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Ωメイドさん挨拶回りΩ
使用人集会みたいな物が年始に行われた。
なんでも宮小路の傍系にあたる人物が3年間のメイド修行を得て宮小路副総裁に気に入られたのである。
その名は、篠原美沙姫。若くしてメイド長になるのである。
「本日より宮小路家メイド長を務めさせて頂きます、篠原美沙姫です。宜しくお願いします」
今までのメイド長が引退を機にそうなったのだが、すんなり事が進んだ訳でもない。
其れより少し前の事。
年末行事で忙しくなる前後に彼女は帰国したのだ。
「皆様。お久しぶりでございます」
と、美沙姫は恭しく挨拶する。
相手の印象は様々だろう。
直ぐに副総裁の侍女になった時点で妬む者もいる。しかし、彼女には手出しできない。
使い人 〜精霊を使い肉体の強化が出来る能力者〜 なのだ。
返り討ちにされるのはオチである。
そんなある日。
「今日は休暇よ。挨拶に行ってらっしゃい。息子がお世話になっているところに、ね」
副総裁に休暇を貰った。
「ありがとうございます」
恭しく堪える美沙姫。
「あと、特にあやかし荘蓮の間にいる人達にはね」
「は、はい!」
その言葉で彼女は明るくなる。
念のために各地にアポを取る美沙姫。
お土産にはお手製の『スコーン』と『特製ブレンドの紅茶』のセット、服装は、オーソドックスなエプロンドレス・スタイルだ。
そして、出かけていった。
草間興信所のベルを鳴らす美沙姫だが、人を殺せるほどのブザー音で耳がおかしくなりヘロヘロになったところで、ドアが開いた。
「お待たせしました。草間興信所ですが、なにかご依頼でしょうか?」
草間零がドアを開けてくれた。
肉体の調整により、なんとか6秒で耳鳴りや立ちくらみを治す美沙姫は、
「初めまして。宮小路家に仕えるメイドの篠原美沙姫と申します」
何事もなかったように、恭しく礼をする美沙姫。
そして、草間兄妹や居候の謎生物(猫とうさぎ)と妖怪に挨拶を済ませていった。
彼女が去った後に草間兄妹と愉快な居候達はこんな話をしていた。
「まさか、凄いメイドがここに来るなんてなぁ」
「私もいつもメイド服など着て、メイドのお仕事をしていますけど? 兄さん」
「いや、お前は単に趣味だろう……」
「お気に召さないのですか?」
不満げな顔をする零。
「にゃー!」
草間の頭によじ登ってグラサンを取り上げる赤い猫。
「零おねえちゃんを悪く言うなぁ! 怪奇探偵!」
膝かっくんする五月。
「こら! おまえら! 居座り続けてその態度は何だ!」
「ヒエラルキー的に兄さんが一番下と言うことの表れですね」
「お、おい……」
と、何と平和な草間興信所であった。
他にアトラスやアンティークショップ・レン、SHIZUKUに挨拶をして待望のあやかし荘にやってきた。
「あら、先ほど連絡して下さった篠原さんですか?」
管理人の恵美さん、だいぶけったいな状況に抵抗力を持ったのか、美沙姫を出迎える。
「初めまして、篠原美沙姫ともうします。幼なじみがいつもお世話になっております」
「あ、はい、此方こそお世話になっています。おまちしていました」
と、お土産のお手製の『スコーン』と『特製ブレンドの紅茶』のセットを渡し、少し雑談。
――どれだけ持っているんだろう?
「蓮の間はどちらでしょうか?」
「はい、案内しますね」
美沙姫は恵美が若いのにこの大きなアパートを管理しているなんて凄い事だなと感心していた。
蓮の間に向かう途中で、既に聞いているあやかし荘の面々を知ることが出来た。深くは語らないでおこう。
「では、ゆっくりして下さいね」
「はい、ありがとうございます」
お辞儀する美沙姫。
と、蓮の間に入る。
「エルハンドさんお客様ですよ」
「管理人さんありがとうございます」
と、エルハンドなる者が恵美に礼を言った。
「お客?」
「確かそうみたいね」
|Д゚) ……
中にはこの神に親しい〜かわうそ?はどうなのだろう?〜連中がいる事がわかった。
「連絡は受けている。さ、入りたまえ」
「はい、失礼します」
蓮の間に、いつもの連中、織田義明と長谷茜、そして例の小麦色がのんびりとボードゲームをしていたところだった。4人で凄く熱くなれるドイツ生まれの開拓ゲームである(著者はやったことはないが凄く面白いらしい)。
流石に美沙姫もエルハンドの異質な気配に本能警戒をもったが直ぐに慣れた。幼なじみが世話になっているという事を既に知っているからだ。
「いつも、宮小路家と天薙家がお世話になっております。エルハンド様」
「私はエルハンド、エルハンド・ダークライツ。此方もそちらの方々には世話になっている。気楽に話をするか」
エルハンドは微笑んで彼女を部屋に招く。
「初めまして、織田義明です」
「初めまして〜♪ 長谷茜です」
|Д゚)ノ おぅぃぇ〜 かわうそ? の かわうそ? なのだー!
