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<東京怪談・PCゲームノベル>


人形博物館へようこそ!〜クリスマスパーティをしよう♪

 人形博物館の休館日。客も従業員もいないはずなのに、館内では賑やかな笑い声が響いていた。
 お人形さんたちを訪ねて、榊船亜真知が遊びに来ていたのだ。特に亜真知に懐いているローズマリーや、遊び好きの人形たちは大喜びで。
 楽しく談笑に耽ったり、ちょっとしたゲームで遊んでみたりと話題は尽きることなく時間が過ぎる。
 いつでも、楽しい時間というのはあっという間に終わってしまうものだ。
 夕暮れも過ぎ、空が暗くなりはじめて人形たちの表情に不満が浮かぶ。常ならばここでつまんないだのまだ遊びたいだのそんな文句が出てくるところなのだが、今日に限っては少々違った。
 暗くなった窓の外には、あちこちで綺麗なイルミネーションが光っていたのだ。
「うわあああ、きれーいっ!」
「そっか、もうすぐクリスマスだもんね」
 言葉のままにぱっと顔を輝かせたエリスの様子にくすくすと声を零して、ジェシカが笑う。
「キャルねえ、キャルねえ、覚えてるよ! 前におうちにいた時ねえ、クリスマスの日はパーティやって、プレゼント貰って、すっごく嬉しそうだったの!」
 今でこそアンティークドールとして展示される身ではあるが、かつては誰かの大事なお人形だったキャロライン――いや、今ここにいる人形のほとんどがそうなのだが――は、自分がプレゼントを貰ったかのような喜びようで教えてくれる。
「うんうん。私がむかーしいたとこもそうだったの! ツリーがあって、ツリーのところにプレゼントがいっぱい置いてあるのよ。私ももらったことあるんだ、可愛いお洋服とか帽子とか。あ、あとお家もらったこともあるーっ!」
 キャロラインに頷いていつものごとく、だーっと早口で一息で喋ったのはミュリエルだ。
「ここに来てから……あんまり、やってないね……」
 ぽつんと。少しだけ寂しそうにローズマリーが呟く。
 デートスポットの一種とも言える人形博物館ではクリスマスは客の増える時期だ。人形博物館は連日営業、そのため動けない人形たちがパーティの用意なんてできるはずもなく。
 人形たちのクリスマスは「メリークリスマス」とその一言だけで終わることも多かったのだ。
「それでは、今年のクリスマスは皆でパーティをしましょうか」
 にこりと。それまで人形たちのクリスマス話を楽しそうに聞いていた亜真知がそう告げて微笑んだ。
「いいの?」
「キャルたち準備あんまり手伝えないよ?」
「プレゼントだって用意できるかどうかわかんないし……」
 お茶会と言えば大喜びで飛び付いてくるだろうに、クリスマスとなると少々意識が変わってくるらしい。
「大丈夫ですわ。私に任せてください」
 亜真知としては、お人形さんたちと楽しい時間が過ごせればそれだけで充分なプレゼントといった気分なのだ。
「ほんとに……いいの……?」
 おずおずと問いかけてきたローズマリーに、亜真知はこくりと頷いて見せる。
「皆で楽しめればそれだけで充分ですわ」
 その、言葉に。
 キャロラインとミュリエルとジェシカは妙に気合を入れたふうで頷きあった。ローズマリーとエリスは3人の突然の行動の理由がわからず、首を傾げて疑問の表情を顔に浮かべる。
「じゃあ、次はクリスマスの日ね!」
 この日はそんな言葉で締められて、亜真知は人形博物館をあとにした。


◆ ◆ ◆


 クリスマスに持っていくのは各種様々なお茶と、クッキーやケーキやタルトなどなど。様々なお茶菓子。腕を振るうのはもちろん亜真知自身である。
「オレまで行っちゃっていいのかなあ……」
 そう言いつつも嬉しそうな顔をしているのは芳野書房の店員であり本のつくも神の結城である。
「美味しい物いっぱいなのーっ!」
「楽しみなのっ★」
 その肩にのってきゃらきゃらと甲高い笑い声をあげているのはそっくり同じ顔を持つ妖精、ウェルとテクス。
 亜真知はもう一人、草間興信所の居候神様・桐鳳にも声をかけてみたのだけれど、興信所は興信所の方で騒ぐらしく、彼は不参加。
「人数は多い方が楽しいですわ」
「そうだな。同族に会うのって意外と少ないからちょっと楽しみなんだよな、実は」
 亜真知の言葉にあっさりと頷いた結城は、ウキウキとした口調で言う。

 そんなこんなで他愛もない話をしながら到着した人形博物館で、亜真知は、珍しく十一人勢ぞろいの出迎えを受けた。
 あまりお喋りに参加してこないグラディスやエリザベス、他の人形たちに遠慮しているせいであまり部屋から出てこないアデライト――辺りは、まあ、誘えば出てくる面子だ。
 しかし今回は、人形たちで企画した遊びにも滅多に出てこない、読んだとてにべなく断られることの多いエリアルまでもが出迎えに参加していたのだ。
「人数は多い方が楽しいもんねーっ!」
「連れ出すの苦労したんだよぉ」
 自慢げにそう言ったのはキャロラインとミュリエルだ。ジェシカもその隣でうんうんと頷いている。
 どうやら先日の気合は、人形たち全員参加させようとの意気込みであったらしい。
「それでは皆様、パーティの前に準備を少しだけ手伝っていただけますか?」
「うん……!」
「もっちろんっ!」
「あたくしは嫌ですわ」
「仕方ないわねえ」
 口々に返って来る返答に笑みを返して、亜真知はふっと能力を解放した。
 理力創造の能力で異空間が築かれ、そこに現れたのは美しい庭園だ。手伝いを申し出た人形たちは早速お菓子とお茶をテーブルに並べ始める。
 小さな人形とはいえ、数人もいれば準備はすぐに整った。
 それぞれ席についてお茶を手にして、そして。
「メリークリスマス!!」


 浮かれた掛け声とともにパーティが始まる。
 これといって特別なプレゼントがあったわけではないけれど。
 楽しいお喋りと、綺麗な庭園にちょっとしたイルミネーションのオマケ付きで。
 それは、とても楽しいクリスマスであった。

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   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  
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整理番号|PC名|性別|年齢|職業

1593|榊船亜真知|女|999|超高位次元知的生命体・・・神さま!?

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         ライター通信          
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こんにちわ、いつもお世話になっております日向 葵です。
はううううっ。ごめんなさい、クリスマス話を1月になってからなんて(汗)

いつも発注ありがとうございます。
今回はお人形さんたちだけではなく結城や妖精さんたちまでご招待頂き、どうもありがとうございました。

また機会がありましたら、その時はどうぞよろしくお願いします。