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<クリスマス・聖なる夜の物語2004>


☆幸せの贈り物☆

 
★オープニング

 12月25日・・。
 聖なる日とされるその日、空から一つ星が流れた。
 流れ星・・。
 星が地平線に落ちた時、一人の女の子が“幸せの贈り物”をするべく降り立った。
 名前はベル。
 7か8くらいの容姿の彼女は、空を仰ぎ見ると深呼吸をした。
 彼女の目的は人々の願いを叶える事。
 「あたしだって、やる時はやるんだからっ。」
 そう一つ叫ぶと、ポシェットからキラキラと七色に光る砂を取り出した。
 それをぱっとその場にまくと、彼女は姿を消した・・・。

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 ドスン!と、表に何かが落ちたような感じがして思わずドアをひき開けた。
 そこには小さな可愛らしい女の子が涙目で尻餅をついている。
 「あぁっ、ここの住民さんですかっ!?」
 ・・そうですが、あなたは・・?
 「私、ベルって言います!はい、これ名紙ですっ!」
 手渡された名紙には“幸せの贈り物宅配人、ベル”と黄色のペンで書かれている。
 ・・・なんだか怪しい・・。
 「あ〜、その顔、信じてないですね!?本当ですよ〜。それで、何か願い事を言っていただけますか?」
 ・・願い事と言われても・・。
 「今日1日限りの幸せの魔法です。明日になれば解けてしまうけれども・・なにか、お願い事、ありませんか・・?」
 ベルはそう言うと、ウルウルとした瞳を向けてきた。
 ・・仕方がない。本当かどうかは怪しいが、お願い事をしてみるか・・・。


☆来生 十四朗

 一義の歩いていった方向を見つめていたベルの耳に、突然低い声が響いた。
 「おい・・。」
 「えぇっ!?あっ・・はい・・?あ・・あれ?ここの・・住民さん・・ですか・・?」 
 「あぁ。さっきのは俺の兄貴だ。」
 「あ、お兄様だったのですか・・。それよりも、私の姿が見えるんですかっ!?」
 「じゃなかったら、こうして話してねぇだろ・・。」
 十四朗は、冷ややかに突っ込みを入れると慌てるベルの顔を覗き込んだ。
 「魔法だって・・?胡散臭いけど、記事のネタにはなりそうだから、俺も何か頼むか・・・。」
 「あ、はい!どうぞ・・!」
 「っと、その前に、兄貴が何を頼んだのか俺にこっそり教えてくれ。兄弟だし・・構わないだろう?兄貴には言わねぇよ。」
 ベルは少しだけ悩むようなそぶりを見せた後で、十四朗に向き直った。
 「方向音痴をなおしたいんだそうです。なんでも、散歩をしたくてもなかなか言い出せないらしく・・。」
 「・・なんだ。出歩きたいなら遠慮しないで言えば良いのに・・。」
 十四朗は苦笑交じりにそう言うと、ベルと視線を合わせるべくしゃがんだ。
 「そうだな・・。自由に姿を消したり現したりする力をくれないか?」
 「自由に・・ですか・・?」
 「あぁ、兄貴の魔法が切れるまで歩き回って迷子にならないように、用心に後ついて歩くから。後で探し回るのも面倒だしな。」
 「あ・・そういう事なら良いですよ。」
 ベルがニコニコと笑う。
 「ま、あの堅物兄貴がどんな所を歩くか見てみたいしな。」
 十四朗は、ニヤリと笑うとベルの頭をポスポスと叩いた。
 「12時になれば、魔法は解けますから・・。」
 「分っってる。」
 ベルは頷くと、ポシェットから七色に輝く砂を取り出して十四朗にかけた。
 白い光があふれ出し・・目を瞑り、開いたそこにベルの姿はなかった。
 それにしても、まったく変わっている気配はない。
 でももしかしたら・・十四朗はためしに“消えろ”と念じてみた。
 するとどうだろう?手先の方から透けてきたのだ・・・。
 自分の体の感覚はあるのに、目には見えない・・。十四朗の身体は完全に透明になってしまったのだ。
 これなら、兄の一義を追える。
 十四朗は慌てて兄の去った方角に向かって歩き出した。


