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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


クリスマス、今夜は渋く嫌がらせ。〜CKI goodnight〜


 人間の深層意識の底にあるという暗黒面よりも暗い場所にその男たちは潜んでいた。彼らはコンクリートで作られた土管がいくつか積み上げた高い場所に立つリーダーを一心不乱に見つめている。近くに電灯はない。空には月もない。彼らの顔をはっきりと確認することは誰にもできないのだ。彼らの足元は砂利で埋め尽くされている……ここでじっと座っているのは難儀だ。ずっと座っていると、お尻が大変なことになるだろう。しかしそんな状況に置かれていても、なぜか彼らの目からは希望の光が放たれていた。ここに集まった総勢100人の男たちは自分で決断し、動き出し、そしてここに結集した。彼らの情報網はインターネットなんかメじゃない。そんなものに頼らずとも、いくらでも良質な噂は流れるのだ。それらが真実を語っているかどうかなど容易に判断することができる。言葉の表記だけのコミニュケーションなどとは精度そのものが違うのだ。彼らはその噂を聞き、捨て切れない思いを胸にここへ集まった。

 男たちは知っていた。今年も『あの日』が来ることを。
 男たちはわかっていた。決して『あの日』を迎えられないことを。
 俺たちはまた、この狭い日本のどこかでそれを黙って見ていなくてはならないのだ。

 リーダーの男が叫ぶ。目の前の救われぬ魂たちに訴えかけた。
 だが……その声は路地の向こうまで響くことはない。今から始まる彼の力のこもった演説は道行く人間には聞くことができない。

 なぜなら、彼らは幽霊なのだから。


 『諸君、時は満ちたぁ!』

 おおっ、やはり、いよいよか……眼下で三角座りしながら話を聞いている若い男の幽霊たちがざわつき始める。リーダーはその反応を目をつむって身体全体で聞いた。それは非常に心地よいものだ。思わずその先に続く言葉を忘れてウットリしてしまう。そして目の前の幽霊たちを差し置いて成仏しそうになった。自分だけが天に召されても仕方ないので、リーダーはそれを戒めるためにもかっと目を見開きその演説を続ける。

 『俺は100人の気持ちを怪奇探偵と呼ばれる男にぶつけてきた……! そして、俺たちに協力させることを約束させたのだ! 12月24日と12月25日に彼女や愛しい人がいながらつい死んじまった救われない俺たちで結成された「クリスマス壊滅委員会」は、ついにその実行と解散に向けて動き出すことができるのだっ!』

 委員会に所属する男どものボルテージは最高潮に達していた。狂喜乱舞する彼らの透明な身体には、クリスマスに対するさまざまな思いが詰まっているのだろう。いや、逆にその思いが彼らを幽霊にさせたのだろうか。そんな不幸な男たちがクリスマスに望むこと、それはなんとも微妙なことだった。


 「クリスマスでいちゃつくカップルに嫌がらせをしたい……?」
 『草間さん、あなたのお噂はかねがね聞いております。時には幽霊の依頼も引き受けてくれるとその辺の自縛霊にも評判なんです! どうか、どうか!』
 「そんな奴らに好かれるためにやってるわけじゃないんだよ。それに勘違いするな……お前のその依頼、引き受けるつもりはない。」

 話は数日前に遡る。街を歩けばすっかりクリスマス気分が味わえるようになった頃の草間興信所。そこでテーブルを挟んで向かい合う男たちがいた。ひとりは前述のリーダー、そしてもうひとりは興信所の所長である草間である。彼は相手の姿がしっかり見えたので中に通してしまったのだが、実際に話を聞いてみると幽霊であるということが発覚。正直その事実だけでもウンザリなのに、さらにこいつはとんでもないことを依頼してきた。彼、いや100人の幽霊たちはクリスマスというイベントのせいで成仏できないらしい。それもそのはず、彼らはクリスマスを前に死んだ男たちの魂だからだ。話の半ばである程度の展開を知った草間は徐々に表情を固くしていく。そんな相手のことなど察することなく、とにかく仲間たちの救済のために熱弁を振るうリーダー。その話は実に30分にも及んだ。

 しかし待っていた返事は『ノー』。自分たちの思いが届かないと知った途端、突然リーダーの草間に向ける視線は威圧的なものに変わった。相手の変化に驚く草間は手に持ったタバコを思わず落としかけた。

