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<東京怪談ウェブゲーム 界鏡現象〜異界〜>


【ホテル・ラビリンス】女神の密会

 ドアが開くと、冷たい外気がロビーに流れ込む。
 旅装の、ひとりの女が、暗いロビーを見回して、鼻をならした。
 フロントには誰もいない。ただ水を注したグラスの中で、クリスマスローズがうつむき加減に可憐な花を咲かせているだけだ。
「なんじゃ。出迎え一人おらんとはあきれた宿じゃ。……誰かおらぬか? 予約しておいた――弁天が参ったぞ」
 ……と、声高に呼ばわると。
「失礼いたしました」
 ふいに、背後から声を掛けられ、弁天はびくりと振り返った。美青年のボーイがそこに立ち、うやうやしく彼女を迎えているのだった。

「ようこそ。ホテル・ラビリンスへ――」

   † † †

「弁天さまぁー、弁天さまぁー!? どこにいらっしゃるんですかぁー!?」
 そこはJR吉祥寺駅下車徒歩5分、井の頭恩賜公園である。妙王蛇之助は、ある意味でデフォルトともいえる困り顔であたりを見回していた。
「ハナコさん。弁天さまを知りませんか?」
 通りがかったゴスロリテイストの少女に問い掛ける。
「え……。知らないよ、ハナコ」
「…………ハナコさん。今、目をそらしましたね。何かご存じなんでしょう、そうですね!?」
「ホントに知らないってば、弁天ちゃんから『鷹にまん月』貰って、これで黙っておいてくれって言われたことなんて――あ」
「やっぱり、三鷹銘菓で買収されてるーー!」
 蛇之助に小一時間ほど問い詰められ、ハナコが白状したところによると。
「他の異界へ……? そ、それはもしや、またいつかのように異界の殿方を拉致しに行かれたのでは……ああ、近隣のみならず、異界にまでもご迷惑をおかけするなんて!」
「違うよ。ハナコが開いたのは異界ゲート『ほの1225番』。ホテル・ラビリンスっていう異界のホテルなの。弁天ちゃん、そこに泊まるみたいだった」
「それでは、眷属の私たちを置き去りに、自分だけリゾートに出掛けたというワケですね」
「それも違うと思う。…………このこと、ハナコが喋ったって、絶対、言わないでよ?」
 といいつつ、ハナコはそれを誰かに話したくてしようがなかったらしい。声をひそめながらも、まくしたてるように、《世界象》の少女は語った。
「蛇之助ちゃんが、まだ弁天ちゃんの眷属になる前の話だから知らないと思うけど……。弁天ちゃんが人間のふりをして、人間の男の人と付き合ってたことがあったの」
「えっ!?」
「その頃の弁天ちゃんは今よりいくぶん性格も丸くてふたりはうまくいってたんだよ。相手の男の人が、弁天ちゃんに結婚を申し込むまでは……」
「べ、弁天さまと結婚ですって!? な、なんと命知らずな」
「でも弁天ちゃんはプロポーズを受けなかったの。それでふたりは別れてしまって……」
「どうせ結婚するなら3高でないとだの、姑との同居はいやだの、言ったんでしょ。で、それと、今回の件はどう関係するんです?」
「だから呼び出しが来たの。その、かつての弁天ちゃんの恋人だった男の人の名前で、『ホテル・ラビリンス』で会おう、って」
「あ、逢い引き……!」
「でもそんなのおかしいの。だってその人、弁天ちゃんと別れたあと、結婚しちゃったし……」
「で、では不倫! いくら縁結びの女神さまだからといって、そんなふしだらな!」
「だーかーら。蛇之助ちゃんが眷属になる前の話だよ。ふたりが付き合ってたのは大正時代。相手がとっくに亡くなってることは弁天ちゃんも知ってるの」
 蛇之助は目をしばたかせた。
「え……それじゃあ……?」
 ぞくり――、と、なにか不吉な予感が、彼の背すじを撫でる。しばしの黙考の後、蛇之助は意を決したように口を切った。
「……ハナコさん。もういちど、異界ゲートを開いてくださいませんか。なにか嫌な予感がします。私も行かなくては。その――『ホテル・ラビリンス』へ」