★変わらぬ町並み

 一義はどうやら繁華街へと向かっているようだった。
 赤と緑に染め上げられた店の看板。
 ツリーには綿が白くかぶさり、クリスマスらしさを漂わせている。
 確か昔・・この道を一義と共にに歩いた覚えがある。
 とんでもない方向音痴の一義は、十四朗がいないと何処にも行けないほどだった。
 かなり年の離れた兄は、なんだか兄貴と言う感じがしなかったのはそこが一番の原因だろう。
 方向音痴で、十四朗がついていないといつも道に迷って・・。
 一義は、フラリとあてもなく歩いるようだった。
 笑顔を浮かべる人々。
 恋人と、友人と、家族と・・。
 つと、一義はとまったかと思うと後を振り返った。
 ヤバイ・・そう思って隠れようとした十四朗の脳裏に、ベルの事がよぎる・・そうだった。今は透明になっているのだった。
 十四朗は堂々と兄の目の前に立った。
 やはり見えないらしく、一義が首をひねりながら再び街中を歩き出す。
 ベランダに飾られる、ポインセチアの葉・・シクラメンの花・・大きなクリスマスツリー、その上で輝く大きな星・・。
 何処に向かっているのだろうか・・・?
 十四朗にも、この道は覚えがあった。この先を行くと・・以前一義が勤めていた会社があるはずだった。
 本当に・・方向音痴が迷っているのか・・?
 すこし半信半疑なまま、一義の後をつける。
 一義はよどみなく迷いのない足取りで以前勤めていた会社に着いた。
 本当に・・なおっているのだ・・・。
 一義がそっと、会社の中に滑り込む・・。
 十四朗はしばらく考えて、ココで待つことにした。
 なんだか・・知ってはいけない気がしたのだ。
 ここからさきは一義の世界・・。十四朗はそう決めると、一義が出てくるのを待った。
 タバコの事をチラと思ったが、今は姿が消えている。もし万が一タバコを吸っている時にでも一義が出てきてしまったら・・。
 タバコの煙は消えない。
 十四朗は一義が出てくるのを今か今かと待った。
 しばらくして出てきた一義の表情は、心なしか晴れやかだった。
 きっと良い事があったのだろう・・。
 そして、しばらくその場で会社を眺めた後で・・一義はそっと歩き出した。
 その足先は、家へと向いている・・・。
 十四朗は一義がもう大丈夫な事を確認すると、一足先に家へと戻った。

☆開かれたドア

 家の扉の脇に、ベルが体育座りでちょこんと地べたに座っているのが見えた。
 こんな寒い中・・。
 十四朗は慌てて駆け寄ると、ベルに声をかけた。
 「中に入って待ってれば良かったのに・・。」
 「いいえ、大丈夫です。それよりも、十四朗様の喜ぶ顔が早く見たくって・・・。」
 ベルはそう言うと、ニッコリと笑った。
 「その魔法、今日の12時までは有効ですよ。」
 「そうか・・だが、今日は兄貴の話を聞くためにもう家からでられねぇからな・・。」
 「それじゃぁ、魔法を解いても良いですか?」
 ベルの言葉に十四朗は頷いた。
 ポシェットから七色に輝く砂を取り出すと、十四朗にかけた。
 白い光があふれ出し・・目を閉じた。
 開いたそこには満面に笑むベルの姿があった。

 「メリークリスマス」

 十四朗は、少しだけ目を閉じてその声に耳を済ませた後でぽつりと呟いた。

 「メリークリスマス。」

 背後から、一義が近づいてきたらしい音が聞こえる。
 十四朗はそっと物陰に隠れた。
 ベルといくつか言葉を交わし、あの七色に輝く砂をかけられる・・。
 白い光と共に、ベルは姿を消していた・・。
 「兄貴、何処行ってたんだよ。」
 十四朗はしばらく物陰から一義を見守った後で、声をかけた。
 「散歩だ。迷わずに、一人でな。」
 「うそだろ、おい・・。ちょっと、その話詳しく聞かせろよ。」
 十四朗が驚いたような声を出す・・しかし、その表情は微笑んでいた。
 鍵を差込、ドアを開ける・・。
 大きく開かれたそこを、チョイチョイと指で指し示し、中に入れと合図を送る。
 「中で、じっくり詳しく聞こうじゃねぇか。」
 「良いだろう・・。」
 どんな事を話すのだろうか・・?あの繁華街を歩いている中、どんな事を思っていたのだろうか・・?
 そう思うと、少しだけ微笑んだ。
 十四朗は、部屋のドアを閉めると・・鍵をかけた・・・。

  〈END〉

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 ★   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ★
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 【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

3179/来生 一義/男性/23歳/色々な意味でうるさい幽霊

0883/来生 十四朗/男性/28歳/三流雑誌「週刊民衆」記者

  *受注順になっております

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 ■         ライター通信          ■
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 この度は『幸せの贈り物』にご参加ありがとう御座いました!
 ライターの宮瀬です。
 今回は兄弟ものと言う事で・・見守る弟と見守られる兄と言う2つの視点から分けて書いております。
 なので、2つを足して1つの作品になるようになっております。


 来生 十四朗

 初めまして、この度はご参加ありがとう御座いました。
 一義様の後を追う・・と言う事で、なりべくプレイングの内容を反映させましたが如何でしょうか?
 もしお時間がありましたら、対の一義様の文章を合わせてお読みください。
 お気に召されれば嬉しく思います。

 それでは、またどこかでお逢いしました時はよろしくお願いいたします。