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誰かが見ている
●オープニング【0】
「誰かに見られている?」
いつもの草間興信所――新聞を読んでいた草間武彦は、机を挟んで目の前に立っている草間零の言葉を顔を上げて繰り返した。こくんと頷く零。
「……もう少し詳しい話を聞かせてくれないか」
新聞を畳み、改めて零の顔を見る草間。一呼吸置いてから、零が話し始めた。
「この2、3日のことなんですけど……お買い物に出かけると、どうも視線を感じるんです」
「姿は見たのか?」
草間の質問に、零は頭を振った。
「視線の主は1人か?」
「いえ。たぶん……複数だと思います」
「一度に複数なのか?」
「それはバラバラで。あっ、たまに一度に複数もあった気がします」
「ふむ……」
草間は零から一通り話を聞くと思案顔になった。
(零の場合、狙われる要素が0ではないからな……。まあ、杞憂であればいいんだが)
その時、事務所の扉が開いていつも顔を出す面々が入ってきた。零が挨拶を言った。
「あ、いらっしゃいませ」
「お、いい所に来たな。ちょっと調べてほしいことが――」
さて……誰が零のことを見ているのだろうか?
●誰が見ている?【1】
夕方過ぎ――気が付くと、事務所には人が多く集まってきていた。今の所、草間と零を含んで10人がこの場に居た。草間から話を聞いて居残ったり、連絡を受けてやってきた者など様々である。
「うっわ、キショ!」
眉をひそめ嫌悪感丸出しにしてそう言ったのは、今この場に居る者の中では最後にやってきた村上涼であった。草間から事の概略を聞いての第一声が、この言葉だった。
「……何でそんな輩、今まで放っておいたのよ。聞いてる、おっさん?」
ぎろりと草間を睨み付ける涼。草間がすぐさま反論した。
「聞いてるよ。あのな……俺だって今日知ったんだ。分かってりゃ、すぐに対策取ったさ」
「そうねえ……私もさっき聞いてびっくりしたもの」
草間に同意とばかり、シュライン・エマがうんうんと頷いて言った。零に近しい位置に居る2人が揃ってこう言うのだから、零自身が報告しなければさらに発覚は遅れていたことだろう。
「でもほらアレよ。視線とかって、結構気のせいだったり自意識過剰の産物だったりすること多いんだけど、フツーの女の場合は。でも零ちゃんでしょ? 間違っても単なる気のせいとかじゃないわよね」
涼は大きく頷きながら一気に捲し立てた。それから少し息を吸い込んで、さらにこう言った。
「おっさんにストーカーの5人や10人ついても慌てるこたぁないけど、零ちゃんなら話は別よ」
「おいっ! 俺ならいいのかっ、俺なら!!」
「うん」
草間が激しく突っ込むと、涼は冷静に答えを返した。はい、草間の負け。
「むう……ともあれ、か弱い乙女にストーカーとは許せんな。お、ありがとう」
零が運んできてくれたお茶を受け取りそう言ったのは、丸顔髭面に黒縁の丸眼鏡をかけている山男のような風貌の中年男性――フリーライターの鷹旗羽翼だ。
「放置しておくと、エスカレートする一方だからな。ストーカーって奴は」
仕事か何かでストーカーについて調べた経験でもあるのか、羽翼が続けて言った言葉には何とも実感がこもっていた。
「ただ、まずはもう少し詳しく事をお聞きしないと、適切な対策も……」
いつもながらの和服姿で事務所を訪れていた天薙撫子は、土産として持参していた栗鹿の子をテーブルの上に出しながら零の方に顔を向けた。確かに、こちらが有効な対策を取るためにはより詳細な情報が必要である。草間が大きく頷いた。
「視線は必ず感じるんですの? それから帰るまでずっと?」
「どこへ行っても視線を感じるのか、それとも特定の場所に行った時のみなのか。教えていただけませんか?」
学校帰りか、レトロなデザインのセーラー服に身を包んだ黒髪の少女――篠宮夜宵の質問と、撫子の質問の言葉が重なった。系統としては2人とも同じ質問である。
「この2、3日はお買い物に出かけると必ず感じられました。ずっとではなくて、帰る頃には感じられませんでした。場所は……ごめんなさい、分かりません。お買い物に行くお店はあまり変わりがありませんから」
2人にぺこんと頭を下げて零が答えた。特定の場所うんぬんは期間が短いゆえ何とも言えないが、買い物中に何がしかの視線が零に向けられていることは間違いない。帰路を追いかけてこないのはその気がないのか、あるいはタイミングを計っているのかもしれないけれども。
「今の所、殺気はないのよね……?」
シュラインが零に尋ねる。その点は重要である。視線が殺気を含んでいるのなら、その主は明らかに零に対し何らかの敵意を抱いていると考えられるのだから。
