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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


クリスマス・イブ〜貴方に贈るプレゼント〜

●オープニング 〜雪降る日〜
「あ‥雪だ〜‥‥」
 今年もクリスマスが近づいている。
 狐族の銀(きつねぞくのぎん)が何気なく外を覗き見るとふわふわと雪が舞っている。
 外はクリスマスに向けて美しいイリュミネーションが街中を賑やかにしている。

「クリスマス・イブは大切な人と過ごす日なんだよね‥」
「うん! でも私は仕事に追われる事に成りそうかな‥‥」
 雪に見とれながら話す銀に、苦笑しながら瀬名・雫(せな・しずく)が答えた。
 銀にとって、人間界での2度目のクリスマス・イブが巡ってきた。
 今年も皆が大切な人との楽しいひと時を過ごせるようにと願う。
「ボクも大切な人に贈り物を贈りたいな‥‥」
「去年は手作りチョコだったよね? 今年は他の物を作ってみたらどうかな?」
 プレゼントを贈る習慣があまりない銀には何を贈ったらいいのか分からずに悩む。

「皆に聞けばいい案が得られるかも知れないわ」
「そうだね! 今年は皆どんな贈り物をするのかな?」
 笑顔を溢して銀は嬉しそうに雫に言葉を返した。



●沙羅の弟?!
「銀くん、沙羅と一緒に大事な人へのプレゼントを考えましょうね!」
「うん! 素敵なプレゼントを見つけられるように頑張るよ!!」
 気合を入れて言ってくれる沙羅に銀はやる気を出して元気よく返事を返す。
「沙羅はプレゼントを考えるのって、とても好きだよ。何をあげたらいいのかすごく悩んじゃうんけど、大好きな人のことを思いながらプレゼントを考えるのはすごく楽しいよね‥‥」
 外は寒いので出かける前に、沙羅は話をしながら大人しくしている銀に暖かいコートとマフラーをつけてあげる。

「はい、これで準備万端だよ。さてと、街に行こうか?」
「わ〜い! 沙羅お姉さんと一緒にお買い物だね‥‥」
 沙羅も十分に暖かい格好をしてから玄関の扉を開ける。
 玄関を出ると、暖かい格好をしているとはいえ、寒さがとても身にしみて二人は思わずマフラーを、ぐっと握り締める。
 少し歩くと街並みがどんどん賑やかになっていく。
 クリスマス・イブ直前、さすがに街並みはクリスマス一色で賑わっている。
 どのお店ではクリスマス向けの小物や洋服がガラス越しに並べられている。

「すっかりクリスマスモードでいっぱいだね」
「うん、いつもよりも人がたくさん歩いているね‥‥」
 あまり人ごみに慣れていない銀は人間に接するのが好きだとはいえ、少し圧倒されているようだ。
 足を止めて息を呑み、胸がどきどきするのか左手で胸を軽くぐっと握る。
「銀君、はぐれないように手をつなごうね‥」
「えっ?‥‥うん!」
 もちろん迷子にならないようにする為だというのもあるが、人の多さに少しだけ怯えている銀の為に沙羅は銀の手を取り、ぎゅっと握り締めてあげる。
 少しすると落ち着いたようで銀に再びいつもの柔らかい笑顔が戻り、いつの間にか銀の方が沙羅の手を強く握りしめていた。

「沙羅お姉さんどうしたの?」
「ふふっ‥秘密」
 沙羅がくすくすと笑っている事に気がついた銀が首をかしげて沙羅に尋ねてきたが、沙羅は思いを心中だけに留めておく事にした。
 沙羅は銀がまるで弟のように感じて、自分に弟が出来たような感覚がして嬉しくなっていた。



●テディベア。
「うーん‥‥プレゼントは何にしよう?」
 沙羅は銀を連れてウィンドウショッピングを楽しみながら、プレゼント探しを開始する。
 お菓子やアクセサリー類、小物などいろいろな物を見てまわるがなかなかピンッ、と来るものが見つからず悪戦苦闘する。