 『そうですか。ああ、そうですか。生きてらっしゃる能力者の方々に不思議な力でカップルをコケさせたり、シャンパンのコルクが顔面に当たったりするようにしてほしいという俺たちの依頼を受けないとおっしゃいますか。俺たちはね、他人の幸せで成仏なんかできないんですよ。いつも思うことは「自分が生きてたなら、きっと俺もこんな風に過ごしてたんだろうな」って思うばっかりなんです。つまり幽霊がもっと幽霊になっちゃうわけですよ。もう俺たちは自分では成仏できない存在になってしまってるんです。』
 「だからってお前、ベクトル逆にしたら成仏できるってわけじゃないんじゃないのか?」
 『草間さん……幽霊にはサンタさんは来てくれないんですよ。俺たちが成仏するために必要なプレゼントなんかくれないんですよ。とにかく俺たちは俺たちが考えた方法を実行してみたいんです! それに、俺たちは……俺たちはクリスマスにしか成仏できないんです!』
 「だから。そう思いこんでるから、成仏できないだけなんじゃ……」
 『わかりました。あなたがそこまで俺たちのことを聞いてくれないのならいいでしょう。また日を改めて来ます。その時はこの狭くてボロくてタバコくさい雑居ビルにみんなで押しかけ、全員であなたに抱きつき泣きながら懇願しま』
 「やめやめ……やめろ! 100人はやめろ! 不幸を擦りつけられるような気がしてならん! それにこんなところで暴れられたらかなわん!」
 『なら! この依頼、引き受けてもらえますか?!』

 草間は渋い顔をした。クリスマスにささやかな嫌がらせをすることで成仏の活路を見出そうとする100人の幽霊たち……彼らはおそらく自縛霊だろう。このまま追い返しても、きっと成仏する方法は他にない。無理やりこの世から引き剥がすことも能力者によってはできるのだろうが、よくよく考えてみればそれはちょっとかわいそうだ。幸せを思うがゆえにこの世との接点が深まり、結果ますます成仏から遠のくというのもなんとも皮肉な話。ならば腹を抱えて笑えるほどの嫌がらせを提供でき、さらにクリスマスに暇な能力者を探してやろうと草間は考えた。そうでもしなければ数日後、間違いなく草間興信所で『101人男祭り』が開催されてしまう。とりあえず、それだけは回避しなくてはならない。

 「わかったよ。ただその日に暇な奴がいるかどうかの問題だがな。いない時は来年まで待ってくれよ。」

 そんな内容の返事をリーダーにすると、草間は自分の事務机まで歩く。そして電話の受話器を取った。果たしてそんなことに協力してくれる能力者がいるのだろうか……


 誠に残念ながら、かなりいた。
 しかも、妙にやる気な連中が多いのが不思議だった。


 「いやぁ、クリスマスだというのに集まってもらって本当に悪いなぁ〜。」

 草間の上擦った声を聞き、事務員のシュラインは大きく肩を落とした。クリスマスだというのにこんなにたくさんの暇人が集まるとは……本当の意味で暇なのか、もしくは奇特な能力者なのだろう。でも彼女は心の中でひっそり『男祭りが開催されなくて本当によかった』と安心した。こんな狭い興信所で暴れられてはせっかくきれいにまとめてファイルしてある事件簿や調査票がバラバラにされてしまうし、何よりも草間が寂しく空しい男どもの慰み者として扱われてしまう。他力本願とはいえそれが阻止できただけでも御の字だと、彼女は気持ちを入れ替えて作業に戻った。
 彼女の質素な事務机の上にはいくつかの茶色い紙袋が置かれており、中には毛糸の束が入っている。彼女の両手に編み棒を持って、常にそれをせわしなく動かしていた。足元には完成したものを順番に入れていくビニール加工の丈夫な袋を置いてある。実は彼女、数日前からせっせと短めのマフラーを編んでいたのだ。あまりにも情けない思考をする自縛霊の話を聞き、彼女が自分なりに考えた成仏作戦がこれである。暖かな色をした糸が編み上がると同時に、ぬくもりを感じられるものに変わるのだから不思議なものだ。作戦実行日の今日、100人全員分がギリギリ間に合うかどうかといったところまで来ている。すでに零にお願いしてラッピングの準備はあらかた済ませてある。シュラインの作戦を無駄にしまいと、草間も横目で心配そうに見つめていた。

 さてさっきも説明したが、今回のメンツはやる気いっぱいである。人懐っこい無邪気な笑顔が印象的な子どもから、彼女というよりも愛人と縁がありそうなヤクザまで、文字通りさまざまな男がここに集った。幽霊のリーダーは彼らを見て思わず涙ぐむ。

 『ううっ、草間さんにお願いしてよかった……くくっ!』
 「まー、今日のことは我輩たちに任せるといいんだな〜。ニンマリ。」

 スローテンポでリーダーを慰めるのは焦茶色の髪を揺らす少年の豪徳寺 嵐だ。くったくのない笑顔がまぶしい。実は彼は付喪神なのだが、今日は少年に変身しての登場だった。しかし嵐の姿を見て、リーダーはいぶかしげな表情をする……まぁ無理もない、彼はなぜかタキシードを着ていたからだ。今からその姿をしている人間に対して嫌がらせをするというのにいったい何を考えているのか。冷たい視線が嵐に向けられるが、本人はまったくそれを気にしない。とにかく驚くほどのマイペース振りだった。彼は思い出したかのように、草間を通してリーダーにお願いしていたことに話し始める。