「殺気かどうか分からないんですけど、じっと見られているような感じは……あったと思います。一度に複数はなかったですけど、たぶん2人ほど……?」
「微妙ねえ」
思い出しつつ言葉を選ぶように答える零の頭を、シュラインが軽く撫でてあげた。
「視線を感じるくらいだから相手は近くに居る、ということか」
撫子が出した栗鹿の子を摘みながら、ぼそっと真名神慶悟がつぶやいた。
「もっとも。千里眼のように、視線のみが近くにあるということもあるのかもしれないが。……怪しい者は見かけたのか?」
お茶を一口飲み、慶悟が零に尋ねた。
「いいえ。それらしい人の姿は見ていません」
「話だけでどちらか判断するのは難しい、か」
零の答えを聞き、慶悟はもう1つ栗鹿の子に手を伸ばした。
「……興信所に用がお有りではないのでしょうね。少なくとも、今のお話を聞く限りではそう感じました」
少し思案してから、静かに言う夜宵。すると羽翼が立って窓のそばに行き、物陰から外の様子を窺った。
「ふむ。見た所、誰かがここを見張ってる様子はないな。よっぽど上手に姿を隠していたなら分からんがね」
豪快そうな風貌の割に、羽翼は現状を冷静に判断しようとしていた。フリーライターらしいといえばそれまでだが、何気に大切なことである。
「うち狙いの可能性を仮に外すなら、零本人に用があるのか、それとも買い物に来た奴なら誰でも狙われているのか……になるか?」
皆に尋ねるように草間が言う。するとソファに深く腰掛けていた細身の青年――上総辰巳が、ふうと小さな溜息を吐いてつぶやいた。
「理由をあれこれ考えるよりも、捕まえて吐かせた方が早そうだな」
「全員をか?」
「普通に考えて、同時に複数が別目的で1人を付け回すことはないだろう。いくらなんでもそれは不自然だ。論理的じゃない」
聞き返した草間に、辰巳がきっぱりと言った。さすがは進学塾の数学教師といった所か。
「その視線は1人の時にしか感じない訳か?」
零に尋ねる辰巳。しかし、零は首を横に振った。
「店先でお買い物をしている時に、視線を感じたこともありました」
「ふん……なるほど。それから草間、お前も何か心当たりはないのか?」
辰巳の質問の矛先が草間へと向いた。じろりと草間を睨む辰巳。
「ああ?」
「家事手伝いの妹より、お前の方が恨みやトラブルの類は引っ張ってきやすいだろう? 本人の面の皮が厚いなら、家族にプレッシャーをかけてくるのはその手の類の常套手段だ。……何かあるなら先に吐け」
淡々と、だが重要な質問を辰巳は草間に投げかけた。
「恨みか……」
辰巳から視線を外し、草間が苦笑した。
「ないとは言わないが、特定は出来ないぞ。ちなみに、俺はこの数日に視線を感じた覚えはない」
探偵稼業は辰巳が言うように、恨みやトラブルの類を呼び込みやすい。単なる素行調査でも、調査の目的によっては対象となった者から逆恨みをされなくもない訳で。例えば、調査結果によって結婚が破談になったとか……。
「オカルト系に芸能系、それから素行調査系、エトセトラエトセトラ……」
草間の言葉を裏付けるように、シュラインが指折り数える。どの方面から恨みを受けてても、何らおかしくはない。
「あの……」
その時、ここまで皆の話をただ黙って聞いていた海原みなもが口を開いた。夜宵同様にセーラー服姿であるみなもが、学校帰りにここへ寄ったのは明白である。
「もしかして零さん、写真撮られて雑誌に載ったとか、ネットで公開されているとかありませんか」
「何だそりゃ?」
草間がみなもに問い返す。予想外の言葉が出てきて、一瞬理解出来なかったのだろう。
「あー……なるほど。零ちゃん可愛いものねぇ」
みなもの言葉を理解した大和鮎が、くすりと笑って言った。今更改めて言うことでもないが、零の容姿は十二分に可愛らしい部類に含まれている。零に魅かれた何者かが、勝手に写真を撮ってどこぞに送っていたとしても別に不思議ではない。
「ただ、そうだとしても視線が1人じゃないってのがねぇ……。それが悪意にしろ好意にしろ、そんなに危険がないんでしょうけど、零ちゃんなら。でも、複数となると厄介よねぇ」
零の顔を見て、しみじみと言う鮎。視線の主が1人であれば、写真狙いのストーカーだとか、あるいは単に一目惚れをした者なのかもしれないが、複数となるといやはや分からない。
「もう一度確認するが、別に襲われた訳じゃないんだろ?」
もぐもぐと栗鹿の子を食べていた藤井雄一郎が、湯飲み片手に零に尋ねた。こくんと頷く零。まあすでに襲われていたのなら、今時分はもっと大事になっている訳で。
「……気のせいか、何か背後に組織的な物を感じるんだが」
