だけど、それを説明する力は無い、
 推理小説の本当の意味での真実は、死体だ。トリックや犯人等の《行程》は説明出来ぬ、それと一緒で、
 彼女は、この異界の本質を知っていても、
 どういう事かは説明できず、
 《なんとなく》としか、呼応できず、
 、
 人殺しの運命の場所に引き寄せられて。

 そう、だから、これからが、そう、そんな、
 森を抜けた先に、

◇◆◇

 体の腐れた男が、こちらを見る。
 一歩進むと、右を見る。
 一歩進むと、後を見る。
 一歩進むと、左を見る。
 一歩進む度にその頭の動きは止まらず、ああやがて、腐れた男の他、足蹴にされた大鎌、十字架に縛られたスノー、
 東西南から来た自分以外。
「……ここどす、か」
 世界を理解する一條美咲、紅蓮を突きつける友峨谷涼香、恐怖を見せる藤堂矜持、歌を響かせる橘沙羅。

◇◆◇


 千のゾンビの内、七百五十は死んだ事になる。死んで尚、死んだ事になる。
 四分の一の生き残りは、一條美咲の結果である。だが、それにしたって不思議である、何故ならばその二百五十のゾンビは、まるで服のように彼女を攻撃しながら、結局殺しきれていない。
 実質、千の守護は塵に消えた。
 ゾンビの王と自称する男は、酷く戸惑っていたようで。絶句、という声か、どうやって、切り抜けたか、
 突風のような突然。
 ゾンビの王は開口して、爆笑した。四つの者はそれを唯つぶさにみつめる。だから、前に居る者には己の顔を、右に居る者には右半身を、後ろには背中を、左には左を、見せながら笑いながらゾンビの王、
「唯の、人間が、」
 、
「唯の人間がッ! 人間が……人外を凌駕するなんてさッ」
 それは腹の底から笑っていた、大鎌ヘンゲルを踏みつけながら、踏みつけながら、「笑わせるよこの生きる事しか能の無い、愚民! いやあ本当に愉快だよ、久しくない喜劇だっ」
 だが、ねと言った。
 だがねと、彼は笑って、「一人、誰も倒せなかったお嬢様が居るよ」
 そう言って彼は一條美咲を指す、ああその二百五十は確かに、今度は彼の武器になるであろう。王の命によって烏合の衆は、神器のレベルに高まるかもしれない。少なくとも彼はそれを確信し、「集まれ!」と、
 声をかけた、のだけど、
 、
 王の威厳は無視された。ある会話に。
「美咲、ちゃん」
 それは、
「美咲、ちゃん、みさ……美咲ちゃん!」
 歌う女の声、沙羅の声。
 王の威厳を、酷く無視した。王は、二つ戸惑った。一つは何故、会話があるのか。そしてもう一つは、
 一條美咲が纏うゾンビの群れは、動けぬのか。
 微動だにしない、どう微動だにしないのか、まるで、時が止まってるかのように、そんな事があるか、おい、唯の人間、唯の、人間……、………、
「な、ん、だ、き、さ、ま、ら」
 怒りと戸惑いが混ざり合った彼に、下部から声が聞こえる。即ち喋るヘンゲル、『よかったなぁおのれ』と、
『やっとこさ死ねるわ、たっぷりと死ね、地獄のように』
 ――ゾンビの王が鎌の柄を蹴った途端
「……誰、やろう、あんさん」
「誰、って、沙羅は沙羅だよっ! ……学校一緒に!」
「……学校」
 それは本来、懐かしい響きをもって、一條美咲の内部で揺れるべき言葉、けど、けれど、
「噂の、一條美咲か」涼香、紅蓮で肩を叩き、「世界を自由に作りかえれる、自分を殺してしもうた女」
 自分を殺した――
 それは、橘沙羅にも酷く覚えがある事、一度人格が崩壊したのは沙羅の経験にある、今は周囲によって立ち直れたのだけど、
 彼女もそうだというのか。再び名前を呼ぼうとした時、
 腐った臭いが背中からした。
 それは、歌わないカナリアを屠るには充分な速度と、力だった。
 ゾンビの王の襲撃である、人外によっての技である、憤怒と呼ぶには充分である、橘沙羅を、そして、その後ろにある二百五十の己が民を引き連れる美咲を、
 ぶち殺していただくと、
 けれど。


