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■不夜城の街■
「本当に、こちらで行かれるんですね?」
大層厳めしい面構えの老人が、彼にそう聞いた。表情は当然ながら、真剣も真剣。大マジだ。彼は某財閥にて筆頭執事を務めていた。
執事が『こちら』と視線で指したのは、一台のリンカーン・コンチネンタル特別仕様車。
対する彼は、五十二度目のこのやりとりに、半ばうんざりしつつも笑みを浮かべて答えた。
「はい。勿論ですよ」
くしゅくしゅと跳ねている天然パーマの黒髪に、猫を思わせる金色の瞳、あどけなく見える面差しの彼は、マリオン・バーガンディと言う。
『早く出たいんですけどねぇ…』
マリオンはそう心でぼやくも、執事の口が再度開こうとする。
『仕方ありません』
何処か諦めた様子で一枚の紙を取り出した。
「これをご覧下さい」
受け取って、『何々?』とばかりに見る執事の顔が、みるみる変わる。
効果は覿面だ。
「行っても宜しいですね?」
「…お気を付けて、行ってらっしゃいませ」
良かったと安堵しつつ、マリオンが紙を取り戻し、更に1.5割増しな笑みを浮かべた。
マリオンが筆頭執事に見せたのは、彼らの主の署名入り『マリオンの運転許可証』だった。下には名と共に、でーんと印鑑が捺印してある。
彼らにとって、それは江戸時代における葵の御紋より、数万倍も価値のあるものだ。
筆頭執事がぐうの音も出なかったのは、当然と言えば言えた。
しかしながら、何故にそんなものが必要なのかと言う疑問が残るのだが、それはマリオンのドライビングテクニックに、誰もが恐れ戦いていたからに他ならない。
それが証拠にドライビングシートに乗り込むマリオンを見て、執事を始めとするお見送り部隊は、密かに十字を切っている。
エンジンに火が入ったことを示す、重厚な音が聞こえた。
と。
雷が落ちたのかと錯覚しそうな音が聞こえると同時、弾丸ダッシュで車は彼方へと消え去っていったのだった。
「さて。皆さん揃っているでしょうか」
マリオンはそう言うと、目の前のオンボロ興信所のブザーを押下する。
途端、鼓膜が破れるかと思う程に凄まじい音がした。
元から気配のあるそこが、更に活気を見せた気がして、即座にその扉が開く。
「いらっしゃい」
そう言って笑顔を見せたのは、このオンボロ興信所、つまりのところ草間興信所にて事務員兼調査員、更には『目指せ黒字推進委員会会長』を拝命しているシュライン・エマであった。
何時も通り、長く艶のある黒髪を一つに纏め、胸元には眼鏡を揺らせている。澄んだ青い瞳を和ませ、マリオンを中へと招き入れた。彼女の弾んでいる様な気分が、マリオンにもヒシヒシと伝わって来る。
「こんにちは、お迎えに上がりました。…皆さんお揃いですね」
狭い事務所だ。全てが一望できる。
「今しがたね」
それぞれが巨大な荷物を持っているのは、致し方ないだろう。彼らはこれから旅行に行くのだ。
そう『モナコでカジノ』をする為に。
マリオンの主を始め、時間に余裕のあった者達は、既に自家用ジェット機にて先行している。ここにいるのは、様々な理由でそれに間に合わなかった面々だ。
当然ながら、荷物を先に送ってしまうと言う芸当も出来なかった。
「今回はお招きに預かり、有難う御座います!」
語尾にハートマークが付きそうな調子でそう言ったのは、日焼けとはまた違う小麦色の肌を持ち、クセのある黒髪と愛嬌の見える黒い瞳を持ったアイン・ダーウンと言う青年だ。既に心はカジノへと飛んでいるらしく、彼は少々興奮気味である。
「待ってたぜっ! いざ行かんっ、初海外っ、大儲け、食い倒れへの旅っ!!」
そう鼻息も荒く言う彼は、守崎北斗(もりさき ほくと)と言う。茶色い髪に悪戯っぽい光を宿した青い瞳を持っていた。他人が聞けば、彼の言葉には脈絡がない為、首を傾げてしまうだろう。大儲けと食い倒れが何故繋がるのかと言えば、『カジノで一発大儲け→儲けた金は使い放題→当然ながらご馳走三昧』の三段論法とも言えないものだ。ちなみにおまけとして、『これなら兄貴に文句も言われない。だって、自分で稼いだ金で喰うんだもんな』と言う、『それでは元金は何処から来たんだ?』と言う突っ込みを、見事に脳内消去をカマした結果をも含んでいた。彼を現す一番の言葉は、食欲魔神だろう。
「弟がアホで済まん。今回は宜しくな」
北斗とうり二つの顔、けれど違う表情の彼が言う。何処か苦悩している風な彼は、守崎啓斗(もりさき けいと)と言った。北斗の双子の兄だ。北斗と同じ髪色ではあるが、瞳の色が緑である。
何故彼が苦悩しているのかと言うと、実は啓斗(と北斗)の父が、再三、口を酸っぱくして言っていたことが心の中を占めていたのだ。『啓斗…酒は程々なら良いが、博打はするなよ…』と。今これから、自分はその父の言葉を破ろうとしている。到着するまで延々悩むことになるのだが、それが表情に出ることはなかった。
「下に車を止めてあるんですけど、その前に」
マリオンは四人の顔と、今回の旅行に仕事の関係上参加出来ず、興信所の端っこでいじけている草間を交互に見つつ、にっこり笑った。
取り出したるは、五枚のカード。
「何だ、それ?」
北斗がしげしげと見ていた。ちなみにくんくんと嗅いでもみて、『やめんか』と啓斗から殴られている。アインもまた、頭のてっぺんから、ハテナマークが飛び出していた。
「カルト・ドール…じゃあないわよねぇ…。金色じゃないし」
唯一その正体を推察することが可能であったのは、シュラインだ。顎に人差し指を当て、小首を傾げている。
カルト・ドールとは、SBM──ソシエテ・デ・バン・ド・メール(Societe des Bains de Mer,MonteCarlo)──が発行しているカードだ。モナコではSBMと言えば有名すぎる程の組織体だ。モナコには、SBM系列とそれ以外の企業しか存在しないとまで言われていた。そのSBM系列のホテルやカジノ、レストラン等々で優先的にサービスを受けることの出来るカードを、カルト・ドールと呼んでいる。あだ名をゴールドカードとも称しており、通常目にとまるのは金色のそれだった。
このカードは、SBM系列のホテルへ宿泊すると、自動的に渡されることになっている。
しかし見せられたカードの色は、シュラインが口にした通り、金ではない。銀色をしていた。
「カルト・ドールですよ。ただ、少々プラスαがあるんです」
「プラスα?」
「はい。このカードは、SBMと主人の財閥が提携して発行しているカルト・ドールです。戦時中に経営状態が落ち込んだここの株を、ギリシアの海運王オナシスが買い取ると言うことがあったんですけれど、再度モナコが半分ほど買い戻す際、財閥が少々手を貸したそうです。その時の謝礼が、このカルト・ドールの発行になっているんです。これはプラチナカードと呼ばれています」