ちらっと草間を見て首を傾げる雄一郎。残念ながら雄一郎、ここへ出入りするようになったのは最近のこと。それ以前に何かあったとしても、それについては何の情報も持ち合わせていなかった。
「敵が多いからな……思ってるより。ま、追々に分かるさ」
苦笑し、自嘲気味に言う草間。その言葉に合わせ、シュラインや慶悟、撫子らが静かに頷いた。零は黙ったまま何も答えなかった。
「単純なファンの仕業ならいいんだが……隠れてというのは意地が悪いか。だが組織的犯行でも質が悪い。よからぬ機会を狙ってのことなら、用心せねばならないからな」
慶悟はそう言って、湯飲みに残っていたお茶を飲み干した。
「もうちょっとあれこれ絞り込んでみましょうか。ね、零ちゃん。覚えてる分でいいから、ここ数日何があったか教えてくれる? 出来れば詳しく」
「あっ、零ちゃん! 確認したいんだけど、買い物に出る時間は決まってる?」
シュラインが零にここ数日の行動を尋ねようとした時、涼が思い出したように声をかけた。
「あ、はい。ええと、最近はいつも午後の4時前くらいに出て……」
そして、零が質問に答えようとした瞬間である。事務所の玄関の扉が勢いよく開かれて、1人の女性が駆け込んできたのは。
「零ちゃんが『ストーカー』に付け回されているですって!?」
そう驚いた様子で駆け込んできたのは、撫子の叔母にあたる宮小路綾霞であった。その綾霞の勢いに、その場に居たほとんどの者が驚いていた。
思わず草間が撫子を見ると、こくんと大きく頷いた。どうやら撫子が綾霞に連絡したようだ。
「ああよかった、無事なのね! ……大丈夫、私が居るから心配ないわ」
零の姿を見付け、優しくぎゅっと抱き締める綾霞。抱き締められた零は目を丸くしていた。……いやいや、とりあえず落ち着いてくださいな、綾霞さん。
綾霞を落ち着かせてから少しして、途中になっていた零への質問を再開させた。視線を感じるようになった辺り前後の零の行動を、シュラインが表にまとめてゆく。視線を感じる前の約1週間と、感じるようになった後3日間、各々分けて記す。都合10日間の零の行動が書き出されていった。
「あのな……道案内とかそういうのは別にいいから、絡まれていた娘を助けたなんて話は報告してくれ。後でまたどうなるか、分からないんだからな」
完成した表を見て、溜息混じりに草間が零へ言った。どういうことかというと、視線を感じるようになった4日前に、路地裏で不良に執拗に誘われていた女の子たちを助けていたということに対しての言葉である。何でも、自分の方へ女の子たちが逃げてきたから、手を引いてどうにか不良たちを振り切ったのだという。
「ごめんなさい……」
しゅんとなる零。零としては草間に心配をかけたくなかったから、報告をしなかったのであろうと思われる。
「それにしても、一日一善のサンプルモデルって感じがする行動表だわ」
表を見て、感心したように言うシュライン。毎日何かしら、零はいいことをしていたのである。
例えば視線を感じるようになった1週間前には、緑の髪の女性に道を尋ねられて教えたそうだ。6日前には、信号のない横断歩道を渡ろうとしていた老婆の手を引いて一緒に渡ってあげたという。5日前には道の真ん中に鞄の中身をぶちまけた学校帰りの少年を手伝い、一緒に拾い集めたり……そんな感じのことが、毎日1つは表に記されていたのだ。
「本当にいい子ね、零ちゃんは」
綾霞はまたもや零をぎゅうと抱き締めたのであった。
●システム構築【2A】
翌日、午後4時過ぎ――草間興信所には何故か対策本部が設置されていた。本部長は綾霞である。何でもここで陣頭指揮を取るのだそうだ。
「不埒な理由があって零ちゃんを追いかけ回しているのでしたら……『きつい灸』を据える必要がありますわ。2度と馬鹿なことをしないように」
表情固く、きっぱりと言い放つ綾霞。ああ……この人は120%本気だ。
「……どうでもいいが、刑事事件沙汰になるのはごめんだ」
呆れたようにつぶやいた草間は、みなもが買ってきた大量の雑誌に目を通していた。いわゆるその手の写真が掲載されていたりする雑誌たちである。みなもが一度零の写真が掲載されていないことを確認してはいるのだが、念には念を入れて草間も見直しているのだ。
「ネットの方にもなかったらしいが……」
「そちらは配下の者に調べさせていますわ」
草間が皆まで言う前に、綾霞が言った。さすがは宮小路財閥の副総帥、やるとなったら徹底的だ。
「うー……さすがに夕方になると寒いな。今の所、周囲に異常はない。怪しい奴は見当たらないな」
そこへ事務所の周囲を見回っていた雄一郎が、一旦中へ戻ってきた。零が買い物に出かける前から見回っていたのである。