◇◆◇

 能力を使う、唯の人、
「積もる話があるのは、はい、解るんですが」
 能力を使う、藤堂矜持。
「ですが、はい、それより私は彼女を」十字架に目をやる、「救出しなければならない」
 恐怖を見せる能力を使う――
「それがIO2の命令ですから」
 涼香が、
 その組織の言葉に反応した時、
 ゾンビの王は、
 泣き叫んでいる。

 余りにも綺麗な女の幻によって変化した姿を前にして、「みるな」
 余りにも綺麗な女を前に、「みるなあぁぁぁっぁぁっ!」
 選択した、幻、

 生きる事は醜いから、体を腐らせる不死の術で永遠の愛を誓おうとした男を前にして、
 哀れみの目で見た、己の姫――それはとても嫌な物だったから
 食ってしまったのに。

◇◆◇


 仕事を終えると、矜持は後はお任せします、と。とっとと喋る鎌とスノーの救出に向かい、
 すると橘沙羅は、悲鳴に合わせるようにこう歌った。「愛、涙、声、血と肉」ラララ、ラ、
 ――世界、零れた、自分、彼女の居ない、絶望、絶望
 たどたどしく、当たり前な、単語。
 ――涙を愛せない哀れな子、涙に脅える哀れな子
 ただ連ねただけなのに、ゾンビの王には酷く悲しく聞こえ、そして脳が妬けるように痛い、あの歌を止めなければと、オルゴールのねじを壊そうとした時。

 一條美咲が動き出した。
 正確には、
 一條美咲は、幻を見た。
 二百五十の死体の中に、かつての友の幻想を見た。
 それは、橘沙羅との出会いが引き起こした、現象なのか。
 かつての友が死体となって、自分を襲う事実、以前の彼女なら発狂するだろうけど、
 もう何もかも興味は無くしてしまって、だから、彼女は、
 、
 静止させていた、二百五十の死体、
(世界の理解、それに連なる分解)
 ――何かを呟きながら

 消滅させた。

 血の、香りすら残さず、二百五十の、物量を、
 歌でぐらぐらと揺れるゾンビの王の脳にもそれは衝撃として伝わり、一度死んだ己なのに、一度も死んだ事の無い人間に、何故驚くのだ、何故、怖いのだ、
 相変わらず幻は続いている、彼女は俺を見ている、軽蔑、いやだ、それだけは嫌だ、嫌、嫌、いやいやいやいや、
「い、やぁ」
 まるで子供のように泣くゾンビに、
 友峨谷涼香は無表情。
「人間、ちゃうわ、少なくともうちは」
 この世界がこんなになってから、
「一度死んどる」
 自我を崩壊させた一條美咲、崩壊させた後甦った沙羅、
 子を、
 殺されて、心を死なせた涼香、
 ゾンビが顔すら崩しながら飛び掛ってきて――

 凶り目、世界を捻じ曲げる彼女の片目が、噴く。
 ゾンビの体を、まるで十字架のように強制的に正すと、その十字に沿って、
 紅蓮を二回、奮った。
 心臓を中心にして、それはきちりと四分割された。
 それは酷く恐怖しながら、

 地獄があるとしたら、この世界だと、
 地獄があるとしたら。


◇◆◇


 スノーの手に大鎌が渡った刹那、である。あれほど疲労していたようなスノーの顔に生気らしきものが宿ったのは。といっても彼女の容姿はまるで人形のようで、そういう太陽のやうな物は本来見受けられないのだけど。
 とりあえずは、回復した形だ。そして、
『まずは礼をゆうたる、感謝せい。しかし、ただ礼言われる為だけに来た訳ちゃうやろ』
 おのれ等三人――と、鎌は語った。
 三人である。
 スノーとヘンゲルに用があったのは、つまり、
 一條美咲は興味が無いからとっとと去っていってしまった、橘沙羅の声に振り返る事も無く。
 手をあげたのは、彼女を追う事すら踏みとどまった、その橘沙羅である。
 そうましても聞きたい事、「スノーさん、沙羅が聞きたい事は」
 、
 どうしてレイニー・アーデッドを、殺したか。
『……有名な話なんか、それは』
「まぁ、はい、IO2の方でも」矜持、眼鏡のズレを治しながら、「噂はかねがねですネェ、レイニー・アーデッド。空想具現化能力という、思った事を現実にする力」
 ある意味あの一條美咲よりも恐ろしい力、
「そんな彼女がダークハンタースノーに、エレベストの頂上で首を切り落とされて殺されたんですから。これはもう大事件ですよ」
「……何か理由があるって、沙羅は思いますけど」
「殺した訳ではありません」
 、
 氷のような声、そう呼ぶのが真にふさわしかった。
 まるで彼女自身の能力を象徴するような、彼女自身の容姿を相乗させるような。
「首切り落としておいて殺した訳ちゃう?」涼香、
「首が飛んでも笑ってみせるって、下手な怪談ちゃうやろうなぁ」
『……逆や小娘』「小娘て、……うち見た目小娘やけど実際年齢は」『スノーも同じやそれは、ちゅうか、話の腰折るな。ともかく、逆や、空想具現化能力者レイニー・アーデッドは』
 こう言った。
『笑う事をやめる為に、首だけになった』
 ……三人、今一、解らない。
 すると、とつとつと、語るのは、スノー。
 無口な彼女のたどたどしい語り。


