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<東京怪談ウェブゲーム アトラス編集部>


■深紅のカノン■

 「三下くん!」
 鋭い声が、騒々しい編集部に響き渡る。
 どんなにざわついていようが、どんなに騒然としていようが、その声はまるで神の啓示の様に、編集部には届くのだ。
 きりりとした涼やかな目元は、まるで絶対零度である南極の氷の中にいるかの様だと彼は思う。形の良い足を組み、デスクに肘をついて顔を乗せ、編集部を一望する場所から睥睨している。
 「聞こえないの! 三下くん!」
 再度の思し召しだ。
 「は、はいぃぃぃ!!」
 まさにすっ飛んで、呼ばれた彼──三下忠雄(みのした ただお)は、彼の女王様、もとい、彼の上司である碇麗香(いかり れいか)の元へと馳せ参じた。
 「遅い! 呼ばれたら、トイレに入って様と、すぐ私の元にいらっしゃい!」
 「すすすすす済みませんん……」
 無茶苦茶なことを言っているのだが、いかんせん三下には反論出来ない。哀れっぽくそう言い、何で御座いましょうかと、蠅の様に両手をすりすりして麗香の次の言葉を待った。
 「取材、行ってきて」
 「へ?」
 「へじゃない! 取材よ、しゅ・ざ・い。解った?!」
 「あ、あの何の取材でしょう…」
 ばさりと三下の前に、紙束投げられた。
 恐る恐る、三下はそれを読む。
 みるみる内に、三下の顔が青ざめて行った。
 「ここここここここ」
 「何? 鶏の真似? 似てないわよ」
 「ちちちちち、違います! 何ですかこれわぁぁぁぁ」
 語尾に号泣マークが付きそうな勢いで、三下は叫び出す。
 「見ての通りよ。新宿の片隅に、キューケツキが現れたって話。それの取材に行ってちょうだい。新宿って特定されてるだけでも、有り難いと思いなさいよ」
 無情に言い切る麗香に縋っても無駄だとは、百も承知だ。なのにお約束の様に、三下は麗香を拝む様にして言い募る。
 「そそそそんなん、有り難くもなんともないですぅぅぅ!! ぼ、僕、まだ死にたくありませーーーん」
 「じゃあ、クビ」
 あっさりさっぱりと言い切る麗香に、卒倒しそうになる三下は、しかしながらクビと言う一言には弱かった。
 「えええええええっ?! ………行ってきます」
 「勿論、助っ人は頼んで良いわよ」
 麗香の本音は、『どーせあんたは役に立たないから、誰かちゃんとしたのを連れて行きなさい』だ。
 溜息を深く吐いた三下は、そう言えば…と思い当たり、恐れ多くも麗香女王様に具申した。
 「あ、あの編集長…」
 「何? まだ何かあるの?」
 その視線にすくみ上がるのを、三下は踏ん張った。ここで言っておかなければ、麗香が恥をかくかも知れないからだ。
 「そ、そのです、ね。このキューケツキと言う字、鬼じゃないですか? 木ではなくて…」
 麗香の眉毛が跳ね上がる。
 「私が書いたものに、間違いなどないわよ! それはね、血を吸う木だから、吸血木! 解った?! さっさと準備なさい!!」
 「は、はいっっ!!」
 飛び上がる様にして、三下は手伝ってくれそうな人へと、おいおい泣きながらも電話した。