実は発行主の采配により、このカード専用の口座が個人ごとに開かれており、そこにはある程度の金額が振り込まれている。当然の様に受けられるサービスを除いた際に使用される代金は、ここから引き落とされるのだ。
「スケールが違うわね」
こともなげに言うマリオンに、苦笑しつつもシュラインが感想を述べた。
確かにそうだろう。
SBMと言えば、現在、モナコ国土の十二分の一を所有し、政府と二人三脚の関係で国を動かしているのだ。そこと提携すると言うのだから、一般市民の感覚で語るべきことは殆ど出来はしない。いや、それ以前に、そんな企業体を取り戻す為に、投げ打つことの出来る財力に唖然としてしまう。
「で、具体的には、どんな風に違うんですか?」
アインが興味津々と言った調子で聞いた。
「通常のカルト・ドールのサービスは勿論、これを提示するだけで、通常身分証明書を求められるカジノでは、フリーパスで通して貰えます。更に、SBM系列の店舗などでは、支払いは全てこのカードで行うことが出来ます。つまり、モナコにいる間は、このカードを携帯していれば、好きなだけ、好きな時、好きな様に過ごすことが出来るんです」
実は言っていないサービスもある。お得意様とSBM系カジノが認識した客は、モナコまでの往復旅費、更に宿泊費が無料となるサービスだ。簡単に言えば『カモさんがネギを背負って来て下さるのなら、当カジノは大歓迎でございます。ええ、渡欧経費なんぞ、微々たる出費にしかなりませんよ。どうぞおいで下さいませ』と言うことだ。
ラスベガスでは、案外良く聞くコンプと言うサービスの一環でもあるが、実はこれには落とし穴も存在する。更に砕けて言うと『ケツの毛までむしりとってやるさかい、覚悟しぃや』と言う訳だ。往復旅費や宿泊費をサービスと言うのは、それを払うことが出来なくなるくらいに遊んでねと言うことだった。コンプ狙いで遊びまくると、ロクなことがないのは間違いない。だからマリオンは、敢えて言わなかったのだ。
「そ、それってつまり、食い放題?」
そこらへんの、詳しい事情を知らない北斗の目が輝いた。
しかしちらちらと横目で兄を見ることは忘れない。何故なら、兄の方から『買い食い拾い食いもらい食い禁止令』が出ているからだ。
対する啓斗は、悶々と悩んでいる。父の『賭博禁止』に付け加え、このカードを弟に持たすと、常日頃言い聞かせている『買い食い拾い食いもらい食い禁止令』が破られる可能性が120%出てくるからだ。かと言って、カードを固辞するのは、招いてくれた者への礼儀に反する。
仕方ない。
「今回だけだ」
北斗の視線が刺さっている左頬をごしごしと拭ってから、啓斗は開き直った様にそう呟く。
「ぃやっったぁっ!!」
今にも喜びを表す阿波踊りを踊り出しそうな勢いで、北斗が叫ぶ。
「ふっふっふ。目指せギャンブル攻略。勿論勝った分は寄付に回します」
妖しく瞳を輝かせるアインも忘れてはいけない。現在、彼はボランティアに精を出しているのだ。世の皆様の為にも、勝たねばならない。いや、ちょっとだけは自分の為にも勝ちたいなとも思ったが。
「絶対に、なくさないで下さいね。これがあれば、大抵のことは何とかなるんですから」
マリオンの何時になく真剣な声音に、カードを渡された四人は神妙な顔で頷いた。
「さぁて。…では飛びますっ」
何処ぞの漫才師かコメディアンの様に、飛びますを連呼されずに良かったと思ったのは北斗だが、僅か数分の後、その考えは返上したくなってしまった。
視界が歪み、まるで映画に見るタイムトンネルを抜けている様な色合いが、車の周囲を埋め尽くす。そこまではまだ良かった。
「うおおおおっ、派手ーーーっ! すげぇーーーー!!」
楽しげにリアガラスに顔をひっつけ、啓斗にぼかりと殴られる。叫ぶだけ叫んだ後、視界が急変した。何事かと前を向く。
「あ、失敗しちゃいました」
目の前に現れたのは、クラクションを鳴らしつつも迫るトラックだ。
マリオンがクラッチを蹴りつつブレーキング、更にアクセルをふかすと同時にステアを切った。
「嘘でしょっ!!」
流石のシュラインも目を剥いた。
「何事っ?!」
黄色いマフラーをたなびかせていないサイボーグ、アインもまた顔を引きつらせる。
「ぬうおおおおおおおおっ!!」
北斗が雄叫び、啓斗は顔面神経痛を引き起こしつつも、そこは流石ジャパニーズニンジャの双子と言えよう。
即座に身体が反応し、目にもとまらぬ早業で、即座にパワーウィンドを自力で押し下げると、双子忍者は車の外へと躍り出る。我に返ったアインもまた、加速装置レベル1仕様で外へと飛び出す。その間、僅か五秒。
三人が三様の思惑を持っていたのが解ったのは、その立ち位置+行動だった。
啓斗はトラックの進路をこちらの車と反対側へと変えるべく、マキビシでタイヤをパンクさせ、アインは自分が乗っていた車を、マリオンとシュラインを乗せたまま持ち上げようとしている。
そして北斗は…。
真っ先に回れ右をし、現場から遁走していた。
啓斗の捲いたマキビシ効果で、トラックはききーーーっと凄まじい音を立ててスピンする。
「皆さん! 早く乗って下さい。また飛びますっ!!」
マリオンが窓から顔を出し、真剣な顔でそう叫ぶ。出た時と同じく──北斗は若干距離があるが──、速やかに車に乗り込んだ。またもや現実世界から消える車。
そして次ぎに現実世界へと五人が戻って来た時は、今度こそホテルのすぐ側である。
よれよれになりつつも車を降りると、シュラインが不意に北斗の眼前へと仁王立ちし、頬肉を鷲掴む。
「ほ、く、と、くーーーーん。……逃げたわねっ」
シュラインの満面の笑みと共に、伸びていく北斗の顔面。
「ひゅ、ひゅはへへ…、ごおん」
「シュ、シュラ姐…、ごめんと言うくらいなら、最初から逃げるな」
冷静に通訳をする啓斗に、シュラインは微笑む。
「流石双子ね、素晴らしい通訳だわ」
いや、誰でも解るから…と思っているのは、顔を引きつらせているアインと、のほほんとした笑みを浮かべているマリオンだ。
「ほれ、せめてもの詫びに、シュラ姐の荷物持ちせんか」
「逃げたのは、やっぱり酷いですからねぇ」
啓斗が北斗に向かい、そう言いつけ、マリオンもまたうんうんと同調する。
が。
「ちょっと待て、兄貴っ!」
「何か文句でも?」
笑顔魔神と渾名された啓斗の微笑みが、北斗の脳天を直撃した。
「何でもありません…」
両手と背中には、シュラインだけでなく、何故か全員の荷物が乗っかっている。それについて文句を垂れようとした北斗だが、やはり兄は怖かった。
「可哀想に…。俺がちょっと持ってあげましょうね」
そう言うアインは、北斗から本当にちょっとだけ荷物を分けて持つ。
「さんきゅー…って、おい、それ元からあんたの荷物だろ」
