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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


■『扉(ゲート)』−星霜の四十七士−■

「『扉(ゲート)』を開かれるなんて、お前さんらしくないじゃないか」
 草間武彦は、珍しく興信所に訪れた客───牙道・ザクトのいつもより眉間に皺の寄った顔を見ながら、煙草に火をつけた。
「昏石・紫黒斗(くれいし・しろと)以外、『絶対管理』が人生みたいなお前の目をかいくぐれる奴はいないと思ってたんだが」
「あの『扉(ゲート)』荒らしより、今回はタチが悪い」
 初めて、ザクトはその綺麗な形をした唇を開いた。
「知っての通り、『扉(ゲート)』は何百何千何万、はるかにそれ以上の数をこえる。恐らく何かの拍子で『そいつ』は偶然開いた『扉(ゲート)』に入ったんだろう。だが、そいつは時空視察部・警察部らも目をつけている第一級の犯人」
「……というと?」
 武彦の問いに、ザクトは悔しげに目を閉じ、また開き、眼鏡をついと人差し指で押し上げた。
「狂犯罪者だ。歴史を弄ぶのが趣味のな」
「それで───つまり、歴史を弄られちまったわけか?」
「赤穂浪士を知っているだろう」
 ああ、と武彦は応える。47人の、主君の仇討ちを堂々と行った、歴史でも誉れある面々だ。武彦自身も密かに好きで、毎年暮れに放送する「赤穂浪士」の番組を楽しみに見ていたものだ。
「奴は、彼らの仇討ちをその能力で以て阻止してしまった」
「な───!?」
 煙草が、ぽろりと床に落ちる。
 ザクトは続ける。
「一度捻じ曲がってしまった歴史は、元に戻さなければならない。そこで草間、お前のところにきたんだ」
 犯人は能力者。ならば、能力者が常にといってもいいほど集う武彦に応援を頼みにきたのだという。
「歴史はどんな悲劇であれ、変えてしまったら『現在』に何の影響を及ぼすか分からない。俺は他の『扉(ゲート)』を今までより厳重に管理しなければならない。勿論、助言はする。俺の失態だ、法外以外の報酬なら俺が用意する。それと」
 コトリ、と白いカプセルが幾つか入った小瓶をテーブルに置く。
「これは『歴史記憶抹消機』だ。薬の形はしているが───まあ、薬と呼んでもいい。
 俺がもう一度だけ、最後のチャンスとして、犯人が赤穂浪士の討ち入りを阻止する少し前の『時間』への『扉(ゲート)』を開ける。興信所の壁から入れるようにしておく。犯人を何としてでも阻止し、歴史を元に戻してほしい。
 そして、それが無事に終わったら、この『歴史記憶抹消機』を地面でもどこでもいい、放り投げてくれ。そうすれば、協力者達や犯人の記憶、つまり『本来の歴史以外の記憶』は全て抹消されるようになっている。引き受けてくれるか?」
 武彦はすぐさま頷いた。
 歴史で嫌なものは確かにあるが、だからといって歴史を曲げようとは思わない。どんな歴史でも、その歴史あっての「今」なのだから。
 しかも、武彦の大好きな赤穂浪士に手出しをするなど、言語道断である。
「必要なものなどは、協力者が集まったら俺に連絡をくれればすぐに用意する。では、頼む」
 そしてザクトが一度去った後、武彦は、急いでデスクに向かい、協力者を募ったのだった。