「わぁぁ‥沙羅お姉さん、見て見て! ボクと同じ顔だ‥‥」
「ふふっ、これは狐の縫いぐるみね‥」
 狐時の自分に似た顔をしている縫いぐるみがガラス越しに飾られているのを見て、銀は不思議そうに思いながら、焦った様子で沙羅を見上げる。
 あまり人ごみの中に入って買い物をする機会が少ない銀にとって、街中に飾られているものの多くが珍しく、そして魅力的で興味津津にいろいろな物を見る。

「そうだ! 銀くん、手作りのテディベアなんてどうかな?」
「テディベア? 縫いぐるみを作るの??」
「うん。大丈夫だよ‥沙羅が手伝ってあげるよ!」
 縫いぐるみの中にテディベアが飾られているのを偶然見つけ、沙羅はテディベアを作ろうとすぐに思いついた。
 自分に作れるかどうか悩んでいる銀に沙羅が万遍の笑みを見せると、銀は沙羅に指導してもらえる事もあってテディベアを作る事を決意した。

「そしたら、テディベアの材料を買って帰ろうね‥」
「ボクも頑張って作るね!!」
 再び沙羅は銀の手をとって、テディベアの材料を買うために手芸屋へと向かう。


「わぁ〜。綺麗なクリスマスツリィー‥」
 手芸屋に向かっている途中で街一番のイリュミネーションツリィーを発見した。
 沙羅は大きなクリスマスツリィーを目の前にして、ついつい声を出してしまった。
 銀も沙羅と似たような気持ちでツリィーを見上げている。
「なんだか、クリスマスツリィーを見ていたら、今日は良い日になりそうな気がしてきたよ」
 沙羅は嬉しそうに銀に微笑みながらそう告げると、銀も沙羅に笑顔を見せて、自分も同じ事を思っているのだと伝えた。


 沙羅達は予定通り、手芸屋の店内に入る。
 中にはクリスマス向けのリボンや生地などが豊富に棚に陳列している。
「えっと、生地はあの子の好きな赤色で‥柄はタータンチェックかな。それからリボンは白にしようかな? 銀くんはどれが良い?」
「ボクは、くまさんの色と‥この深紅色のリボンが良いな」
沙羅は大好きな親友の事を考えながら、親友の好みそうな色を生地とリボンの色とのバランスを考えながらチョイスする。
 一方、銀はテディベアの色である定番の薄い茶色の生地と目に留まった綺麗な深紅色のリボンを選んだ。

「材料を揃えたし、暗くなる前に帰れそうだね、銀くん」
「今日は寒いから夜はもっと冷えるかな?」
 外に出るとまだ明るいが、とても寒い。今の時期はこれから温度はますます下がりそうだ。
 材料の買出しをした沙羅達は空が暗くなる前に家へと戻った。



●お手製のテディベア。
「銀くん、さっそくテディベアを作ろうね」
 沙羅は買ってきた型紙を銀の前に置き、テディベア作りの中でも一番簡単な作り方を教える事にした。
「型紙にそって、各パーツを布に写しとって、それから切り取っていってね」
「は〜い!」
 沙羅の手順をまねて銀も懸命に型取りをしていく。
 人間界に来てから大分経ち、銀はペンやはさみの使い方には少し慣れているので作業は意外とスムーズに進む。
 沙羅はさすがといった感じに、慣れた様子で作業を進めていく。
「銀くん、出来た?」
「うん! こんな感じでどうかな??」
「ちゃんと綺麗に型が取れてるね。今から針を使うんだけど針は刺さるとチクチクして痛いから十分に気をつけてね‥」
 型をとった後は、針と糸を使っていく。
 沙羅は銀が針を使う事に慣れていない事を知っているので、針を手渡す前にしっかりと注意するように告げてから手渡す。 真剣な顔で銀は気をつけて作業することを沙羅と約束した。
 沙羅が思っていたよりも順調に銀の手作業は上手い事進んでいるようだ。
 安心した沙羅は自分のテディベア作りに段々と真剣になっていく。