■弁天救出隊、出動

「ま、まさか、幽霊からの呼び出し!?」
 怯えの色をにじませて言ったのは、十二、三歳と見える華奢な少年――もっともそう見えるのも今だけのことで、明日には十四、五になっているやもしれず、あるいはもっと幼くなっているかもしれない。蛇之助ら、井の頭公園の面々のあいだでマスコット化しているともいえるブルームーンストーンの付喪神、石神月弥であった。
「もしかして、弁天さま、取り憑かれちゃったんじゃあ……。ほら、『牡丹灯籠』みたいに!」
「まァ、なんてことでしょう。これは一大事ですわ」
 月弥の言葉を聞いて、不安げに口を開いたのは、中世の貴族の姫かと思うような古風な装束の女性――鹿沼デルフェスである。アンティークショップ・レンからの使いで、古い楽器の鑑定を依頼しに弁財天宮を訪れてみれば、蛇之助と月弥たちがなにやら深刻そうに話し合っている場面に遭遇したのである。
「すなわちその殿方は、弁天殿への想いゆえこの世に未練を残してとどまったか……あるいは、すでに鬼やあやかしの類と成り果てたやもしれぬ」
 腕を組み、意見を述べたのは藍大島の羽織の壮年、有働祇紀である。月弥とともに、先日、井の頭公園へと“輿入れ”させた古道具たちの様子を見に来てみればこの騒ぎだ。
「及ばずながら私も加勢いたそう。蛇之助どの、その異界の宿とやらに急ごうではないか」
「弁天さまは、女神さまとはいえ、この地を離れてはか弱い乙女も同じ。わたくし心配でなりませんわ」
 デルフェスが言い、月弥も頷く。地場神である弁天が、自身の領域を出て神通力を失うのは本当だが、かといってか弱い乙女と呼んでいいかどうか、素直にはハイと言いかねる蛇之助であったが、不安なのはもとよりで、かれらの弁に異存はなかった。
「ちょっと待って」
 だが、そんな面々を押し止めたのが、シュライン・エマの冷静な一言である。
「幽霊と決まったわけじゃないわ。本人からの呼び出しだという可能性もあるじゃない?」
「えっ、でもシュラインさん、その男性が故人であるのは、確かなようなのです」
 そう言う蛇之助へシュラインは、
「でも場所は異界なのよ。界鏡現象が一種の並行世界だってことは知ってるでしょう。ましてそのホテルは複数の異界の中間地点のようになっているというじゃない。それなら、その人が生きている時間からホテルを訪れ、私たちの時間に連絡してきた可能性もあるわ」
 と指摘するのだった。
「はあ、なるほど……」
「けれど、一度は終わった恋。今さら逢い引きだなんて、どちらにしても……」
 デルフェスが言いかけて、しかし最後は言葉尻を濁したのは、淑女としてのたしなみだろうか。その正体はミスリル製のゴーレムだという美しい顔が、なぜか、ふっと曇った。
「私もデルフェス殿と同じ考えだ。たとえ本人であれ、それが今の弁天殿のためになるとは言えまい」
 と同調する祇紀に、その甥、ということになっている月弥は、 
「弁天さんに危険がないのなら、あんまりお邪魔はしたくないですけどね。おふたりの問題ですし。とにかく、それを確かめる意味でも、行ってみませんか?」
 と外見に似合わぬ大人びた意見を述べた。
「それは反対しないわ。そのまえに……私はちょっと調べてみたいことがあるの。月弥くんたちは、先に行ってて頂戴。何かあったら弁天さまを守ってあげてね」
 シュラインの青い瞳が、秘めた思惑に、きらりと輝く。

■一方、異界のホテルでは

「おや」
 目を上げれば、見覚えのある建物だった。
「また来てしまったようですね。……波長が合ってしまったのでしょうか」
 セレスティ・カーニンガムの杖が、ホテル・ラビリンスの玄関へと続く石の小経をこつこつと叩いた。古めかしいドアを押し開けると、はたして、あの美青年のボーイが変わらぬ微笑で彼を出迎えてくれるのだった。
「ようこそいらっしゃいました。カーニンガム様」
「またお世話になりますよ。お部屋はありますか」
「それはいつでも。……当ホテルに『秘密』をお預けいただいた方に、私共はいつなんどきでも、門を開いているのです」
「『秘密』――」
 手荷物をボーイに渡し、案内されながら、セレスティは言った。
「私の『秘密』……本当に誰にも話したことのない、決して誰も知るはずのないことであっても?」
「ええ、このホテルがそれを望むなら。さあ、こちらへ。先日のスイートをご用意しました」
 どこか陰のある、伶俐な美貌という点で、その客とボーイは似た点を持っていた。その一幕は、さながら古い映画の場面のようでもある。

 同じ頃、ホテル・ラビリンスの中庭を取り囲む回廊に、マリィ・クライスの姿がある。
「あら、いやだ。ピックマンじゃないの」
 壁に飾られた絵画を眺めて言った。
「本物……みたいね。こんなもの飾って、どういう趣味をしてるの、このホテルのオーナーは」
 言いながら、ふっ、と唇をゆるめる。
「ふふ……、でも保存状態はいいわ。あとで買い取れないか訊いてみよう」
 彼女は、経営する骨董品店の、仕入れに出掛けた帰りであった。偶然、迷い込んだあやしいホテルに部屋をもとめ、午後のひとときを散策に費やしているところだった。
「……にしても、妙な雰囲気のところねえ。今のところあのボーイの他は誰も見かけないし……流行ってないのかしら。あら――?」
 言ったそばから、廊下を行き過ぎた先の、カフェのテーブルにふたりの女性客の姿をみとめた。すこしレトロなテイストの旅装の女と、すらりとした身体にどうやら男物らしいレザージャケットを羽織った少女である。マリィが彼女たちの名を知るのはすこし後の話になるが、それは他ならぬ弁天と、時永貴由であった。

