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『古よりの因縁』【前編】
□オープニング
『その日、その村に住む人々は見た。
その日、その村の出身者は見た。
あの者の血族全員が、場所を問わず年齢を問わず見た。
カレに殺される夢を。
あの者の血族全員が殺される夢を。
カレに。たった一人のかの者の末裔に・・・。』
■
都内に住んでいるあの者の末裔である『庄野くみか』(18歳、女)はその日予備校へ行っていた。
間近に迫る受験を気にしつつも、心の中ではクリスマスの事でいっぱいだった。
フワフワに輝くイルミネーションを窓越しに見ているうちに、くみかは異変に気がついた。
窓の外に、誰か立っているのだ・・・。
真っ黒な靴、真っ黒なズボン、真っ黒なワイシャツ、ネクタイだけ赤い・・・。
そして・・・カレの手元も、赤い・・・。
その手元には、くみかがいた。
くみかは、カレの持っているクミカと目が合った・・・。
窓越しに、クミカは伝える。
今に自分を殺しに来る相手の名を、カレの名を・・・。
□
その日、公園で遊んでいた『甲田まこと』(8歳、男)は急に胸騒ぎを覚えた。
近くで見守っている母親の顔は優しかった。けれども、母親の包み込むような笑顔をもってしてもまことの心は騒いでいた。
・・・と、まことの後ろに誰か立ったような気がした。
雰囲気が違う、誰か・・・。
まことはゆっくりと後ろを振り返った・・・鉄の匂いがする・・・。
地面に転がる無数の人、人、人・・・。
そして、その中で一人立っているのはカレ一人だけ・・・。
その手には、まことが抱えられている。
まことは恐怖のあまりその場にしりもちをついた。カレの手の中のマコトは、ぴくりとも動かない。
カレはまことの直ぐ近くまで来ると、低い声で伝えた。
自分の名前を・・・。
■□■
草間武彦は、震えながら話す数人の人々を前にすっと視線を落とした。
人々は一様に言うのだ。
『古の時よりの呪いだと、カレが今に血族全員を殺しに来ると・・・。』
そして人々は、一様にその者の名前を口にする。
『朝倉 セイ』
『冥衛 聖籠(みょうえ せいろう)の末裔、朝倉 セイ』
人々は言う、自分達の血筋の元を。
古の祖先の名を・・・。
『霊宝 鏡月(れいほう きょうげつ)』
『月夢(げつむ)村の巫女・・・』
武彦は、隣に立ち真剣な顔をして様子を見ている零に声をかけた。
「この依頼を、受けてくれそうな人を探してくれ・・・。」
零は頷くと、部屋から駆け出していった。
武彦は座って震えている人々を見つめた。
彼らは言うのだ。血族の数を、かの者の末裔に殺されようとしている人数を・・・。
「3千人の命・・・か。」
あまりに重過ぎる『守らなければならないもの』の前に、武彦は視線を落とした・・・。
■シュライン・エマ
その日、いつもの調子で草間興信所の扉を開けたシュラインの見たものは、驚くほどに緊迫した空気だった。
草間武彦の視線は一点をじっと見つめており、シュラインが入ってきた事さえ気がつかない。
「武彦さん。・・・武彦さん。」
シュラインの呼びかけも、ただ虚空をきるだけだった。
何かがおかしい・・・こんなに真剣に、何を考え込んでいるのかしら?
シュラインはそっと武彦に近づくと、その肩に手を置いた。
「武彦さ・・」
「うわぁっ!!」
ビクリと肩が震え、武彦がオーバーリアクションでシュラインを見る。
シュラインもシュラインで、あまりのリアクションに言葉を失う。
「・・な・・なんだ・・。驚かせるな・・。」
「それはこっちのセリフよ。あー驚いた。それで武彦さん、何を考え込んでいるの?」
「あぁ、ちょっとな・・。コレなんだが・・。」
「これは・・。」
シュラインは手渡された書類に目を通した。
そして・・全てを理解した後で呟いた。
「3千人の命・・・ね・・・。」
□血の源
数分後、集まったメンバーをグルリと見渡す。
武彦、零はもちろんの事・・。
シュライン・エマ、海原・みその、瀬崎・耀司・火宮・翔子、蒼王・海浬、東雲・飛鳥、幾島・壮司が依頼を聞いて集まってきた。
もっとも・・全ての人が零からの電話を受けて集まったわけではないが・・。
一様に表情は晴れやかでない。
「3千人の命・・ね。災いの明確な日付が分からない分、厄介ね。そして何故今なのか・・?」
シュラインの言葉に、武彦が頷く。
「3千人の子孫を皆殺しか・・もし、正当な理由のある復讐だとしても、いくらなんでもやりすぎね。」
翔子も言葉を漏らす。
「呪いの発端がなんなのか・・色々と、血族の方々に確認したい事があるのだけれど・・。」
「わたくしも、血族の方々を“みて”過去を確認したいと思います。」
みそのが小さな声で呟く。
「俺も、血族を見てみたいな。この“眼”で・・。」
壮司はそう言うと、左眼をそっと隠した。
金色の瞳が、手の中に隠れる。
「そうですね、まずは血族の方々にお話を伺うことが先かもしれません。」
飛鳥の言葉に頷くと、武彦は席を立った。
ポケットのなかから白い紙を取り出すと、どこかに電話をかける・・。
短い応対の後、帰ってきた武彦が頷く。
「草間、誰を呼んだんだ?」
「木崎 洋介(きさき ようすけ)と言う18の高校生だ。見たところ、今日来た連中の中では一番しっかりしていたからな。」
海浬の質問に、的確に答える。
「他の人達の様子は、そんなに酷かったんですか?」
耀司の質問に、武彦は視線を落とすとゆっくり口を開いた・・。
「まぁ・・な。」
すっと、室内の気温が下がった気がした。
多くは語らない武彦の言葉からでも、どれほどのものだったか想像がついた。
年齢を問わず、場所を問わず・・“あの者”の末裔全てが見たのだ。
“かの者”の末裔に殺される夢を・・白昼夢を・・!