◇◆◇

 二週間の暮らしの中で彼女はこう言った。
 私は思った事が全て叶えてしまう、
 もし私がこの世界を呪ったら、
 その空想が、具現化したら?
 私が笑う為の空想が――

◇◆◇


「それじゃやっぱり」沙羅には仮説がある、「このおかしな世界に関係があるんですか、レイニーさんの事」
 おかしな世界という言い方に、スノーを含めた周囲は、少し何か感じたみたいだけど、とりあえず、わざわざ聞き返す事でも無いから、
『体があるから、痛みや温もりがある。悲しい思う理由、生きたい思う理由』
 ヘンゲルは思い出すように、鎌の癖にやけに感傷に浸り。『……レイニー・アーデッドはそれを捨てた。そして、……くれたんやわしらに』
「くれた? ……まさか」
 藤堂矜持もそれは予想していなかった。
「レイニーの首を?」
「……彼女は、そう空想して、……具現化したのです」
 自分の首を一種のアイテムにして、私に託すなんて真似をして、
 私の代わりに世界を願って、って、「ほなら、今持ってるんか、首を」
 そう言ってスノーを見る涼香、だが、彼女は首を振る。大鎌が事情を語った。『生首持ち合わす趣味はあらへん、適当な、綺麗な場所に、体ごと埋めてやったわ』
「大鎌を持つのもある意味、はい、特異な趣味だとは思いますが」
 これで、この話は終わったかのように、
 見えたのだけど、
 橘沙羅には仮説がある。
「……スノーさん、その首は」
 、
「誰かに持ち出されたりしてないの?」
 無口なスノーが今日は多弁に言う、
 それほど、レイニーは、零れるのか、
 彼女の胸から。

「スーパー三下が持っている」


◇◆◇


 森のはずれ、殺戮からはもう程遠い、彼女の道。元来彼女は、自分の周りを癒す力を持っているのだから、当然といえば当然か、
 けれどそれは優しさと呼ばれる物ではないのだけど、
 優しさなど、彼女にはカケラ等残ってないのだから。
 それが一條美咲――
  、
 だけど、
 一條美咲は二百五十の死体を消滅させた時、
 というよりかは、友の幻想を消滅させた時、こう呟いたんだ

「堪忍や」って。

 全てに興味を無くしてしまったはずの彼女が。
 頬に、一筋の涙を伝わらせて。


◇◆◇


 その一言に、燃え上がるような反応を見せたのは、友峨谷涼香。
「三下やと!」
 我を見失ったかのように、「三下て、おのれ、どういうこっちゃ! ……あの糞にやったんちゅうかおのれ!」
『一旦黙れや小娘! 説明は最後まで聞け!』「答えぃ!」
 聞く耳など存在しない。烈火のような彼女の態度には理由が有り、彼女の片目を奪ったのは二年前のS三下であるし、
 我が子を殺したのも、S三下であるし、黙っていられるはずなど無く、
 ただ、淡々と、分析するのは、矜持、
「S三下は、ただの編集社員である三下忠雄という人間が、かっこよくなりたいと思った事から生まれたと言いますネェ」
 はい、
「……つまりその願いだけが、何者かの手で、レイニーの首に通された」
『そうゆう事に、なるな』
「……誰や、誰やそいつは」
 最早見る者全てが怒りの対象である彼女の横で、矜持は勤めて平常、
「そこまではまだ解らないでしょうが、調べる気があるのでしたら」
 貴方も、入りますか? と。
 その一言は、
 涼香が、心の隅で決意していた事。
「……こっちから、切り出そうと思ってたくらいや」
 、
「せやけど、貴方も、っちゅう事は」
「はい」
 藤堂矜持のスノー救出の目的、それは、
「貴方もIO2に勧誘します」