そう、アインは自分の荷物を持っただけに過ぎない。依然北斗の両手と背中には、四人分の荷物がおんぶお化けの如く、ぶら下がっている。けれど文句は言えなかった。何故なら、未だ微笑みを浮かべている兄がいるからだった…。
北斗が荷物から解放されたのは、マリオンがホテル従業員の目にとまったからだ。
今か今かと彼らを待っていたホテルマンだから、目の端にマリオンの指一本見えたとしても、すぐに解ったかもしれない。
一挙に従業員が勢揃いし、更にそのホテルを仕切っているSBM総取締役までが現れた。そのまま先頭にいるマリオンを始め、シュライン、啓斗、大荷物を抱えた北斗、アインにも、恭しく頭を垂れる。即座に北斗とアインから荷物が取り除かれ、ポーターが数人がかりでそれを持った。
「マリオン・バーガンディさまでございますね。ようこそおいで下さいました。総帥はすでにご到着しておられます」
「宜しくお願いしますね」
それに臆することなく、マリオンは主譲りの剛胆さでにっこりと微笑む。
勿論先に着いていることくらいは解っていた。彼らはゆったりまったりとする時間が取れなかった為、マリオンのDoor to Doorと言う大博打の様なやり方で来たのだ。
何が大博打かと言えば、その方法として『マリオンの運転する車』を使ったことだ。
スピード狂として慣らしている彼の車に乗る命知らずは、片手の指で足りよう程だと言われるくらいに少ない。つまりのところ、とってもとっても恐ろしい思いをすると言うことだ。勿論ながら、ドライビングテクニックがお粗末くんであると言うことではあり得ない。神業的なそれは、素人さんには理解できないのだ。
しかし、このメンツは一味違う。
マリオンの運転にある意味慣れているシュライン、彼とどっこいの肝の座りを見せる啓斗と、ジェットコースターを楽しむ感覚でいる北斗、自分自身でそれを上回るスピードを出すことの出来るアインと言う面々だ。
驚く訳がなかった。
いや、流石に目の前にトラックが見えた時には驚きはしたが、街乗り程度では驚きはしない。
驚いたのは、ホテルに入ってからだ。
「何て言うか…」
「別世界、よね」
「……一泊で俺たちの食費何日分だろう…」
「よっしゃっ! 晩飯も期待出来そうだぜっ」
周囲を見回し口を開けたままのアインに、ほうとうっとりした視線を浮かべるシュライン。大層現実的な感想を漏らす啓斗に、既に心はディナーへと飛んでいる北斗であった。
彼らの反応を確認し、ホスト側とも言えるマリオンは、満足の笑みを浮かべる。
足音もしないふかふかの絨毯に靴底を包まれ、入った先で、どんと視界に入ったのは、迫力のあるフラワーアレンジメントだ。内装一つ一つに気品と優雅さを感じられるそれは、アールヌーヴォ調の調度品によって、更にその壮麗さを引き立てられている。五人は総支配人に促され、昼間であるのに何処か黄昏を思い出す様なロビーを、ゆったりと歩いて行く。
シュラインがふと上を見上げた。
「綺麗……」
視線の先にあるのは、天井に丸く填っているステンドグラスだ。まるで花嫁のベールの様に緻密な模様を描いていた。練りガラスのランプシェードが周囲の調度で優美に輝き、重厚且つ壮麗な印象を与えている。
貸し切りになっているフロアに上がり、各々がキーを手にした後、マリオンが口を開いた。
「一息ついたら、夕食にしましょうね。あちらはもう済ましている様ですし。とっておきの場所を、リザーブしてあるんです」
悪戯っぽく笑みを見せるマリオンに、それぞれが期待の眼差しを向けていた。
「何か、偉い違くねぇ?」
周囲をきょろきょろと見回した北斗は、そう感想を漏らした。
「このホテルに、こんなところがあるのねぇ…」
この場所を見て、しみじみと言うシュラインは、持参してきたドレスを纏っている。
スパゲッティストラップで胸元に大胆な刺繍のある漆黒のイブニングドレスだ。基本となる素材はサテンだが、その上を幾重ものシフォンで飾っている。同素材のコンビネーションストールの端にも、胸元と同じ刺繍が縫い込まれていた。ディナーと言うことだから、やはり正装だろうと彼女は考えたのだ。
アインと啓斗の二人もまた、何だろうと言う視線でその部屋を見ている。
そんな四人を見つつ、マリオンの方は思惑が当たったことを感じて満足げだ。
彼らがそう言う反応であったのも無理はない。
今まで見て来たホテルの内装はと言えば、豪勢豪奢を極めたそれであったのだ。
しかしながら、ここはそんな雰囲気とはかけ離れている。
むき出しの床と低い天井。こじんまりと居心地は良いものの、華やかさとは無縁の部屋だ。
「どうぞ、席にお着き下さい」
ホテルマンにそう促され、各々は戸惑いながらも従った。
シュラインには、どうぞと言う風に、メニューの様なものが渡される。
何気なくそれを開いた彼女の瞳が、徐々に大きく見開かれた。
「これって……」
「お解り頂けました?」
悪戯っぽい瞳を向けるマリオンと、何だとばかりの男性陣三名。
「芳名帳じゃない…。メニューは…、手書き?」
「え?」
どれどれとばかりに、シュラインの周りには、座ったばかりの三人が集まる。
が。
「読めねぇ…」
「右に同じ」
「俺も…」
上から、北斗、啓斗、アインだ。
メニューはモナコ語だ。しかし芳名帳は、それぞれの国の表記で名が書かれている。
だが稀少言語をも解するシュラインには、メニューに何が書かれているのかが解っていた。表のバンケットでは出されていない、いや出すことのないものばかりだ。
そして芳名帳には…。
「ここ、もしかして……ロイヤルファミリー専用の部屋なの?」
「正解です」
「「「えええっ?!」」」
芳名帳に書かれている名は、世界情勢に詳しい人間であれば、一度なりとは目にしたことのあるものばかりだ。ちなみに最後の部分は、先発組の名が記されている。
「ここは、貴賓客専用のディナールームなんです。彼らの誕生日や記念日と言った際に、この部屋でディナーを…と言うのが、習慣みたいなものなんです。ほら、カロリーナ王女の写真もあるでしょ? その隣には、その時にいた人たちのサインが。ちなみにメニューは、この日の為だけに、ホテルの方達が考え抜いた料理を手ずから書いてくれているんですよ」
壮麗さ、優美さだけが、このセレブ王国モナコを作っているのではない。
こう言ったカトリック教国ならではの質素さもまた、この国の礎となっているのだ。
「最高の贅沢よね」
ここが極限られた者しか利用出来ない部屋だから、と言うことではない。
贅沢の真の意味を理解している、シュラインならではの言葉だった。
心温まるディナー──勿論ながら、量も熱くなるほど豪快に──を終え、しっかりNG年齢に見える双子忍者は、某ハルモニアマイスターの能力にて、見事に変身を遂げていた。