その中には、小さい子供もいただろう・・余生をゆっくりと過ごそうとしているお年よりもいただろう。
その命が、儚く散る瞬間を見たのだ・・。
もし、自分なら・・?
そんな悪夢のような白昼夢を見たとしたならば・・どうしていたのだろうか・・?
誰しもの心の中に宿るその質問に、答えが出ないことは分かっていた・・。
数十分後、現れた洋介は今時の男子高校生だった。
ダラリとやる気の無い格好、下にさげたズボン、明るい茶色の髪、耳にはピアスが光っていた。
洋介は興信所の扉をくぐるなり、集まった一同に深々と頭を下げた。
それに何人かが反応し、席をたって頭を下げる。
「草間さん・・。この方々が・・?」
「そうだ、話を聞かせてあげてくれ。」
洋介は小さく頷くと、武彦の隣に座った。
武彦が零にお茶を持ってくるように小さく言う。
パタパタと駆け出していく零の背中に洋介は“お構いなく”と小さく言うと一同の方を向いた。
どうやら、格好ほどいい加減な人ではないらしい。
ごく普通の礼儀正しい男子高校生だった。
「初めまして、木崎洋介です。それで、俺にききたい事とは・・?」
律儀に挨拶をする洋介の顔を、壮司とみそのがマジマジと見つめる。
少しだけ小首をかしげて眉根を寄せる洋介に、シュラインが微笑みながら“なんでもないのよ”とだけを言う。
壮司は左眼・・“神の左眼”で洋介を見つめている。
みそのは洋介の血脈をどんどんと“みて”行く・・。
「手始めに、夢の内容を話してくれないか?」
間が持たないと感じた海浬が、洋介に質問を投げかける。
洋介はしばらく思い出すかのように虚空を眺めた後でゆっくりと話しはじめた・・。
「まず、俺はその時学校にいたんですよ・・丁度古典の授業で・・先生の話を聞いてるときに、ふっと周りが暗くなった気がして・・窓の外に何かが立ってる感じがしたんですよ。あ、俺席が窓側なんですけど・・。」
視線が宙を彷徨う。
選び出すようにゆるやかに紡がれる言葉達。
「そしたら“かの者”・・“冥衛 聖籠”の末裔の“朝倉 セイ”が立っていて・・その手には俺が血まみれで・・。」
ブルリと、身震いをする。
嫌な記憶を振り払うかのようように頭を振ると、大きく深呼吸をした。
その後で、再びゆるゆると話し始める・・・。
「真っ黒なスーツで、靴も真っ黒で、ネクタイだけ赤いんです。それで・・低い声で“古の時より受けた辱め、今こそ復讐を果たす時。月夢村の巫女の末裔・・霊宝 鏡月の子孫達よ、我の末裔、朝倉 セイによってアヤメの神の元に旅立つが良い!”って言ってました。」
『古の時より受けた辱め』・・・?
それが今回の事の発端・・?
それよりも・・『アヤメの神』・・?
それは一体・・?
「あっ・・。」
洋介を“みていた”みそのが突如小さな悲鳴をあげた。
そこにいる人全員の視線を受けたみそのが、小さく頭を振る。
・・何かが見えたのか・・もしくは・・。
「俺は、何のことだかさっぱりわからなかったんです。ただ恐怖しか感じませんでした。けれど・・祖父母や両親なんかは発狂したようになって・・。」
まさに地獄絵図・・・。
恐怖のあまり気が狂ったように泣き出す母。
常にゴルフクラブを握り締め、目を血走らせた父。
一日中仏壇の前で南無阿弥陀仏を唱え続けている祖母。
発狂して、そこらのものを次々にひっくり返していく祖父・・。
その中で洋介だけが“まとも”なのだそうだ。
感じるのは言いようのないほどの恐怖だけ。
身体の芯から感じる・・古よりの恐れ・・。
みそのと壮司の視線がチラとだけかち合う。
「俺、月夢村だとか・・霊宝鏡月だとか・・何も知らないんです。けれど、怖い・・。」
呟く洋介の表情は暗かった。
しかし・・その瞳に、狂気的な色はなかった。
「そう・・ありがとう・・。」
シュラインの言葉をうけて、洋介は小さくお辞儀をすると席を立った。
「もし、また何かありましたら呼んでください。俺でよければ・・。」
興信所の扉を開けて、その向こうに消える。
「お辛そうでしたね・・。」
「あぁ、想像以上のものがありましたね。」
「それで、何か手がかりになるようなものは見えたの?」
みそのと壮司が、困ったように視線を合わす。
「見えたことは見えた・・解析したが、さっきのヤツがおかしいってことは無かった。だが・・。」
「血脈の流れが途中で途絶えたのです。」
「・・それは、どう言う事だ?」
「わたくしの考えから言うと・・人ではないものの可能性が高いと思われますわ。」
「人ではないもの・・?つまり・・?」
「わたくしは、聖なる者の一種だと思います・・。」
みそのがゆっくりとそう言うと、口を閉ざした。
壮司もそうだったらしい・・フツリと途切れてしまっている血脈の先・・。
「御方に・・御方に似た雰囲気が御座いましたわ。」
「御方とは?」
「名も忘れられ、悠久の時を深海の奥底で封印されている・・海の神・・。それが、御方ですわ・・。」
「神・・!?」
予想もしなかった答えに、ザワリと空気が揺れる。
神・・。
それが、霊宝鏡月の姿?巫女と言う名の神・・?