 エレベータに乗りつつ、彼はふと思う。
 「喜んでもらえるでしょうか?」
 不安半分期待半分。
 彼は胸に抱きしめた、ピンク色の紙袋をそっと見た。
 軽く結わえた艶やかな黒髪が、その動きで微かに揺れる。青い瞳を暖かな色で染め上げる彼の名は、シオン・レ・ハイであった。
 その中には彼の最高傑作である、手袋が入っている。
 彼の姿を見るものが見れば、上から下まで最高級の衣服であることが解るだろう。センスの良い焦げ茶のソフトスーツに、大きく開いた襟を持つシルクのシャツ。それらボタン一つ一つにも金がかかっている。ただ不思議なのは、左手だけに黒革の手袋を身につけていることだ。
 けれど彼は貧乏なのだ。
 どのくらい貧乏なのかと言うと、今日明日どころか、実は一週間前からのご飯代にも困っていた程の貧乏だった。
 何故そんなに貧乏なのかと言えば、答えは簡単なことだった。
 シオンの稼いだお金は、彼の愛情を一心に受けているウサちゃんの生活の為と、彼自身の衣服につぎ込まれているからだ。
 誰もが思うことなのだが、衣服につぎ込むくらいなら、自分の生活費に回せと言いたくなる。だが、彼はそれをしない。
 今日もまた、彼はお腹を空かせて月刊アトラス編集部へとむかっていた。
 勿論ながらのこと、訪問理由はそれが全てではないが。
 彼は暇つぶしに編んでいた手袋が、思いの外良い出来であったので、アトラスの女王陛下にプレゼントしようと思ったのだ。
 彼女に気に入られていれば、きっとご飯を食いっぱぐれない。そう本能的に察していたとも言う。
 目的階へと到着し、そして暫く歩いて目的のアトラス編集部の扉をノックするが、恐らく返事がないだろうことは、今までのことで充分予想はついたので、そのまま開けて入って行った。夕刻であると言うのに、やはり編集部は騒然としており、あちこち行き交う部員が見える。
 その中、シオンは目当ての人間を見つけた。
 満面の笑みを抱え、小走りに走り寄る。その気配に気が付いたのか、彼女、碇麗香は伏せていた顔を上げる。
 「あら、シオンさんじゃない」
 「はいっ! こんばんわです!」
 寒空に薄着であった所為か、彼の頬はほんのり赤い。
 シオンが胸に抱えている紙袋を渡そうとした時、彼が今先ほど入って来た扉が開く。
 「…丁度良かったわ」
 にんまりと笑う麗香は、その扉から入ってきた人物を見ていた。
 「さんしたくん! 良かったわねぇ。手伝ってくれる人が、また増えたわよ」
 「へ?」
 何のことだろうと思うシオンだが、取り敢えず麗香と三下の顔を代わる代わる見る。
 「あ、有り難う御座いますぅぅーーー!! シオンさんも、キューケツキの取材に付き合って下さるんですねっ!!」
 満面の笑顔で号泣しつつ、三下がシオンにしがみつこうとするが、そのご面相に恐れをなした彼は、麗香の影に隠れた。当然麗香にぶつかる筈だが、流石は女王様、反射神経は頗る良く、長いおみ足で三下の顔面を踏みにじっていた。
 「あ、あの、キューケツキの取材…ですか?」
 シオンの問いかけに、顔面を抑えつつもがばっと起きあがるところは、三下にしてはなかなかに天晴れだ。
 「はい! 新宿に生えたキューケツキの取材なんですぅ!」
 生える…と言う言葉に、シオンの眉が八の字になる。
 「……毛が九本しかない方の取材なんですね…」
 このシオンの言葉には、流石の麗香も固まった。更に追い打ちをかける様に、シオンは続ける。
 「可愛そうな方ですねぇ…。その方のところに取材に行くのなら、育毛剤を届けて上げていかがでしょう。あ、でも、三下さんの取材と言うからには、あまり良い人ではないのでしょうか? …そうなら、可愛そうですけど、脱毛剤も必要ですよねぇ…」
 「そ、そうですよねっ! さっきも行ってきましたけど、もう一度行きがけに、ドラッグストアに寄りましょう!」
 本来であれば、誤解を糺すべき三下だが、『逃すまじ』と思っているいるのだろう。シオンの言葉に、無意味に賛成している。
 「はい! あ、それでですね。取材には、ちゃんと休憩は付いているのでしょうか? おやつもあると、嬉しいのですが…」
 漸く立ち直った麗香は、にっこりと聖母の微笑みを浮かべて言う。
 「シオンさん。おやつは好きなだけ持って行ってくれても構わないわよ。バナナでも桃でもイチゴでも。三下くんに言いつけてちょうだい。勿論、三下くんの自腹で」
 「そそそんなぁーー。編集長ーーー」
 にっこりと微笑みつつ言う麗香に、当然の如く三下が泣きついた。育毛剤と脱毛剤、それにおやつやその他諸々の経費と言ったものをさっ引くと、冗談ではなく三下の自腹になってしまう。しかも、麗香の上げたおやつは果物。冬場の果物はとても高いのだ。
 けれど三下に泣きつかれたところで、麗香には屁でもない。
 「三下くんは、さんしたでしょ? その程度しか、どーせ役に立たないんだから、おやつくらい買ってきなさい」
 滝の様に涙を流す三下に、シオンはよしよしと慰めた。
 「三下さん、私の分のおやつを分けてあげますから、泣かないで下さい」
 「シオンさーーーーん、有り難う御座いますぅぅーー。優しいですねぇ、シオンさんは」
 何処か何かが違うのだが、ともかくシオンも『キューケツキの取材』への参加を決意したのだった。