あるべきものをあるべき場所へと言う売り文句は、伊達ではない。
啓斗は落ち着いた雰囲気を持つ青年へ、北斗は精悍と呼べる青年へと、内面を露わにした様に変貌している。ちなみに身長差は元のままだが。
啓斗と北斗、互いに黒のタキシードと、イタリアンカラーのシャツである。タイは啓斗が濃緑、北斗は濃紺だ。ジュエリーの方も、互いの瞳の色に合わせ、青と緑で統一していた。ジャガーのロングコートを、啓斗はきっちりと袖を通し、北斗はざっくりと肩から羽織っている。ちなみに啓斗は、髪をオールバックに上げて、自前で年齢を上げる努力もしていた。
アインもまた、少々幼く見えると言うこともあり、某ハルモニア・マスターの能力にて変化している。元が生身の人間ではなかったのだが、そこを何とかしたのは流石と言うべきだろう。下手にあるべき姿とやらに戻っていたら、もしかすると彼はそれこそ『生身』に戻っていたかも知れない。それが良いか悪いかは別として。
彼はステップカラーにした濃い臙脂のタキシードに、オターのロングコート、ジュエリーはオニキスをメインに使用している。
マリオンの方は、以前にも主と共にここへ訪れていた為、容姿を変化させるのは今更の話だった。濃茶のタキシードに、シャンテリィ・レースを使用したシャツ、ファーシールをマタラにしたオペラケープを羽織っている。ジュエリーはルビー系のものを使用。
そしてもう一人、ディナー時より変貌していた者がいる。
『お色直しをなさいませんか』と言うマリオンより、マリオンの主からプレゼントされたドレスを身につけているシュラインだ。
ホルタートップのマーメイドラインと言ったそのドレスは、深紅のミカドシルクで作られていた。胸元に僅かばかりのドレープがかかり、そこからドレスの左へと向かって、深紅のスパンコールとルビー、手刺繍に依って彩られている。後ろに行くに従って長くなる裾にもまた、同じように手刺繍によって飾られている。ドレスと同素材のコンビネーションショールは手に持ち、リンクスのコートを、肩から粋に羽織っていた。
長い黒髪は夜会巻きにしており、ルビーやオレンジサファイア、ブランディークォーツなどがあしらわれた髪飾りにて一層の華やかさを添えている。
「シュラ姐、やっぱり草間に勿体ない…」
啓斗がぼそっとそう言った。隣では、皆が首を揃えて大きく頭を振っている。
「余計なお世話」
啓斗にデコピンをしつつ苦笑していても、シュラインの振る舞いはそこらへんの女王様には負けていない程、堂々としている。
「じゃあ、体力の尽きるまで、遊びましょうか」
マリオンの促しに、彼らはグラン・カジノを仰ぎ見た。
ライトアップされているそこは、昼にちらと見たよりも、遙かに佳麗さを増していた。元はクリーム色に彩られている建物は、その光を浴びて金色に輝いており、昼の灯りでは青銅色に見えた屋根部分もまた、夜衣装へと変化を見せている。
ここグラン・カジノは、はパリのオペラ座や現在宿泊しているオテル・ド・パリを設計した、シャルル・ガルニエによって建築されていた。一般的にベルエポック調と呼ばれるその建物は、外側で見るのも見惚れる程のものであることは確かだが、顕著に特徴が出ているのは、その内部である。
左に長いファサードを見つつ、彼らはホールへと足を踏み入れた。
ホテルに入った時も誰もが思ったのだが、このグラン・カジノはまた別格だ。
大理石の床、オニキスで作られている柱、クリスタルのシャンデリア、そこここにかけられている絵画、彫像、アンティーク…。
全てが天国の門をくぐったかと錯覚させる程に、艶麗である。
シュラインは、怒濤の様に視界に入って来たそれらを見て、ぽつりと言葉を漏らした。
「豪華ねぇ…」
思わず手を合わせて拝みそうになってしまうが、持てる理性を総動員して何とか押しとどめる。
また啓斗は『新年早々、何でこんなところにいるんだ?』とばかりに、硬直している。ちなみ固まっている理由の一つは、正装が何ともまあ、動きにくいことこの上なかったからでもあるが。
頭を過ぎるのは、またもや亡き父の言葉だ。
『啓斗…酒は程ほどならいいが博打はするなよ』
最後の『博打はするなよ』が、リフレインで鳴り響く。
が。
「父さん、済まない」
父が涙と共に、背後へ流れる姿が脳裏に浮かぶ。
その横で北斗の瞳が爛々と輝いてることを、当然ながら、己の思いに沈みきっている啓斗は気が付いていなかった。
更にアインは、このカジノの様相に闘志を燃やしたのか、なかなかに不敵な思いを抱いている。
『ふっ…、この動体視力と反射速度を用いれば、ギャンブル攻略何て容易い事っ!』と、握り拳を振り上げ……そうになって止めた。
またマリオンは、そんな四人を見つつ『頑張って下さいね〜』と微笑みを浮かべていた。勿論ながら、自分も同じく楽しむ気は満々だ。
「皆さーん、宜しいですか?」
様々な思いを抱えた彼らをそう促すと、カジノカウンターへと進む。
通常、入場までには、可成り時間がかかる。一流カジノでは、致し方ない話だ。十数年から数十年に渡り、個人のチェックを行うからだった。
だが。
マリオンが魔法のカードを見せ、四人にもそれを促すと、どうぞとばかりに通される。更にそこを通ると、フィジオノミスト(入場者鑑別人)までが、黙礼にて先を促した。
「え? こんなあっさりなんですか?」
アインが拍子抜けした様に、そう誰ともなく聞いた。
「申しましたでしょ? このカードは、特別製なんですよ」
にっこり邪気なくマリオンが微笑む。
「カジノ内のことを、簡単に説明しておきますね」
マリオンはそう言うと、端的に話し始めた。
「まずここには、サール・プリヴェと言うプライベートルームと、サール・オルディネールと言う通常ホールがあります。サール・プリヴェは、古き良き時代の雰囲気を思い起こす事の出来るフロアです。サール・オルディネールは、欧州・サロンとアメリカ・サロンに別れていて、それぞれルーレットとポーカー、スロットがあります。これらをお楽しみになりたい方は、サール・オルディネールへ。それ以外のゲームは、サール・プリヴェへどうぞ。ちなみにプリヴェは、賭け金が最低でも一桁違いますからね」
入場料などについては、カードを見せれば事足りるし、大した金額ではない。十ユーロ〜二十ユーロである為、口にする必要はないのだ。ただ、後で驚かない様にと、賭け金に関しては、予めそう口にしている。金額的な話をすると、八百ユーロ〜四千ユーロ、つまり日本円に換算すると、十万〜五十万円単位で賭けるのだ。それが最低金額。そこにいるハイローラー達は、それがはした金であると言う感覚を持っている。
「目的のゲームの場所へ行ったら、クルーピエにカードを見せてジュトンを手に入れて下さいね。それを元に賭けていきますから。まあ、ゲームのルールは…ここで説明するより、実際にやってるのを見たり、クルーピエに助言してもらう方が、良いと思いますので、ここでは申しませんね。それと大勝したら、プールボワール…チップですね、それを忘れずに」