 「ところでリーダーさん。我輩、草間さんに頼んでメンバーのリストを作ってほしいとお願いしたが、それの用意はできてるのかな?」
 『あ、ああ。君がお願いしたんだ。何に使うのかは知らないけど……はい。』
 「ぬふふふふ……ありがとー。これがあれば大丈夫。」
 『だ、大丈夫?』
 「心配することはないんだな。我輩、なけなしの金をはたいて最高の嫌がらせを用意したぞ。まずは零さんを見るといい〜。」

 その声でリーダーの視線が零に向く。するとどうだ、彼女は今までに見たこともないくらい煌びやかで美しいパーティードレスを着ているではないか。その美しさに思わずリーダーも頬が赤くしたが、それもすぐに冷めてしまう。そりゃそうだ、今回は自分たちが成仏するためにカップルに向かって嫌がらせをしにいくのだ。何もパーティーをして成仏することなど目的ではない。リーダーの怒りは即、沸点に達した。

 『あーのーねー! 俺は100人のリーダーだから子どもにも容赦しないよ。おイタしちゃうよ。ホント、真面目にやってくれる気あるの?!』
 「わかってないんだな〜、リーダーさんは。ま、街に出ればすぐにわかることだよ。落ちついて落ちついて。」
 「そーそー、子どもの言うことなんだから。あんまり目くじら立てないの。」

 そこに割って入るのは八尾イナックという青年だ。嵐と同じくゆったりとしたテンポで話し、同じような表情で笑う。イナックがここにいるのは、彼なりに幽霊たちのことを哀れんだからだろう。なんともつかみどころのない性格だが、ここにいることが何よりの証拠だ……と思っていたら、草間の方を向いてにっこり微笑みながら口を開き、今さらとんでもないことを言い出す。

 「でも面白そうだったんだけどね〜、お話聞いた時は101人男祭りを見物するのもいいかな〜なんて思ってたんだよ。」
 「イナック……お前は俺を助けてくれるんじゃなかったのか。よく考えろ、昔の人はいいことを言った。『踊る阿呆に見る阿呆』。」
 「え? 『同じ阿呆なら、見とかにゃそんそん?』」

 想像以上のセリフを返したイナックの素朴な表情を見たまま、草間は絶句する。そしてシュラインは頭を机に向かって落下させた。『ゴン』という音と共に、首を揺らして男祭り開催の悪夢を否定する。それでも手が懸命に動いているのは素晴らしい。イナックはうなだれる彼女の近くにいって「手伝いましょうか?」とやさしい言葉をかけた。
 今さら嫌がらせをやらないということになってはここまでしっかり準備した嵐が困る。そして脇に控えているヤクザも困る。そう、この夜とこの企画に最もふさわしい男の紹介がまだ終わっていなかった。3人掛けのソファーをひとりで偉そうなポーズで座っている彼は黒澤組の元・チンピラで、現在はフリーで殺し屋をしている蜂須賀 大六である。
 げじげじ眉毛に細く垂れた目に縁なしメガネをかけており、耳と鼻にピアスをしてちょっとオシャレしているように見えるが顔の割りに大きな口と並びの悪い歯がそれを見事なまでにぶち壊しにしている。全身を典型的チンピラ風ファッションで包み、金ぴかの腕時計とネックレスが嫌味に光るその様を見る限りは誰がどう考えても彼が史上最強の助っ人だ。ただし、かなり話し掛けづらい。草間もあんまり声をかけないところを見ると、やはり内心ビビっているようだ。しかし幸運なことに今回は大六が周囲の視線を感じたのか、自分から嫌がらせについての意気込みを語ってくれた。

 「リーダー……心配することはないですよ。生きてる俺でも、彼女28年いないんですから。」
 『……………は、はい。』
 「俺ぁねぇ、今日という日のためにさまざまな嫌がらせプランを温めていたんですよ。そりゃもう言った限りは場を混沌とさせますよ。行く先々を修羅場にして見せます。」

 リーダーも草間も顔を見合わせて「お前が返事しろ」「そっちが返事しろ」とずっと目で訴えていた。丁寧に話すヤクザは扱いに困るとばかりに対応を相手に押しつけ合うふたりを尻目に、大六はタバコを吹かして余裕の笑みを浮かべている。だが、あの強面で笑われると逆にプレッシャーだ。絶好のタイミングで背筋に冷たいものが走る。ところがそんな心意気を聞かされた長身の男が大六を嬉しそうに見ながら熱く語り始めた。これまたグッドタイミングだった。

 「わかる、俺にはお前やあいつらの気持ちが痛いほどよくわかるっ! この世に生を受けて彼女いない歴ン百年、ナンパしては撃沈、ナンパしては撃沈、ナンパしては撃沈、ナンパしては撃沈、ナンパしては撃沈、ナンパしては撃沈、ナンパしては撃沈、ナンパしては撃……」
 『あの〜〜〜。』
 「おおっと! 皆まで言うなリーダーさんよ。幸せボケし、ぬるま湯に浸るあまあまカップルどもに世間の風の厳しさを再教育だ! 全部、この鈴森 夜刀に任せとけっ! びしーーーっ!!」
 『……………別にみんながみんなモテないわけじゃないんだけどなぁ、ブツブツ。』
 「ああん、なんか言ったかぁっ?!」
 『い、いい、いいや、な、な、な、なんでもありませんっ!!』
 「よぉ〜し、それならよ〜し。」