と、それぞれ挨拶し、ボードゲームを片付け始めた。
彼女と和気藹々と彼女の持ってきたティーセットで話が弾む。そのなかでまず美沙姫は織田義明にこういった。
「幼馴染みの撫子様がお世話になります。これからも宜しくお願いしますね」
「はい、任せて下さい。俺は共に彼女と進んでいきます」
自信に満ちた義明の言葉は、美沙姫は笑顔にした。
そして次に、茜に向かって
「皇騎様がお世話になります。応援しております、何かございましたらお手伝い致します」
と、言って、深々とお辞儀する。
茜は少し赤面してから、
「はい、首輪も鎖もしっかりもってるから大丈夫ですよ♪ でもお手伝い頼みます」
と、本当の首輪と鎖を取り出す茜。
其れには流石に苦笑するしかない美沙姫さん。
「じょ、冗談は程ほどに……」
――冗談でないのはわかっているのだが。
そして、美沙姫は例の小麦色をみた。
|Д゚) じー
|Д゚*) ぽっ
「美人を見ると直ぐコレだ」
かわうそ?を知る3名は苦笑する。
「かわうそ?様」
|Д゚) なに?
「あまり、人をからかうのは程ほどにして下さいませ」
|Д゚;) ……
あ、ナマモノ本当に困っているようである。
「あはは、珍しい。こいつが返答できなくなるとは」
義明が笑った。
「美沙姫さん、この子には悪意はないから大丈夫ですよ。多分……」
茜がフォロー入れる。
|Д゚;)ノ な、何とか善処する。
と、ナマモノ返答する。
「よかったです」
と、にこやかに笑うメイドさん。
こうして、彼女の挨拶回りは終わり、帰宅するのであった。
|Д゚) ……あう、やばい、あの人
と、謎の言葉を呟いてかわうそ?は四足で翔ていった。
「いい人達ですね……」
もう冬なので、既に真っ暗の夜道を彼女は歩く。気配で例の小麦色が近くにいるのがわかった。
「どうされました? かわうそ?様」
|Д゚) 女の一人歩き危険。護衛
「お心遣い感謝致します。しかしわたくしも使い手です」
|Д゚) だめっぷ
何かかわうそ?は何かを感じていたのだろう。
「……あ、コレはさすがに……」
彼女も何かに感づいたようだ。
夜道に、邪なる気を放つ存在が漂っている。
「東京はかなり混沌としていることがわかりました」
今の彼女では、奥の手を使わないと切り抜けられないだろう。
|Д゚) かわうそ? 襟巻きになるので突っ走る。
「え? ちょっと!」
慌てる美沙姫。
しかし、そのままくるまったナマモノはまるで呪いのマフラーのように離れなくなった。
|Д゚) はしる!
「はい!」
彼女は走った。
力を使い人間の機能100%を引き出し走り抜ける。
そこでわかったのが、存在は彼女が見えていないらしい。
かわうそ?の謎効果らしい、と彼女は直感で感じた。
かわうそ?が追いかけてきた理由はそれだけでなかった。
後ろで何かの戦いの音がする。
「よき魂を喰らう悪鬼が集まっていたようだ。しかも巧妙に隠れていたとは。アレが知らせてなかったら、あの人大変だったな……」
と、若き剣客が透明の刃で悪鬼を屠っていく。
「からかう相手はちゃんと選んでいるからね〜あの子はv」
サポートする巫女。
「……まったく、アイツの行動原理は私にも理解できないな」
その場を静観する黒コートの神だった。
翌日の宮小路家では、
「どうだったかしら?」
女主人が美沙姫に尋ねる。
「とてもいい人達です。あのお二人も幸せでいらっしゃると」
美沙姫は満面の笑みで答えたのだった。
End
■登場人物
【4670 篠原・美沙姫 22 女 宮小路家メイド長/『使い人』】
【NPC 草間兄妹と愉快な居候達】
【NPC 因幡恵美 17 女 学生兼あやかし荘管理人】
【NPC エルハンド・ダークライツ 年齢不詳 男 正当神格保持者・剣聖・大魔技】
【NPC 織田・義明 18 男 神聖都学園高等部・天空剣剣士】
【NPC 長谷・茜 18 女 神聖都学園高等部・巫女(長谷家継承者)】
【NPC かわうそ? ? ? かわうそ?】
■かわうそ?通信
|Д゚) おはつー
|Д゚) からかう相手決まってる。安心するヨロシ
|Д゚) 襟巻きになるの癖になりつつ……
|Д゚) みんくちゃうけど……
|Д゚)ノ これからもよしなにw
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