その後二〜三の注意事項を述べ、最後に『何かあったら、このカードを見せて下さいね』と付け加える。
関所とも呼べる場所をあっさりと通過した五人は、いよいよ華やかな戦場へと向かった。
客の後を、ジュトンバケツを持って歩く従業員を見て、啓斗はテーブルに着くなりクルーピエに口を開いた。
「バケツいっぱいのジュトン」
それを通訳として着いているシュラインが、クスリと笑いクルーピエに向かってそう訳す。勿論、ジュトンの種類も指定して。
クルーピエが恭しく礼をし、了承を示した。
「啓斗くん、いきなりよね」
「ここまで来たんだ。もう開き直って、気前良く行かないとって思ってね。あ、シュラ姐も、ゲーム楽しんで来たら?」
『そうね』と言いつつ、シュライン自身はまだゲームをするつもりがないらしい。
その啓斗に、立ったままでいた北斗が、思い出した様に言う。
「あ、俺も行って来よーっと。シュラ姐ので、どうやってチップもらうか解ったし」
後は勝って勝って勝ちまくり、思う存分喰うだけだと、北斗の顔が語っていた。
啓斗は諦めた様に溜息を吐くが、自分の台詞を思い出し、行って来いとばかりにしっしと手を振る。
「なんだよ。兄貴のそれー」
「別に。早く行けば?」
べーと舌を出しつつ去っていく北斗と入れ替わりに、バケツてんこ盛りになったジュトンが運ばれて来た。
「取り敢えず、あんたの通訳暫くしてるわよ」
「大丈夫だって。何とかなるよ。ほら、シュラ姐、一発当てて、草間に土産でも買って行ってやれよ」
啓斗がクスリと笑う。
彼はシュラインが、草間のことを気にしていたのを知っていたのだ。
「じゃ、そうすることにするわ」
にっこり笑ってテーブルを離れるシュラインを感じつつ、啓斗は真顔で言った。
「黒に全部」
黒と言うフランス語くらいは知っている。全部と言う言葉と共に、バケツをどんとタブローに置いて指を指す。
テーブルに驚愕の声が上がった。
啓斗は知らない。
そのジュトンが、最高額のそれであることを。
クルーピエが真面目くさった顔で、中身を出してラトーで引き寄せる。
啓斗の声がきっかけとなり、次々と客が賭け始めた。都度、クルーピエがラトーでタブローにジュトンを配する。この時間が可成り長い。
あらかた終わったと言う頃合いで、ブールールーと呼ばれるクルーピエが、ルーレット盤を回転させ、白い玉を逆方向に滑らせた。
勢いよく回るボールとルーレット盤。
しかし勢いが落ちてきたところで、クルーピエが『リヤン・ヌ・ヴァ・プリュ』と終了を宣言する。本体の勢いが落ちると同時、今度はテーブル周囲の客に勢いが着く。
お上品さは勿論あれど、やはり真剣勝負でもある。優雅な紳士淑女の皆様は、体面こそ保ちつつ、誰もが自分にこそツキがあると信じてやまない。
「来いっ」
ぼそっと、けれど握り拳でそう言う啓斗の念力が通じたのだろうか。
「オンズ・ノワールっ」
ブールールーがそう叫ぶ。
オンズ・ノワール、つまり黒の十一。
「良しっ」
声に力がこもるのは、やはり達成感からだろう。
配当に従って、ゆっくりとジュトンが配られ始めた。黒一点に賭けた啓斗は、二倍になって帰ってくる。
今回啓斗が座っているのは、ヨーロッパ方式の方だ。こちらの方が客の取り分が良い為、彼にとっては当然の選択とも言えた。
タブロー上が綺麗になると、再度ゲームの開始だ。
では次ぎに何に賭けるかを考えるところだが、啓斗は全く躊躇わない。
「黒に全部」
一回目と同じ賭け方だ。
やはりテーブル周囲にいる者が戦いていた。先程のゲームで、啓斗のそれは倍に跳ね上がっているのだ。それを全部。
正気の沙汰ではないだろうと思っている。
しかし啓斗は、正気も正気の大真面目。
続けて黒に賭けるのは、ルーレットの遊び方としては間違っていないのだから、彼にしてみれば周囲が何故驚くのかが解らない。賭け方としても、黒狙いだから数字の一点がけをするより、遙かに確実だ。
そこにシュラインやマリオンがいれば、『いや、ジュトン全部賭けるのが凄いんだ』と諭してくれたのだろうが、生憎とそこに二人はいない。
一度目、二度目、三度目までを黒に全部、四度目、五度目を赤に全部。内、四度目は外したものの、再度所持していた同額をカルト・ドールで補充していた。
日頃は鉄面皮で通しているだろうブールールーの顔は、見事に引きつっている。
対する啓斗は、普段通りの平静顔だ。
ちなみにテーブルの周囲は人だかり。
何気に天然大博打性格である、啓斗であった。
「え?」
テーブルを立ち、一歩踏み出したところで、啓斗の声が聞こえた。
『黒に全部とか言わなかった?』、そうシュラインは心の中で呟く。
思わず引き返そうとしたものの、その今までいたテーブルの喧噪を見てそれを止めることにする。
「ま、大丈夫よね。北斗くんじゃないし」
無理矢理自分を納得させると、カードゲームを楽しむことにする。
ブラックジャックのエリアを見つけると、彼女はショールを翻し、迷いもせずにそこへと向かう。途中蝿の様に誘いをかける紳士を軽くあしらい、颯爽とエリアに到達した。
いくつも並ぶテーブルを見回し、どれにしようかとシュラインは考える。視界の先に、見知った姿を見つけ微笑むも、一緒のテーブルに着こうと言う無粋はしない。
適度に観察し、決めたテーブルへと足を運び、現在進行しているゲームの終了を待ちつつジュトンを手に入れた。ゲームの終了と同時、シュラインは席に着く。
ようこそとばかりに微笑むクルーピエに、シュラインもまた同じく微笑んだ。
同じテーブルに着いているのは、初老の男女、こちらはどうやら夫婦の様だ。そして自分と同じ年代の若い女性の三人だった。軽く挨拶をすると、タブローにある四角の枠に、手にしたジュトンをすっと置く。
全員が置くのを見計らい、クルーピエがカードを手にした。
シュラインは、カードを配り始めるクルーピエを見つめつつ、通りかかったカクテルレディから、スロージン・サワーを受け取る。
「どちらから?」
隣の金髪の女性が、そうシュラインに話しかけた。何だか押っ取り刀の話し方だ。
愛想良くシュラインも答える。
「日本からですわ」
会話を楽しみつつも、ゲームは進む。シュラインの手に渡ったカードは、ハートの三とダイヤの四。隣の女性はクラブの二とダイヤの三。老夫婦もまた、似たり寄ったりだ。クルーピエのカードはダイヤの七。
当然ここは、カルトだ。
トンとばかりにテーブルを叩く。
「カルト」
女性もカルト、老夫婦もカルト。そして次に配られたカードは、ダイヤの四。
「上手くないわねぇ…」
ぽつりと呟きつつ、カルト。
そうして後一度シュラインはカルト、女性と老夫婦は今回の手にて終了となる。