■歴史を正しに■

 AD2004/12/06/AM11:00


 協力者達───シオン・レ・ハイ、不動・修羅(ふどう・しゅら)、シュライン・エマに一通りの説明を終えると、武彦は其々にまず、一番欠かせない、ザクトから受け取っていた「歴史記憶抹消機」が入った小瓶を渡した。一つの小瓶に予備用なのか、二個ずつ入っている。
「なんだか複雑だわ」
 未だ悩みつつ小瓶を見ながら、シュライン。大石氏も上野介もどちらも好きという彼女は、「中間管理職の悲哀や時代の物価・金銭感覚のズレが其々にあって刃傷事件が起きたという印象だったのだ。
「ともあれ、歴史は正さなければね」
「すまないな」
 武彦が心底申し訳なさそうな風に言うと、シュラインはちょっと苦笑して、壁際に背をつけるようにして立っていたザクトを向いた。既にシオンが、彼に真剣な面持ちで話していた。修羅はその脇で静かに聞いている。
「既に少しでも現在に影響が出てないか、今少しだけ草間さんのパソコンからネットにアクセスして調べてみましたが」
 シオンの言うところによると、少しどころではなく───各国の首脳までがちらほらと自分の記憶とは違う人物になっているという。
「討ち入りというちょっとの事件を曲げただけで……そこまで変わるのか」
 独り言のように呟く、修羅。
「ザクトさん、その犯人の名前は分かるかしら。能力が謎でも、今までの犯行の詳細から、犯行時の傾向や介入方法の好みも見えるかもしれないと思うのだけれど、それも謎? それとも、守秘義務かしら」
「守秘義務なんて言ってられませんよ」
 シュラインの質問に、シオンが小さく口を挟む。ザクトも頷き、
「ある程度の情報は与えられるが、管理職というのはこういう時にでも自分自身に火の粉がかからない限り、規律というものを前に出してくるんでね。守秘義務も残念ながらある。けれど、それ位の事ならば教えられる」
 と言った。
「阻止された場所や時間帯等は分かりますか? 人を操る能力とかでしょうか。私の知っている限りの赤穂浪士の歴史では、討ち入り後46人は切腹することになっていると思うのですが、吉良邸に行く途中に切腹させられたとか、仲間割れが起き仲間同士斬り合ったりとか……討ち入りの情報を流すか直接危害を与えるとか……どちらの方面の犯人なのでしょう」
 シオンも質問する。修羅は質問せず、ただ静かに目を閉じた。何かをしているなとシュラインもシオンも感じたが、ザクトが口を開いたので彼に目を戻す。
 ザクトは其々に応えた。
 ザクトの与えた情報をまとめると。
 犯人は名前をころころ変えているが、共通する名前の一文字として、「神」を使っている。
 変装は得意中の得意で、どんな能力でも未だ見抜けた者はいない。ただ、オリジナル(元の顔)は白髪に赤紫の瞳、という噂もある。
 介入方法の好みがあるとすれば、じわじわと時間をかけて蛇の生殺しの如く犯行するか、一息に一瞬にして人物を斬ったり狂わせたり等、その両極端の犯行が多い。今回の事件に関しては後者のほうだと推測される。
 阻止された場所は吉良邸の門寸前。時間帯は討ち入り直前、つまり元禄15年12月15日(旧暦では12月14日)の午前4時頃。
「無念」
 ザクトの情報が終わるとほぼ同時に、修羅が目をどこか空虚にしたまま口を開いた。シュラインとシオン、それに武彦は勘付いていたらしい。
「我ら47人は確かに吉良邸に行き、正に浅野内匠頭家来口上書を門にかがけようとしていた……それが突然皆動かなくなり、その内に何故か待ち構えられていた吉良の家来に討ち取られてしまった。わしも口惜しいがついてきてくれた同士、更に殿は如何程の無念であるか」
「成る程、大石内蔵助を降霊をして情報を得たのか。だがあまり能力を使うと『奴』に気付かれやすいからな、気をつけてくれ」
「……ああ」
 元に戻った修羅が、ぼうっとした風に応える。シュラインが何か持ち物を持ち、シオンが「みんな分のその時代の服を用意してほしいんですが……」と言うと、既にそれは用意してあったらしく、ザクトが手で空を切るようにすると、床に衣装箱が現れ、様々な装束が入っていた。
 シオンは浪人の格好を。
 修羅は元からの家系ということでもあり、修験者の格好を。
 そしてシュラインは、一応と、荷物の中に浪人の装束を加え旅の女の格好を。
「よし。じゃあ『扉(ゲート)』を開けるぞ」
 三人が頷くのを見ると、武彦は「気をつけてな」と言い、ザクトが興信所の壁の何もない部分に手を当て、一度撫でると大きな扉が出現した。ノブを手に持ち開くと、真っ黒な空間に小さな星々のようなものが見える。
「頼んだぞ」
 ザクトの声を後ろに、シオン、修羅、シュラインと続いてそこへ「入っていく」───そこへ、本当に突然に赤紫の瞳が現れた。
「「「!」」」
 頭に強烈な痺れが走る。ザクトが急いで追おうとしたが、瞳は消え、三人の姿もまた、真っ黒な空間に落ちていった。



■しばし時を忘れ■

 AD1702/12/05/PM20:00

「う……いたた……」
 シオンは起き上がろうとして、恐らく「着地」に失敗して打ったのだろう、痛む腰を抑えた。
「さ、寒い」
 なんとか立ち上がると、夜のようである。森林の少し外れた街道に、彼はいた。丁度向こうから、旅の二人連れの男がやってきた。彼らのほうが先にシオンに気付き、声をかけてくる。
「そこの浪人殿。泥だらけではないか、如何なされた?」
「旅の風体でもなし。ここは赤穂藩ぞ。もしや赤穂の浪人か」
 二人目の言葉に、一人目が表情を厳しくする。何やらマズい雰囲気だと察したシオンだが、どうしてか自分の名前すらも思い出せない。ただ、この景色や自分の格好が自分にとって「違和がある」ことは感じていた。
「わ、私は……」
 そこまで言った時、ぐうっと腹が鳴った。旅の二人もきょとんとし、顔を見合わせる。
 ああお腹がすいた、そういえば私はいつもお腹を減らしていたような……と思い返しているシオンに、一人が語りかけてくる。
「よく見れば足もふら付いておるではないか。何処かで謗りを受け赤穂藩に戻ってきた、足軽か?」
「……夜も遅い。もう少し歩けば私の家がある。刀を取り上げて連れていけば問題なかろう」
 最初に声をかけた一人目のほうがそう言って、もう片方の連れの者に目配せをする。彼がため息を小さくついたのを合図に、シオンはなすすべもなく、二人に刀を取り上げられ、連れて行かれたのだった。