「そうなると、零が出かけたのを見計らっている訳じゃない、ということか」
「たぶんそれは正解だろう。話を聞いた感じだとなあ」
急須に用意されていた熱いお茶を湯飲みに注ぎ、雄一郎は草間に言った。どうやらただ見回るだけでなく、聞き込みも同時にやっていたようだ。
「……ところでこれは?」
雄一郎はお茶をすすりながら、テーブルの上に所狭しと並べられた機材たちに目を向けた。何台もの携帯電話に、録音機材やらミニスピーカーやらマイクやらがくっついている。色々と配線も複雑そうである。
「それは本部長に聞いてくれるとありがたいな」
苦笑して雄一郎に言う草間。これは綾霞が用意した機材であった。もっとも元のアイデアを出したのは、シュラインであるのだが。
シュラインが、零に携帯電話とイヤホンマイクをつけ、連絡を取り合おうと提案した所から発展し、こういう形になったのである。これによって、対策本部を中継して全員が連絡を取り合うことが可能となったのだ。
「そういえば、まだお渡ししていませんでしたわね。どうぞこれを」
と言って、綾霞は雄一郎にも携帯電話とイヤホンマイクのセットを手渡した。
「あー……ひょっとして、ここいらでちらほら見かけた別の意味で怪しそうな人間も……?」
ピンときた雄一郎が、綾霞に尋ねた。すると綾霞はにっこり微笑んでこう答えた。
「ええ」
……恐るべし、配下の配置も万全のようだ。無論、事務所の周囲だけでなく、零たちが今居るであろう辺りにも――。
●バズーカ砲が狙っている【4】
「ちょうど放課後なんですよね」
みなもが何気なくつぶやいた。零に付き添って、一緒に買い物へ出ていた最中のことである。
「はい?」
「ほら、制服姿の人も結構見かけるじゃないですか……って、あたしもそうですけど」
聞き返した零に、みなもはふふっと笑って言った。言われてみれば、制服姿の少年少女たちとそれなりに擦れ違っていた。
「あ。だからあの人たちも制服姿だったんですか」
ぽんと手を打って、零が納得したように言った。それを聞き、やはり一緒に居た鮎が零に尋ねた。
「あの人たちって誰のこと?」
「その……不良の人に誘われていた人たちの、です」
「……ですって」
鮎は少し苦笑して、衣服についていたマイクへ語りかけた。この会話も、ちゃんと対策本部に届いているのだ。
「まだ、怪しそうな人は見当たりませんね」
小声でみなもが零と鮎へ言った。さりげなく周囲を見回してみたのだが、視界にはそれらしい者の姿はない。
「零ちゃんも視線は感じない?」
「あ、はい、まだ」
鮎が尋ねると、零はこくんと頷いて答えた。そして自分の衣服をちらっと見て、今度は零が鮎に尋ね返した。
「そういえば、いいんですか? わざわざこんないいお洋服着させてもらって……」
「いいのいいの。零ちゃんなら似合うって思ったし、実際着た姿見たらその通りだったし」
にこにこと笑って答える鮎。実は零が今着ている衣服は、鮎が持ってきてくれた物であったのだ。
「んー、せっかくだからもっとお洋服買っちゃいましょ。ほら、そこにお店あるし。ねっ?」
鮎はそう言い、零の腕をつかんで近くの洋服屋へと引っ張ってゆく。
「えっ? あっ、あのっ……」
「いいからいいから」
戸惑う零などお構いなしに、鮎は洋服屋へと入っていった。みなもも慌てて後を追いかけた。
洋服屋に入った3人。しばし鮎が零を着せ替え人形みたく、色々と衣服を当てて楽しんでいたが、30分ほどして零だけが店の外へと出てきた。
「じゃあ零ちゃん。あたしたちはもう少しここでお洋服見ているから、また後で追いかけるわね」
店の扉から顔だけ出して、鮎が零に言った。どうやら鮎とみなもは、まだこの店に居るつもりのようだ。零はこくこくと頷くと、1人でまた買い物の続きへと向かった。
しかし――そんな零の姿を、1台のカメラが捉えていた。まるでバズーカ砲みたく巨大な望遠レンズをつけたカメラが。
それを抱えていたのは、ちょっと小太りな青年であった。レンズを零へ向け、連写する青年。シャッター音が何度も鳴っていた。
青年としては至福の時間だったかもしれない。が、その時間もすぐに終わりを迎えた。何故なら……首筋に、ひんやりとした冷たい物を感じてしまったから。
「はい、そこまでー。相手の許可もなく撮るのって犯罪よ」
いつの間にか青年の背後には、金属バットを手にした涼が立っていた。撮影に夢中になるあまり、涼が近付いてきていたことにも気付かなかったようだ。
青年はおとなしくカメラを離し、ゆっくりと両手を上げた。青年のその判断は非常に正しかった。そうしなければ、きっとカメラもろとも涼に成敗されてしまっていただろうから。
「こちら1名捕獲、応援願いまーす」
