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<東京怪談・PCゲームノベル>


■聖なる雪の人■

 草間・武彦は、知人からクリスマスパーティーの誘いを受け、零に留守を頼んで珍しく正装で、とある高級ホテルのパーティー会場に来ていた。なんでも、今日一日このホテル全部を貸切にしたらしい。
 立食パーティーのようなもので、広い会場の真ん中には大きなクリスマスツリーと、これまた大きなクリスマスケーキとが並べられてある。
「どうだ、武彦。楽しんでるか?」
 骨付き肉を食べていた武彦の肩を、ぽんと叩いたのは、彼の高校時代の同級生であり、このクリスマスパーティーを開いた金持ちの御曹司でもある、虹花季・生樹(にしがき・おぎ)だった。頭もよく体術にもそれなりに優れていて、おまけに顔もいい。ブランドものの紺色のスーツでビシッときめている彼は、性格にも問題点はない。素直に武彦は、この同級生が好きだった。
「ああ、楽しんでるよ。中々こういう食い物にありつけなくてなー。土産に零に包んでっていいか?」
「勿論、好きなだけ持たせるさ。そういえばお前は前から肉というと鳥のささみが大好物───」
 言いかけた生樹の言葉を奪ったのは、急な暗闇だった。武彦はこんな場面に慣れている。騒ぎ出す会場の中、サッと生樹の頭を掴んで自分と共に床に這い蹲らせた。
「な、なんだ一体これは」
「しっ」
 武彦が生樹を黙らせたのとほぼ同時に、会場のスピーカーから男の声が流れてきた。声色を変えているのはすぐに武彦には分かった。
『諸君。このイヴの日に、聖なる雪を降らせてやろう。そう、蠍の毒のように紅い雪を。このホテルからは諸君らは一切出ることはもう叶わない』
 バン、
 音がして、会場の一角がガラガラと崩れ、何人かが下敷きになった。小型爆弾だ、と武彦は判断する。
 悲鳴が更に大きくなる。
『無駄だとは思うが、会場・ホテル各所に仕掛けたこういう『罠』を解除してみせたら、私は顔を見せてやろう。まあ、パーティーの余興とでも思ってくれたまえ。但し、何らかの能力を使って『罠』を取り外すのを見つけ次第、即刻ホテルごと爆破の準備は出来ている。
 では、楽しき聖なる夜を』
 含み笑いの言葉を残し、プツリと声は途切れた。
(蠍の毒……? 罠っていうからには『仕掛け』は爆弾だけとは限らない、か)
 やや引っ掛かりを感じながらも、武彦は暗闇の中、生樹に目を向ける。
「───犯人に心当たりは?」
 短いその問いに、呆然としながら、生樹は答える。
「いや……そりゃ、俺の親父は汚いこともたくさんやってるし、恨みの線ならそれこそ数え上げたらキリがない」
「そうか」
 とにかく、あと数時間でイヴは終わる。つまりそれまでにこのふざけた「余興」を仕組んだ犯人を捕まえ、且つ「罠」とやらを全て能力なしで解除しなくてはならないということだ。
「解除するのは駄目でも、能力を使って探し出すのはもしかして可能、なのかもな」
 呟きながら、武彦は携帯電話を取り出して興信所の零に今現在の状況と、人集めの旨を伝え、更に「もし知り合いが既に会場にいるのなら、すぐに合流するよう其々に連絡を取ってくれ」と付け加えて切った。そして生樹に、
「可能な限り、お前にも助けを借りるぞ。せっかくのイヴだ。楽しくいこうじゃないか」
 武彦は少し挑戦的に、笑みを浮かべた。



■蠍毒の紅い雪───阻止班A・シュライン&悠宇■

「ったく」
『問題』のホテルを目前に、羽角・悠宇(はすみ・ゆう)は機嫌を悪くしていた。
 せっかくのイヴである。初瀬・日和(はつせ・ひより)を花火大会に誘っていたのに。運悪くこのパーティーに日和が招ばれ、しかも何かが起きて足止めを食ったと連絡があり、尚且つ零から招集もかかった。
「ホントにふざけてるよな。まあ、犯人がホテル内部をどう監視してるか知らないけど、非常階段までは見張れてないだろ」
 こうなったら、解決目指してやるしかない。
「早くしないと花火が終わってしまう!」
 非常階段を駆け上がっていく。屋上から侵入する予定だった。