全員の選択が終わり、クルーピエが伏せていたカードを開いた。
数はクラブの四。
次々にクルーピエがカードを捲っていく。
クラブの四、クラブの二。
最後に捲られたカードは、スペードのキング。
シュラインの手元にあるのは、最終的にハートの三、ダイヤの四、スペードの二、スペードの十。
取り敢えずは勝ったものの、今回はそれぞれに役がない。
これは次ぎも勝負だろうと思い、シュラインは再度ジュトンを置く。
全員が賭け終えると、新しい六組のカードがシャッフルされ、配られる。
そうして遊ぶこと数回。負けることはなかったが、大きく勝つこともなかった。
そして今回、配られた二枚を見て、シュラインは瞬間迷った。
けれど。
「カルト」
声と同時にテーブルを指で弾く。
更にカルトを繰り返すと、クルーピエや同じテーブルの人間は、シュラインが何を狙っているのかを察した様だ。
出ているカードは、ダイヤの二、ダイヤの三、クラブの二、スペードのエース、クラブの八、ハートの四。
八が出た時は、少々心臓に悪かった。そして誰もがここで、レストすると思っただろう。
だがシュラインは、最初の賭け金の横に、同額のそれを置く。
「ダブル」
そして更にカルトをかけた。
現在テーブルに出ているカードと、残りカードを考えると、あまりに無謀な賭とも言える。
だが、配られたカードは…。
「ハートのエース」
出たのはセブンカード。勝てば賭け金は十倍だ。
対するクルーピエが、カードを次々と捲って行く。
ダイヤの八、スペードの五、そしてラストはクラブのクィーン。
「私の勝ちね」
勝者の微笑みが、シュラインの面に浮かび上がった。
北斗が適度に勝負を終え、腹が減ったからとフードコーナーへと赴くと、そこには有難いスポンサー(の代理人)であるマリオンがいた。
「よぉ! あんたも腹減った訳?」
「あ、北斗さん」
にっこり笑って微笑むマリオンに、俺もーと言おうとしたが、彼の目の前にあるモノを見て、絶句する。そこに並べられているのは、『取り敢えずそこにある甘いモン、全て置いてみました』的なラインナップだからだ。
勿論北斗に好き嫌いはない。基本的に。だから甘いモノだって、いくらでも入る。
だが、どうせ喰うなら、甘いものだけではなく、もっと腹に溜まるものをと思ってしまうのは、食欲魔神、エンゲル係数一人勝ちな北斗ならではだろう。
「どうですか?」
にっこりと問いかけるのは、やはり勝敗だろうと察した北斗は、にんまりと笑う。
「ふっふっふ。良くぞ聞いてくれましたっ! 俺にかかっちゃー、カジノもチョロいっ!」
クルーピエに持たせず、北斗は自分で背負ってきたバケツ三つをマリオンに見せた。
「兄貴みたく、最初はバケツ一つだったんだぜ? それがよ、二〜三回スロットやったらこれだよ。もう、俺って天才?」
「凄いですねぇ」
目を丸くしているマリオンに、鼻高々な北斗である。
気分絶頂ハイな彼は、そのままメニューを指さして、ウェイターに注文するとカードを提示。
次々運ばれてくる料理は、目を楽しませるだけでなく、当然ながら北斗の胃もまた楽しませてくれる。
グラン・カジノは、基本的にゲームテーブル付近で食事は出来ない。ドリンクやアイスと言う軽いものならいざ知らず、他のものは禁止である。
だからここで踏ん張って満腹にして、いざまた勝負と考えているのだ。
「凄いだろ?」
頂きますを言ったが最後、食事に感謝しつつもばりばり喰っている。そして見る間になくなる料理。
「……別のところも、北斗さんは凄いです」
料理を見つつ言うマリオンに、まあなと威張ってみる。
「そっちはどうよ?」
すっかり口の中を空にしてから、北斗は聞く。
食い意地の張っている北斗だが、食事のマナーはなかなかに宜しい。兄の躾の賜だろう。『食前食後は作ってくれた人に感謝しろ、口にモノを入れて喋るな、箸は振るな、迷い箸もダメだ、喰う時はちゃんと座れ』などなど。マナー違反をすると、まずは鉄拳が飛び、更に蹴りが飛び、次いで手裏剣が飛んでくるのだ。良くもなるだろうとは北斗の弁だが。
「私ですか? うーんまあ、普通です」
小首を傾げてそう答えるマリオンは、勝った分、骨董品を買おうと思い、すぐに別口座へ振り込む手続きをしている。勿論、元金は残して。だからあまり勝ち分は覚えていないのだ。帰ってから、口座を見れば解るだろうと考えていたのである。
「そっか、あ、俺の勝ち様、見てく?」
にんまり笑った北斗は、既にデザートを喰い終わっている。満腹上限にはまだあるが、ここは腹八分目だろうと、人様の五倍は喰っていることを棚上げして、そろそろジュトン舞い踊る海へとスタンバイしていた。ごちそうさまと手を合わす。
「そうですね。ではちょっと」
マリオンもまた、人の三倍ほどあるケーキ類を食べきり、北斗の後ろにちょこんと着いていた。
「何処に行くんですか?」
「勿論、ルーレットだ!」
腰に手を当て仁王立ちした北斗が、鼻息荒くも宣言した。
「兄貴、ルーレットでバカ勝ちしてんだぜ? 兄貴が勝てて、俺が勝てない訳がない。だって俺たち双子なんだからなっ」
訳の解らない理屈だが、北斗の中では整然としたものになっている。
意気揚々と歩いて行く北斗は、人だかりのするルーレットテーブルを見て、そこが啓斗のいるところだと気が付くと、ますます闘志を燃やした。
はす向かいのテーブルに着き、賭けれることを確認してから、まず一言。
「黒に全部」
「え?」
マリオンの硬直を脇に、北斗が言ったままに、バケツをどどんと三つ置く。
四苦八苦して、クルーピエがラトーで北斗のジュトンを黒いダイヤ型になった場所に置いた。
既に盤は回転しており、玉もまたヘリを勢いよく滑っている。徐々に落ちるスピード。ハラハラしつつ、客は盤に見入っていた。
「リヤン・ヌ・ヴァ・プリュ」
クルーピエが宣言する。
マリオンもその声を気に硬直が解け、一緒になってそれに見入った。
北斗は親の敵を見る様に、そのルーレット盤を凝視している。
「来いっ、来いっ、来いよっ! 来なきゃ、閃光弾使ってやるかんなっ」
何処まで冗談か解らない形相だ。けれどそれをしたが最後、微笑みの大魔神となった兄にシバかれることは解っているだろう。
果たして。
「よっっっっっしゃぁっ!!」
観衆も沸く。沸くと人も集る。ふふんとばかり、北斗は更に気を良くした。
「な、倍率、一番良いのって何だ?」
マリオンにそう聞くと、彼はきょとんとした風に答えた。
「それはやっぱり、一点賭けだと思いますよ」
「良し、今度はそれだっ」
一点賭けは、三十五倍。
タブローが綺麗になり、次のゲームが開始される。
北斗は声高々に叫んだ。
「赤の三十。これ全部っ」