 「後、セレスティさんだけかしら?」
 ぐるりと見回し、そう言ったのはシュライン・エマだ。
 現在、喫茶店『ターリブ』に集合しているのは、綾和泉匡乃、雨柳凪砂、シオン・レ・ハイ、シュライン・エマとオマケの三下だ。
 最初にシュラインが到着していた様だ。アトラス編集部を出て下に降りてみると、そこには凪砂がクーラーボックスを肩にして待っていた。それから三人で、待ち合わせの場所へと向かったのだ。
 匡乃を除き、それぞれが手に荷物を持っている。
 凪砂はクーラーボックス、シオンはドラッグストアの紙袋、シュラインは無印の紙袋、三下は八百屋の紙袋である。
 シオンが元々持ってきていたピンクの紙袋は、アトラス編集部にて預かって貰っていた。
 それぞれ、自分が必要だろうと思ったもの(三下を除く)が、そこには入っていた。
 「セ、セレスティさんは、あの、鬼王神社ってところに行っているらしいです。もう少し後に来ると仰ってました…」
 「鬼王神社?」
 三下のその言葉に、匡乃がそう反応した。
 「匡乃さん、知ってるの?」
 「ええ、今回の噂の中心地みたいですね」
 「あ、じゃああの神社とか言うのは…」
 シュラインもまた、同じく心当たりがあった様だ。
 「シュラインさんも、御存知なんですか?」
 匡乃の言葉に、彼女もまた頷いた。
 「あの、鬼王神社って…?」
 「あ、ごめんなさいね、凪砂さん。えーとね、鬼王神社と言うのは、事件が起こっている場所みたいなの。今回の取材、血を吸う木についてよね?」
 「はい。調べたところ、それらしい木は見付かったんですけれど…」
 「もしかして、樹木子?」
 シュラインの問いに、凪砂がこくりと頷く。
 シオンは、漸く取材相手の名前を知った。三下は今回のことに関して、あまり教えてくれなかったのだ。
 「今回の方のお名前は、樹木子さんと仰るんですね」
 「「「え?」」」
 言った本人と、三下以外の三人が、『何だ、それ』と言う眼で見ている。
 何故そんな目で見られるのか、不思議に思ったシオンは三下を見るが、彼は何故か慌てていた。
 「ええ、そうみたいですぅー。流石は皆さんです! もうお名前まで、御存知なんですねっ!!」
 「……」
 思いっ切り白い眼で見る面々に、三下の顔が徐々に下がっていく。
 益々不思議だ。
 「取り敢えず、そこに行った方が良いと思うの」
 「どうしてですか?」
 匡乃が片眉を上げて、そう尋ねた。
 「私が見たところ、……ゴーストネットOFFのBBSに書いてあったんだけど、どうやら一人でいる時に、狙われてるみたいなのよ」
 「それじゃ…」
 凪砂の顔が引き締まった。
 「そう。セレスティさんに限って、危ないことはないと思うんだけど、でもね…」
 ここにいる誰もが、セレスティが何者であるかを知っている。けれどそれとこれとは話が別だ。
 「それに、あの近辺は少々場所も悪いですからね。急ぎましょうか」
 匡乃がすっと立ち上がる。
 続いて、シュライン、凪砂も立ち上がる。シオンも何故だかセレスティが危ないと言うことで、注文したサンドイッチを詰め込んで立ち上がった。ついでに前にある伝票を掴む。
 「三下くん、セレスティさんに電話よ!」
 「は、はいっ!!」
 「あ、三下さん、これをお願いします」
 そう、忘れられては困る。シオンは三下に伝票を手渡した。