 時永貴由もまた、よく知る調達屋を訪ねた帰りに、このホテルに迷い込んだのである。
 代金はいらないというから部屋をとってみれば、なかなか趣味のよいインテリアだ。ジュエリーデザイナーを目指して勉強中の貴由は、こういう様式を、アールヌーヴォーと呼ぶのだということを思い出していた。
 だが、ものの一、二時間もすれば部屋でくつろぐのにも飽きてくる。せっかくだし、ホテルの他の場所も見ておくかと廊下に出てみれば――
「え……?」
 ぎくり、と、足がすくんだ。
 今、あの廊下の向こうを過ぎた人影は。
 確かに貴由の見知った人間に見えたのだが。しかしそんなはずがないことは彼女自身がよく知っている。……そういえば、部屋に案内される道すがら、ボーイがおかしなことを言っていた。本当に代金はいらないのかと問うのへ、
「ええ。当ホテルでは、金銭の代わりに、お客様の『秘密』をひとつ、お預けいただく決まりなのです」
「よくわからないな。……それで、何がどうなるの」
 だがボーイは、謎めいた微笑のまま、それ以上は語ろうとしなかった。
 思わず小走りになり、廊下の角を曲がる。誰もいない。でも確かに今……
「これ、そこな娘御」
 声を掛けられた。
「血相変えてどうしたのじゃ。……当ててやろうか。部屋がオートロックなのを忘れて、鍵を置いたまま部屋を出てしもうたのじゃろう? ホテル初心者はよくある失敗じゃ。あのボーイの姿が見えぬゆえ、ここで茶でも飲んで待っておれ。わらわの茶をわけてやろうほどに」
 それが弁天だった。
 むろん、貴由がそんな初歩的な失敗をしたわけがない。部屋を閉め出されたのは、弁天の話だ。

 一方。ホテル・ラビリンスのとある一室に、低い、男の声が響き渡っていた。
「終わった! 終わったぞ!!」
 いつも静かな微笑を絶やさぬあのボーイも、その部屋の有様を見たなら顔色を変えたやもしれぬ。部屋は……なんというか、いわゆる、修羅場、であった。
 長身をかがめて机にかじりついていたのは、一人の男だ。若いようだが、今ひとつ年齢不祥の様子である。黒ずくめの格好に、背中まで垂れた一本の三つ編みにした長い黒髪。サングラスによって目元はうかがいしれない。
 門叶曜、と、男はフロントでサインをしたはずだ。だがそれがいつのことであったか、曜自身の記憶もあいまいであった。
「まさかこんな妙な場所で缶詰に遭うとはな。……だがその甲斐はあったようだ」
 誰にともなく曜は呟いた。延々続いた孤独な作業ゆえ、独り言の癖がついたらしい。
 デスクの上にあるのはA4ノビ、厚手の紙に印刷用のいわゆるトンボがプリントされた漫画原稿用紙であった。そして散らばった、ペン軸に、替えのペン先、インク瓶、ホワイト、消しゴム、直線定規、雲型定規、羽ぼうき……。まぎれもなく、その一室はマンガ家の作業場と化していた。
 床には反故にした紙や、資料本が散らばり、ベッドの上は臨時の、原稿を乾かす場所として使われているのであった。
 冬コミの原稿に、飛び込みの単発ものの、同時進行をやりとげたばかりの曜はすがすがしい疲労感に、凝った身体をほぐしながら、椅子から立ち上がって伸びをした。
 下のダイニングで祝杯でもあげるか。そう思い、キーを手に部屋を出る。
「…………ん」
 廊下の窓から、中庭をなにげなく見下ろす。曜はそこに、一人の男の姿を見た。