「神・・そう言うのは少し大げさかも知れませんわ。神と血を分けし者。そう言った方が良いのかも知れませんわ。」
「つまり、神自体ではなく神に仕え、神と血の契りを結んだもの・・そう言う意味か?」
「えぇ、はっきりとは分かりませんが・・。」
複雑に絡まる霊宝鏡月の姿に、無言の沈黙が訪れる。
月夢村と言う所の巫女・・霊宝鏡月。
しかしその子孫から血を辿って行った結果、見えたのは神の鱗粉。
神と血の契りを交わしたと言う姿・・。
しかし、そうだとしたならば一体どの神と?
『アヤメの神』・・?
しかし、霊宝鏡月が神と姉妹だった場合・・冥衛聖籠は一体なんなのだ・・?
「ところで・・アヤメの神とは何なのでしょうか?」
ややあってから、飛鳥がゆったりと問いかけてきた。
アヤメの神・・素直に考えれば『菖蒲の神』だ・・。
「花の菖蒲と言うことも考えられますが・・。」
「他には、何かあるんですか?」
「アヤメの神・・“殺めの神”とも、考えられませんか・・?」
飛鳥の言葉に、すっと空気が冷たくなる。
アヤメの神・・それが、もしも『殺めの神』だった場合、その神と契りを交わしたと思われる霊宝鏡月は・・。
「これは、一概に冥衛聖籠が悪だとも言えなくなってきたな・・。」
海浬が、ため息交じりに言葉を吐き出す。
「だが・・3千人を皆殺しはやりすぎだ。」
「わたくし・・木崎様の血脈を辿っていまして“みえ”ましたわ。」
武彦が、席を立つと無言でみそのの目の前に地図を置く。
「月夢村・・それは、ココですわ。」
みそのが指差した場所は、ある県の山奥だった・・。
■月夢村へ・・
電車で6時間、バスで3時間・・そして、徒歩で2時間の場所に月夢村はあった。
本当に山の中にある小さな村。
村の入り口には、地蔵が3体ずつ並んでいる。
「ここが、月夢村・・?」
“月の夢”・・そう書くわりに空は小さい。
木々が小さな村のあちこちに生え、枝を伸ばし空を侵食している。
昔ながらの藁葺き屋根が多いこの村は、文明世界から切り取られたかのようだった。
「初めまして・・草間興信所から来られた方々ですか?」
村の入り口で動かない一行に目をつけた一人の少女が走り寄ってくる。
「えぇ。それで・・こちらに行けば山羊谷 君花(やぎたに きみか)さんと言う方が案内してくれると聞いたのですが・・。」
「あ、はい。私が山羊谷です。よろしくお願いいたします。」
深々と頭を下げる少女は年の頃にして18くらいだった。
てっきりもっと大人の人が出てくるのだと思っていた一行は、しばし君花を見つめた後で気を取り直したように月夢村に足を踏み入れた。
「えっと・・今回の夢の調査に来てくださったのですよね?生憎この村に旅館や民宿などと言うものは御座いませんので・・狭いですが、私の家をお使いください。」
「私の家・・?あなた、両親は?」
「両親は町に働きに行っております。そもそもこの村にいるのは老人や子供ばかりなんですよ・・。」
「そうなのか?若い人達はみんな外に・・?」
「はい。この村にいるのは70代以上の老人が30人ほど、15以下の子供が10人ほど、そして15〜20までの者が8人おります。」
なんて両極端な村なのだろう。
中間層がすっぽりと抜け落ちている・・。
「お年寄りたちは少し・・夢の事で怯えていて・・。ですから、ご案内できるのは私達だけなのですが・・。」
君花はそう言うと、少しだけ微笑んだ。
一軒の家の前で、ハタリと足を止める。
他の家よりも幾分大きい家だ・・その家の引き戸をスっとスライドさせる。
「どうぞ、私の家です。皆さんを案内する役目をおおせつかった者達もおりますので、どうぞ・・。」
開いた先には、少年少女がいた。
電気のない暗い部屋の中で、立ち上がり深々と頭を下げる・・。
「皆様、ご一緒に村を回りますか?それとも・・。」
「手分けして、情報を収集した方が早いかもしれないわね。」
「あぁ、そうだな。」
シュラインの提案に賛成すると、7人は別々の方角を調べ始めた・・・。
□月の言葉
シュラインは、山羊谷君花の案内で月夢村を散策していた。
「霊宝鏡月と言う、巫女の事について知りたいのだけれど・・・。」
少し小高い丘の上に来た時、シュラインは君花にそうきり出した。
君花はわずかばかり虚空に視線を彷徨わせた後で、シュラインの瞳を捕らえた。
「霊宝鏡月様・・。その方は、古来月夢村の巫女様として・・。」
『冥衛聖籠様と共に村の神的存在でした。』
「え・・?冥衛聖籠が・・?」
霊宝鏡月と同じ・・神的存在!?