マイクに向かってそう語りかける涼。じきに誰か、本部の指示を受けてやってくることであろう。
その時、零が歩く方向を変えて涼たちの方へとやってきた。だが、青年はやってきた零の顔を見て愕然とした。何故なら……全く顔が違っていたからである。
「……上手くいきましたか?」
そこに居たのは、零が先程まで着ていたのと同じ衣服に身を包み、ご丁寧にカツラまでつけたみなもであった。実は洋服屋で、囮となるべく零と入れ替わったのである。
洋服屋には予め鮎が話を通していた。そう、零をわざわざ引っ張っていったのは偶然などではなく、全て計画の上でのことであったのだ。ちなみに本物の零は、衣服を着替えて裏口からとっくに出ていっていた。今頃は、裏口で待機していた夜宵と一緒に買い物を続けていることだろう。
「本部から指示があったから来てみたけど……まさか簡単に引っかかるなんてねー」
やや呆れたように涼が言うと、青年はがっくりと肩を落としたのだった。
●ためらうつもりはない【5A】
さて、先述の通り、着替えて裏口から出ていった零は、今度は夜宵とともに買い物を続けていた。
「……どうですか、感じられますか」
「いえ、今はまだ」
小声でひそひそと会話する夜宵と零。今の所、視線は感じられないらしい。とりあえず普通に買い物を続ける2人。
そんな2人から少し距離を置き、追いかける者の姿があった。辰巳である。辰巳は2人の様子を窺いつつ、周囲に怪しい者や気配がないか注意を払っていた。
(1人は捕まったようだが……それでも来るかどうか、だな)
不審な者が1人捕まったことは、零や夜宵たちにはもちろん、辰巳にも連絡が届いていた。連係しての行動ではないかと疑っている辰巳は、もし1人捕まったことが向こうにも知れているのなら、来ない可能性もあると考えていた。
(……分かってて来るのなら、よっぽどの自信家か、大馬鹿かのどちらだろうけどな)
はてさて、果たしてどちらであるのだろう。それはじきに分かる話である。
数分後、零が小声で夜宵に話しかけた。
「今……一瞬、感じたような気がします」
「どちらの方ですの」
小声で聞き返す夜宵。零が視線を感じた方角を答えると、本部を経由して辰巳へも伝わった。夜宵が振り返ると、辰巳は2人の方へ軽く視線を送ってから、指示された方へと向かう所であった。
一旦方角が分かれば、気配を追うことは辰巳には容易であった。すぐに、路地裏に隠れて零たちの様子を窺っていたサングラスをかけた中年男を発見することが出来た。
(小型カメラか)
辰巳は中年男がライターらしき物を2人の方へ向けて、カチカチと火をつけようとしていることに気付いた。だが、なかなか火がつかないのでそうだと考えたのだ。
静かに中年男の背後へ近付く辰巳。中年男は辰巳にまるで気付かない。そして、辰巳が中年男に声をかける。
「おい」
その途端、中年男は大きく身体をびくっとさせた。慌てて振り返る中年男。
「逃げても無駄だから、素直におとなしくした方がいい」
淡々と中年男に告げる辰巳。それから本部へ連絡しようとした時――忠告を無視して、中年男は逃げ出してしまった。
「……無駄だと言ったのが聞こえなかったらしいな」
小さな溜息を吐き、辰巳は胸ポケットに手を入れようとした。すると、だ。逃げていた中年男の動きが、ぴたっと止まってしまったではないか。
「どうした。逃げるんじゃなかったのか」
ゆっくりと中年男に近付く辰巳。手には取り出したベレッタが握られていた。
「まあ逃げるなら、僕はただ撃つだけだ」
「う、撃つな! 動かないんだよ……足が! まるで固まっちまったみたいに!!」
その言葉を受け、辰巳は中年男の足を見た。なるほど、確かにぴくりとも足が動いていない。震えてもいないのだから、嘘は言っていないようだ。
「正直に、事情を話していただけませんかしら」
いつの間に回り込んだのか、夜宵が辰巳と中年男の前方から姿を現した。
「もし、事情を話さないと仰るなら……どうして差し上げましょうかしら」
何とも丁寧な夜宵の言葉。けれどもその丁寧さが、こういう場面では逆に恐ろしく感じられる――中年男にとっては。
「ま、待て!! 話す! 話すから……!!」
この場の何とも言えぬ空気に耐えられなくなった中年男は、涙を浮かべて言った……。
●本部打電(いや、打ってないし)【6】
「上総・篠宮組が2人目を捕まえた模様、どうぞ」
本部に、羽翼からの連絡が届いていた。
「こちら本部。今ちょうどリアルタイムで聞いていましたわ、どうぞ」
まさに辰巳たちのやり取りを聞いていた綾霞は、羽翼にそう返した。
「何だ、聞いていたのか。ああ、それから……」
羽翼は思い出したように、言葉を続けようとした。
「何でしょう?」