■その人を待ちながら

「こりゃ」
 弁天は、目の前の少女に向って言った。
「そなた、何をしておるのじゃ」
「何って…………拝んでみた」 
「わらわをか!」
「だって弁天サマって芸事の神サマでしょ? 私、ジュエリーデザイナーの修行中だから。結婚するまでに小さくてもいいから自分のブランド立ち上げたいなー、って」
「そうであったか。これは若いのに信心深くて感心な娘じゃ。よかろう、その願い、かなえてしんぜる。そなたがジュエリーデザイナーになった暁には特別にわらわのアクセサリーをデザインさせてやるぞえ」
「それ願い叶えるとか言わないから」
 いつのまにか座に加わっていたマリィがひややかに指摘した。
「それよりさっきの話の続きよ。長く生きてるとねぇ……そういうこともあるわよねぇ」
 なにやら一家言ありそうな様子で独り合点のマリィ。
「でもどんな形であれ、昔の恋人との再会、それもこんな雰囲気のあるホテルでなんて、ちょっと素敵じゃないですか。普通はないですよ。人間なんて死んでしまったらもうおしまい。心の中に思い出は残るけど……もうそのひとと生きていくことはできないんだもの」
 貴由はそう言ってそっと目を伏せた。
「そうね……。残される身になるっていうのはね……」
 と、マリィはその言葉にも同調する。ふたりとも、なにか身におぼえのあることらしく、どうやら女とは、他人の恋の話を聞いても、つねに我が身を思ってしまう習性の生き物であるらしかった。
「勝手なことを言うでない、二人とも。わらわと円照の事情はそれはそれは語り尽くせぬフクザツな……」
「あら、エンショウっていうの、その人。なんだかその名前って――」

「あちらに、おられましたわ」
 物陰からそっと顔を出し、デルフェスが言った。彼女の上にまず蛇之助、その上に祇紀、そして下には月弥が、にゅっ、と顔を出して、弁天の様子を覗き見た。 
「件の男性らしい人は見えませんね」
「よかった。今のところ、楽しそうにおしゃべりしてるだけだ。でもあの女の人たちは誰だろう」
「いつ何が起こるかわからぬ。油断は禁物」
 と、囁き合う4人に、
「どうかされましたか」
 と声をかけたのはこのホテルのボーイ――ロミオ・チェンである。
「あ、いや、えっとその……」
「……お客様でしょうか。でしたらフロントでチェックインのほうを」
「いや、われわれは――」
「あー、でも伯父さん、いっそ俺たちもここに泊まったほうが」
「これ、番頭!」
 弁天の声が響いた。井の頭公園から、異界ゲートを越えてやってきた面々があわてて頭をひっこめる。
「あの……お客様……?」
 怪訝なボーイに、4人が4人、唇に人さし指をあて、身を低くして、必死のゼスチュアを示すのであった。
「わらわが呼んでおるのが聞こえぬのか、番頭!」
 やむなく、ロミオは弁天のほうへと歩み寄っていった。このホテルの一切を管理するロミオとはいえ、番頭という呼称はいろんな意味で違うのではないかと思われたが、彼はいつもの穏やかなポーカーフェイスであった。
 部屋にキーを忘れてオートロックを閉じてしまったことを訴えている弁天の様子を、ふたたびそーっと壁から頭だけを出して見守る一同。
「では私がチェックインをしてきますから、みなさんは弁天さまを」
 と蛇之助が申し出るのへ、頷く救出隊(?)の面々であった。

「あれ?」
 貴由は、絨毯の上にきらりと光る小さなものを見つけた。
「これ……誰かの落とし物じゃない? わあ、きれいなブルームーンストーン。ちょっとレトロなデザインだけどいい感じ」
「ほう。どれ、わらわにお貸し」
 ロミオとともに、自室のドアを開けてもらいに歩き出しかけていた弁天が、貴由の手からそのピンブローチを奪い取った。
「あ、ちょっと。弁天さんのなの?」
「そうではないが、持ち主があらわれるまでわらわが預かってやってもよいぞ。見よ、あつらえたようにわらわにぴったりじゃ」
「……なんか釈然としないけど……たしかに似合ってますね」
「なぜか、この石に見覚えがあるような気がするが……ここでわらわに拾われる運命じゃったということやもしれぬ。……おお、番頭、待たせたな。さあ、いくぞ」
 悪びれもせず、拾ったブローチを胸に歩き出す弁天。
「でかした、月弥!」
 それを見送って祇紀が握り拳に力をこめる。ピンブローチはむろん、月弥がその本性に戻ってみせたにすぎない。そして祇紀は、ぐるりとロビーを見渡すと、置かれているインテリア類に近付いてゆく。
「お尋ね致す」
(……あら、なぁに?)
 ロビーのスタンドが、声なき声で祇紀に応えた。
「この宿に、あやしい男の逗留はなかろうか」
(あるよ)
「真か!?」
 無生物にも宿る意思はある。その声を聞くのが、みずからも剣の付喪神である祇紀の力だ。教えてくれたのは皮張りのソファーだった。
(二階の角部屋に黒ずくめのヘンな男が何日か前から泊まってるなぁ)
「ふむ。そやつはどのような」
(ルームサービスに言ったワゴンの話だと――机にかじりついてずっと何か書いてるって話だけど)
 読者諸氏はお気付きのように、その男とはカンヅメの漫画家・門叶曜のことである。だが――
「弁天殿を呼び出す手紙を書いておったのだな。その男は今も部屋に……?」
(リネン室に行った台車の話では、今日になって急に出歩きはじめたらしいぜ)
「むう。弁天殿の到着を知って動きだしたか。これは一刻を争う。おのおの方、恩に着る!」
 早合点のまま、駆け出してゆく祇紀であった。

