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for dear
ひとつ、歳を重ねても想い描くのは大好きな人のことだけ。
美味しいもの、綺麗なもの、好きなものは本当に沢山。
けど、それ以上の一番はって聞かれたら……大好きな人の事だから、きっと、ただ、笑っちゃうだけなんだけれど。
11月23日は水鈴の、お誕生日。
今日はね――……パパとママにお祝いして貰えて、ひとつ、無事に大きくなったことを本当に喜んで貰えて。
大きなケーキもプレゼントも貰えて。
ケーキなんて、水鈴が半分食べてもいいよって言われて思わず、本当にぺろりと半分食べちゃったりもして。
とってもとっても嬉しかったしお腹も一杯で幸せだったんだけど……
(無理なお願いだって解ってるもん。我が儘だって事も)
少し、唇を尖らせながら水鈴は自分の部屋から見える星を見た。
先ほどまで祝って貰った時間は過ぎ……今は、いつもなら、もう眠る時間。
もう少しすると本当の意味で誕生日は過ぎ――、ひとつ歳を重ねた、一日が始まって行く。
ひとつとして、同じ時はないのだ。
だからこそ、と水鈴は思う。
我が儘だと解ってはいるし、今は言ってもどうしようもない事だとも充分に解ってはいるのだ。
けれど――やはり。
(ひとつだけ、ううん、一言でいいから――)
やっぱり一番逢いたい人ににっこり笑ってお祝い、言って欲しかったなあ…って思うの。
まだまだ、時期じゃないって事は解ってるんだけど……でも、ほんの少しだけでも時期が近づいたなら尚更。
"逢いたい、な……"
輝く星を一心に眺め、水鈴は「良しっ」と拳を握った。
折角、ひとつ大きくなれたのに何時までも考え込んでるのは哀しい。
此処は、どーんと頼れる大人になるべく頑張らないと!と考え、……星へと願いをかけようと、ぱたぱた部屋の中を駆け、ある花束を窓辺に持って来た。
コスモスの、花束。
横浜の街で買ってきた、まだ顔も知らぬ大好きな人のために買って来た花束。
後に調べた事だけれど、コスモスの花言葉は「乙女のまごころ、愛情、たおやかさ」
……たおやかさ、と言うのが水鈴には、まだ良く解らないけれど、それでも最初の二つにはうんうん、と頷いたものだ。
花と、一緒に贈りたい気持ち、そのままだったから。
コスモスを窓辺に置き、よいしょよいしょと声をあげながら椅子を引っ張ると、そのまま其処へ、ちょこんと座る。
両手を組み、夜空に浮かぶ星を見上げながら息をひとつ。
(顔も知らない大好きなお姉さんへ……)
何時の日か、逢いに行くね。
まだまだ、水鈴でさえ逢えない何処かの誰かは「時期じゃないのよ」って言うんだろうけど……でもね、でも、確かに感じられる気配があるから。
それは、何時の日か、ちゃんと水鈴とお姉さんの糸が繋がるって証拠だもの。
糸の絡まりが取れて、何時かお姉さんが水鈴に気付いたら、その時は、どーん!!と頼れる大人になるように頑張るから。
ううん、頑張るっていうのはおかしいね……「なってみせる」って言えば一番良いのかな?
大好きなお姉さんの為だものね。
いつも、いつも、お祈りしてます。
お姉さんが、毎日元気で、笑顔一杯幸せで居てくれますようにって。
(それにね、逢える時が来たらお花も渡したいから……)
コスモスの花束も、今は渡せないけれど……渡せる時にはドライフラワーになってるのかも知れないけれど。
気持ちだけは変わらないから、何時か、絶対。
水鈴は、呟いた言葉を心の中で反芻させながら、ふと、ある星に目を向けた。
空気が冴えているのか、星は、ただ煌々と輝きを放つ。
海の中であろうと地上であろうと空に浮かぶ星だけは変わらない。
そんな中で、一際に輝く蒼い星。
何と言う星かは解らない。
が、水鈴の瞳には一番に美しく映る、星。
(あんな風に……)
お姉さんが幸せで居てくれたら、良いな。
お姉さんの周りに、沢山のお星様みたいに……
(幸せのお花が、いっぱい、いっぱい、咲きますように♪)
傍に行ける時までは、どうか、どうか、幸せに。
水鈴は、指を組む力を強めながら、願いを込めた。
星は、まるで水鈴の願いを聞いたかのように、二度三度と強く瞬き……
「……あ」
了解と言わんばかりに緩やかに、星が、流れた。
―End―
+ライター通信+
こんにちは(^^)
何時もお世話になっております、ライターの秋月 奏です。
今回は、もう頂いたプレイングが凄く凄く可愛くて!!
このプレイングを出来るだけ反映したい……と思いまして、このように
水鈴ちゃんから、見知らぬ誰かへのお手紙、と言うような話にさせて頂きました。
それと流れ星についてですが……じっとじっと、ひたすら夜空を見上げてると
本当に流れ星を見れる事がありまして。
誰よりも大事にある方の事を祈ってる水鈴ちゃんなら、きっとその後の
お願い事も言えただろうなと思います(^^)
では、今回はこの辺にて失礼させて頂きます。
また何処かで逢えることを祈りつつ……
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