「零の行く手、前方に挙動不審な少年が1人。それと別に少女が2人居る。どちらも制服姿だ、どうぞ」
「了解。すぐに伝えておきますわ、どうぞ」「なお、いずれも鞄の他には今の所は何も持っていない模様。じゃ、俺もまた尾行を続けるな。どうぞ」
「ええ。くれぐれもお気を付けくださいませ、どうぞ」
「……昔懐かしの無線じゃないだろ、これは」
羽翼と綾霞のやり取りを聞いていた草間が、苦笑して突っ込みを入れた。なお、綾霞が用意した機材はいずれも全二重対応である。念のため。
「それはそれとして、だ。恐ろしく正確だな」
「ですわね。報告通りの場所に、先程もカメラを持った不審者が居ましたものね」
草間の言葉に大きく頷く綾霞。何についてかというと、羽翼の報告のことだ。涼が捕まえた青年も、羽翼から本部へ報告が上がった後でのことだった。その時の青年の容貌の説明が、非常に正確であったのだ。
「いったいどんなテクニック使ってるんだ?」
草間が首を傾げた。その間に綾霞は、零とともに居る姪の撫子や、後を追うシュラインと慶悟各々に連絡を送っていた。
●何と言っていいのやら【7】
「2組、不審者が居るそうです」
綾霞から連絡を受けた撫子は、それとなく零にもそのことを伝えた。静かに頷く零。買い物は未だ続いている。
零と撫子の2人から距離を置き、今度はシュラインが後を追いかけていた。ちなみに慶悟の姿は周囲には見当たらない。また別の場所から見ているのかもしれなかった。
シュラインは零たちが馴染みの店先を離れた後、すぐに店員を捕まえて質問を投げかけた。
「あの、ちょっとお聞きしたいんですけど……」
尋ねることはただ1つ。零のことを誰かに聞かれたことはないか、その1点である。すると店員は意外な言葉をシュラインに返してきた。
「ああ、聞かれましたよ。10日ほど前だったかなあ……緑の髪の、綺麗な女の人に。よくここに来るのかって言われたんで、お得意さんですって答えましたけど。あの、それが何か?」
「ううん、特に何も。どうもありがとうございました」
礼を言い、足早に店先から離れるシュライン。その表情はやや厳しい。
(どういうこと……?)
10日ほど前、緑の髪の女性。恐らく、零が道を尋ねられた日のはず。単なる偶然か、それとも……?
(……そりゃまあ、道を教えてもらった人が、零ちゃんのこと気になってお店の人に聞いた可能性もあるんでしょうけど。んー……)
何だか腑に落ちない様子のシュライン。その間にも、零と撫子は先へ先へと歩いていた。
少しして人通りのない道へ入った時、不意に零の足が止まった。そして小声で撫子に話しかける。
「誰かが見ています……前方と……左の後方から」
何と、同時に複数の視線を感じたらしい。撫子は懐に忍ばせていた『妖斬鋼糸』を密かに取り出し、周囲に対する警戒を強めていた。
その時だ。前方から、猛ダッシュで2人の方へやってくる制服姿の少年の姿を発見したのは。
零の前にさっと出て、少年に向かって『妖斬鋼糸』を放とうとした撫子。すると、一陣の風が零たちのそばを吹き抜けた。
「うわあっ!!」
何が起こったのか、猛ダッシュでやってきた少年の身体が後方へ吹き飛ばされてしまったではないか!
道路へ背中から落ちる少年。それでも何とか立ち上がり、再び零の方へ向かおうとしたのだが――今度はまるで足が動かなくなってしまった。
「あ……あれっ?」
少年に動揺が走った。そこに姿を現したのが、煙草をくわえた慶悟である。いったいどこへ隠れていたのやら。
「……十二神将中、土気を象徴する六合を遣って大地に干渉させた。足は縛ったが、口は動く。もし己の心中にやましい部分がないと言うのなら、それを証明するがいい。もっとも……正体をさらさずに見ているということは、善悪問わずそれを否定は出来ぬということだろうが」
少年のそばへ行き、静かに語りかける慶悟。だが、少年は大きく頭を振ってこう答えたのである。
「よ、よく分かんないけど……僕はただっ、あの娘にこれを渡そうと……!」
「ん?」
慶悟は少年が何か手にしていることに気付いた。それは白い洋封筒で――ハートのシールで封をされていた。
「……あー……」
気まずさを感じたか、慶悟は天を仰いだ。とそこへ、とことこと2人連れの制服姿の少女がやってきた。
「あのー……」
まっすぐに零の方へ向かった少女たちは、やや恥ずかしがりながら声をかけてきた。撫子は少女たちの方へ向き直りつつ、まだ警戒を崩さなかった。
「あ。この間の」
「わあ、覚えていてくださったんですね!」
「嬉しいです、覚えていてくださったなんて!」
零が気付くと、少女たちは2人できゃあきゃあとはしゃいで言った。
「ひょっとして、先日助けたという……?」