 一方会場では、真っ暗闇に目が慣れてきた人達が互いの安否を気遣う声や、子供の泣き声などが聞こえてきていた。
「蠍毒は神経毒で後で効く……か」
 一緒に来ていたシュライン・エマのぽつりと呟いた言葉に、草間武彦は「何か言ったか?」と虹花季・生樹(にしがき・おぎ)を立ち上がらせながら聞いた。
「ううん。それより、壁の下敷きになった人の応急処置にでも行ってくるわ」
「ああ、頼む。それと、この会場に初瀬と桜、バイトとしてシオンも来ているらしい。羽角も来る予定だそうだ」
 桜、という名前に覚えはなかったが、今までの依頼で拘わった人物なのだろう。頷き、シュラインはその一角へ行く。ボーイ姿の見覚えのある黒髪長髪の男と擦れ違ったと思った途端、すっかり崩れきっていなかったのだろう、また壁がさっきほどではないが、ガラガラと崩れた。
「!」
 内心虹花季のことを疑っていたシュラインだが、急いでそちらに向かった。
「大丈夫ですか?」
 もし主催の虹花季が「これ」を仕組んだとしたら。先程の爆発も下敷きの皆も芝居で、だから用意が見えないよう暗闇にした等も考えられる。安全面も確り確認してそうな人物だし、そう易々と大仰な仕掛けを許す隙があるようにも思えないのだ。
 だが、下敷きになっている人達はとても芝居には見えなかった。幸い重傷の者はいなく、軽い打撲やかすり傷程度で皆済んだことが唯一の救いだ。パーティー会場に職業が医者の者が来ていたこともあり、応急処置は滞りなく済みそうだった。
 すうっと息を吸い込み、暗闇の中いつもにも増して集中してみる。聞けたマイクや照明位置での足音等思い出し、似た足音や高くない心音の方を捜してみようと思ったのだ。さっきの爆弾は自動的に起きるよう仕掛けていたのかもしれないが、犯人やその協力者が操作した可能性もあるからだ。勿論、「紅い雪」に拘わる可能性のあるもの、「赤」い色のものにも注意を払うことも忘れない。
「……?」
 シュラインの耳に、「上」から足音が聞こえてくる。単体で行動しているような足音。
「武彦さん」
 急いで戻ると、たった今、シオンと日和と桜が「罠」の捜索に行ったと聞かされた。合流したほうがいいのは当たり前だが、その前に、今聞いた足音のことを報告した。
「羽角の可能性もあるけど、犯人の可能性も高いな。一緒に行く」
 武彦のその腕を、虹花季の震える手が弱々しく掴んだ。こんな場面に慣れていない彼は、心底怯えているようだった。
「いいわ、武彦さん。『注意して』虹花季さんの傍にいてあげて。行って来ます」
「すまん、頼む」
 注意して───その言葉のニュアンスに気付いただろうか。気付いてくれたと信じることにし、「罠」に気をつけながら上のフロアに行こうとして、エレベーターが止まっていることに気がついた。
「あれ、シュラインさん」
 たたたっという、階段を駆け下りてくる足音がしたかと思うと、すぐ傍で止まった。
「犯人か、その協力者かと思ったら───武彦さんの言うとおりだったわね」
 そう、そこで息を切らしているのは、羽角・悠宇だった。
「いやさ、パーティ会場のあるフロアに最も沢山の罠を仕掛けてるだろうから、その上下数フロアから調べてみようと思って、今、上のフロア見てきたんだよ。シュラインさんの聞いた足音って俺だな。俺のほかに誰もいなかったから」
「どこから入ってきたの? まさか真正面からは入れなかったでしょうし」
「非常階段上がって屋上から。エレベーターも止められちまってたから、移動は体力勝負だな」
 そして上のフロアには何の異常もなかった、と伝える。
「日和さんと一緒に行動しなくていいの?」
 次は下のフロアだ、と階段を降りていこうとする悠宇に、シュライン。すると、逞しい笑顔が返って来た。
「気にならないではないけど、あいつ結構度胸が据わってるから、あいつなりに解決に向けて動いてるはずだと信じます」
 その言葉に、シュラインは、なんだか彼の成長過程を見たような錯覚まで覚え、ふっと微笑んだ。
「私と武彦さんみたいね。でもせめて私と一緒に行動しましょう。何かあった時、身動きが取れないんじゃどうしようもないから」
「了解」
 そしてシュラインと悠宇は、階段を急いで降りた。