■再会は二人きりで

「おや、シュラインさんではありませんか」
「セレスティさん?」
 ドアを抜けてシュラインがあらわれたとき、ちょうどセレスティがロビーに姿を見せ、二人は鉢合わせる。
「珍しいところでお会いしますね」
「ここに泊まってらっしゃるの? 驚いた。ま、リンスター財閥なら異界のホテルを手配できても変じゃないかしら……」
「偶然なのですけどね。縁が出来たようで。シュラインさんこそ、お一人ですか。女性一人のご逗留とはなにか意味深ですね。このホテルに泊まるには『秘密』を差し出すのが掟。興味深いですね、シュラインさんが何をお預けになるのか」
「冗談! ……それよりもセレスティさん、この人を、ホテルのどこかで見かけなかったかしら?」
 一葉の写真を取り出すシュライン。セピアに色褪せた写真にセレスティは目を落とすが。
「存じない方ですね。あいにく、今日はここで他のお客さんとすれ違いもしませんでしたよ。その方が何か」
「んー、何と言っていいか。実はね……」
 手短に、事の次第を説明するシュライン。
「そのような高名な女神さまが今、このホテルにお泊まりと。これはいい時に来ることができたものです。……そしてこの方が、かつての恋人である男性……」
 セレスティはもういちど、シュラインの持って来た写真を眺めた。
「神に愛されたものは夭折するといいますが」
「そうかもね。弁天さんと別れたこの人は94歳まで長生きしたそうよ。大往生もいいところ」
「それなのに、彷徨い出て弁天さまに執着するとは思えませんね」
「ええ。なにか別の解答があるのよ。この謎には」
「ところで……この風体から察しますに、この方は――」
「そうなの。そこがそもそもの問題だったのね」

「中庭が森になってて……遊歩道があるのね。ふうん」
 カフェのテラスからパティオをのぞみ、マリィは言った。
「ちょっと散歩してみない?」
 貴由を誘った。
「いいですね」
 彼女も二つ返事で、二人して庭へ足を踏み入れた、その時だった。
「待てい」
 二人の前に立ちはだかったのは、長い黒髪に黒サングラス、全身黒ずくめの男だ。門叶曜である。
「ここから先へは行ってはならん」
「は? 何言ってるの」
 かなり凄みのある風貌の曜だったが、マリィは動じた様子もなかった。
「マリィさん、この人――」
 貴由が鋭くささやく。
「わかってるわよ。……あなた、人間じゃないわね。何のつもり。まさか――」
 瞬時に、場の空気が緊張する。そこへ猛烈な勢いで飛び込んできた威勢のよい声。
「曲者め、観念いたせ!」
 有働祇紀だ。
「そこの娘さん!」
「えっ、私!?」
「“出来る”方とお見受け致す。袖すり合うも他生の縁! ご免!」
 次の瞬間――、貴由の手の中には一振りの、見事な大剣が握られているのだ。
「ほう、面白いっ!」
 曜が叫んだ。同時に、ずん、と重い音とともに彼の足が庭の地面にめり込むのが見えた。そして、得体の知れぬ圧力のようなものが空気を震わせ、庭の小石がぶわり、と宙に浮くのも。
「重力を――」
 操れる能力か……、マリィは理解するとともに、すかさず、傍の柱にすがって自身の足場を確保する。一方、貴由は、
「そんな、いきなり!」
 手の中の剣が、なかばひとりでに、目の前の男に向けて突進せんとするのを感じていた。これほど大きな剣なのに重さは感じない。たしかに、貴由は剣術のこころえもあるのだったが、だがこれは、あきらかに剣の意志だ。その剣こそ、祇紀の本性である魔剣であった。
「何の騒ぎ!?」
 シュラインとセレスティが姿を見せる。ちょうどそのとき、貴由が(というより祇紀が)曜に斬り掛かったところだった。ぎらりと輝く刀身を、曜は自分の腕で真っ向から受け止めた。がちん、と、あきらかに人の身体ではない硬い音がした。
「ボーイを呼んで!」
 マリィが叫んだ。
「早く来なさい! ホテルが壊されてもいいの!」
「それは困りますが」
 まるで最初からそこにいたように、ロミオは、シュラインとセレスティの後ろに立っていた。 
「お客様同士のご事情には立入らないのが当ホテルの信条でございますので」
「やむを得ません」
 ボーイの冷淡な返事を受けて、セレスティが手を振った。ぱっ、と、空中に出現した水の壁が、対峙するふたりのあいだを隔てる。
「ぬお、水か。水はいかんな。沈む」
 曜がそう呟いて、身構えた。
「事情を訊くわ」
 マリィの金の瞳が、黒衣の男を射抜く。
「どうして私たちが庭園に出ちゃいけなかったの」
「俺は頼まれたんだ」
 憮然として曜は言った。
「散歩してたら偶然、会った。面白い話を聞かせてくれたからな。マンガのネタに使っていいかと聞いたら、だったら協力してくれと。――二人きりで話したいから、しばらく、この庭に誰も立入らないようにしてくれと言われたのさ」
 一同は顔を見合わせた。
「この人ね。この人に頼まれたんでしょう。滝沢円照さんに」
 シュラインが、曜に写真を見せた。曜はサングラスをはずす、と、写真を眺めた。鋭い切れ長の目が、写真の人物をねめつける。
「ああ、そうだな。この男だ。だが……髪型と名前が違ったな」