撫子が尋ねると、零はこくっと頷いた。
「あのっ、ちゃんとお礼を言わなくちゃと思っていたんですけど……本当にどうもありがとうございましたっ!」
「ありがとうございましたっ!!」
相次いで零に頭を下げる少女たち。何だ、ただ単に礼を言いにきただけかと思いきや――続く少女たちの言葉に、一同非常に面喰らうことになるのである。
「それであの……お姉さまのこと、お姉さまってお呼びしても構わないでしょうかっ?」
「ご迷惑ではありませんかっ?」
後で聞いた話では、このやり取りを聞いていた本部の綾霞と草間、そしてちょうどまた本部へ戻ってきていた雄一郎は思わずひっくり返りそうになったとのことである。
●気になること【8】
さらに翌日。草間興信所では、慰労のためのお茶会の準備が行われていた。スポンサーは言うまでもなく綾霞である。
あいにく零は買い物に出かけている最中で、帰ってきてからお茶会を始めるということになっていた。それ以外の皆は、この場に姿を見せていた。
「偶然とは重なる時には重なるんだなぁ」
と、面白気に言ったのは羽翼だった。それというのも、身柄確保した4組の不審者が全く別々の動機から動いていたからである。
涼が捕まえた青年は、街で何度か見かけたことのある零の写真を撮ってどこかへ投稿しようと考えていたそうだ。未遂ではあったが、みなもの推理はいい所を突いていたのだ。
辰巳と夜宵が捕まえた中年男は、何と草間とご同業。先日、零が手を引いて一緒に横断歩道を渡ってあげた老婆に依頼されたのだという。何でも、孫のお嫁さんにいいのではないかと思ってのことだったそうだ。
そして慶悟に足止めされた少年は、零に鞄の中身を拾ってもらった少年であった。その時に零に一目惚れしてしまい、昨日意を決してラブレターを手渡そうとしたらしい。
最後、少女たちについては詳しく繰り返すまでもないだろう。助けてもらった零に、憧れを抱いたのであった。
「こりゃあまた、いつか使えるいいネタになりそうだ」
偶然がここまで重なるというのも、ある意味オカルティックといえよう。そちら系のフリーライターである羽翼にとっては、ネタの1つとしてストックするのは何ら不思議なことではなかった。
一方、憮然としていたのは辰巳である。
「論理的じゃない、不自然だ」
ここまで偶然が重なるというのは、辰巳としては納得がゆかないようだ。けれども、4組はいずれも接点が見られない他人である。論理的でなく不自然であっても、やはりこれは偶然であると考えるのが自然なのだろう。
「……杞憂だったか」
煙草の煙をくゆらしながら、慶悟がぼそりとつぶやいた。
「何がですか?」
そばに居たみなもが慶悟に尋ねた。
「何、昨今色々な気配も集まっていたからな。もしやとも思ったのだが……」
そうみなもに答えつつも、いまいちすっきりとしない表情の慶悟。自分でも何か分からないが、引っかかっているのかもしれない。
引っかかっているといえばシュラインもそうだ。ただ1店で聞いただけの話だったが、緑の髪の女性のことが気になっているらしい。
「でも他のお店じゃ、そういう話は聞かなかったし……うーん」
シュラインの思案はまだまだ続く。
「まあ零ちゃんに何事もなくてよかったじゃないか。なあ?」
皆に同意を求めるように雄一郎が言った。異論は出てこない。何にせよ、今回の場合には零本人に危害を加えようという輩は居なかった訳であるからして。……写真についてはちと微妙だが。
そんな中、綾霞はこっそりと草間を事務所の外へ連れ出していた。そういえば、事件が解決したというのに、綾霞はあまり嬉しそうな表情をしていなかった。どちらかといえば、何か複雑な表情で。
「中では言えない話……か」
外に出て、開口一番草間はそう綾霞に言った。無言で頷く綾霞。
「で?」
「……一応念のため、追跡調査も行ったんです。そうしたら、少し気になることが」
表情固く綾霞が言った。
「気になること?」
「4組とも、何者かは分かりませんが、後押しをされていたようなんです」
「……背後に誰か糸引いた奴が居るってことか」
「いいえ、そうと決まった訳ではないんです。バックアップではなく、文字通り『後押し』を」
草間の言葉に、首を横に振る綾霞。どう説明していいか、少し悩んでいるようにも見受けられた。
「4組とも、どうしようか思案している所に、『そうすればいいのでは?』と言葉をかけられたと。容姿も尋ねましたけど、いずれも別人でしたわ」
「そういう意味での『後押し』か。偶然と言ってしまえば簡単な話だろうが……」
思案顔になる草間。先程の辰巳の言葉が思い出される。散々偶然が重なっていた所に、さらに偶然が重なった。これは果たして本当に『偶然』なのか?