それはあまりにも衝撃的な事実だった。
霊宝鏡月を憎んでいる冥衛聖籠・・。
それでは・・『古の時より受けた辱め』とは何なのか・・?
「冥衛聖籠様と、霊宝鏡月様は“アヤメの神”様の従者で・・アヤメの神様の唯一の友人達でした。」
「そうだわ、アヤメの神様って、一体何の神様なの?」
君花はすっと立ち上がると、真っ直ぐ先を指差した。
月夢村・・その、入り口の辺りが見える。
「あそこに、時期になると菖蒲が咲き乱れるんです。それはもう・・狂ったかのように。」
「だから“菖蒲の神”様なの・・?」
「えぇ。昔話ではそうです。月夢村は菖蒲の神様が守っている村だと。」
「昔話では・・?それじゃぁ実際の所は?」
君花が、すっと瞳を細める。
その視線の先には、無邪気に遊ぶ子供達の姿があった。
あの子達にも、きっと夢は訪れていたのだろう・・けれどココから見る限りでは普通の子供と変わりはしない・・。
「殺戮神・・それが、あまりにも酷い表現だったので・・“殺めの神”になったのです。そして・・いつしかそれは“アヤメの神”と呼ばれ“菖蒲の神”となったんです。」
飛鳥の言っていた事と、同じだった。
菖蒲の神・・でも実際は殺めの神・・。
「資料館に残っている、アヤメの神様の絵は幼い少女の姿なんです。無垢で、純粋そうな・・。そして、その隣に立っているのが冥衛聖籠様と霊宝鏡月様。」
「この村に、資料館があるの!?」
「えぇ。あります。行きますか?」
「そうね・・なにか手がかりになるものがあるかもしれないから・・。」
シュラインはそう言うと、立ち上がった。
「シュラインさん。」
呼びかけられて、反応する。
逆光で表情の見えない君花・・けれど何故だか分かる。
その顔は、笑っている・・。
「冥衛聖籠様を・・悪い人だと思われますか?3千人を亡き者にしようとする・・極悪非道の男だと思われますか?」
シュラインは、言葉に詰まった。
なんと応えたら良いものか・・・。
「・・なにか、こうなったきっかけがあるのよね・・?それが分からない限りはどうとも言えないわ。“古の時より受けた辱め”が何のか分からないもの。」
君花が俯く。
その口の端は少しだけ上がっていた。
「けれど・・流石に3千人を皆殺しって言うのはやりすぎだと思うわ。」
「そうですね・・私も、そう思います。」
君花がシュラインの隣に立つ。
その顔はもう普通の顔だった。
人のよさそうな笑顔を浮かべる・・あの逆光の中で見た得体の知れない恐怖を感じるような笑顔ではなかった・・。
『心にもあらで憂き世にながらえば 恋しかるべき夜半の月かな』
君花がポソリと呟いた。
「・・え・・・?」
「なんでも、ないです。」
君花はそう言うと、少しだけ微笑んだ。
シュラインは君花の言った言葉を考えていた・・。
あれは百人一首の一首だ。
そして・・歌意を思い出していた・・・。
『心にもあらで憂き世にながらえば 恋しかるべき夜半の月かな』 三条院
〜生きていたいとも思わないのにこの辛い世の中に生きながらえていたならば、今宵見るこの夜半の月が唯一の友として恋しく思われる〜
シュラインは君花の案内で資料館まで来ていた。
つい先ほどまで誰かが訪れていたのだろう・・床にうっすらと積もった埃が靴の形に抜けている部分がある。
「これです、アヤメの神様と霊宝鏡月様・・それに、冥衛聖籠様の絵・・。」
君花がパラリと結んであった紐を解く。
巻物状のそこには、君花の言っていた通り可愛らしい“アヤメの神”と二人の姿があった。
「向かって右側が霊宝鏡月様で、左側が冥衛聖籠様です。」
強くたくましい感じのする霊宝鏡月・・それに打って変わって冥衛聖籠は細く儚げな印象を受ける・・。