 廊下を歩く時も、下のフロアに来た時も、展示物の赤いものに気をつけてはいたが、特にこれといって怪しいものはなかった。
「そもそも犯人の目的がよく判らないな……もしかして解決に向けて動こうとする俺たちを引っ掛ける、大掛かりな余興だったりして」
 ここのフロアにも何もないと分かり、ふうっとため息をつきながら、悠宇。シュラインも、自分が考えていたことを言った。
「じゃ、虹花季って人が『引っ掛ける余興』をしてるって可能性も出てくるわけだよな?」
「でも、害意の可能性が一番高いことも忘れちゃいけないわ」
 悠宇は、解除も能力を使わなければいいなら、スプリンクラーを作動させて水でもかけてやろうと思っていたのだが。
「暗闇と同時に電気機器が全て止まった、と考えていいわね」
 シュラインの言葉に、だとしたらスプリンクラーも意味がないと思う。
「それにしても、従業員も全て眠っちまってるのは───手回しが良すぎない?」
「そうね───頬を叩いても起きない、完全より完全な熟睡」
 だったし、と続けようとしてシュラインの言葉が途切れる。
 コツン、
 暗闇のフロアの入り口に現れたのは、傷だらけの───初瀬・日和だった。
「! 日和さん!」
 シュラインが急いで日和を抱き抱える。酷い怪我だ。やはり全員合流して行動するべきだった。
 日和は悠宇に向け、手を伸ばす。
「悠宇、ごめんね───」
 だが、悠宇はショックのあまりか、指ひとつ動かさない。
(日和さんのこんな状態では、日和さんと一緒に行動していたシオンさんや桜という人もどうなってるか分からない。聞いても今は日和さんの負担になるだけ)
 シュラインは唇を噛み締める。
「───違うね」
 どちらかといえば怒りに震えた声で、だが唇に笑みを含んだ悠宇に、シュラインはハッとする。
「見かけや声を同じにしたって俺には分かる。
 お前は日和じゃない───バカにすんな!」
 悠宇の日和に対するカンは、時々物凄いものがある。恐らくそれで「判断」したのだろう。悠宇がその言葉を放った途端、「日和」はシュゥゥ、と「音を立て始めた」。
「!」
 シュラインが急いで「日和」を離し、後退する。
 風船が割れるように、「日和」は爆発した。巧妙な爆弾───しかも、催涙ガスを含んでいた。
「───のヤロゥ」
「私達を足止めする気だわ」
 なんとかハンカチを急いで取り出し、口と鼻を覆うシュライン。悠宇も同じようにしていたが、寧ろ足止めを喰らったことよりも、例え偽者といえど「日和」を使って爆破させたことに怒りが止まらなかった。
 急いで携帯を取り出す───が、圏外と表示されているのを見て、危うく携帯を床に叩きつけたくなる衝動を堪える悠宇。そんな彼を見ていたシュラインは、その背後にふと、また「赤いもの」を見つけて、ようやく引いてきた催涙ガスの煙の動きにあわせるように立ち上がり、神妙に近付いた。
 それは、赤い縁取りのビデオテープ。
 何かの予感がして、シュラインは、悠宇と共にビデオデッキを探し出し、再生した。
「なんだこれ───」
 次々と映る場面に、悠宇は思わず口元を抑える。同じようにしていたシュラインは、「どこか」から、
『チェックメイト───屋上に来たまえ。君達の勝ちだ。真実を教え、解放してやろう』
 と、一番最初に聞いた同じ声がするのを聞いた。
 赤い縁取りのビデオを取り出し、悠宇も駆け出した───屋上に向けて。