 同時刻。
 シュラインは、ふと旅の足を止めて空を見た。
「こんなに……暗かったかしら?」
「いつの間にか」、夜である。そもそも自分は何故旅をしているのだろう?
 ハッとする。自分の名前すら───思い出せない。
(いつから?)
 地面に荷を降ろし、何か手がかりはと探す。見覚えのあるもの、ないもの───だが、自分の名前を書いたものはどこにもなかった。
 スタッと音がして、シュラインは手を止める。殺気を感じたが、遅かった。首に剣がつきつけられている。
「荷を頂くぞ。こちらも腹が減っているのでな」
 ───野党だ。シュラインは月の逆光になっているその男を睨みつけ、他にも2〜3人いる事を知った。
「ほうこれは」
 顔を上げたシュラインを見て、男が心持ち顎を上げる。
「遊郭にいい値をつけられそうだな」
 殺すな、と仲間に言い置いて男が近寄って来る。遊郭? 冗談じゃない。シュラインは身構えた。




 それより少し時を遡り。
 もうすぐ夜というこの時に、夕飯に手もつけず、小さな寺の住職は目の前の修験者───修羅を見つめていた。
 倒れていたところを弟子達が助け連れて来たのは一刻半程前の事。
 間もなくして目覚めた彼は、「記憶がない」と言った。
 自分の名前すら忘れてしまっている彼を暫くは不審に思っていたのだが、しっかりと人の目を見つめてくるこの修験者には何の企みもないようだった。
「……暫くは、ここに身を置くが宜しかろう」
 本当に長い沈黙を破り、ようやっと住職はそう口を開き、何もなかったかのように夕食に手をつけ始める。修羅が少し唖然としているのを見て、「どうした、腹が減っているのではないのか」と彼の目の前にも同じく置かれた料理を示す。
「この寺は赤穂藩内にある。暫く前までは浪人から弟子にという者も多かったが───そろそろ落ち着いてきたようじゃ」
 自分の「知っている」料理よりかなり質素な気がする、と思いながらも夕食を食べていた修羅は、ふとその住職の言葉に顔を上げた。
「赤穂───藩?」
「左様。浅野内匠頭殿の一件で随分と様変わりしてしまったが───あ、ほれ。芋が箸から落ちそうじゃぞ」
「あ、ああ」
 赤穂。浪人。浅野内匠頭───。
 何だろう。何かが引っかかる。修羅は思いつつ、箸から零れ落ちそうになっていた芋を口へと運んだ。




■合流、そして■

 家というよりは小屋に近い。連れてこられたシオンは、旅の二人が着替え終わるのを、座って待っていた。やがて一人が戻ってきて、シオンの向かいに座った。もう一人は、夕餉の支度をしているようである。いい匂いがしてきて、またまたシオンの腹が鳴った。
 少し苦笑するように向かいに座った旅の者が、シオンに声をかけた。
「安心召されよ、何も取って食おうという訳ではない。どうにもそなたの動作や顔つきからして、悪人という訳でも何か企んでいる訳でもなさそうだ。まずは腹を一杯にしてからよく寝るがよかろう。さすれば安堵した拍子に何か思い出せるかもしれぬ」
 一泊置き、蝋燭の明かりでまだ結構若い年の者と分かるその青年は、言った。
「こちらから名乗り置こう。私の名は寺坂吉右衛門(てらさかきちえもん)と申す」
「おい、良いのか」
 台所から、もう一人が顔を出す。こちらもそれ程年は寺坂と変わらないようだった。寺坂は微笑む。どこか人のよさそうな顔をしていた。
「良い、却って疑念を持たれるよりは腹を割って名乗ったほうが良い」
 もう一人のほうも杓子を持ったまま迷っていたようだったが、意を決したようにシオンのほうを向き、口を開いた。
「私は瀬尾孫左衛門(せのおまござえもん)。しかしそなたの刀、かなりの年月をそなたと共にしてきたのだな」
「えっ……そ、そうでしょうか」
 シオンの心許ない返答に、瀬尾と寺坂は一瞬顔を見合わせ、瀬尾が寺坂にシオンが持っていた刀を持ってきて渡した。
「……確かに……相当のてだれと見える。───ん」
 寺坂が束の辺りをじっと見つめる。
「この紋、確かに」
 そして瀬尾を見る。瀬尾はひとつ頷き、シオンを見た。
「左様。そなたの刀には吉田忠左衛門(よしだちゅうざえもん)殿の家紋が入っている」
「そんな、何かの間違いではないのか。私の義父の関係者だというのか」
 寺坂は驚きに目を見開いている。
「丸の内に花菱の紋は間違いなかろう。それより、しばらくぶりにゆっくり出来るのだ。少々遅いが夕餉にして、寝よう」
 まだ刀の紋章に見入っている寺坂をよそに、瀬尾が鍋を持ってくる。火を入れてあった炉にかけ、杓子でかき混ぜると椀に盛り付けた。
「え、わ、私もいいのですか」
 自分の前にも置かれた椀に、半ば感激する、シオン。寺坂と瀬尾はまた顔を見合わせて、笑った。
「そう捨てられた子犬のような顔をするものではない、食え食え」
 瀬尾がシオンの肩をぽんと叩き、箸を持ち一度礼をして豪快に食べ始める。寺坂もそれに続き、シオンも礼をしてから、
「いただきますっ!」
 と、食べ始めたのだった。