 どうやら夜刀は今回の依頼の重要な部分を聞き逃しているらしく、すでに嫌がらせすることで熱血してしまっていた。彼は半端じゃない年季の入ったモテない男らしく、勢いも全員の中では一番である。逆にそこが不安なリーダーだったがスゴい剣幕で怒られたのと、勘違いでも協力してくれてみんなが成仏できるのならそれでいいかといとも簡単に妥協してしまった。自分が草間に依頼した時もかなり強引だったが、夜刀はその上を行く豪快さんである。
 ここで草間からリーダーに説明があった。実はもうひとり助っ人が来るらしいのだが、準備とタイミングがあるので後から合流するらしい。リーダーはそれを聞いて頷くと、さっそく全員に向かって嫌がらせの開始宣言をする。

 『それではみんなを連れてきます。今日はよろしくお願いします!』

 心の芯まで冷える成仏大作戦が、今始まろうとしていた……


 場所は変わって東京の街の中。カラフルなネオンが目映く輝き、どこもかしこも仮初の白に染められている。その周りを買ってもらったコートやら手袋、果ては指輪まで誰に見せるわけでもなくかざしながら歩くカップルたちの姿はもはや幽霊たちの羨望の的。リーダーを含めた100人の幽霊は毎年の光景にかなりヘコみ始めていた。またこんな光景を見て、誰にも見えない涙を流すのか……そう思うともう泣けてくる。彼らが通りかかった近くの高級レストランの中で賑やかに、そして慎ましやかに食事している姿が非常に憎たらしい。

 「泣くな! だから今から嫌がらせすんだからよ!」
 『でも夜刀さぁ〜ん、なんだか……なんだか俺たち……っ!』
 「思ったよりみんな重傷なんだねぇ〜。あれ、嵐がいないけど、どこ行ったの?」

 イナックがきょろきょろとあたりを見回していると、なんと彼は大きな窓がはめこまれた高級レストランの中におり、しかもボーイによって一番奥のテーブルに案内されているではないか。金持ちそうな男たちはこのお子様カップルの暴挙に目くじらを立て、女もいっちょまえにおしとやかにしている零に負けるまいといやに気取り始めた。周囲の状況を見るだけで嵐の作戦がすでに成功しているのは火を見るより明らかだった。

 「お客様、ご注文の方はお決まりでございましょうか……」
 「とりあえずだな〜、この店で一番高いフルコースとシャンパンを持ってきて欲しいかな〜?」
 「わかりました、少々お待ち下さい。」

 うやうやしく礼をしてオーダーを伝えに行こうとするボーイの手を捕まえてチップを握らせる嵐。その高慢な態度を見た客はざわつき始める。あの子どもはマナーも金も、それなりのセンスも持っている。「なのに目の前の男は……」とひがむ女たちは突然として男に高いものをおねだりするのだった。どこのテーブルも騒がしくなり、店全体が嵐中心に動いているといった感じがする。その様子を外からガラスに顔を押し付けながら見ていた幽霊たちが面白そうに観覧していた。聖なる夜をきれいに美しく飾るはずが、つまらないプライドのせいで甘く切ない幻想が崩れ去っていく瞬間がまさに今なのである。

 「ほら、あんな子どもに負けてちゃ面白くないじゃない……!」
 「別に俺たちは俺たちでクリスマスを祝ってるんだから気にするなよぉ。」
 「でもせっかくのクリスマスなんだから、もうちょっと派手にお祝いしてくれてもいいじゃない!」

 方々から聞こえてくる嫉妬の言葉をしっかり確認しながら、嵐は零の顔を見てわざと店内に響く声で喋る。

 「クリスマスは一流品で祝うのが最高だね〜。こんな美人とおいしい料理が一緒に食べられて、我輩本当に幸せなんだな〜。」
 「嵐さんったら……ふふ。」

 零の受け答えはちゃーんと嵐が作ったマニュアル通りに展開される。ああ言えばこう、こう言えばそう。セリフのすべては周囲の神経を逆なでするように設定されているのだ。こんなセリフを聞いてセレブ気取りの女性は黙っていられるわけがない。しかも零はあまり食事に手をつけず、嵐の話を聞いてニコニコするばかり。実は彼女の場合は食べなくても生命維持ができるので無理に食べないだけなのだが、逆に客にとってはその余裕な態度が鼻につく。

 「あ、あんなガキに負けてるなんて……ボーイ、シャトーホニャリスを!」
 「それって確か、値段の書いてなかったワインだけど支払いの方は大丈夫なの?」
 「そっ、そんなこと気にするなぁ。俺だって本気を出せばあれくらいのディナーっ!」