「冥衛聖籠様は、もともとお体の丈夫でない人でしたので・・。」
君花がシュラインの顔を見てそう呟く。
腰まである黒髪を、後で束ねた霊宝鏡月はりりしい。
その真ん中で花のように微笑んでいるのがアヤメの神だ。
そして・・冥衛聖籠は銀髪の髪の毛を長くたらしている・・。
その絵にはところどころに金箔や銀箔が貼り付けられており、キラキラと輝いている。
「シュラインさんは・・冥衛聖籠様が“古の時より受けた辱め”を、ご存じないんですよね?」
「えぇ。それが分からなくって・・。」
「冥衛聖籠様は、アヤメの神様を殺したという罪によって・・霊宝鏡月様に罰されました。」
「アヤメの神を・・!?」
もう一度、巻物に目を戻す。
太陽のように笑むアヤメの神・・その隣で百合のように微笑む冥衛聖籠と霊宝鏡月。
「霊宝鏡月様と、月夢村の民によって殺されたのです。そして・・その身体は月夢村の中央に3日3晩吊るされ・・業火の中に投げ込まれました。これが、その時の絵です。」
君花が、奥の方から先ほどと同じような巻物を取り出す。
先ほどよりも幾分古びた感じのする絵・・それは、丁寧に保存されていなかったという事をうかがわせる。
パラリと、紐を解く・・。
「なっ・・!!」
シュラインはその絵から目を逸らした。
なんてむごい・・。
あまりにも精密に描写しすぎている。年月がたっても色褪せていない絵は、より生々しさを強調させる。
「そうです・・なんてむごい・・。そして・・。」
君花が愛しそうに絵を撫でる。
何度も何度も・・冥衛聖籠の部分を・・。
「冥衛聖籠様は、アヤメの神様を殺してなんかいない・・。免罪です。確実な・・。」
免罪で・・この仕打ち・・。
けれど、そうした場合アヤメの神を殺害したのは誰なのだろうか?
霊宝鏡月・・?
「誰が・・アヤメの神様を殺したのでしょうね・・。でも、霊宝鏡月様は・・冥衛聖籠様が殺したのでないことは分かっていたはずです。」
「それは、どう言う事なの?」
「あの日・・アヤメの神様が毒殺された日、冥衛聖籠様と霊宝鏡月様は一緒にいたんですよ。だから、アヤメの神様に毒を盛る時間なんて無かった。」
「そう、それではな・・。」
そこまで言った時、シュラインはふとある事に気がついた。
何年前の事だかは知らない・・けれど、神と名のつくものがあがめられていたと言う古の時。
そこであった事を詳細に話せているのは、どうやら現存する資料を読み漁って得た知識というわけではないようだ。
それでは全てにつじつまが合わなさ過ぎる。
“冥衛聖籠と霊宝鏡月が一緒にいたという事実が現存する資料に書き記されていたとしたならば・・”
「免罪っていうのは最初から分かりきっていた事じゃない。でも、少なくとも村の人達は知らなかったはずよね?その事実を・・。」
そう、知っていたのは冥衛聖籠と霊宝鏡月・・。
「貴方、一体・・?」
「そう、コレは全てその場を見ていた人にしかわからない事です。現存する資料のどこにもそんな事は書いていません。でも、コレは私が見たことではないんです。」
「それじゃぁ、誰が見た事だって言うの?」
「アヤメの巫女様。今、この村にいるんですよ・・古の時に“何者か”によって生を断たれたアヤメの神様に使える巫女様が・・。」
その時、村の入り口付近で突然巨大な爆発音が上がった。
「なにっ!?」
「分かりません・・けれど、村が心配です!」
「そうね、行ってみましょう!」
君花は手に持っていた巻物をそっとケースの上に置くと、シュラインと共に資料館を後にした。
ついたそこには信じられない光景が広がっていた。
何か黒いものが固まって・・村人たちを襲っているのだ!
いや、違う・・。
村人たちが進んでその黒いもの達のほうに身を捧げているのだ・・!!