既に膨大な量になっているジュトンは、とてもではないがあの小さな四角には入りきらない。しかしクルーピエもプロだ。あり得ない組み方をして、何とかそこに納め切るも、続々と北斗にあやかった客達が、同じく赤の三十に賭けまくるのを見て、泣きそうな顔をする。長い長いオーダータイムが終わり、ルーレット盤がブールールーによって回される。先程とは逆回転に回る盤に、更にルーレット盤とは逆に回るボール。
マリオンがそっと離れて行ったのを、北斗は目の前の回転するボールに気を取られ、全く知らずにいた。
徐々に落ちるスピード。
そして……。
「嘘ぉっ!!!!」
玉が落ちた先は、黒の十一。隣であった。
悲鳴と怒号が巻き起こる。このグラン・カジノでは、通常あり得ない恐慌振りだ。さもあらん、他に賭けていた者の方が少なかったのだから。
北斗の目の前が真っ暗暗になって行く。しかしそれも束の間。
ばたばたとタキシードを叩き、やっきになってジュトンを探す。カードで再度貰えば良いのだが、動転した彼はそれに気が付かない。
「あった……」
手にしたのは、虎の子の一枚。
「ふっふっふ…。これで、挽回してやるぜっ!!」
『目指せ億万長者、打倒兄貴、カモン・ベイベー食い倒れっ!』
何時の間にか、目的が増えている北斗であった。
『こう言う時、サイボーグは便利ですね』
鼻歌を歌いそうな勢いで歩いているのは、小麦色したジャニー●タレント、アインだ。いや、本ジャニであるかどうかはさておき。
九人の戦士達と同じ翻訳装置の着いているアインには、通訳がいらない。
サイボーグである能力を最大限に生かし、まずアインはカードゲームをすることにした。狙いは勿論、カードを見切る為だ。
嬉々として既に二人座っているブラックジャックのテーブルに着くと、代えたジュトンをテーブルに置く。アインは、リフトシャッフルをするカードを何気なく見た。
まるでスローもションだ。…いや、彼の能力であれば、瞬時にして落ちて積まれて行くカードの染み一つであっても、十二分に視認可能なのだ。
積まれていくカードを順番を覚えつつ、自分のところに来るカードを計算する。
記憶通りに、他の客、そして自分の元にも、見た通りのカードがやってきた。
けれどそれはどうでも良い話だ。問題は、クルーピエの手元で伏せられているカードだ。
確かこれは…と、アインは自分の補助脳に記憶させたそれを呼び出してくる。
「うわっ…。初っぱなからこれですか」
クルーピエの開いているカードはハートのジャック。そして伏せられているカードは、クラブのエースである筈だ。
これは降りた方が無難であると判断する。勿論他の客は、伏せられているカードがエースであるかを警戒しつつも、結局勝負を下りなかった。
そしてカードが開く。
落胆する客を見つつ、クルーピエはポーカーフェイスを崩さない。
勿論、ポーカーフェイスと言っても、営業スマイルだ。
更に二度目。
アインのカードはクラブのキングにハートの十。クルーピエの開いているカードはスペードのキング。他の客は、それぞれハートの九とダイヤのキング、スペードの八にダイヤの二。
後者の客なら、危険ではあるがシックスカードやセブンカードが狙えるのだが、先程のエースを警戒してか、その二人はゲームを降りている。
そしてアインは、…降りなかった。何故なら、そこに伏せられているカードが、スペードの七だと見切っているからだ。
「レスト」
勿論ながらカルトはしないし、クルーピエもまた同じ。そしてカードを引かなかったクルーピエを見て、他の客は、自分が降りたことを安堵している。
アインはにんまり笑った。
カードが翻る。
当然の様に、そこにあるカードはスペードの七。
他の二人が呻いた。降りるんじゃなかったと言っているのが、アインには理解できた。
その後数度のゲームを楽しんだ後、適度に増えたジュトンを持ち、アインはスロットへと向かう。
「やっぱり能力は、こう言ったところで鍛えないと行けませんよね」
何と言っても、カードの相手は人間だ。
ジュトンをゲーム専用のコインに換えて、スロットのコイン投下用の入り口へとまずは一枚落とした。
通常、スロットは大当たりを出そうと思えば、五枚程度は纏めて入れなければならない。だがしかし、あくまでもスロットの目は、コンピュータ管理されているものだ。だからそのコンピュータが、現在どう言ったパターンで動いているのかを確認する必要がある。勿論統合されている訳ではなく、個々のスロットに依って、別パターンが割り当てられており、場合に依っては、手にしたスロットが、現在外ればかり出る様に組まれている可能性がある。つまり、一枚入れて見るのは、アインにとって当たりのスロットを探す為の投資だ。
ボタンを押すと、回転し始めるロット。
そのままアインは、スロットの回転数や速度などを解析し始めた。
「あ、ここはダメですね」
そう言う言葉と共に出た目は、やはり縦横斜め、バラバラだ。
アインは根気良く希望の台を探し当て、十五回目で漸く目当てのそれを見つけた。
「では、頂きます」
思わず手を合わせて『さーて、今からカモりまーす』と言う挨拶をしてしまう。五枚纏めて入れると、即座にボタンをガンガンガンと押す。
回り回り、巡り巡って目が揃う。
「良しっ」
思わずガッツポーズのアインである。
次々コインを投下し、目が揃うと更に回る。じっと見ていると、それこそ脳味噌がぐらんぐらんと回転しそうになってしまう。けれど面白い様に当たってしまうと、アインの闘争本能に火がついてきた。
投下、押す、回る回る回る回る、更に投下……。猿の様に延々繰り返していると、徐々にヒートアップしているのも気が付かない。背後には、コインの入ったバケツが増えて行く。
「ふっふっふ。皆さん、俺を平成のギャンブラーと呼んで下さいっ」
訳の解らない独り言と共に、アインはガゴンっとボタンを押す。
と。
「………。あれ?」
動かない。さっきから、あれ程機嫌良く回ってくれていた子猫ちゃんが、にゃんともわんとも鳴かなくなってしまった。
「…お客様」
少し怖い男の人が、近付いてきた。
どうしようと顔面蒼白になりつつも、彼は屠殺所に引かれていく牛の様に後に付いて行く。
「身分証を拝見させて頂けますか?」
そう言われ、一瞬焦った。焦ったが、マリオンに言われていたことを思い出し、慌てて渡されていたカードを提示する。
それを見た男は、瞬時にそのカードが何であるかを理解し、少々困った顔をする。
「お客様、今後二度と、この様なことはなさらないで下さいませ」
カードの威力は絶大だ。改めてこれを渡してくれた者の力を知った。
恐らく、これがなければ、二度とここへは立ち入れなかっただろう。普通の者であれば、再度ここへと入ろうとした時、入り口付近にいたフィジオノミスト(入場者鑑別人)に、即座につまみ出されることは間違いがない。
冷や汗を掻きつつも、コインてんこ盛りバケツを数個持ったまま、アインは再度スロットに戻る。