 ギクシャクし始めるカップルたちの姿を見て笑いが止まらないのは幽霊軍団である。嵐の策略とは言え、こうも簡単にハマってしまうと指差して笑いたくなってしまうというものだ。嵐も外の様子に気づいたからか、シャンパングラスを窓に向け満面の笑みでそれを上げると、幽霊たちは大合唱。

 『カンパ〜〜〜イっ! バンザ〜〜〜イっ!!』

 ずいぶん幽霊たちの心がホットになってきたところで目を街中へと向けると、寒空の下を嬉しそうな表情で歩くカップルやパーティーに参加してた賑やかな連中だけを狙ってサンタクロース集団がクラッカーを配っていた。彼らは大六に集められたヤクザ屋さん扮する『仕掛人』である。いくらでも持っていってもいいというクラッカーを遠慮もなしにわしづかみする男もいるほどだ。きっと彼らは盛り上げ役で、場を盛り上げるために必死になっていたのだろう。酔った勢いも手伝い、さらにクラッカーに書かれた『あんまり飛び散りません』の微妙な広告にも騙され、その場でクラッカーを打とうとメンバーに一個ずつ手渡し、パーティー気分をますます盛り上げようと天に向かってそれを打ち上げる……! 他のカップルたちもその雰囲気に流されてしまい、同時にクラッカーを上に構えた。そこに見知らぬ人たちと奇妙な一体感が生まれようとしていた。まるでアミューズメントパークで感じられる喜びの共有に似ている。さっきまで元気だった幽霊の目にもいつのまにかうっすらと涙がこぼれる。どうやらあっという間に心が冷めて、だんだんと自分が情けなくなってきたらしい。
 なお、次の展開になる前に補足しておくべきことがひとつあるので報告しておく。大六が集めたヤクザサンタは彼らのアクションを見るや否や、風のように消えた。まるでこの後の展開を恐れるかのように……

 『パン、パァーーーン、パパパーーーン!』
 「メリークリスマス〜〜〜っ! イエェェーーーーーイっ!!」

 またも幽霊たちは悔しそうな表情で軽快な音と嬉しそうな声を聞く羽目になった。もう見ちゃいられないと誰もが視線を下げる。しかし、わずかに見えるデコレーションはえらく地味な飾り付けで、しかも色気のない茶色い粒が足元に散乱するだけのもの。なんじゃこりゃと幽霊たちが首を傾げていると、すぐにその答えが彼らの耳の奥に突き刺さった!

 「キャーーーッ、何なのよこのクラッカー! なんかネバネバしてるわっ!」
 「なっ、な、納豆クラッカーだったんだ! うわっ、ちょっとお前離れろよっ!」
 「ささ、触るなって! またくっついたじゃねーか! お前な、このセーターはなぁ……彼女のクリスマスプレゼントなんだぞ!」
 「そんなこと知るかって、さっさとどけっ! なんでクリスマスに男と抱き合ってなきゃいけないんだ?!」
 「早く私の彼から離れてって……ああっ、またくっつくわっ!!」

 半径10メートル内は見知らぬ人間をも巻き込んだ阿鼻叫喚の渦と化した。たまたまそこを歩いていたカップルたちも地面に散らかった納豆を踏んづけたせいでそこから動けなくなったりと、まさに納豆クラッカーは効果てきめん。再び笑顔に戻った幽霊たち。自分たちが見えないことをいいことに腹を抱えて爆笑し続けるのであった。

 その騒ぎはどんどん拡大していく。嵐のいる高級レストランではとんでもないトラブルが続発していた。これもすべて大六の作戦であり、彼の能力を使った一流の嫌がらせだ。自ら使役するデーモン『ホーニィ・ホーネット』の端末を使って、室内をも混乱させていたのだ。ちなみに本人は幽霊たちとは行動を共にせず安全なヤクザ事務所でパソコンを前に安穏としている。
 デーモンは命令に忠実だ。見栄で最高級ワインのボトルを購入した男の顔にめがけてコルクの栓を飛ばしたり、他のテーブルで開こうとしていたシャンパンの栓をいきなり飛ばしてカップルをシャンパンまみれにしたりともうやりたい放題。極めつけは彼氏から彼女にあーんしている瞬間のケーキの中に潜りこみ、口をあけた瞬間にそれを爆破して顔面をクリームまみれにしてしまうとまぁ、デーモンの端末はこれ以上ない悪事の限りを尽くした。平然と食事しているのは嵐と零だけ。外も中も大騒ぎで幽霊たちもどんどんヒートアップしてくる。
 そんな中、偶然デーモンの餌食にならずに済んだカップルが会計を済ませようとレジに近づいた。悲鳴が木霊する店内に背を向け、さっさと次の場所に移動しようという腹だろう。男はレジ係から金額を聞くと、胸ポケットからクレジットカードを出そうとするが……どこにも財布が見当たらない。その様子を不思議そうに見ている彼女をなんとか落ちつかせながら、自分の胸にお尻に手を入れて財布のありかを必死に探す彼氏。だが、どうしても見つからない。だんだんと遠くの悲鳴が近くに聞こえてきたのか、男はパニックになりそうな心を押えながらトイレに走った。その様子を外で見ている幽霊にとって、この状況もたまらない。そんなところにイナックがおもむろに現金やカードが満載の財布を幽霊たちに見せつけた。そう、これは中で大慌てになっている男の財布なのだ!