「なんなの・・これは・・。」
「分からない。ただ、話し合いで解決できるようなヤツラじゃないって事だけは確かだな。」
海浬がそう言うか言わないかのうちに、翔子と耀司が前に躍り出た。
そちらに行こうとする村人達を背後に押しのけると、黒い影に対峙した。
その背後では残りのメンバーが子供やお年寄りを押さえている。
耀司が腕に力を注ぎこみ、黒い影を次々と殴り消していく。
その隣では翔子が小剣で舞うように黒い影を切り裂いていく。
目まぐるしいほどに黒い影を消して行く2人だが、影は無数に生み出されては消されていく。
まるで終わりが見えない・・消しては生まれ、生まれては消す。
取り押さえている村人達も、何故かそちらに行こうとあがく。
「どうしましょうか・・これではきりがありません・・。」
「そうは言っても、一体どうすれば・・。」
そんな問答の間にも黒い影が増幅していく。
なんだかさっきよりも随分膨れ上がっているようだ・・・。
どうすれば・・。
その時、チカリと強烈な光があたり一面を包み込んだかと思うとか細い絶叫が聞こえてきた。
何事が起こったのかと思うが、目の前は全て白一色で包み込まれてしまっている。
ようやくわずかばかり目を開いた時、そこに黒い影はいなかった。
代わりに12,3くらいの少女が立っていた。
薄い水色の着物を着、髪の毛は地面にまで流れていた。
病的なまでに白い肌・・その顔の、左の瞳は燃えるような紫色だった。
「貴方は・・?」
「わらわの名は空(くう)。柊(ひいらぎ)空じゃ。そなた達は、かの者を亡き者にするためにこの村に来た者達かえ?」
不自然なまでに古めかしい言葉遣い・・。
村を案内してくれていた少年少女達の瞳には驚きの色が輝いている。
そう・・感激や感動を伴う驚きの色・・。
「・・もし、そなた達がかの者と、朝倉セイを滅ぼそうとする者達ならば容赦はせぬ。しかし・・もし、そなた達がかの者と朝倉セイを救う者達ならば・・。」
少し俯いていた顔を上げる・・髪の毛の奥に隠れていた右の瞳があらわになる・・。
その瞳の色は、真っ白だった・・。
「わらわはそなた達を護ろう。全てをかけて。」
ザアっと、突風が吹きぬける。
あまりの風に目を瞑り・・開いた所に少女はいなかった。
「なんだったんだよ・・あの女の子・・。」
「柊、空・・?」
口々に呟きを漏らす。
「空ちゃん・・生きてたんだ・・。それじゃぁ・・風(ふう)ちゃんも・・?」
そう漏らしたのは君花だった。
「風とは・・?」
「私達の・・巫女様。アヤメの神様が亡くなり、霊宝鏡月様と冥衛聖籠様が亡くなった後にたてられた双子巫女様・・。」
「そう、もう何百年も死ぬ事が許されていない巫女様・・。」
「時を止められた・・巫女様・・。」
口々に、村人達がそう呟く。
クスクスと笑う声が、村全体に木霊する。
狂っている・・この村は・・何かが全て狂っている・・・。
「なんなの・・。」
そう、誰が漏らしたのかはわからない。
ただその言葉すらも村人達の囁き声にかき消されてしまった・・。
□朝倉セイと冥衛聖籠
君花の家の中に入り、ほっと休めたのはそろそろ暗くなり始めていた頃だった。
耳の奥に未だにあの笑い声が木霊している・・。
ため息をつくと、片耳だけを押さえる。
「それで・・今日分かった事を総合しましょうか・・。」
シュラインの言葉に、各々が重い腰を上げ次々と発言していく。
それを書き取るのは飛鳥だった。
普通の大きさのノートに書き込んでいく。
1、アヤメの神は“菖蒲の神”とこの村では通っているが実際は“殺戮神”が“殺めの神”になった模様。
2、霊宝鏡月と冥衛聖籠は同じアヤメの神に仕える者だった。
3、冥衛聖籠はアヤメの神を殺したとして罰せられた。
4、その事件(アヤメの神を毒殺した事)は免罪のようだった。
5、その日一緒にいた霊宝鏡月がそれを証明できるのに、何故かしなかった。
6、アヤメの神は冥衛聖籠に恋心を抱いていた模様。
7、霊宝鏡月もまた、冥衛聖籠に恋心を抱いていた。
8、アヤメの神と霊宝鏡月は姉妹の血の契りを結び、事実上姉妹となった。
9、冥衛聖籠の死後、直ぐに亡くなった霊宝鏡月の血を村人が回し飲みして“子供”となった。それが現在3千人いるという霊宝鏡月の子孫達の元。
10、冥衛聖籠の子孫・・朝倉セイは子供の頃この村に住んでいた。
11、朝倉セイの元を辿れば村人と同じ霊宝鏡月の子孫。
12、何故朝倉セイが冥衛聖籠の遺志を継ぎ、霊宝鏡月の3千人の末裔を亡き者にしようとするのか。
13、生を断たれたアヤメの神に仕える、死を断たれた双子巫女とは・・。
「なんだか、分からないことだらけですねぇ。」
飛鳥が書き終えたノートを見ながらそう呟く。
何故この村は殺戮神である殺めの神を祭っている?
何故霊宝鏡月は冥衛聖籠の無実を証明しなかった?
何故朝倉セイに冥衛聖籠の意思が引き継がれた?
何故・・??
「あら、皆さんこれは知らなかったのですね。」
背後から君花が声をかけてきた。
その視線の先には、飛鳥の書いたノートがある。
「これって?」
「月夢村の名前の事・・。そうですか、誰も言わなかったのですか・・。」
君花は少しだけ視線を宙に彷徨わせた後で言った。
「月夢村って、本当は月の夢ではなく月無し村って書くんですよ。月無村。」
・・月無村・・??
確かに言われれば、この村の空は小さい。
けれど、それだけで月無村となるのだろうか?
「あ、でも月は出てますよ。毎晩毎晩、月夢村をほの淡く染め上げてくれるんです。」
それでは、なんで月無村なのだろうか・・?