「お前、一体客を取る気があるのかい!? これで何人お客をのしちまったと思ってんだい」
 遊郭の女将の怒鳴り声を聞きながら、シュラインは平然としている。口を利く気にもなれない。
 全く、力ずくで連れてこられ、売り飛ばされてしまったことにも腹を立てているのに、客など取れるものかと思う。せっかく顔がいいから一番いい着物を着せてやっているのにだの、いい飯を食わせてやってるのにだのいつもの小言を聞きながら、シュラインはまた、「自分探し」のために神経を集中していた。
(何か───何かが引っかかるのよね……)
 明らかに、何を見ても何をしても「違和」を感じる。
 シュラインが「いつものように」貝のように口を閉ざしてしまった為、女将は諦めて部屋を出る。一度こうなったシュラインに何を言っても無駄だというのが、ここ数日で分かっていたからだ。それでも彼女を置いているのは、彼女の顔をほんの少し見せてやっただけで何人も客が引っ張れるからだった。
 一人になったのをいいことに、シュラインはまた、幸い自分に残された手荷物───金にもならない腹も膨れないものだと分かった為取られずに済んだのだが───を探り始める。
「やっぱりこれが一番引っかかるわ」
 シュラインは、何冊かの本を見つめる。読めることは読めるのだが、読んでも何も思い出せない。
 それは、彼女が、「正史に正されたか確認する為に持参した、正史と異なった文献」の何冊かだったのだが。
 何度か見て「ここの」化粧の仕方も理解し、自分でも出来るようになったが、明らかに「自分が手馴れていた化粧」とも違うし、化粧品も違う、と思う。
 とりあえずまだ、ここで「お客」をのしながら様子をみよう、とシュラインは布団に潜り込んだ。




 この寺に来てから、もう何日が経つだろう。
 自分は修験者なのだから、一所に身を置いても仕方が無いとも思う。
「余程その場所が気に入ったと見える」
 住職が、修羅がいつもいる、不動明王像の前の座布団、その背後に来た。
「何故か、気持ちが落ち着きます」
 修羅が言うと、住職はじっと彼を見詰めた。
「何か迷いが晴れぬようじゃの」
「……考えたんですが」
 修羅は思い切ったように、言った。
「俺はここにいるべき人間ではないと思います。修験者らしく、暫く修行の旅に出ようかと」
 住職は暫く考えていた。
 そして、弟子を呼んで何か言いつけると、また戻って来て修羅の前に正座した。
「旅に出て、如何する」
「分かりません。自分が誰なのかを探しに。そのための旅としか……分かりません」
「……ふむ」
 やがて弟子が戻ってきて、香りの良い草で包んだ何かを持ってきて、修羅に差し出した。
「……これは……?」
「魔除けの団子じゃ。最近『詩織・神雪(しおり・かみゆき)』という名乗る妙な魔物が出るそうじゃからの、なんでも赤紫の瞳で人を惑わすらしい。お気をつけなされ」
「……魔物?」
 怪訝そうな修羅を住職は笑って立ち上がらせ、背中を叩いた。
「今日は12月の12日。語呂が良いといえば良い日じゃ。すぐに出立なさるか」
「はい。決心が変わらないうちに」
 決心も何も、ここにいても仕方がないと思うことには変わりはない。何故自分がそんなことを言うのか、修羅にも分からなかった。
 そして自分が持っていた荷物と、団子とを持ち、礼を言って修羅は寺を後にした。
(何故だろう、何か引っかかる)
 魔除けの団子を包みの上から撫で、山道を行きながら、修羅は住職の言葉を思い返す。
 神───赤紫の瞳───
 ハッとした。
「赤穂藩、赤穂浪士。そうだ俺は」
 一番に「思い出した」のは、修羅だった。
(俺は歴史を正しに来て、途中であの赤紫の瞳に『何か』されたんだ。いや、だから記憶を失くしていたんだ。だから皆とはぐれて)
 知らず、足が逸る。
 他の二人は無事だろうか。まさか死んではいまいか。念の為、能力で「降霊」しようとする。幸い、シュラインもシオンも「降りて」は来なかった。これは、死んではいないということ。
 だが、どこにいるか分からないでどうすればいいのだろう。
 そう思っていると、夕暮れの街道が目の端に見えた。山より降りたそこを、三人の浪人がどこかへ向かっている。その一人、草鞋が慣れないという風に歩いていたのは間違いなく、シオンだった。
 修羅は気付かれぬよう、街道と並行して山道を行った。