 その頃――。
 中庭に、樹々に囲まれてひっそりと建つ四阿(あずまや)に、弁天の姿がある。
 手持ち無沙汰に、頬杖をついていた彼女の顔が、すっ、と引き締まった。
 近付いてくる、足音を聞いたからである。
 緑に、なかば隠されるようにしてある小経からあらわれたのは、トレンチコートに中折れ帽の人物だった。
「来てくれたね」
 穏やかな、男の声が告げる。その声に、弁天の目がはっと見開かれた。
 男が帽子のつばをすこし上げる。細面の、優しい面差しだった。弁天の唇から、驚きと戸惑いのないまぜになった声が漏れる。
「円照――」
 
■クリスマスローズの花言葉

 わたしの心を慰めて――。


■真犯人

「さや」
 男が、弁天にそう呼び掛けた。
 彼女は、目を伏せて、ふっ、と頬をゆるめる。
「なつかしい名じゃ。わらわがその名で呼ばれておったのははるか昔のこと。それにしても――」
 きっ、と、弁天の瞳が、相手の男を見据えた。
「よう似せたものじゃが円照には顎にほくろがあったことを知らぬとみえる」
「な!?」
 おもわず自分のあごに手をやった男へ――、弁天の高笑いが浴びせかけられた。
「バカめ、嘘じゃ。……ほんに瓜二つじゃが、このわらわの目を欺こうなどとは笑止千万。おぬし何者じゃ、円照の名を騙ってわらわを呼び出して何とする。申し開きができぬとあらば、わらわにも考えがあるぞえ!」
「畜生。バレたらしょうがねェ……!」
 男の表情が獰猛なものに豹変した。凄みながら弁天に詰め寄ろうとした、その刹那!
「「「弁天さま!」」」
 なるほど、門叶曜はたしかに、中庭に誰も立入らせはしなかった。だが気づかなかったのだろう。弁天の胸の輝くピンブローチが何であるかはもとより、小経の傍らにそっと置かれた彫像と、茂みにひそむ一匹の蛇のことに。
 人型へと変化した月弥が、弁天を守るようにその前に立ちはだかった。だがそのときにはもう、相手の男は、デルフェスの術によって一瞬にして石化させられているのだった。
「ご、ご無事で〜」
 そして蛇から姿を変えた蛇之助が、あるじに駆け寄る。
「お、おまえたち」
 弁天は目をしばたかせた。だが、すぐに合点したと見えて、ふっ、と微笑むと、
「ハナコじゃな。あのお喋りめ。……月弥にデルフェス、わらわのことを案じて来てくれたのかえ」
「うん。俺、弁天さまが幽霊に取り憑かれちゃったんじゃないかと思って……、でも違ったんだね」
「この方はどなたなのでしょう。誰であれ、弁天さまを騙して呼び出すなんて言語道断ですけれど」
「うむ。じゃが、いったい何の思惑か、はっきりさせねばのう。悪さを出来ぬよう、縛りでもした上で、デルフェス、換石の術を解いてやってくれぬか」
「かしこまりましたわ」
「あ、あの……」
 なにやら無視されたような格好になっている蛇之助が、おずおずと声をかけるのを一瞥して、
「蛇之助。そなた、ここに居るということは弁財天宮を留守にしてきたのじゃな。わらわがおらぬあいだは、そちが宮のあれこれを仕切らねばならぬというのに、なんたる怠慢。頼りにならぬ奴じゃ!」
「そ、そんなぁ〜」
 甲斐なく、叱責される蛇之助であった。情けなさに、思わず目尻に涙が浮ぶ。
「泣くくらいなら、月弥やデルフェスを信じて、自分はのこのこ出てこずともよいのじゃ。まさに『藪蛇』。おお、これはわれながら座布団ものじゃな!」
 などと言ってからからと笑う弁天。蛇之助は、がっくりと肩を落とす。