「ねぇ・・知ってます・・?」
“冥衛聖籠様が亡くなった時・・村の上に月は出てなかったんです・・。”
君花が、フワリと笑む。
・・・違う、フワリと笑むその向こう側には何かを感じる。
何か巨大な・・。
「貴方、一体・・。」
「霊宝鏡月様の子孫達は、みな一様に恐怖に怯えた顔をしていました。そう、分かるんです。自分だけが助かろうと・・朝倉セイの暗殺を依頼したものもいました。」
君花の瞳は何処か遠くを見ていた。
その瞳に、出合った頃の君花の姿は無かった・・。
「でも、自分だけが助かろうとする人達を憎む事は出来ません・・きっと、それが人なのでしょうから・・。」
飛鳥が、君花の元から離れた。
君花の瞳が・・紫色に染まっている。
あの時見た巫女と同じ色・・いや、それよりも幾分色の輝きが鈍い。
「なんなんだよ・・これは・・。」
壮司がそう呟く。
君花を左眼で見たのだ。
「まったく、何も見えませんわ・・。」
みそのも“みた”のだ・・。
「我先にと逃げ出す人間に憎悪する事は無い・・しかし、思うんだよ・・。」
“なんて醜くおろかな人間どもなのだろうか・・とね・・。”
ニヤリと笑う君花の表情は、もはや既に君花のものではなかった。
誰なのか・・一体、これは・・・。
「冥衛聖籠の命日・・。月のなくなる日に、霊宝鏡月の子孫は皆死ぬ・・。それは明日。明日の日没後。・・霊宝鏡月の子孫は死に絶える!!」
君花が声を上げて笑う。
さも可笑しそうに、面白そうに・・笑う顔は禍々しかった。
「ひとまず外に出るぞ!」
海浬が言うか早いか、外からドンドンと扉を叩く音がした。
ドンドンドン・・・。
その音は次第に増幅し・・部屋中に広がっていく。
扉からだけでなく、そこらじゅうの壁からドンドンと激しく叩く音がする。
叩く強さも次第に強くなり、割れんばかりの騒音となって一行に襲い掛かる。
「な・・なんなんだ、これは!!」
「だれが叩いているのでしょうか・・!!?」
「この村には、村人しかいないはずよ!!」
「それが、どうして叩いているの!?」
「“みえ”ますわ!!なにか黒い者達が・・!!人々の背後に・・・!!」
壮司がドアに向かう。
引き戸が・・開かない。
何者かに外側から強い力で押さえつけられているらしい・・。
「くそっ、開かねぇっ・・!」
そうこうしているうちに、壁が激しく揺れ始めた。
叩く力が強いため、家全体が悲鳴を上げているのだ。
「これは・・人の力ではありませんね・・。」
人の力・・それにしては強すぎる。
「どうしますか!?このまま行くと家が崩れてしまうかも知れません!その前にここを出なくては・・!」
「こうなったら、実力行使しか・・。」
「ダメよ!一応身体は村の人なんだから!!」
ふっと、叩く音が鳴り止んだ。
静か過ぎる静寂・・・。
「な・・なんなんでしょう・・?」
「しっ、何か聞こえるわ・・。」
ボソリボソリと、家の外で何かが聞こえる。
耳をすませてみる・・君花の口からも、小さく言葉が零れ落ちる。
「・・るる・・ちかひ・・・かな・・。」
「な・・なに・・?」
“忘らるる身をば思はずちかひてし 人の命の惜しくもあるかな”
「百人一首・・?」
翔子の呟きに応えるかのように、家の外からもその句が聞こえてくる。
何人もの人物が、一寸のずれも無く同じ句を・・。
『忘らるる身をば思はずちかひてし 人の命の惜しくもあるかな』
「これは・・?」
「右近さんの句です。忘らるる身をば思わずちかいてし 人の命の惜しくもあるかな・・。」
飛鳥が早口にまくし立てる。
君花が、どんどんこちらの方に近づいてくる・・引き戸は一向に開く気配は無い。
けれど・・君花を傷つけるわけには行かない・・。
「歌意はこうです。“貴方に忘れられる自分の身を辛いと思わない。それよりも神をかけての私との誓いを破り、神仏の罰を受けて死ぬだろう貴方の命が惜しく思われる事だ”・・。」
それは・・一体誰の心を読んだ歌なのか・・?
それとも、誰の心の歌でもないのだろうか?
「あっ!」
誰かが小さく叫んだ。
引き戸がいつの間にか外れ、その向こうには紫色の瞳を輝かせた村人達が無表情で立っていた・・。
違う・・こんなに村人はいないはずだ。
「これ・・霊宝鏡月の子孫達・・!?」
開いたドアの先、ずっと向こうまで人で埋め尽くされていた。
パリンとガラス戸が割れる音がして、部屋の中に硝子が飛び散る。
窓の向こうにも・・無数に輝く瞳・・。
紫色の・・!
「どうしましょうか・・。危害を加えるわけにも行きませんし・・何者かに操られているとは思いますが、その何者かが分かりません。」
「多分、冥衛聖籠・・朝倉セイだと思うんだけど・・その朝倉セイが見あたらないわ。」
割れた窓からも、既に自我を失った人々がなだれ込んでくる・・。
周囲を囲まれた結果、一向は部屋の中央に閉じ込められてしまった。
抜け出る隙は無い・・。
紫色の瞳が、無数に見つめる。
その中の一人が、奇声を発した。
それが周りに伝染し奇声を発しながらこちらに近づいてくる・・!!
これは戦うしかないのか・・?