 何日か二人と過ごしているうち、寺坂と瀬尾が其々に時々、どこかへ出かけることが多いことをシオンは知った。その間彼は、家にある材料だけで出来るだけ節約をした、しかも美味しい料理をしたり洗濯をしたりしていて、その人柄もあり、二人に大分気に入られたようだった。
 今日は、二人と共に「いい所」へ連れて行ってもらっているところである。
 道を行くごとに、段々人が多くなってきた。賑やかだ───祭りだろうか?
「ここが私達の行きつけの場所じゃ」
 寺坂が指し示したところは、遊女達が美しく着飾っている場所だった。
「こ、ここここここは?」
 焦ったようなシオンをよそに、「ほれ入るぞ」と手を引っ張る瀬尾。
「私と孫左衛門は、こちらの部屋に入る。そなたはそちらの部屋でごゆるりと」
 そう言って、寺坂は瀬尾と、さっさと一つの部屋に入っていってしまった。慌てるシオンを女将が「さあさあどうぞどうぞ、少々暴れ馬ですが上玉の娘ですよ」と背を押す。
 背中の後ろで襖が閉まったと思った途端、殺気を感じてシオンは反射的に避けた。
 花瓶を持った美女が、シオンの頭にそれをぶつけようとしてしくじったと分かり、小さく舌打ちして振り向いた。
 同時に、シオンと美女───シュラインは、あれっという表情をする。
「「あなた、どこかで」」
 言葉がかぶる。
 一拍置いて、これまた同時に指差し、「あーっ!!」と言っていた。
「シュラインさん!」
「シオンさん!」
 今までどうしていただの、二人はそれから経緯を話した。
「夜に捕まったから、ここでは夜月(やづき)と呼ばれていたんですか……私は名前はないままでしたが、二人とも良くしてくれています」
「というか、修羅さんとも合流しないと。確か今日は12月12日って聞いてるから、女将さんから」
「えっ、じゃあ討ち入りまであと3日ですか」
 声を潜めて目を見開くシオン。だが、シュラインはかぶりを振る。
「ここでの『12日』は旧暦の筈だから、正確には14日に討ち入りよ。旧暦では1702年の12月14日の明け方だった筈」
「じゃ、後2日……も、ないですね。明け方なら」
 シオンが表情を引き締めた時。
 襖の向こうから女将の声がした。
「すまないねえ、お客さん。なんでもお客さんに急用があるって修験者さんが来ていてね」
 静かになっているから、ここに来て初めて夜月───シュラインがまともに「お客を取った」と喜んでいたらしい女将はそう告げ、シュラインとシオンは顔を見合わせた。
「構いません、どうぞ入れて差し上げて下さい」
 シオンが言うと、シュラインが急いで髪を乱す。丁度いいタイミングで、修験者───修羅と女将が襖を開けて顔を出した。
 女将はシュラインの髪を見て、満足そうに頷き、シオンに「本当に申し訳ありませんねえ」ともう一度言った。どうやら修験者、修羅からかなり高価なものを貰ったらしい。修羅が目をやると、「じゃ、ごゆっくり」と下がっていった。
 襖が閉まると、修羅は急いでシオンとシュラインの前に座った。
「やっと合流出来ました」
「ええ、私達も本当についさっき記憶が戻ったのよ」
「討ち入りは明後日の明け方です」
 修羅は頷き、住職から聞いた「詩織・神雪」という「魔物」について話した。
「それ、絶対にザクトさんから聞いていた犯人ね」
 シュラインが、正史をめくりながら言う。まだ、歴史は「間違った」ままだ。
「私達、その犯人に邪魔をされて記憶喪失にされ、バラバラの場所に落とされたんですね。幸い、同じ赤穂藩だったのは嬉しいですが」
 と、修羅から団子を貰いながら、シオン。
「シオンさんが寺坂と瀬尾に接触していたのも幸いでしたね。でなければ遊郭にも来れなかったし、シュラインさんにも会えなかった」
 それから三人は、これからのことを打ち合わせし、まず女将にシュラインを解放してもらうよう交渉した。女将はかなり渋っていたが、これまで寺にいて手伝いをしていた給料として結構小金を稼いでいた修羅の金と、シオンが持っていたハンカチを渡すと、喜んで手放した。特にシオンのハンカチが功を奏したらしい。この時代では見たことも無い模様だったのだろう。