◇◆◇


 ダークハンタースノー、IO2にも名が轟く絶対的な人材。
 入る様子が無いのだったら、始末しろとまで言われてきたと、矜持は言った。
 まぁそれを避ける為に、自分が交渉役に選ばれたのだろうと思うけれど。何せ自分に護衛が付けられぬ程人材不足なのあd、けれど、友峨谷涼香さん貴方は、
 古来より続く退魔組織白神を、貴方は何故裏切るのか?
 理由は明白である。
「お館様が」自分の師匠が、「おらん組織に、未練などあらへんわ」
 何よりもこれからは自分の意思で――
 あの男を、S三下を殺さねばならいのだから。
 そして、レイニーの首を再び、墓に戻す為にも、スノーも結局、所属する事になり。
 矜持と涼香の目的は完了して、


◇◆◇


 そして、
 橘沙羅は歌っていた。
 この呪われた世界が、どうか嘘でありますように。そして、
 かつてなく等しく同時に、あの頃を、
 思い出しながら、
「美咲ちゃん――」
 彼女を癒せるような歌を、彼女は、歌っていた。
 世界を理解する一條美咲はその歌を酷く、本当に酷く遠くから聴いて、
 未だ涙を流している。





◇◆ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ◆◇
 2489/橘・沙羅/女性/17歳/女子高生
 3014/友峨谷・涼香/女性/27歳/居酒屋の看板娘兼退魔師
 3290/藤堂・矜持/男性/19歳/特殊隊員兼探偵補佐
 4258/一條・美咲/16歳/女性/女子高生

◇◆ ライター通信 ◆◇
 安西先生、姉ショタが書きたいです。(挨拶
 いやーしかしNDSはええですよねやっぱりペンタッチっちゅうのは窓口がかなり広くなる訳ですし万人向けとまではいわへんですけど単純に触る喜びはサプライズでえそんな事いいからとっととノベルを語れといやでも逆裁も出るみた(強制終了
 という訳でお待たせいたしましたです; 一ヶ月かかってすいまへんですー、こういう異界ってスピードが命なのにね!(開き直るな
 レイニーの首がアイテムとして機能しているのは、橘沙羅さんのPLのプレイングで判明しました。自分もなんで首切り落としたんやろなぁ思ってたんで(えー)三下関連は涼香のプレイング、IO2所属は矜持のプレイングです。
 で、すっかりお世話の一條美咲なんでっけど、プレイングにレイニー関連でどうとかは無かったので、こういう形になりました; 出番があまり少なくて申し訳ありません……。なんとか要望だけは仕上げたかったのですが、いかがでしたでせうか?
 ともかく各PCのPL様、今回のプレイングはかなり結構いい感じでした(どんな言い方だ)あ、あと、一條美咲と橘沙羅のやりとりは、相関図をみて; というか、制服同じっすよね(何よ
 あと、スノーとヘンゲルのキャラ違うとかは、「そんなものは錯覚だ!」(えー
 ちゅうわけでご参加おおきにでした、またよろしゅうお願い致しますNDS。
[異界更新]
 橘沙羅、異界の宿命で両親を殺され一人ぼっちで心を閉ざすが、壊れたように歌っていた歌に引き寄せられた人々に助けられ、元の優しい性格と融合。普段の癒しの歌の他、憎しみを込めて歌う事により、相手を殺す歌がある。こんな世界は嘘であってほしい。
 藤堂矜持、殺異界で生き抜く手段としてIO2所属。相手の思考を読み取り相手が最も恐怖する姿に(幻で)なれる。恐怖によって心が破壊された者を、操り人形にも。スノーを勧誘したからスノーと組む?
 友峨谷涼香、白神裏切りIO2へ。一條美咲、涙を流す。
 レイニーの首は彼女自身の願いで、何でも叶える力のあるアイテムとなって、一度スノーの為に渡されたが、スノーはそれを埋葬。だが《何者かによって》掘り起こされ、三下忠雄の願いを叶えるよう使われ、S三下を生む原因になる。