 そして……カフェダイニングの大テーブルに、一同は臨席している。
 ボーイが各自に熱い紅茶をサーヴしていった。席のひとつに荒縄でぐるぐる巻きにされ、憮然とした表情でいる男の前にも平等にカップが置かれ、紅茶が注がれた。むろん彼自身は、アールグレイの豊かな香りの他は、味わうことはできなかったけれど。
「で?」
 尋問が始まった。
「まずはおぬしの名を聞かせてもらおうかの」
「……滝沢円空」
「たきざわ――えんくう、じゃと!? おぬし、まさか……」
「円照は俺のひいじいちゃんさ」
「!」
「なるほど。それで……よく似ておられるのですね、この写真の方――円照さんに」
 言ったのはセレスティだった。たしかに、写真の中の男と、縛られている男は同じ顔をしていた。ただ――、トレンチコートと中折れ帽を剥いでみれば、彼はまだごく若い青年であると知れた。この中でなら貴由と同年代であろう。渋谷か原宿にでもいそうな、今風の格好に、茶髪に染めた髪の、若者だったのだ。
「そのような写真、どうしたのじゃ! シュラインか! そなた興信所のようなマネを……いや、たしかに興信所の事務員じゃが……」
「円照さんとのこと。私の口から説明してもいいの? 自分でする?」
 問いかけるシュラインに、弁天はどうにでもせい、とそっぽを向く。
「では僭越ながら。事の起こりは1920年代――大正の頃に、弁天さまとこの写真の人、滝沢円照さんがおつきあいしていたことから始まったのよね」
 さながら謎解きをする名探偵のように、シュラインは語りはじめた。
「『さや』さん、と当時は名乗っていたのですって? 円照さんとさやさんこと弁天さまはとても仲の良い恋人同士だった。ところが円照さんの求婚を弁天さまは受けなかった。それは何故か――。弁天さまは、円照さんとだけは、結婚したくてもするわけにはいかなかったの。だって円照さんのお家は……」
「お寺だからですか?」
 セレスティは訊ねた。
 そう――、写真の中の円照は、剃髪した頭に袈裟がけの僧形だったのだ。
「しゅ、宗教の問題!?」
 素頓狂な声を出した蛇之助を、弁天がじろりと睨む。シュラインは首を振った。
「ただのお寺じゃないのよ。私も調べてみるまで知らなかったの。井の頭公園のすぐ傍に、あんな立派なお寺があるなんて。しかもそのお寺……『徳大寺』はね、もともと弁財天宮を守護するために建てられたというじゃないの」
「あ!」
 人々は顔を見合わせた。マリィが、どこか同情するような目で弁天を見ながら、言った。
「それで……別れたのね。恋人というだけなら、人間のふりをし続けることもできるけど、まさか寺院が守護する対象と、その寺の住職の奥さんの二役はできないもの」
 シュラインが再び引き取る。
「そ。つまり、弁天さまは自分自身が原因になって、恋人との中を裂かれなきゃいけなかったのね。これが80余年前の、弁天さまの悲恋の真相よ」
「愚かな」
 呟くように言ったのは、曜だった。
「誰と結婚するかなど自分の気持ち次第だろうに」
「でも私がつきとめたのはここまで。あとは……円空さんと言ったかしら。あなたから話してもらうよりないわ」
「…………」
 そして、かつての弁天の想い人に瓜二つの青年は、静かに口を開くのだった。
「俺たちの寺の役目は俺も子どもの頃から叩き込まれていたから……ずっと、今でも毎日、俺は井の頭公園の動向はチェックしていたんだ」
「えっ、そうなんですか。ちっとも気づきませんでしたよ!?」
 と蛇之助。
「そりゃあな。陰ながら弁財天宮をお守りするのが俺たちの役割だって……。俺も、俺の父ちゃんも祖父ちゃんも、この役目には誇りを持ってた。それが…………肝心のこの女神さまときたら、花見だ盆踊りだオリエンテーリングだと遊びほうけてばっかりで」
「す、すいませんっ」
 反射的に謝ってしまうあわれな眷属。
「そんなとき、ひいじいちゃんの遺品の中から……じいちゃんが若い頃に書いた手紙や、写真が出てきた」
「それで、弁天さまのことに気づいたってわけ」
 貴由が、ぱちん、と指を鳴らした。青年は頷く。
「そこでもうブチ切れさ。いったいあの神サマは何やってるんだってな。ひいじいちゃんをダマすようなマネしやがって」
「それは――」
 はじめて、弁天が口を開いた。だが――、
「いや、それはいい。ひいじいちゃんもアンタのことを怨んでたわけじゃない。遊びほうけるのも、まあ、いいだろう。一番の問題は、だ」
 円空青年は言い放った。
「悲恋の腹いせだか何だか知らないが、アンタが井の頭公園を訪れるカップルを次々別れさせてるってことだよ! いいかげんにしろよなー。ウチの寺の評判にまでさしつかえるんだから。迷惑もいいところだぜ。ついでに俺も中学のときの彼女と、公園のボートに乗ったせいで破局――」