そう思った時、目の前がほの白く光輝いた。
「遅ぅなってすまなかったのぉ。ちぃーと野暮用をすましとったら、こうなってしもぉてのぅ。」
耳に聞こえてくるのは、輝きを放ちながら響く声。
空と同じような・・しかし、空とは違う声質・・きっと“風”・・。
「今から安全な所に運ぶからのぉ、ちぃーっとばかり目を瞑っててくれんかのぉ。」
その言葉を最後に、目の前が明るく輝いた・・強く目を瞑る。
・・目を開けたそこは森の中だった。
周りに仲間の姿は見られない。どうやら、別々の場所に飛ばされてしまったらしい・・。
「ここは・・どこ・・?」
周りを見渡してみるものの、木々と闇しか見られない。
シュラインは、空を仰ぎ見た。月夢村と同じく、空が小さい。
ここは一度山を下りるか村に戻るかをした方が良いだろう・・。
シュラインは携帯を取り出した。
思っていたとおり、電波は無い・・時刻は夜の9時過ぎ。
シュラインはもう一度空を見上げた。
小さな空からは北極星らしきものは見られない・・しかし、星の位置で山を降りなければならない。
星以外に目印になるものは無い・・。
しばらくして、一応の方向を決めて歩き出そうとした時・・背後で草の分かれる音が聞こえた。
ガサリと顔を出した人物を見て・・シュラインは言葉を呑んだ。
巻物で見た時と同じ顔・・。
“冥衛聖籠”
冥衛聖籠の瞳と、シュラインの瞳がぶつかる。
瞳が大きく見開かれ・・唇から綺麗な輝きを纏った言葉が零れ落ちる・・。
「俺を・・殺しに来た人ですか・・・?」
「どうして・・?」
「村で、なにかあったようです・・。それに、親族の何人かは俺を殺すべく殺し屋を雇ったとききましたから。」
「私が、殺し屋に見える?」
「・・見えません。でも・・この事件に関係している人ですよね?」
シュラインは答えなかった。
それにしても、何かがおかしい。
朝倉セイは、冥衛聖籠の末裔・・。
そして外見は・・巻物で見た冥衛聖籠そのもの。
「あなた・・だれ・・?」
「俺は・・・朝倉セイ・・。お願いです。どうか・・どうか俺を殺してください!」
冥衛聖籠・・朝倉セイがシュラインの腕を取る。
咄嗟に引こうとした腕を、凄い力で引っ張られる。
「お願いです!俺とアイツが同化する前に・・!!俺の身体と心が残っているうちに・・!!」
それはどう言う事?
そうきこうとして、シュラインの目の前は真っ白に染まった。
君花の家から森の中へと転送された時と一緒・・。
腕に感じていた手がなくなる・・。
目を瞑り、開いた所は見慣れた場所だった。
『草間興信所』
他のメンバーもそこにいた。
デスクでなにやら書類を眺めていた草間と目が合う。
時刻は10時00・・。
『明日の日没後、霊宝鏡月の子孫は死に絶える・・!!』
〈To be next・・・〉
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
0086/シュライン エマ/女性/26歳/翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員
1388/海原 みその/女性/13歳/深淵の巫女
4487/瀬崎 耀司/男性/38歳/考古学者
3974/火宮 翔子/女性/23歳/ハンター兼フリーター
4345/蒼王 海浬/男性/25歳/マネージャ 来訪者
2736/東雲 飛鳥/男性/232歳/古書肆「しののめ書店」店主
3950/幾島 壮司/男性/21歳/浪人生兼鑑定屋
*受注順になっております
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■ ライター通信 ■
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この度は『古よりの因縁』【前編】にご参加ありがとう御座いました!
ライターの宮瀬です。
なんと、7人の方にご参加いただき嬉しく思っております!本当にありがとう御座いました。
さて、内容なのですが・・前編だけではほとんど足がかり的なものだけなので“謎”が多々あります。
アヤメの神の毒殺、霊宝鏡月が冥衛聖籠の無実を語らなかった事、朝倉セイがどうして冥衛聖籠の末裔なのか、霊宝鏡月の子孫は何故あんな事になってしまったのか、アヤメの神の双子巫女“風”と“空”の事・・。
そして最大の謎は“冥衛聖籠”と“朝倉セイ”の事です・・。
全ては後編で分かることと思われます。
複雑に絡まった関係や、事件を解き明かしていきたいと思っております。
もしお時間がありましたら他の方の内容も御覧下さい。調査内容はみなさん個別に作成いたしましたので・・。
シュライン エマ様
この度は連続のご参加ありがとう御座いました!
頭脳明晰なシュライン様。今回も頭脳班として活躍していただきました!
村から森に飛ばされた際、シュライン様は冥衛聖籠・・朝倉セイと会っていただきました。如何でしたでしょうか??
これは海原みその様と対になっている部分です。ですので、もしよろしければそちらも御覧頂くと何かが分かるかも知れません・・。
なんだか書いている方がこんがらがってきてしまうような事件ですが、綺麗に後編でまとめられればと思っております。
もしよろしければ後編の方にもご参加ください。
またどこかでお逢いしました時にはよろしくお願いいたします。
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