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<東京怪談・PCゲームノベル>


文月堂奇譚 〜古書探し〜

海原みその編

●ウサミミパニックりべんじ?
「このお店ね、あの子が言っていたのは……。」
 古書店『文月堂』を前にしてそう呟いたのは、セーラー服に身を包んだ海原みその(うなばら・-)であった。
 みそのは呟いた後ゆっくりと店内に入って行くのであった。
 店内には二人の女性が本の整理をしたり、カウンター整理をしたりしていた。
 そしてその内の本の整理をしていた銀髪の少女が店内に入ってきたみそのに気がつき声を掛けた。
「あ、いらっしゃいませ。」
 声を掛けられたみそのは妹から聞いていた特長から、この銀髪の少女が元吸血鬼の佐伯紗霧(さえき・さぎり)だと確信した。
「こんにちわ、紗霧さん。今日はちょっとある本を探しに来たのだけど。」
 その年齢にしてはかなり丁寧なみそのの言葉を聞いて、紗霧は不思議そうな顔になり、思わずもう一人のカウンター整理をしていた黒髪の女性、佐伯隆美(さえき・たかみ)の方を見てしまう。
 その紗霧の不思議にしている表情を見てみそのはようやく合点がいった。
「あなた達の事は妹から良く聞いているのですよ。だから紗霧さんと隆美さんの事は良く存じ上げておりますわ。申し遅れました、私は海原みそのと申します。」
 みそのが名乗ると隆美と紗霧もようやく納得がいった様なすっきりとした表情になる。
「ああ、そういう事でしたか。それでみそのさんは今日はどのような本を探しに来たんですか?」
 カウンターから隆美がみそのにそう問いかける。
「【人中魔妖】、という本を頂きたいと思いまして。」
 みそのは隆美の方を向いて、悪気やいやみなど一切ない雰囲気のまま答える。

 みそののその言葉にその場の空気が一瞬固まったかの様に静かになる。
 しばらく空気が固まったかの様であったが、隆美が何とか搾り出すようにみそのに答える。
「【人中魔妖】ですか?確かにあるにはありますけど……。みそのさんはあの本がどのような本であるか御存知、なのでしょうか?」
 どこか言いにくそうに隆美が答える。
「ええ、知っているから欲しいんですよ。もし購入が駄目なら読ませていただくだけでも構わないのですが。」
 みそのの言葉に隆美と紗霧は困った様につい見つめ合ってしまう。
「申し訳ありませんが、その本はお売りする事が出来ないんです。当然閲覧も出来ないようにすでに厳重に封印もしてしまった後なので……。」
 隆美はみそのに申し訳なさげにそう答える。
「閲覧も駄目なんですか……、それは少し予想外でした。」
「あの本は少し性質の悪い『呪い』の掛かった本なので、もしそういう物の扱いに長けている人ならまだ別ですけど。」
 その言葉にみそのは少しばかりほっとしたような顔になる。
「それなら安心してください。わたくしこう見えても巫女をやっております。今日はたまたまこの服ですが、そういう物の扱い方は心得ているつもりですので。それに、他人にはその内容を使用しませんし。」
 みそののその言葉にカウンターでしばらく相談しあう。
「確かにお姉さんが巫女さんだ、みたいな話は前にしていたと思うんだけど……。」
「それじゃ紗霧は任せても大丈夫だと思うの?」
「うーん、みそのさんもああ言ってるし、信じてあげたいな。私は……。」
 紗霧はそう言って、ちらりとみそのの方を見る。
 みそのはその紗霧と視線があい、やんわりと優しい笑みを浮かべる。
 つられて紗霧もつい微笑み返してしまう。
「多分大丈夫なんじゃないかな?嘘ついてるようには見えないし。」
「多分って何よ。まぁ、今回は紗霧の言葉を信じてみるか。」
 隆美はそう言うとカウンターを出てみそのの方へと歩いて行く。
「お待たせしました。さすがにお売りするという訳にはいきませんが、お見せする程度なら折角来て頂いたのですし、させて頂こうと思います。ただ少しでも何か危険と感じたらやめていただきますけど、それでよろしいですか?」
 凛としたその隆美の言葉にみそのは頷きながら答える。
「そうですね、見せていただくだけでもかまわないのでよろしくお願いします。」
「判りました、それじゃしばらくお待ちくださいお持ちしますので。それからここじゃ何かあったときとか対処し難いと思うので、中でお願いできますか?」
「ええ、それならそうさせていただきますわ。」
「紗霧悪いけど、みそのさんを客間に案内してもらえる?私は本をとってくるから。」
「あ、うん、わかったそうするよ。それじゃみそのさんこちらです。」
 紗霧に促されてみそのはその場を後にする、隆美が別の方に歩き出したのを感じながら。