 「セレスティさんってば……」
 シュラインがこめかみを抑え、溜息を漏らした。
 彼らが泡を食って明治通りに到着してみると、あの豪勢な車が見えなかった為、この外れまでやって来たのだ。するとセレスティは、女性とお話中だった。
 そのまま声をかけようと思ったが、シュラインに止められる。
 そしてシュラインからセレスティが話していることを、聞かされたのだ。普通なら、到底聞こえない様な距離だが、シュラインには関係ない。流石に声帯模写で、互いの声色を真似ると言うサービスはなかったが。
 「あの女性、怖そうです…」
 シオンはセレスティが向かい合っている女性を見て、そう感想を述べる。
 三下はきょろきょろと物珍しげに周囲を見回し、凪砂は居心地悪そうに肩にかけたクーラーボックスを引き上げる。
 職場が近い為、この辺りは通り慣れていると言った風な匡乃は、シュラインから話される内容を聞いて言葉を漏らした。
 「ああ、そう言えば、水商売の女性が、良くお参りすると言う話を聞いたことがありますねぇ」
 「鬼王神社って、そうなの?」
 匡乃は、以前に知ったことでもあるので何気なく話して聞かせた。
 「ええ、まあ。後、色々と曰くのある神社の様ですよ。あそこ、表向きは月夜見命、大物主命、天手力男命を祀ってるんですけどね、本当に祀っているのは、将門公だと言う話ですよ。鬼王と言うのは、彼の幼名『鬼王丸』から取ったとも言われてますから」
 そう話していると、いきなり彼らに声がかかった。
 「如何ですか? 皆さん」
 「ひぇぇぇっ!!」
 大声を上げる三下に、シオンの方が驚いてしまう。セレスティはその驚いた二人に、目を丸くしつつも、直ぐさま何時もの如く笑みを浮かべた。
 「驚かせてしまいましたか。申し訳ありませんね」
 既に会話が終わっていたことに気が付いていなかったのは、当然ながら三下だけだった。シュラインは声を聞いていたし、他の面々はその独自の力でそのことを察しており、勿論、セレスティが近寄っていることも解っていた。
 「でもまあ、面白い話が聞けましたしね」
 匡乃がそう言って笑う。
 「それにしても、可笑しなお話でしたね」
 凪砂がシュラインから伝え聞いた話を思い出し、そう言った。
 大抵の者は、その意味が解っているが、解っていない者が約一名いた。勿論それは、彼の所為ではない。ちゃんと話を伝えていない、三下が全面的に悪いのだ。
 「取り敢えず、道を塞ぐ訳にもいかないし。移動しましょうか」
 「どうやら中へ入らなければ、大丈夫な様ですから、もういっそ、神社へ行きましょう。あそこはビルの谷間ですから、人通りはここよりありませんし」
 当然の如く、色んな意味で人目を引く六人だ。今でもちらちらと視線が痛い。提案した凪砂に、促す匡乃だが。
 「ええええええっっ!! も、もう…ですかぁっ?!」
 思いっ切り三下が嫌そうに言う。この取材は、一体誰の取材だと言いたくなる程に、イヤだと全身が言っていた。
 「そうよ。『もう』行くの。シオンさん、そっち持って」
 「はいっ」
 シュラインからそう言われ、シオンは素直に従った。
 腰の引けている三下は、シュラインとシオンに両脇を抱えられ、ずるずると引きずられる様にして歩いていく。後ろからは、歩いてくる者達の会話が漏れ聞こえた。
 「三下くんは、何時もみんなに可愛がられていますねぇ」
 「……セレスティさんの愛情表現は、とても興味深いですね。一度じっくりお伺いしたいものです」