■聖なる雪の人■

 会場にいた人々も皆、集まっていた。草間武彦、それに虹花季・生樹、シュライン、悠宇、日和、シオン、桜も屋上に。
 彼らから間を置いて、車椅子に座っていたその男は、徐に顔を上げた───全員の表情が、驚きのものになる。
 それは、武彦が支えているはずの、虹花季・生樹その人だったのだ。
「これは───どういうことだ」
 武彦が呆然としたように言うと、悠宇が持っていた赤い縁取りのビデオテープをサッと天に向ける。
「見せてもらった、虹花季さん。あんたの真相」
 えっと彼を見る、日和。桜は、支えようとするシオンの手をやわらかく振り解き、震える足で生樹の元へ行こうとする。
 シュラインが、言った。
「このビデオ、あなたのお父様の───あなたに施した、『実験経過報告』ね」
 生樹の瞳がふと、シオンの持っているサンタの人形に注がれる。そして、ふっと瞳を伏せた。
 ビデオに収納されていた情報。桜が得た情報。それは。


 ───虹花季・生樹は、「エスパーとしての全ての種類の能力を持った」エスパー。
 武彦を知っていたため、能力者が来ることを想定していた。
 彼は幼い頃……そう、ほんのまだ5歳位の時、子供向けのエスパーの本を読み、無邪気に、「イヴには全部の種類の能力を持ったエスパーになりたい」と笑いながら父親に言った。
 父親は、パッと見では分からなかったものの、過労により既に「おかしかった」。あえて言うのならば、「哀しき狂い人」だったのだろう。だが、一人息子の生樹には優しかった。例え、狂っていても。優しかったのだ。
 生樹はそれからというもの、意味も分からないまま父親の持つ最高の医療機関とESP研究所とを行き来させられ、このイヴのパーティーのつい一週間前に「その願いを叶えられた」。つまり、突如「究極のエスパー」となってしまったのである。
 そのままならば、良かったのだろう。だが。
 あまりに強大な力に身体がついていかず、急速に衰えていった───力の使用不使用を問わず。
 父親も既に急死していたため父親を憎むこともできず。
 ───そんな時。
 高校時代、草間武彦という友人と雪遊びをして「こんな風な真っ白な雪のような心になりたい」と思ったことを思い出した。
 このままでは、自分は父のように狂ってしまうだろう。力を知らず使って人を殺してしまうかもしれない。ならば、その前に。
 武彦を先頭に「犯人として見つけられ、出来るだけ人から憎まれるように」この「余興」を思いついた。やはり優しいがために、軽い打撲やかすり傷程度しか負わせられなかったが───。