●ちいさな小悪魔?
 みそのが客間に通されてソファに座っていると、お茶を入れて戻ってきた紗霧が今まで疑問に思っていた事を口にする。
「なんでみそのさんはあの本が読みたいんですか?どういう事が書いてあるかは聞けたと思うのに。」
 紗霧のその質問にお茶を飲もうと湯飲みに手をかけていたみそのが一瞬慌てたようなしぐさをする。
 しばらく顎に指を当てて考え込んでいた様子であったが、微笑を口元に浮かべてみそのは答える。
「いえ、たいした事ではないんですよ。わたくしもそういう術とかには巫女である以上色々知っておかねばならないと思いまして、出来れば話に聞くだけではなく直に読んでみたいと思ったんですよ。」
 まさか『その術を覚えてみたい』という密かな野望がある事は全くおくびにも出さずにみそのはしれっとそう答える。
「あ、そういう事なんですか、やっぱり巫女さんっていうのも大変なんですね。」
 みそののその言葉を全く疑いもせずに紗霧は感心したように答える。
 そして丁度そこへ件の封印された本である『人中魔妖』を持って隆美が客間にやってくる。
「あ、紗霧ここは私がお相手するからあなたはお店の方をお願い。」
「判ったそうするよ。でもお茶は冷えちゃったから淹れなおした方がいいよ。」
「はいはい。」
 わざわざ自分のお茶の心配までしてお店に戻って行く紗霧を見て隆美は思わず苦笑してしまう。
『本当に仲のいい御姉妹なんですね。話に聞いていた通りですわ。』
 そんな二人の様子を見て思わずみそのもついそんな事を心の中で呟いてしまう。
 そしてテーブルの上に置かれたどこか怪しげな雰囲気を持った本を思わず凝視してしまう。
「これが例の本ですか、手にとっていいですか?」
「ええ、どうぞ、ただし注意してくださいね。」
「判っていますよ。」
 少し心配しすぎともいえそうな隆美の様子に思わず苦笑をしながらもテーブルの上に置かれた『人中魔妖』を手に取るみその。
 ゆっくり封印が破れない様に祝詞を唱え、ゆっくりと封を切りページを開くみその。
 隣で隆美が自らの『リーディング』の力で異常が起きないか監視をする。
 そしてどれだけの時が過ぎたであろう、やがて満足そうにみそのが本をゆっくりと閉じて再び祝詞を唱え封印の符を貼り付け『人中魔妖』を封印する。
「ありがとうございました、色々と勉強する事が出来ました。この本はお約束した通り再び封印しておいたので大丈夫ですよ。」
 微笑みながらみそのは隆美に本を返す。
「それではここにお礼はおいておきますね。」
 そう言ってみそのは封筒をテーブルの上に置いてゆっくりと立ち上がる。
 そしてそのまま客間を隆美と一緒に出て、お店の方にみその達は戻る。

「紗霧さん今日は色々ありがとうございました、またこれからもお世話になる事があるかもしれないのですが、その時はよろしくお願いしますね。」
「いえ、私の方こそよろしくお願いします。」
 みそのはそう紗霧にも御礼を言うと文月堂を出て行こうとする。
 そして見送りをしようと店の外まで付き合った隆美にふと思い出したようにみそのが言った。
「『人中魔妖』には続巻があるそうです。もし見つかったら、また見せていただけると嬉しいです。」
「ええ判ったわ。もし見つかったらお見せしますね。」
 みそののいった続巻がある、という意味をリーディングを使う為に意識を集中させてたために疲れていた隆美は深く考えもせずに思わずそう答えてしまう。
「それじゃ今日はこの辺で失礼させていただきますね。」
 小さくお辞儀をし、挨拶をすると、みそのは満足そうに文月堂を後にするのであった。


Fin

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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≪PC≫
■ 海原・みその
整理番号:1388 性別:女 年齢:13
職業:深淵の巫女

≪NPC≫
■ 佐伯・隆美
職業:大学生兼古本屋

■ 佐伯・紗霧
職業:高校生兼古本屋


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■         ライター通信          ■
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 どうもこん○○わ、ライターの藤杜錬です。
 この度はご参加ありがとうございました。
 再びこの本の事を描く事があるとは思いませんでした。
 いずれ続巻については考えていた所ではあったので、このプレイングが来た時に少しびっくりしてしまいました。
 今回は楽しんでいただけたら幸いです。
 それではまたご縁がありましたら、よろしくお願いいたします。

2004.11.29.
Written by Ren Fujimori