 へたり込む三下を取り囲んだ様子が、まるでカツアゲしている様…に見えないのは、そこいる五人の風体が絵になる程に煌びやかであるからだろう。彼らは、取り敢えず中には入らず、鳥居から少しばかり離れたところにいた。
 「何だか、凄く寒いんですけど…」
 シオンがそう言って、おやつの林檎を持ったまま、ぶるっと身震いをする。何だかざわざわと、嫌な気配がするのだ。
 有り体に言ってしまえば、『妖気』の様なものだった。
 「もう少し人が通るかとも思ったんですけど…」
 凪砂もそう言いつつ、緊張した面持ちで周囲を見回した。まだ十時過ぎあたりなのに、そこには人通りがまるでない。皆迂回しているのかもしれなかった。
 「やっぱり、気味悪いから避けてるのね。まあ、解るけど」
 「どれがそうか直ぐに解りますね」
 「ええ。その場所が、ここからでも十分に…」
 匡乃とセレスティの二人は、同じ方向に顔を向ける。そこには明らかに育ちすぎた黒い影が見えた。
 「それにしても、取り敢えずは木だって解った訳だけど…」
 シオンはシュラインのその言葉に、脳天を叩かれた様な衝撃を受けた。
 「ええっ?! シュ、シュラインさん! 今なんて! 樹木子さんて方の、取材じゃないんですかっ?!」
 驚きの声を上げるシオンに三下が反応するも、匡乃とシュライン二人して頭を押さえつけられ動きを封じられる。
 「あのね、シオンさん。三下くんが何を言ったのかは知らないけど、ここにはね、血を吸う木の取材に来ているの。樹木子さんって人じゃないの」
 ゆっくり噛んで含める様にして言うシュラインの言葉に、シオンは騙された…とショックを受る。
 何だか様子が可笑しいとは思っていたが、まさか騙されているとは思ってもみなかったシオンだ。
 少し人間不信になってしまうかもしれない…。
 そんな彼を取り敢えず置いておき、彼らはこれからの行動を思案し始める。
 「目標は解りましたよね。正体も目的も未だ良く解りませんが」
 匡乃の言葉に、シュラインと凪砂が顔を見合わせた。
 「正体ねぇ…。樹木子かと思ったんだけど」
 「お話を聞くに、微妙にずれてますよね」
 「樹木子は、古戦場みたいな多くの血が流れた場所で成長するみたいだし」
 「少なくとも、ここで今回の事件以前に、血が流れた様には思えませんねぇ。ただ、曰く因縁のある場所の様ですから、それを糧に根付いた可能性も考えられますけれど」
 「そもそも、その木の成長…と言うより出現も、可笑しいと思いますが」
 それぞれが思うことを口にし、暫しの沈黙が降りる。
 だがそれを破ったのは、セレスティだった。
 「そうなると、あまり嬉しくない答えが出て来ますねぇ」
 「ええ。『第三者が植えた可能性もある』ってことよ。…と言うか、その可能性の方が大きいわ」
 三下の頭から手を離し、腕組みをしつつ、シュラインがきっぱりとそう言った。
 「そうすると疑問点は、誰が、何の為にここに木を植えたのか、ですけれど…」
 セレスティは妖しい笑みを浮かべつつそう言う。
 取り敢えず、背後関係はさておき、問題はそこにある木だ。
 「で、三下くん。どうする? ただ単に、木の取材をするだけにする? それとも…」
 「枯らしてしまいますか?」
 シュラインとセレスティにそう言われ、三下はあわあわしている。土台彼に、そう言うことを決めさせるのは無理なのだ。
 「では多数決で行きましょう。日本は民主主義の国らしいですから」
 何処か空とぼけた様に、匡乃が言う。反対の意思はない様だと確認して、決を採る。
 「枯らしてしまう派の人」
 「条件付きで、挙手」
 シュラインが言う。
 「私も条件付きですね」
 「あたしは…枯らそうとは思いません」
 「シオンさんは?」
 会話は聞こえていたが、まさか木であると思わなかったシオンは、どうすべきであるか考えられない。人に植えられた可能性があるかもしれないとは言っていたが、もしもそうなら、人の都合で勝手に植えられ、あまつさえ、勝手に枯らされてしまうのは可愛そうだと思う。けれど人に悪さを続けるのならばと思うと、枯らしてしまう方が良いのだろうか…。
 「……私は……。良く解りません」
 「うーん、かろうじて条件付きで枯らすと言う方向ですか」
 「匡乃さんも枯らす派なの?」
 「まあ、お二方と同じく、状況を見て、ですけどね」
 「要は、血を吸うことを止めてくれれば、枯らす必要はないと思っていると言うことですね」
 セレスティの言葉に、その通りと言う風で、残り枯らす派二名が頷いた。
 「まあでも、妖木に説得が通じるかどうか、甚だ疑問が残るところよねぇ」
 取り敢えずは、三下の意見は聞かれぬままで、木の処遇は決定してしまった。
 「さて、人通りもないことだし」
 にっこりと笑うシュラインに続き、セレスティもまた笑顔で言う。
 「三下くん、頼みましたよ。君にしか出来ないことです」
 一体何が起こるのだろう。三下にしか出来ないことと言うのに、先ほどの苦悩も忘れ、シオンはドキドキしてしまう。
 「え? え?」
 まるで怯えるリスの様に、三下は周囲を見回している。
 だが、匡乃は匡乃で面白そうに三下を見ていたし、凪砂は、ごめんなさいとばかりに顔を逸らしている。
 「そ…、そんなぁ……」
 がっくり肩を落としつつ、三下は一歩踏み出した。しかし一歩踏み出すと、後ろを振り向きと行った具合に、なかなか目的地へは到着しない。当然後ろに控えている者達は、三下のそんな行動を知りつつも黙殺し、会話を交わす。
 指名を与えられた三下を応援するシオンは、にっこり笑って手を振った。
 「植えたかも知れない第三者、出てくると思いますか?」
 「そう言う匡乃さんはどう思うの?」
 「出て来ないでしょうね」
 肩を竦めてそう答える匡乃に、凪砂もまた同意した。
 「あたしも、そう思います。何だか、ここに木を植えて放ったらかしにしているみたいですから…。さっき、セレスティさんが『誰が何の為にここに植えたのか』と仰ってましたけど、あたしはその植えた人は、ただ単に、ここに血を吸う木を植えたらどうなるかを、見たかっただけの様な気がするんです」
 「凪砂さんの仰ることは、恐らく正しいと思いますよ。第三者の介入を示唆することが、こんなにはっきりと現れているのに、その第三者自体の噂は、全く口には上がらない。何かあの木を使ってするつもりがあるのなら、姿を見たと言う話まではいかないものの、木、以外の何らかの話が出ても良い筈です。けれど例外なく、そう言う話は出ていません」
 セレスティの言う言葉を受け、シュラインが溜息を吐く。
 「私達だけ例外には……──っ?!」
 「……例外、お作りいたしましょうか…?」
 五人は背筋を見えざる氷の手で撫でられた様な感覚を受け、シオンは飛び上がった。
 「初めまして。この木を植えた、張本人です」
 巫山戯た挨拶を行ったそれをは、明らかに普通の人ではない。
 逆さまに、首だけ世界に現れたその顔は、笑っていた。
 いや、笑いの面と化粧に彩られているのだ。それは逆さまなピエロの顔だった。
 全てが仮面かと思いきや、実はそうであるのは右半分のみ。もう左半分は、右とほぼ同じではあるが、奇妙にずれた化粧でピエロを模している。白塗りに赤と紫で彩られたそれは、恐らくここにいる面々でなければ、腰が抜けてしまったかもしれない。
 完全に重力に逆らって、彼の銀であろうと思われる髪は、下から上に流れ、首から以降がすっぱり消えている。
 とうとう諦めて鳥居を潜った三下と、こちらでこの有り得ない事象を見ているどちらが幸せだったのか、それは誰も解らない。
 シオンは、ただただその薄気味の悪い首を凝視していた。
 「悪趣味ですね」
 セレスティは、そう断言しつつも微笑した。
 「挨拶としても、あまり面白いものでもありませんし」
 匡乃もまた同じく、そう言って身構える。
 「貴方は、何が目的なんですか?」
 凪砂が何時でも中の魔狼と動ける様に呼吸を合わせている。
 「お嬢様が仰った通りでございますよ。僕はただ、見たかっただけです。可愛い樹木子を、戦場ではなくここに置けばどうなるか。違うものを食する様になるかと思ったのですが…。三つ子の魂、百までとはよく言ったものですよ。どのみち、あの子は血が欲しいのですね。それが解れば、もう後は興味はありません。貴方達に差し上げましょう。最後に、貴方達の様な方々に出会えたのは、とても嬉しく思います。では…」
 「待ちなさいっ!」
 シュラインは、紙袋の中から一抱えもある瓢箪型の瓶を取り出し、中身をぶちまけるも、その逆さまピエロが中身を被ることはなかった。ご丁寧にも、違った場所に、再度顔だけ出している。
 「……乱暴ですねぇ…」
 「やっぱり無理か」
 ちっと舌打ちするも、あまり落胆していないのは、本人もそれが有効であるとは思っていなかったからだろう。
 「ああ、そうそう。あの木、燃やせば良い物が手に入りますよ。では、今度こそ、さようなら」
 「あっ!」
 「ぎゃぁぁぁぁーーーー!!!」
 行動を起こすまでもなく、不意にたち消えたピエロの首と同時に、世にも哀れな絶叫が響いた。
 「三下くんっ?!」