「なんじゃと――――――――ッ!!!!」

 ちゃぶ台返しの要領で、宙を舞ったダイニングのテーブルを、曜とマリィの怪力コンビがなんとか支え、UFOのごとく飛び交ったカップとソーサーを、落ちて割れる寸前に、貴由と祇紀が卓抜な反射神経で拾い、それからも漏れたぶんは、セレスティが水のクッションをつくりだして受け止める。
 それでもいくつか、こぼれてしまったカップには――
「お代わり、お注ぎしましょうか?」
 と、ボーイがやってきた。

■そして世はこともなし

 その後の阿鼻叫喚については筆を省くとして――。
「弁天さまにあんな過去があったなんてことも知らなかったし、徳大寺のことも初耳ですし、弁天さまは私のことをさーっぱり信用してらっしゃらないようですし、なんかもう、私って眷属というより、ただの使いっぱしり――っていうのは、以前からうすうす感じないでもなかったですけど、ああ、もう、ほんと、私の井の頭公園におけるレゾン・デートルは如何なるものなんでしょうねぇっ!? ねえ!ねえ!」
「れぞん……何?」
「レゾン・デートル。存在意義ってことよ」
 小首を傾げる月弥に、シュラインがやさしく教える。
 蛇之助の落ち込みようは、いよいよ自らの実存的な問題を見据えるほどに形而上的なレベルに突入しているらしかった。
「蛇之助さんはいつも頑張ってるじゃないですか! 弁天さんも蛇之助さんのことは好きなんだと、俺、思いますよ」
「そうですかね〜」
「弁天さまって、ほら、素直に思ったことを口に出さないタイプだから」
 いやに大人びた風に分析する月弥。
「むしろ思いついたことを脊髄反射的に口にしたり行動したりして、あちこちにご迷惑をかけているだけの気がしますが……」
「でも、弁天さまったらね」
 シュラインが口を挟んだ。
「さっきは黙ってたんだけど、その後ずっと、徳大寺の一家のことは気に掛けてたみたい。表向きの交渉はないのに、それとなく情報を集めては援助したりね。弁天さまはこっそりやってるつもりが、徳大寺のみなさんは全部筒抜けでご存じだったらしいのがちょっと笑えるんだけど……、それってやっぱり、弁天さまにとって円照さんへの想いは特別なものだったってことよね」

 自分の家が守護すべき対象の、あまりの傍若無人ぶりに業を煮やし、一言、直接会って説教してやろうとした円空青年の計画に端を発した騒動は、ともあれ、これで落着した様子であった。
 青年は、その後も、ときおり弁財天宮を訪れては、今度は大っぴらに弁天のやることなすことにクレームをつけたり、教育的指導に勤しんだりしているそうである。だが、そんなものに耳を貸す弁天ではない。毎度、蛇之助が平謝りするだけのことだ。
 しかし、それも、ハナコに言わせると――
「でもねぇ。弁天ちゃん、円空ちゃんが来た日はなんか楽しそうなんだよ。円空ちゃんは円照さんの子孫でしょ。もし、自分があのとき結婚して、子どもができたりしていたら……なぁんて思っちゃうのかもね。あ。そんなこと弁天ちゃんには言っちゃダメだよ。絶対、絶対、ナイショだから、ね?」

(了)

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【0086/シュライン・エマ/女/26歳/翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員】
【1883/セレスティ・カーニンガム/男/725歳/財閥総帥・占い師・水霊使い】
【2181/鹿沼・デルフェス/女/463歳/アンティークショップ・レンの店員】
【2269/石神・月弥/無性/100歳/つくも神】
【2299/有働・祇紀/男/836歳/骨董屋店主・剣の付喪神】
【2438/マリィ・クライス/女/999歳/骨董品屋「神影」店長】
【2694/時永・貴由/女/18歳/高校生】
【4532/門叶・曜/男/27歳/半妖・漫画家・108艦隊裏部隊非常勤】

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■         ライター通信          ■
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お待たせ致しました。『【ホテル・ラビリンス】女神の密会』をお届けします。
異色なゲストをお迎えしてのホテル・ラビリンス・エピソード2。
ご覧のような結末となりました。
『徳大寺』なるお寺の名称は架空のものに差し換えましたが、この、「弁財天宮を守護するために建立された、今も井の頭公園の傍にあるお寺」は実在します。
その情報と、件の寺の住職と弁天さまの悲恋物語のアイデアは、神無月WRよりご提供いただきました。ありがとうございました!

>シュライン・エマさま
いつもありがとうございます。お相手の男性の素性について調べるというアプローチをなさったのは意外にもシュラインさまだけでした。さすが興信所事務員!? 弁天さまはこれでまたシュラインさまに弱味を握られたということに……(笑)。

このたびは、ご宿泊ありがとうございました。
またのお越しを、お待ち申し上げております……。