 「ごめんね、実は店に入る前に失敬しておいたんだ。嵐がここで作戦をするって言ったから、じゃあここのお客さんでいいかなと思って。」
 『おおーーーっ、天才的なスリのテクニックだ! 素晴らしいっ!!』

 予想以上に慌てふためいている男を気の毒に思いながらも、イナックは幽霊を喜ばせるためにがんばった。さまざまな場所で繰り広げられるトラブル劇場に幽霊たちは満足げだったが、まだまだ祭は終わらない。ネバネバを避けて通るカップルに吹く一陣の風が吹く……そう、それは夜刀が作り出した突風だった! まずは生足をさらして歩く彼女たちのスカートを勢いよくペロンとめくる!!

 『うおおぉぉーーーっ! すっ、すばらしぃぃっ! 職人芸の登場だぁぁぁぁッ!!』
 「いいねいいねいいね〜、そういうノリ大好き! 俺も燃えてくるぜぇ……さ、どんどん道行くラブラブカップルに『風のい・た・ず・ら★』でも巻き起こすか!」

 夜刀は本来の姿である鎌鼬に変化していた。こちらの方が能力にキレが出るのと、背丈が小さくなって見つからずに済むので便利なのだ。そして再び鋭い刃を使って今度は男どものベルトを切り刻み、まるで映画のようにすとんすとんと順番にズボンを落としていく!

 「きゃあっ! すっごい風だったぁ……ってええーっ! バカっ、ヘンタイっ!!」
 「な、なんだいハニー? どうかしたのかい……って、な、な、なんじゃこりゃあぁぁぁっ!!」
 「は、早くズボンを上げなさいよ、みっともないじゃないのよ!」
 「でで、でもハニーぃ。ベルトが、ベルトが……」
 「手で持って歩きなさいよ、バカっ! なんでクリスマスにそんなみっともない真似するの! 最っ低ね!」
 「あああ〜ん、そんなこと言わないでハニィ〜!!」

 「ふっ、かな〜りつまんねぇもん切っちまった。」

 幽霊たちの拍手喝さいを全身に浴びながら、夜刀はずんばらりと今度は男のズボンのお尻を切っていく。そんな小動物の活躍を見ながらイナックも嬉しそうにしていた。彼は今、幽霊たちが外に目を向けている隙に会計であたふたしていた男の前に来ていたのだ。

 「み〜んながんばってるねぇ。あ、お兄さん。これそこに落ちてたんですけど……もしかして?」
 「ああっ、これ俺の財布だぁ! ありがとうありがとう、これ少ないけどお礼に取っておいて!」
 「まーまー、そんな気遣いは別にいいよ。でも頂けるのなら遠慮しないけど。」

 アフターフォローも商売の内。イナックはしっかりちゃっかりガッチリしていた。イナックのおかげで何とか穏やかな表情に戻っていく男だが、今度は姿を消した嵐のいたずらに悩まされる運命だった。彼は近くにあったシャンパンを冷やす氷を一粒持って、男の背中にそれを投げ入れたのだ!

 「ありがとう、本当にありがどお、おごごごごーーーっ、冷てぇーーーーーっ!!」
 「……どうかしました?」
 『イナックさん、イナックさん。これは我輩の嫌がらせなんだな〜。』
 「まだやるの? 幽霊の皆さん、そろそろ笑いすぎで死ぬんじゃない? さっきから笑い転げてる人満載なんだけど……」

 もうずいぶん満足している幽霊も出始めていたが、嵐は新たに始めた氷を使った嫌がらせをやめようとはしない。男にも女にも容赦なく背中ひんやりの洗礼を与えていく。もはや、この場は混沌としてきた。イナックも結局「ま、いっか」と言い、このまま状況に流されることを決めた。


 そんな時、草間とシュライン、そして嵐よりも幼い小学生くらいの子どもが現場にやってくる。派手に幽霊を楽しませている連中を見て皆一様に苦笑いを浮かべつつ、シュラインたちが考えた作戦の準備ができたので近くの空き地に集合するようにと幽霊を呼びにきたのだ。そこで少年はズボンのベルトを斬る小動物を見つけて大きな声を上げる。

 「ああーっ、兄ちゃん何やってんだよ! もう青年しっと団のみんなも満足しただろうからそんなことやめろよ!」
 「ふっ、鈴森家三男の鎮くんはオトナのことがよくわかってない。これは試練なんだ……これは攻撃では断じてない。これはカップルへの試練なんだっ!」
 「……………オトナの事情はわかんないけど、兄ちゃんのことならわかるぜ。どーせ自分がモテない腹いせにそんなことやってるんだろ〜。」
 「ぐさっ!」