 しかし、数分して‥‥
「痛っっ‥‥」
「銀くん、大丈夫? 慌てないで手を見せて‥」
 慌てる銀の手を沙羅は慌てずに見てみると、針の刺さった所から少しだけ血が出ていた。
 しかし、あまり深くは刺さってはいなかったので一日もすれば治りそうな怪我で沙羅は安堵の表情を見せる。
「針でちくってしちゃったのね。絆創膏を貼ろうね。少ししたら血も止まるから安心して‥」
「う、うん。一瞬、痛くて吃驚したけど、沙羅お姉さんが治療してくれたから大丈夫だよ」
 沙羅は予め用意していた絆創膏を取り出して、丁寧に絆創膏を巻いて治療してあげる。
 もちろん銀の痛みはすぐにひいて、怯えること無く楽しみながら作業に再びはいる。


 ちょっとしたハプニングもあったが、再び作業を開始して数十分すると頭の部分が完成した。
 頭部が完成できれば胴体はそんなに難しくはない。
「銀くん、次は胴体を作って、頭部と一緒にくっ付けてリボンを括りつければ完成だよ‥」
 少し休憩をはさんだ後に沙羅達は再び作業を開始する。
 集中力が増して、いつの間にか時間は刻々と過ぎてしまっていた。

「うーーん、出来上がった〜」
「銀くん、お疲れ様。暖かい飲み物でもどうぞ‥」
 銀よりも先にテディベアを完成させていた沙羅は銀の為に飲み物を用意する。
 沙羅の淹れてくれた暖かい紅茶に、銀の疲れは癒されていく。

「銀くん、実はね‥‥」
 紅茶を飲み終えてから沙羅はテーブルの上にちょこんと、テディベアを置く。
「これは銀くんへのクリスマスプレゼント。少しだけ早いんだけど、銀くんにプレゼントするね」
 実は沙羅は銀が集中しているうちに、テディベアをもう一つ密かに作っていた。
「沙羅お姉さん、ありがとう」
「どういたしまして」
 銀は今日一日でもっとも嬉しそうな笑みを沙羅に向けてお礼と共に返した。


余談。
 それから24日の朝、沙羅の元へプレゼントが贈られてきた。
 中を開けてみると、中にはメッセージカードとテディベアが入っていた。
 不思議に思いながら沙羅はメッセージカードに目をやると宛名が記されていた。
「これ‥銀くんからだ‥‥」
 お買い物とテディベアのお礼、それから大好きな友達の沙羅にまだまだ不恰好ではあるが銀が一生懸命に作ったお手製のテディベアが贈られてきた。


 今日は大切な人と過ごすクリスマス・イブ。
 朝から良い事のあった沙羅だが、まだまだ楽しい一日は始まったばかりのようだ。
「私も早く、手作りのテディベアを届けにいきたいな‥‥」


祀ちゃんへvv
今年もありがとう。そして来年もその先もずっと仲良くしてね・・・v

                             沙羅より。





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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
2489/橘・沙羅 (たちばな・さら)/女/17/女子高生
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■         ライター通信          ■
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お久しぶりです。いつもお世話になっています葵桜です。
今回はクリスマスイベントのご参加、ありがとうございました。
100%個人での作成は本当に珍しいのですが、気に入って
いただけたでしょうか??

テディベアって可愛らしいですよね。
クリスマスプレゼントとして沙羅さんと一緒に作った銀のテディベアを
贈りますね。
昔、私もテディベアを作ったのですが、顔が‥形が‥バランスが‥‥(滝汗)
銀の方がよほど上手かも知れないです(苦笑)

例年よりも暖かい日が多いとはいえ、寒い日が続きますので
お体には十分に気をつけてくださいね。