「それとはまた別に、もう1つ気になる話を。……ある組織のトップが、東京を訪れているかもしれないという噂が」
情報網に引っかかった噂を、草間に伝える綾霞。続けてその組織の名を口にしようとしたが、先に草間がつぶやいた。何となく、そう予感がしたのだ。
「虚無の境界――」
綾霞は無言で頷いた。
●ミスティック・レディ【9】
その頃、零は買い物を終えて事務所へ帰ろうとしていた。
「そこのあなた」
零は不意に女性に呼び止められ、振り返った。そこに立っていたのは、緑の髪の綺麗で豊満な女性であった。白い肌に、紅い瞳が何とも特徴的な――。
「この間の方……ですよね?」
零はその女性に見覚えがあった。10日ほど前、道を教えてあげた女性である。
「この間は助かったわ。どうもありがとう」
女性は零に微笑み、礼を言った。
「いえ、そんな。当たり前のことをしただけですから」
ふるふると頭を振る零。その様子を見て、女性はさらにくすりと微笑んだ。
「……素直ないい娘ね。機会があれば、保護者の方にお会いしてみたいわね。どういう育て方をされてきたのか、とっても興味があるわ」
「あの……普通に当たり前のことをしているだけですから……」
女性の言葉に、若干照れた様子の零。
「ふふ……可愛らしい娘。冗談よ。残念だけど、今日でまたしばらく東京とはお別れだから」
「そうなんですか。お仕事ですか?」
零が何気なく尋ねると、女性はただ曖昧な笑みを浮かべただけだった。
「でもまたどこかで会うかもしれないわね……あなたとは。そんな気がするの。だから今は、またね……と言っておこうかしら」
女性はそう言い、零のそばを通ってこの場から立ち去ろうとした。そして、すれ違いざまにこの一言を残し――。
「草間によろしく」
「えっ?」
振り返る零。だが、すでに女性の姿はどこにも見当たらなかった。草間のことを知っているような素振りを見せた今の女性は、いったい何者であったのだろうか……。
【誰かが見ている 了】
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【 整理番号 / PC名(読み)
/ 性別 / 年齢 / 職業 】
【 0086 / シュライン・エマ(しゅらいん・えま)
/ 女 / 26 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員 】
【 0328 / 天薙・撫子(あまなぎ・なでしこ)
/ 女 / 18 / 大学生(巫女):天位覚醒者 】
【 0381 / 村上・涼(むらかみ・りょう)
/ 女 / 22 / 学生 】
【 0389 / 真名神・慶悟(まながみ・けいご)
/ 男 / 20 / 陰陽師 】
【 0602 / 鷹旗・羽翼(たかはた・うよく)
/ 男 / 38 / フリーライター兼デーモン使いの情報屋 】
【 1005 / 篠宮・夜宵(しのみや・やよい)
/ 女 / 17 / 高校生 】
【 1252 / 海原・みなも(うなばら・みなも)
/ 女 / 13 / 中学生 】
【 2072 / 藤井・雄一郎(ふじい・ゆういちろう)
/ 男 / 48 / フラワーショップ店長 】
【 2335 / 宮小路・綾霞(みやこうじ・あやか)
/ 女 / 43 / 財閥副総帥(陰陽師一族宗家当主)/主婦 】
【 2681 / 上総・辰巳(かずさ・たつみ)
/ 男 / 25 / 学習塾教師 】
【 3580 / 大和・鮎(やまと・あゆ)
/ 女 / 21 / OL 】
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■ ライター通信 ■
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・『東京怪談ウェブゲーム』へのご参加ありがとうございます。本依頼の担当ライター、高原恵です。
・高原は原則としてPCを名で表記するようにしています。
・各タイトルの後ろには英数字がついていますが、数字は時間軸の流れを、英字が同時間帯別場面を意味します。ですので、1から始まっていなかったり、途中の数字が飛んでいる場合もあります。
・なお、本依頼の文章は(オープニングを除き)全11場面で構成されています。他の参加者の方の文章に目を通す機会がありましたら、本依頼の全体像がより見えてくるかもしれません。
・今回の参加者一覧は整理番号順で固定しています。
・大変お待たせさせてしまい、申し訳ありませんでした。ここに、零に対する視線をめぐるお話をお届けいたします。コミカルとシリアスが微妙なバランスで進んでいるようなお話ですが、いったい今回の本質がどちらであるのかは最後まで読んでいただけたのならお分かりいただけるのではないかと思います。
・何となく謎がぽんっと残っているようにも感じられますが、皆さんのプレイングの影響で当初高原が想定していた以上に色々と判明していたりします。もし当初の想定通りに進んでいたなら、もっと唐突な終わり方になっていたことでしょう。ある意味、ターニングポイントとなるお話でした。
・え、最後に登場した女性は何者なのか……ですか? さて、何者なんでしょうねえ……? とりあえず、当分はまた表には出てこないと思われますけれども。
・シュライン・エマさん、87度目のご参加ありがとうございます。零の日程を表にしたり、馴染みのお店で質問をしたのはよかったと思います。あれこれ、ぐっと分かりやすくなりましたから。
・感想等ありましたら、お気軽にテラコン等よりお送りください。きちんと目を通させていただき、今後の参考といたしますので。
・それでは、また別の依頼でお会いできることを願って。
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