「シオンさん、あのハンカチって……手作り?」
「ええ、何故分かりました?」
 物陰で、返された着物や浪人服のどちらかを見つめ、今はまだ着物がいいだろうと判断したシュラインが着替えながら言うと、シオンが尋ねてきたので、ちょっと躊躇いながら応えた。
「兎の刺繍がしてあったから───」
「来ましたよ」
 修羅が言うと、シオンが遊郭の前に立った。どこに行ったのかとシオンを探していた寺坂と瀬尾が、彼を見つけ、顔を綻ばせて歩み寄ってくる。
「探したぞ」
「女将に聞くと、生き別れていた娘に偶然会ったとか」
 寺坂の言葉を合図にしたように、後ろからシュラインが心持ち俯きながらシオンの少し後ろに立つ。
「ええ、そういうわけなので……私もその拍子で少しずつ記憶が戻りそうなのです。今までお世話になりましたが、その……」
 やはり、言いにくい。シオンが口篭っていると、寺坂と瀬尾は顔を見合わせ、寺坂が微笑んだ。
「実は、私と孫左衛門は大事を控えていた。そなたの刀の紋について義父に何度か話もして、今日その大事にそなたも誘おうとしていたのだ。だが、そなたにはどうも無縁の世界のように思えて仕方が無かった。丁度良い、娘御を連れて郷へ帰るが宜しかろう」
「えっ……その大事って」
 シオンが言いかけると、寺坂がゆっくりかぶりを振る。気にするなとでもいうふうに。シュラインがシオンに目配せし、シオンは表情を引き締めて、言った。
「まだ、どんな字かは思い出せませんが……私の名前は、シオン。シオンです」
 ほう、と寺坂と瀬尾は同時に声と眉を上げた。寺坂が懐から何か細い布を出し、
「これに」
 と言った。シュラインが、持っていたマジックを取り出して渡すと、シオンはそこに丁寧に、平仮名で「しおん」と書いた。
 それを寺坂に返すと、彼は暫くその字を見つめていたが、また懐に戻し、右手を差し出してきた。
「では、しおん殿。私と瀬尾はこれにて。娘御と、どうか平穏無事な暮らしを」
 握り返し、シオンが涙ぐむ。
「長い間、父を有り難うございました」
 シュラインが頭を下げると、瀬尾が「いやいや」と小さくかぶりを振る。
 そして彼女は、二人に、修羅が寺で作っていたお守りを渡した。
「これは弟の作った魔除けのお守り。宜しければ肌身離さずおいて下さりませ」
「これは有難い」
 瀬尾が目を輝かせ、寺坂に一つ渡した。
「いつか、また」
 寺坂と瀬尾が同時に礼をしてシオンとシュラインを見送る。シュラインは小さく礼をし、一足早く、修羅が隠れている小道へ入る。シオンは迷うようにしていたが、心を鬼にして、礼をした。
「いつか───また」
 同じようにそう言い、たまらなくなって彼もまた小道へ入ったのだった。
 それからシオン、シュライン、修羅の三人は、一つの安い長屋を借り、芸を見せたり占い師などをして稼いで長屋の料金を支払い、過ごした。
「とにかく、あの赤紫の瞳は見ないようにしないといけないわね」
「どうも瞳から能力を発するタイプのようですからね」
「……私達が先にまたやられてしまったら……元も子もありませんからね」
 シュラインと修羅、シオンはそんな打ち合わせを長屋でしつつ、時が過ぎた。勿論、吉良邸のほうに討ち入りの情報が入ってはいないか等、修羅の能力等で調べていたが、そういうことはなさそうだ。
 犯人は、「なんでも見える」というわけではないらしい。きっと別のやり方で───ザクトの言っていた「一息に人物を斬ったり狂わせたり」のほうにするに違いない、と踏んだ。それか、自分達三人を先に探していて、「片付ける」恐れもある。あるいは、赤穂浪士達と同時に。
 情報漏れのないよう、又は他に不審な噂が立っていないか等、現状を観察しつつ、様々な推測を立て其々の対策を立て───
               その日が、訪れた。