 「あら、仲のいい兄弟じゃない。さ、とにかく今からは幽霊さんたちを救いましょ。武彦さん、とりあえず事態を収拾させて!」
 「リーダー! リーダー! まだ成仏してないんだったら笑ってないで、依頼しに来た時に話していた空き地に全員を移動させろ!」
 『うひひひ、うひゃひゃひゃひゃっ……って呼びました?』
 「二度も言わせるな!」
 『は、はいぃぃ! みんな、撤収〜! 仕掛人の皆さんも一緒に撤収〜〜〜っ!』

 リーダーの号令で街中を混乱させた能力者やそれを見て大笑いしていた幽霊たちは寂しい路地の奥へと消えていく。その場に残されたのは運悪く被害に遭った哀れなカップルやパーティーをしていた皆さんの悲鳴と怒号といらぬ誤解だけだった。


 前に決起集会が行われた寂しい空き地にはきれいにラッピングされた袋がひとつずつ置かれていた。それには金色の文字で『Merry X'mas』と書かれたメッセージカードがついており、幽霊たちはいぶかしげにそれを見る。

 『これは……いったいなんでしょうか?』

 さっきまでの大はしゃぎがウソのようだ。すっかり素に戻ってしまった彼らは途中からみんなの前に姿を現したシュラインに目を向ける。すると彼女は当たり前のように言った。

 「あれはあなたたちへのプレゼントよ。それと全員分のショートケーキを用意してあるの。残った時間はゆっくり落ちついて、ね。きっとクリスマスが終わることにはみんな成仏なり昇天できるから。」
 『あ、姐さん……っ!』
 「誰が姐さんよっ! さ、早く包みのあるところに座りなさいな。今からケーキを渡すから。」

 嫌がらせでお腹いっぱいになっていた幽霊たちだったが、思わぬところで別腹を膨らますことになった。彼らは包みを開き、シュラインが必死で編み上げた短いマフラーを手に取ってしばらく黙っていた。どれだけドタバタを見て騒いでいても、結局は人間であり自縛霊である。やはり思うところがあるのだろう。彼らはしばし手に伝わるぬくもりを感じてじっとしていた。
 周りの空気が湿っぽくなる前に、きれいに着飾ったままの零やシュラインが周りの幽霊たちにケーキを配る。そして一口だけあーんさせて無理にでも食べさせるのだった。子どものように喜んで食べる者、やわらかな笑みを浮かべながらお辞儀した後に頬張る者……皆それぞれこの好意に甘えた。ところがある場所では変わった配り手が奮闘していた。それは嫌がらせにはまったく関与していない鈴森 鎮である。彼は小さな鎌鼬の姿でピョンピョン跳ねながらケーキを運んでいた。そして幽霊に向かって小さく「くぅう?」と鳴いてカワイコぶり、だだっこのように身体をくねらせる。するとその愛らしい動作に感激した幽霊たちが『ありがとうな』と礼を言いながら、そのふわふわスベスベの毛の生えた頭や背中をなでるのだ。その時の動作もばっちり小動物チックである。これこそが鎮の「青年しっと団の皆さんがすっかり忘れていたスィートな感情をもう一度!」作戦なのだ。

 (『大成功〜♪』)

 鎮は作戦が当たって大喜び。嬉しそうな表情を咲かせている幽霊を見ても言葉を発しないように注意しつつ、次のケーキをいそいそと運ぶ。するとケーキの箱の前では手伝いもせずに人間の姿のままでどっかりと腰を据えてケーキを食べている夜刀が話しかけてきた。

 「ご機嫌だな、弟クン。」
 「くぅう〜〜〜♪」
 「そーいや、お前も彼女いない歴何百年じゃなかったっけ?」
 「……………ムカッ。」
 「おっと、そんな顔するなよ〜。せっかくの作戦が台無しだぜ? まー、家に帰ったらいつもみたいにハムスターと一緒に遊ぶんだな。」
 「それはそれで楽しいからいいんだよ〜。ヒソヒソ。」

 兄の妨害にもめげず、献身的に働く弟の鎮。夜刀は嫌がらせできただけで大満足なので、もう働く気などさらさらなかった。後はご相伴に預かって帰るだけと心に決めていた。それは嵐もイナックも同じだ。

 パーティーもそこそこで、リーダーが全員を代表して草間たちに挨拶する。

 『皆さん、貴重な時間をありがとうございました。たぶん、あっちに行けると思います。残った奴に関しては元の場所に戻る約束になってますから安心してください。俺たちのクリスマスはもう終わりです。』
 「ひとりでも余ったら夢見悪いからな。祈祷師でも呼んで無理にでもあっちに行ってもらうぜ。」
 『ははは……大丈夫ですよ。胸がすっきりしましたし、それにこんなに暖かいもてなしも受けました。何も思い残すことはありません。後は……ただ消えていくだけ……』