 五人は僅かな距離を急ぐ。鳥居に入り、見たものは…。
 「ぎゃぁぁぁぁーーーー、いやぁぁぁぁーーーーー止めて下さいぃぃぃぃっ、お願いですぅぅーーー。たたたたたたた、だずげでぇぇぇぇぇぇぇっっ!!」
 鼻水と涙で顔面をぐちゃぐちゃにした三下は、木が伸ばした枝に巻き付かれ、即席ジェットコースターを味わっていた。即席ジェットコースターに乗っているにしては、悲壮な声だが、いかんせん発しているのは三下だ。絹を引き裂く……ではなく、パンツを引き裂く男の悲鳴であれば、一体何処の誰が救助意欲に燃える方向へ走るだろうか。
 先ほどの痛いまでの不気味さは、三下の醜態で既に木っ端微塵に砕かれている。
 その三下が振り回される度、今まさに咲こうかとしている様な蕾が揺れた。
 「三下くん、絶叫系マシンはダメだったのね」
 「……何だか、シュールですよね」
 「そうですねぇ…。まるで木が釣りをしている様ですね」
 「釣りですかぁ? 良いなぁ私もしてみたいですーー」
 自分が魚や餌になるのはイヤだが、釣る側ならしてみたい。
 「え、えーと、皆さん、三下さんを助けませんか?」
 「でもねぇ…。三下くんは、自分から身を挺してネタを作っている様ですしねぇ…」
 何とも人を食った様な台詞だ。
 「でも、やっぱり助けてと言ってるからには、助けないとねぇ」
 「それにしても、先ほど聞いた話と、えらく違いますね」
 「あの女性の話だと、何だかとても静かに血を吸われていた様ですけど…」
 この騒ぎを聞き、誰か駆けつけて来ないかが、とても不安になってしまう程、静かとはほど遠い。はっきり言うと、騒音にしか思えないのだ。
 言いたい放題言っていた五人だが、即座に視線を交わす。
 「あの木の気を逸らせます」
 「どうやって?」
 シュラインにそう問われ、凪砂はクーラーボックスの中を開けた。
 「輸血用の血液ですか。…では、凪砂さんが木を引きつけている間、僕は人様のお邪魔にならないよう、結界でも張りましょうか」
 すっと胸元から長針を取り出す。
 「匡乃さん、それは?」
 「妹直伝の『誰でも出来ます。簡単結界作成針』ですね」
 とぼけて言う匡乃に、皆がクスリと笑う。
 BGMは、三下の絶叫だが。
 「では私は、血の流れを操作しましょう」
 「じゃあシオンさんは、落っこちてきた三下くんを受け止めてね。後の三下くんの面倒は、私が見るわ」
 「解りましたっ」
 三下を助けるのだ。頑張らなくてはと、シオンは手に汗握る。
 「シュラインさん、先ほどのあれは、何でしょうか?」
 「御神酒よ。ちょっとでも穢れを払えればと思って持ってきたの。あれに使ったのは、ちょっと勿体なかったわね」
 肩を竦めて、セレスティにそう返す。
 「まだありますか?」
 「ええ、半分以上あるわよ」
 「では私に預けて頂けますか?」
 「良いわ。好きに使って。…あ、ちょっとだけ残しておいてくれると嬉しいんだけど…。興信所に置こうかと思って」
 苦笑混じりに言うシュラインに、セレスティが笑いながら頷いた。
 「取り敢えず、あの木は燃やしましょうか。元の持ち主が、ああ言ってるんだから、ここにそのままにしておく訳にはいかないわ」
 シュラインのその言葉を聞き、シオンは先ほど思っていたことが、またもや脳裏に浮かんだ。
 人の都合で燃やしても良いのだろうかと思いつつ、このままでは人を襲い続けると言うのは良く解っている。今までは大した犠牲が出ていないが、いつ何時、それが死を引き寄せることになるかは解らない。
 『人の、為だ』
 この後、見ず知らずの誰かが被害にあったことを知れば、シオンはきっと後悔する。
 そう思った。
 「……私が燃やします…」
 辛かった。とても…。
 その気持ちを汲んでくれたかの様に、それぞれがシオンに声をかける。
 「期待しているわ、シオンさん」
 「僕も退魔の風で、バックアップします」
 「結界があるから大丈夫かとは思いますが、もし万が一の類焼は、私が何とかしますよ」
 「シオンさんの身柄は、あたしが守りますから」
 話は決まった。
 「じゃ、行くわよっ」
 シュラインの力強い声が合図だ。
 凪砂が輸血用パックを持ち、助走もなしにジャンプした。
 その下では、匡乃が結界を張るべく、ベストな場所を見定めている。
 木が凪砂の間近に見えると、通常では到底考えられない力で、彼女は纏めてパックを引きちぎった。
 反動から来る返り血は浴びない。
 セレスティが、その動きをしっかりとコントロールしているからだ。
 木が血の臭いに引かれ、三下を投げ捨てる。
 「ぎゃぁぁぁぁぁぁーーー!!!!」
 絶叫と共に、三下の身体がくるくる回り、匡乃はそれを避けて長い針を持つ腕を振りかぶる。
 シオンは落ちる三下を追う為、必死の形相で駆け出した。背後で凪砂が着地した気配を感じる。
 セレスティがタクトを振る指揮者の様に、木の動きに合わせて血の演奏を行った。
 闇夜に赤黒く舞う血液を、まるで獲物を追う獣の様に木が食らう。
 枝からそれを吸い上げる度、蕾が鮮やかな紅に輝いた。
 見事な放物線を描いた三下が、両手を広げて右往左往しているシオンの元に落ちてくる。
 「受け止めましたっ!!」
 「シオンさん、えらいっ! あっちに戻って!」
 シオンの元にシュラインが駆け寄ると、既に三下は気絶していた。
 入れ替わりに駆け出すシオンが四人の元へと戻ると、既に結界を張り終えた匡乃が彼の横に並んで立つ。
 「では、仕上げです」
 セレスティのその声に、瓶に入った御神酒が匡乃の張った結界の内を守る様に舞った。月の光を受け、鮮やかに輝くそれは、まるで天使の涙の様だ。
 『私がすることは、罪深いことなんでしょうか…』
 シオンは逡巡。
 しかし。
 覚悟を決めたシオンが手袋を取ると、そこには炎に踊る鮫がいる。
 「ごめんなさいっ!!」
 青い鮫が牙を剥く。木を目掛けて泳ぐ鮫を、匡乃が放つ退魔の風が後押しした。
 怒濤の様に進む鮫は、木に近づくに連れて退魔の風を食らい大きく成長する。結界が軋みを上げるが、そうはさせじと聖なる水が震え立つ。
 鮫を操るシオンの足が、微かにぶれそうになるも、背後に回った凪砂が支えた。
 結界内部を揺るがす煽りを受け、力無い三下が吹き飛びそうになるのをシュラインが地面に押さえつけている。
 血に酔いしれている木が、今初めて炎に気が付き慟哭した。
 刹那──。
 眩い光が周囲を染め、全ての視界が失われる。
 まるで民が死に絶えた故宮で目覚めた時の様な、有り得ない静寂さ。
 その一瞬の後、時が巻き戻されて行く様に、色が、音が、甦る。
 そこにあったのは、赤く赫い木だ。
 その存在全てを浄化の炎に包まれ、身悶えし……。
 炎の飲まれつつも、身に抱いた花を咲かせていた。
 「綺麗…ですね」
 ぽつりと凪砂が囁いた。
 「ええ…。本当に」
 うっとりと、余りよく見えないまでも、セレスティもその内に感じ入るものがあったのだろう、そう答える。
 匡乃も目を眇め、黙ってそれを見ていた。
 起きあがったシュラインもまた、手をかざしつつも木に魅入る。
 本当に綺麗で、そして切なかった。
 シオンの頬に涙が伝う。
 その花は、まるで一瞬を喜ぶ様に鮮やかに咲いている。身を焼かれ、それでもその時を楽しむ様に咲く花は、絶後なまでに美しかった──。