■星霜の如く■

 AD1702/12/15/AM3:00

 シオンとシュライン、修羅は其々の格好で少し離れた位置にいた。
 吉良邸が見える、すぐ飛び出して行ける程度の小道である。
 雪が降っていた。
 シュラインは動きやすいよう、持ってきていた浪人服に着替えてはいたが、刀までは持っていない。何かあってもいいよう、心持シオンより修羅寄りにいた。
 少しの時が経ち、「気配」がした。三人はこっそりと確認する───間違いない、47士が火消し衣装に、帯には鎖を巻いている。額には鉢巻。
「っ……」
 その中に寺坂の姿も見つけ、思わずシオンが声を出しそうになり、慌てて口を抑えた。
 寺坂だけは切腹せず生き残るとは分かってはいても、やはり泣けてしまう。
 浅野内匠頭家来口上書をかかげ、いざ討ち入りの合図を大石内蔵助がしようとした、まさにその時である。
 スタッと殆ど音もなく、白髪に赤紫の瞳の男が47士の前に現れた。
「何奴」
 内蔵助が言った時にはシオンとシュライン、修羅は同時に目で合図し、駆け出していた。
「!」
 詩織・神雪が虚を突かれたように目を見開くのが分かる。目をそらしながら、シュラインが、購入していた小刀を彼に突き出す。修羅は目を閉じ降霊に入り、シオンは47士を背に、こちらも目をそらしながら刀を抜いた。
「赤穂の浪人さん……殿!」
 シオンが声を震わせながら叫ぶ。
「この魔物の相手は私達に任せてください、貴方達は『予定通り』に!」
「この魔物の目を見ちゃだめ!」
 次いで、シュライン。
 47士は戸惑ったようにしていたが、内蔵助が寺坂の「しおん殿」という呟きを耳にし、討ち入りの号令をかけた。
「ご恩は忘れぬ!」
 わああっという声にかき消されそうになった寺坂の声を聞き、シオンはぎゅっと目をますます固くつむり、修羅が降霊し終わるのを待った。
 シュラインは麻酔の用意もしていたのだが、やはり目を見ないで麻酔をするというのはかなり難しい。小刀とシオンの刀で修羅と自分達の身を護るので精一杯だった。
「ここまでやりにくい相手だなんて」
 そうシュラインが言った時。修羅が、虚ろな瞳で口を開いた。
「『時の流れは自然の理にて三千世界の法に因る処。無闇に改めるをかなわず』」
 不動明王を降霊したのだ。修羅の手に破邪の利剣が現れる。
「き、貴様達」
 神雪が甲高い声を出したが、それを断ち切るように修羅に調伏された。
 それでもまだ這いずっているところを、空間にひずみが出来、何本かの手が掴み上げ、次にザクトの声がそこからした。
「よくやってくれた、犯人はたった今警察部の者達に逮捕された。あと10秒で空間が閉じる。早く、入れ」
 修羅が小瓶から歴史記憶抹消機を一粒取り出して放り投げ、まず空間に入る。シュラインは持ってきていた正史の文献を見て、確かに歴史が正されたことを確認し、同じように小瓶から一粒取り出し、積もった雪に埋める。最後に名残惜しそうにしていたシオンが、小瓶から二人と同じように一粒取り出し、吉良邸に向けて投げた。松の木に引っかかり、三粒が同時に光を放った時には、もう空間は三人を保護するように閉じていた。




 AD2004/12/06/AM11:01

 三人は、どさどさと重なり合うように草間興信所のソファの上に落ちた。
「お、お前ら……無事だったのかって、馬鹿に早いな」
 武彦が唖然としたように言ったので、シュラインが時計を見ると、「出発」してからまだ1分しか経っていない。ザクトが静かに、壁の脇に立って眼鏡を人差し指で押し上げた。
「歴史を正すのに必要な『実際の時間』は通常1分だからな」
「……うまくいった、か……」
 修羅が、シオンの上からどきながら、一息つく。
 シオンはソファに座りなおし、零が「皆さん、お疲れ様でした」と持ってきたお茶を力なく受け取った。
 それからシュラインと修羅は其々に今までの経緯を武彦やザクト、零に話し、まずはうまくいってよかった、ということになった。
 ただおとなしく、しおれていたシオンだが、そんな彼に微笑みかけて、ザクトが言った。
「これは歴史抹消機によって消されてしまったことではあるが───シオン、君の書いた『しおん』の字が裏側にある鉢巻を、寺坂吉右衛門は額に巻いて討ち入りをしたんだ」
 彼は情に厚かったようだな、と付け加えると、シオンは少しだけ、泣いた。
「あ、団子……」
 修羅がぽつりと呟き、懐から草の葉で包んだ残り少ない団子に気付いて取り出す。
「え、向こうからのものってこっちに持ってきちゃダメなんじゃないの?」
「差し障りのないものだから残っているんだろう。そうでなければ、空間を通る時に自動的に消滅させられている」
 シュラインの言葉に、ザクトが答える。そういえば、とシュラインも探ると、「向こう」で購入した小刀があった。何の銘も入っていないものだから、なのだろう。
 それからザクトは元の管理に戻り、三人は団子を食べながら、武彦や零と語り合った。
「もう本当にね武彦さん、遊郭なんて臭くてたまらないのよ。化粧の匂いでいっぱいで」
「気のせいかこの団子、現在のものより美味しいな……寺のご飯も質素だけれど美味しかったですよ」
「昔の家って、寒いけれど、どこかあったかかったです」
 47士は今頃、空で語り合っているだろうか。
 星の霜のように散っていった忠義な潔い彼らのことを、また、この年も。
 テレビでは、放送するのだった。