「皆、『ちゃんと』憎んでくれたかな?」
 どこか縋るような瞳の生樹に、誰も一言も口が利けなかった。
 確かに、こんな「余興」を仕組んだことは身勝手だ。だが、そんな事情があって誰が憎めよう。
「ああ」
 ふと、武彦が言った。今まで支えていた、生樹が自分で作った「クローン」を更に抱きしめるようにして。
「恨むぜ、生樹。
 なんで、こんなことをする前に俺に相談しなかった?」
 武彦の懐の大きさに、今更ながらシュラインも悠宇も、日和もシオンも、涙が出そうになった。
「生樹、は……」
 ふと、生樹の近くまで寄ろうとひとり、まだおぼつかない足取りで歩いていた桜が、尋ねる。
「自分のせい、……? それとも、……お父さんの、せい……? どっち……?」
 どっちの「せい」だと思ってる……?
 生樹は優しい瞳で彼女を見つめた。
「自分のせいだよ」
 ───それなら、と桜はかすれた声で続ける。日和がたまらず走っていこうとするのを、悠宇が止めた。
「それ、でも……抜け出そうと、足掻かないの……? ……桜は、まだ、抜け出せない。……けど、足掻いてる、から……」
 生樹の瞳が、僅かに潤んだようだった。ゆっくり立ち上がる自分の足に、ぽすんと桜がぶつかる。老人のような老化した足だと、桜には分かった。それでも、気持ち悪いなんて思わなかった。
「誰も憎みません」
 シオンが、持っていたサンタの人形を見下ろす。
「誰もあなたを憎みません!」
 サンタの人形。そこに小さくマジックで書かれている、父親へのクリスマスプレゼントだと分かる、幼い生樹の字。
 ───あいするパパへ はっぴーめりークリスマス!───
 武彦の傍にいたシュラインが、彼が未だ支えている「クローン」の変化に気付く。何かの予感に駆られて、ハッと生樹を見た。
「駄目よ!」
「───ありがとう」
 シュラインの声と、生樹の涙の滲んだ声は、ほぼ同時だった。
「皆──とても、優しいから」
 だから───クリスマス・プレゼントを。
 最高の、クリスマス・プレゼントを───。
「……!」
 生樹が優しく強く、桜を突き飛ばした。
 シオンが彼女を受け止めるのを見届けたように、「待て!」と叫ぶ武彦の声を脳に最期に妬き付けるかのようにぎゅっと瞳を閉じ───天を見上げ───左手に持っていた、「スイッチを押した」。
 悠宇は日和の頭を咄嗟に抱き抱え、武彦はシュラインを抱きしめ、シオンもまた、桜の視界から「自爆した生樹」を隠すように強く抱きしめた。
「……雪……」
 桜の小さな声に、其々に瞳を開ける。
 そこには、まるで生樹のそれを合図にしたかのように、ちらほらと雪が降り始めている。
「唄が聴こえるわ」
 武彦が片腕で支えている「クローン」も粉雪になっていくのを見ながら、ぎゅっと瞳を閉じながら、彼の胸の中で、シュライン。
「生樹、は……さいご、しぬと同時……しかけして、あった……」
 桜が、抑揚のない未だ掠れる声で、言う。
「しかけ?」
 泣く日和の頭を撫でながら、悠宇が優しく尋ねる。
 こくりと頷き、桜は植物達から得た最後の情報を、やっと伝えることができた。
「生樹、じぶんしんだとき……できるだけおおくのひとが、おもってる願い事……かなうように、生樹のチカラ、なってた……生樹は、雪になりたかった……」
 そういえば、と悠宇とシュラインはビデオのはじめを思い出す。
「ビデオの最初のほう───虹花季さん、お父様に言っていたわ。もし自分が死ぬその時には、出来るだけ多くの人達がその時持っていた願い事を叶える力もほしいって」
 パァーン……
 悠宇と日和の真上に、大輪の花のように花火が咲く。
「本当に、優しい」
 シオンが涙を堪えながら、言った。
「雪のように真っ白な、純粋な人ですね───」
 本当に、唄が聴こえる。これは、昔の生樹が唄っているのだろうか。生樹の雪が、皆に聞かせているのだろうか。
 雪なのに、オリオン座が見える。世界中の子供達の笑顔が、雪を喜ぶ子供達の笑顔が見える気がする。


 きよし このよる ほしは ひかり……

 すくいの みこは みははの むねに……

 ねむりたもう ゆめやすく……


 ようやくホテルに入れた零と武彦、そしてシュラインは合流し、そっとその唄を聞きながら、残り少ない暖かなイヴを迎えるために興信所に戻っていった。
 悠宇と日和は、ホテルの屋上で、静かに、これ以上にないほど美しい花火を見上げ。
 シオンは桜と、空から降る雪の中に見えるような子供達の、皆の笑顔を胸にとどめた。
 虹花季・生樹に関する赤い縁取りのビデオテープは、武彦の手で処分された。サンタの人形は、後に建てられた生樹の墓に共に入れられた。


 ───メリークリスマス、パパ。
 ───どんなパパでも、ぼくはすきだよ。
 ───メリークリスマス!───





《完》



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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
3524/初瀬・日和 (はつせ・ひより)/女性/16歳/高校生
3525/羽角・悠宇 (はすみ・ゆう)/男性/16歳/高校生
1233/緋井路・桜 (ひいろ・さくら)/女性/11歳/学生&気まぐれ情報屋&たまに探偵かも
0086/シュライン・エマ (しゅらいん・えま)/女性/26歳/翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員
3356/シオン・レ・ハイ (しおん・れ・はい)/男性/42歳/びんぼーにん(食住)+α