 「消えましたね」
 匡乃の言うとおり、そこに残るのは消し炭だけだ。
 既に結界は解いている。
 「あれ…?」
 消し炭の中、何かが光った気がする。シオンは、足が思わず動いていた。
 「…何してるの? シオンさん」
 せっせと掘り出しているシオンは、何かを見つけると直ぐさま立ち上がって振り向いた。
 「ありました!」
 何かを掲げる様に持つそれを、四人が乗り出す様にしていた。
 ちなみに三下は、未だ気絶している。
 「これはまた、…見事なカノンになっていますねぇ…」
 「え? カノン…? どう言うこと。セレスティさん」
 「カノンって、音楽のことじゃないんですか?」
 シュラインと凪砂の問いに、軽く頷いて微笑んだセレスティが答える。
 「確かにカノンとは、輪唱のことも指しますが、古代ギリシアの建築用法や彫刻において、定規の意味もあります。つまり、標準律を意味するのです。この像は、見事なまでに、それに沿っているのですよ」
 シオンが見つけ出したのは、何処の物とも知れない八重大輪の華を抱きしめた、目の覚める様な深紅の女人像だった。
 「良い物とは、このことを言ってたんですね」
 溜息混じりに言う匡乃は、続いて至極現実的なことを言った。
 「これ、どうしますか?」
 まずは見つけたシオンが答えた。
 「私は……。ウサちゃんがいますし。囓られてしまっては可愛そうなので、持ち帰るのはご遠慮したいです」
 ちょっと惜しいなとは思ったが。
 「元が元だしねぇ…。私も持って帰ったら、御神酒の効果が半減しそうだから遠慮するわ」
 シュラインの台詞を聞き、何かに気付いた様に凪砂も言った。
 「あたしも遠慮します」
 「僕も、もう人形遊びする年でもありませんしねぇ。家に物が増えるのは、遠慮致します」
 四人の視線がセレスティに集まった。
 「では、私がこれを頂いて帰りましょう。動き出す気配があっても、十分対処出来ますしね」
 セレスティは、何処か楽しげに引き受けることを了承した。
 「気になることも、残っていますけど、まあ、また縁でもあれば解ることもあるでしょうね」
 「縁なんかない方が嬉しいんだけどねぇ」
 「取り敢えず、帰りましょうか」
 その言葉を合図に、皆が大口を開けたまま気絶している三下を起こしにかかった。