 そんなことを言っているうちに、幽霊たちの姿がだんだんぼやけていく。リーダーが言う通り、きっと時間なのだろう。彼らの心は本当にあんなことで救われたのだろうか。それとも神がよっぽど哀れんで情けをかけてくれたのだろうか……それは誰にもわからない。イナックは何度も目をこするって彼らを見るが、さっきまでのようにはっきり映ることはなかった。リーダーの言う通り、別れの時が来たのだ。

 『何のお返しもできませんが……本当にごめんなさい。』
 「謝ることなんてないわ。あっちでも今日のことを思い出して笑いなさいよ。」
 「あっちでも元気でな〜!」
 「鎮よ。お前な、あっちはあの世だっつーの。元気もへったくれもあるかよ!」
 『元気……ですよ……』

 そうつぶやくと、彼らの姿は消えてなくなった。
 空き地に静寂が戻る。それはあまりにも寂しい光景だ。そこには何も残っていない。ケーキを置いた紙皿も、プレゼントも、彼らがいた賑やかさも全部なくなってしまった。そこはまるで残された者たちの心の中のようでもあった。夜刀もさっきまで笑っていた奴らが急にいなくなったことに違和感を感じたのか、近くにあった石をそっとつま先で弾く。その表情はシュラインや零たちと同じで少し寂しそうだった。
 その時……目の前にいくつかの白い粒が舞い降りた。その数はだんだんと増えていき、冷たさを帯びたそれは草間たちの周りを風とともに駆け抜ける。それは清らかな川で戯れるホタルのようだ。決して激しくは降らず、ただ白い雪は空から舞い落ちるのだった……

 「これは……偶然、なのか?」
 「バカね、武彦さん。これはお返しよ。あの人たちからの報酬じゃない。」
 「そーそー。私もそう思いましたよ。」

 シュラインもイナックも口を揃えてそう言うと、草間は静かに頷いた。

 「依頼料、高くついちまったな。報酬がこんな風情とは……まったくあいつらにしては上出来だよ。」

 街の明かりを乱反射させて空き地を照らす雪を、全員がしばらくじっと見ていた。ゆっくりとクリスマスは幕を閉じていく。



 その後、シュラインは草間と零と一緒に興信所へと戻っていた。雪は地面を覆わない程度に降り続けている。とても幻想的な夜だった。
 彼女はふと思い出したかのように話し出す。

 「ああ、武彦さんと零ちゃんにもクリスマスプレゼントがあるんだった。1日遅れだけどもらってくれる?」
 「まさか時間がなかったからって、短めのマフラーじゃないだろうな?」
 「失礼ね、武彦さん用の膝掛けと零ちゃん用のカーディガンよ。幽霊騒ぎはできあがった後の話よ。」
 「私はどんなものでも嬉しいですよ、シュラインさん。」
 「あら、ありがと。じゃあ明日は興信所のお留守番をお願いするわね。」

 零はその言葉を聞いて小さく首を傾げた。するとシュラインは武彦にあることを伝える。

 「クリスマスは仕事で埋まっちゃったけど、逆にレストランの予約は楽でよかったわ〜。武彦さん、報酬代わりに明日……いえ、今日の夜は付き合ってもらうから。」
 「俺がうっかり財布を落としたりしなきゃいいがな。それにテーブルの近くに金持ちがいないかちゃんと確認しただろうな。そういうのが近くにいるとみっともない目に遭うらしいぞ。」
 「え……?」

 嫌がらせを実行した男から話を聞き出していた草間は意地悪に笑って見せた。だが26日なら何の気兼ねもなくディナーが楽しめそうだと内心では安心していた。シュラインや鎮を除いた今回の依頼人を敵に回さなくてよかったとつくづく思う草間であった。


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)    ■
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【整理番号/ PC名 /性別/ 年齢 / 職業】

4378/豪徳寺・嵐    /男性/144歳/何でも卸問屋
0086/シュライン・エマ /女性/ 26歳/翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員
0630/蜂須賀・大六   /男性/ 28歳/街のチンピラでデーモン使いの殺し屋
2430/八尾・イナック  /男性/ 19歳/芸術家(自称)
2320/鈴森・鎮     /男性/497歳/鎌鼬参番手
2348/鈴森・夜刀    /男性/518歳/鎌鼬弐番手

(※登場人物の各種紹介は、受注の順番に掲載させて頂いております。)

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■         ライター通信                 ■
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皆さんこんばんわ、市川 智彦です。クリスマスのドタバタコメディーをお送りしました。
最後は皆さんのプレイングもありまして、ちょっときれいに終わることができました。
でもエンディングは……実はそれぞれ違います。その辺もチェックしてみて下さいね!

毎度、シュラインさんには楽しいプレイングを書いていただいております〜。
今回は登場人物の中では紅一点ということもあり、女性らしい素晴らしい発案でしたね!
おかげさまでラストの感動的なシーンに繋がりました。あれ、これギャグだったはず?(笑)

今回は本当にありがとうございました。また別の依頼やシチュノベでお会いしましょう!
でもこういうことって、男だけで起こるわけじゃないですよね……ふふふ。