 




《完》



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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
3356/シオン・レ・ハイ (しおん・れ・はい)/男性/42歳/びんぼーにん(食住)+α
2592/不動・修羅 (ふどう・しゅら)/男性/17歳/神聖都学園高等部2年生 降霊師
0086/シュライン・エマ (しゅらいん・えま)/女性/26歳/翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員




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■         ライター通信          ■
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こんにちは、東瑠真黒逢(とうりゅう まくあ)改め東圭真喜愛(とうこ まきと)です。
今回、ライターとしてこの物語を書かせていただきました。今まで約一年ほど、身体の不調や父の死去等で仕事を休ませて頂いていたのですが、これからは、身体と相談しながら、確実に、そしていいものを作っていくよう心がけていこうと思っています。覚えていて下さった方々からは、暖かいお迎えのお言葉、本当に嬉しく思いますv

さて今回ですが、全くというわけではないのですが、殆ど手を出したことのないものに手を出してしまい、いざ書き始めてみるとネタが浮かぶより数百倍も難しいことに気付き、当時の本や資料を見ながら自分なりに仕上げ、わたしとしては満足のいくものになりました。時代物って本当に、本気で書こうとすると難しいですね……時代物を手がけている作家さんやライターさん達は本当に尊敬の的です。一度でいいからジェームズ三木さんの脚本を読んでみたい、というのが今回の一番の目標になったかもしれません。皆さんのプレイングの半分以上は取り入れることが出来たとは思うのですが、残りまで全部入れられなかったのは、やはりまだ修行不足だなと思います。精進します;しかし、前以上にわたしのノベルの中では一番長い作品となりました。読み辛かったりしましたらすみません; 色々な意味で、今回は本当に「初体験」なノベルになりました。
また、今回は御三方とも統一ノベルとさせて頂きました。

■シオン・レ・ハイ様:連続のご参加、有難うございますv 一緒に47士に紛れというのがわたしも書きたかったのですが、中々うまく書くことが出来なかったです、すみません; 瀬尾孫左衛門は討ち入り前夜に「逃亡」した事になっているので実質シオンさんに気付いたのは寺坂吉右衛門だけでした。刀の紋については、ザクトの配慮と思ってくださいませ。シオンさんには、「思い出」という形で彼らのことを残させて頂きましたが、如何でしたでしょうか。
■不動・修羅様:二度目のご参加、有難うございますv 修験者ということで、お寺で過ごしていただくことになったのですが、もう少し何かそのお寺で過ごすことを書いたり、「魔物=犯人」と接触する場面も書いたりしたかったというのが今回の心残りです。不動明王を降霊して調伏、ということでしたので、少し、記憶喪失の間、不動明王像のところにいて頂きました。修羅さんには、「お団子とその包みの草の葉」という形で彼らのことを残させて頂きましたが、如何でしたでしょうか。
■シュライン・エマ様:連続のご参加、有難うございますv 吉良氏のこともお好きということで、かなり悩んだのですが、吉良側に「拾われる」ネタをノベルの進行をスムーズにするため、断腸の思いで削除しました。他、地形を頭に入れ、等は長屋での「打ち合わせ」で行ったと思ってください。遊郭が赤穂藩内にあったのか否かという突っ込みはわたしも詳しく調べていませんが、そんなに本場の京まで内蔵助達が出向いて遊ぶフリをしていたとは考えられず、また、わたしの手元にある本にもしょっちゅう通っていたような事が書いてありましたので、合流するならば遊郭かなと、こういう形をとらせて頂きました。シュラインさんには、「小刀(柄の部分は藍色模様)」という形で彼らのことを残させて頂きましたが、如何でしたでしょうか。

「夢」と「命」、そして「愛情」はわたしの全ての作品のテーマと言っても過言ではありません。それを今回も入れ込むことが出来て、本当にライター冥利に尽きます。本当にありがとうございます。星霜、というのはお能にも出てくるのですが、今回は、「星が降らせる霜のように」という意味でとっていただければな、と思います。なんというか、赤穂浪士とか義士達には潔く美しいイメージがありますので……。

なにはともあれ、少しでも楽しんでいただけたなら幸いです。
これからも魂を込めて頑張って書いていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い致します<(_ _)>

それでは☆
2004/12/08 Makito Touko