Ende

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    登場人物(この物語に登場した人物の一覧)
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

1883 セレスティ・カーニンガム(せれすてぃ・かーにんがむ) 男性 725歳 財閥総帥・占い師・水霊使い

3356 シオン・レ・ハイ(しおん・れ・はい) 男性 42歳 びんぼーにん(食住)+α

1847 雨柳・凪砂(うりゅう・なぎさ) 女性 24歳 好事家

1537 綾和泉・匡乃(あやいずみ・きょうの) 男性 27歳 予備校講師

0086 シュライン・エマ(しゅらいん・えま) 女性 26歳 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員

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          ライター通信
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こん●●んわ、ちょっと意地悪になっちゃった斎木涼です。
今回の依頼は、色々と隠していることが多かった為、皆様にはプレイングをお書き頂く際困らせてしまいまして申し訳ありません。
血を吸う木の正体は、樹木子と言う妖樹でございました。
ご正解者がいらっしゃらなかったのですが、お書き頂きましたプレイングを実際に試してみまして、正解が導き出されましたので、名前を出すことが出来ました。
また、作中に突如として出現致しましたあの妙なものは、後、正式にNPC登録致しまして、今後色んなところに出没する予定でございます。どれに出没するのかは、未定にございますが。

 > シオン・レ・ハイさま

 続いてご参加頂き、有り難う御座いました(^-^)。
 シオンさまには、木を燃やす役を担って頂きました。人の為にと言うことで、少々お辛い思いをさせてしまいまして、申し訳ありません。
 ちなみに麗香さん宛の手袋は、きっちり編集部でお預かりしております。
 麗香さんから、手袋と今回の件と合わせてご褒美を受け取って下さい。


 シオンさまに、このお話をお気に召して頂ければ幸いです。
 ではでは、またご縁が御座いましたら、宜しくお願い致します(^-^)。