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■         ライター通信          ■
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こんにちは、東瑠真黒逢(とうりゅう まくあ)改め東圭真喜愛(とうこ まきと)です。
今回、ライターとしてこの物語を書かせていただきました。今まで約一年ほど、身体の不調や父の死去等で仕事を休ませて頂いていたのですが、これからは、身体と相談しながら、確実に、そしていいものを作っていくよう心がけていこうと思っています。覚えていて下さった方々からは、暖かいお迎えのお言葉、本当に嬉しく思いますv

さて今回ですが、ちょっとシリアスな話を、そして「雪のように純粋な人」というものを書いてみたくて、このようなノベルになりました。「蠍の毒〜」というくだりだけ不明なままになっていると思いますがこれは、虹花季・生樹が徐々に「蝕まれていった」ことを比喩して書いたものでした。雪に散り人々の願いをかなえる、というものを書いてみたかったので、イヴを狙ってみましたが、哀しいものとなってしまい、ある意味申し訳なかったかな、と───後日、何か思いついたら、今度はほのぼのか微コメディ的なイヴネタをと考えております。
また、今回は最初から2班に分かれて行動して頂きましたので、もう1班のほうもご覧頂かないと分からない部分もあると思います。是非、どうぞお暇なときにでも。

■初瀬・日和様:連続のご参加、有り難うございますv 電気系統を停止という案と、能力者を想定した声明という鋭い点では脱帽しました。結果的に水には濡れてしまうし哀しい終わり方をしてしまったのですが、日和さんとしてはこんな時だからこそ泣かないのかな、とも思いました。
■羽角・悠宇様:連続のご参加、有り難うございますv 唯一外からの侵入、ということでしたが、ここだけの話、生樹は「究極のエスパー」ということなので全部「見えて」いたわけなのですが、それでも非常階段というのは実はわたしの盲点でした(単にその存在を忘れていただけだったり(爆))。日和さんの「偽者」については、悠宇さんなら絶対「ああ」だろうなと思いましたが、如何なものでしょう。
■緋井路・桜様:連続のご参加、有難うございますv 桜さんが今回一番「情報が分かった=一番感応を受けてしまった」感じで、ちょっと今後の桜さんの人生に影響が出ないか心配です;(一番犯人=生樹と「接触」していましたし)日和さん同様せっかくの振袖が濡れてしまいましたし、すみません; イヴのお願い事が書いておりませんでしたので、シオンさんと「笑顔を見る」感じになりましたが、如何でしたでしょうか?
■シュライン・エマ様:連続のご参加、有り難うございますv 蠍の毒について神経毒、と突っ込んできてくださったのは嬉しかったです。ある意味生樹本人のことですので……。それと、生樹本人をまず疑ってくださったのをうまく生かせなかったのがかなり残念なところです。やはりもう少しこの手のものは勉強して精進しなければな、と思いました。イヴのお願い事が意外に家庭的(?)なものだったので、ある意味なるほど、と納得しました(笑)。
■シオン・レ・ハイ様:連続のご参加、有難うございますv 犯人は能力者、という点と、会場の全員の安全確保など、やる時はやる人なんだなというのが素直な感想です(あ、この言い方だとある意味失礼かもですが、そういう意味ではありませんので;)。今回は生樹の昔の「父親」へのクリスマスプレゼントの第一発見者として、色々な感慨を持たれたかと思いますが、如何でしたでしょうか?

「夢」と「命」、そして「愛情」はわたしの全ての作品のテーマと言っても過言ではありません。それを今回も入れ込むことが出来て、本当にライター冥利に尽きます。本当にありがとうございます。生樹の行動は確かに身勝手ではありましたが、武彦に言えないほど優しく、また、それほどまでに追い詰められていたことを少しでも分かって彼の優しさというのも理解して頂けたら、更に更にこの上なく幸せです。

なにはともあれ、少しでも楽しんでいただけたなら幸いです。
これからも魂を込めて頑張って書いていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い致します<(_ _)>

それでは☆