今度はスロットを壊さない様に、そうアインは、決意も新たにコインを投下した。
マリオンが、そろっと北斗の元を離れたのには訳があった。
バカラの方へと歩いて行く、大層美しいオネイサマがいらしたからだ。
思わずふらふらと、花に引き寄せられる蝶の様に、マリオンはその婦人に引き寄せられていく。背後で絶叫が巻き起こっているのを聞きつつも、既にそちらに興味はないとばかりに黙殺した。
不意に婦人がマリオンの方を向く。大胆に開いた胸元には、ドレスの色と同じエメラルドのチョーカー。波打つブロンドは、ティアラによって飾られていた。
緑の瞳を眇め、怪訝な顔をしたのも一瞬だ。
「あら坊や、どうかした?」
「ぼ、坊や?」
確かに童顔に見えるのを自覚はしているが、少なくともここに入れている限り、二十一は超えていることになっている。いや、本当は十倍以上年上だが。
「えーと、私、マリオン・バーガンディと申します。後を付けるなんてことをして、失礼致しました。あまりにお美しかったもので…」
そうはにかんで言う。普通の男が言ったのなら、『巫山戯んなよ、このボケ。ママレモンで歯でも磨いて出直して来な』と怒鳴られるところだが、やはり素材が良いと反応も違う。婦人──二十代のクールビューティ風な女性は、にっこり笑うとマリオンに手を伸ばした。
「有難う。良かったら、ご一緒しません? これから、バカラを楽しみたいと思ってるの」
マリオンに否やはない。満開の微笑みで承諾すると、多少でこぼこではあるものの、彼女の手を取ってエスコートする。
バカラのある場所は、通常のカジノゲームがあるところと少々違った。
一口に言うと、セレブ中のセレブが集う場所なのだ。
当然ながら、飛び交う金額も半端じゃない。
そこに二人して堂々と入って行くと、複数ある内の一つのテーブルへと進んだ。丁度ワンゲーム終わって、プントが交代しようとしている。そこへ滑り込んだのだ。誰も文句は言わない。バンキエは、まだ若い男だ。横に座る婦人を見て、羨ましそうに再度マリオンを見つめた。その視線を感じつつ、マリオンは彼女に微笑みかける。
「お名前を教えて頂けますか?」
「あら、失礼。わたくし、リディア・レインと申します」
「確か、古代王国の名がリディアと言いましたよね」
「良くご存じね。父がそれにちなんで付けてくれたのよ」
そう会話を楽しみつつ、バンキエがサボ(カード容器)を置いているのを見て、マリオンが枠内にジュトンを置いた。
「え? そんなに大丈夫なの?」
何気なく置いたジュトンに、リディアと名乗った女性が驚く。まあ確かに、普通なら驚くだろう。マリオンは、常日頃からアンティークと親しい生活を送っているし、更に周囲にいる人々の金銭感覚も普通一般から少々ずれている為、右へ倣えとなっていた。
「大丈夫ですよ。もしも私が負けたなら、リディアさん、貴方が挽回して下さいね」
そう笑うマリオンに、リディアもまた笑った。
ゲームが進行して行く。最初はバンキエがハートの七とクラブのエース。対岸のプントがクラブの二とスペードの三。マリオンがダイヤのエースとハートの八にて、勝負あり。二度三度と、ゆったりしたペースで進んで行く中、このバンカーエリア一帯が、騒然とし始める。
何事かと五度目のゲームを終了した後、待ちの時間でマリオンとリディアがその方向を見ると、何やらマリオンに見覚えのある顔があった。
何かあったのだろうかと思っていると、どうやら野次馬根性があるらしいリディアが、周囲の者達から聞き込んでいる。
「凄いわよ、マリオン。あのテーブルでシュマン・ト・フェールやってるんですって」
「へぇ…、そうなんですか」
シュマン・ト・フェール。
フランス語で鉄道を意味する言葉であり、バンカーでは大勝負の際に使われるゲーム方式だ。
バンキエを決める時から既に勝負は始まっており、また青天井な勝負である為、回数を重ねる毎に徐々にエキサイトして行く。
「ま、大丈夫でしょ」
マリオンのその言葉を、リディアは聞き逃さなかった。
「え? お知り合いなの?」
それには曖昧な表情で答えておく。
『じゃあ、私も負けてはおられませんね』
何がじゃあなのかは、良く解らないまでも、マリオンは心の中で呟くと、テーブルへと向き直る。
六回目の開始の合図だ。
マリオンは、ゆっくりとジュトンを手に取った。
不健全な大人の時間はまだまだ続く。
モンテカルロはグラン・カジノ。その不夜城の灯が消えるのは、一体何時のことになるのか、誰も全く解らない。
モナコの夜は、年明け早々絶好調──。
Ende
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┏┫■■■■■■■■■登場人物表■■■■■■■■■┣┓
┃┗┳━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┳┛┃
┗━┛★あけましておめでとうPCパーティノベル★┗━┛゜
【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
4164 マリオン・バーガンディ(まりおん・ばーがんでぃ) 男性 275歳 元キュレーター・研究者・研究所所長
0086 シュライン・エマ(しゅらいん・えま) 女性 26歳 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員
0554 守崎・啓斗(もりさき・けいと) 男性 17歳 高校生(忍)
0568 守崎・北斗(もりさき・ほくと) 男性 17歳 高校生(忍)
2525 アイン・ダーウン(あいん・だーうん) 男性 18歳 フリーター
□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■ ライター通信 ■
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こん●●わ、またもや風邪をひいている斎木涼です。
隣の席の野獣が風邪を引くと、もれなく私も風邪引きさんです。誰かヤツを何とかして下さい…(涙)。
…それはさておき。
年明け早々絶好調とか言うてる場合ではなく、既に明け切った感のある今日この頃では御座いますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
リクエスト頂きました『モナコでカジノ』特急ヴァージョン(もしくは、ちょっとだけコメディチックヴァージョン)をお送り致しております。
何分にも、本人がセレブにほど遠い生活をしております故、ところどころ首を傾げたくなる様な箇所がございますでしょうが、そこいら辺は、平にご容赦を…。
ゲームのルールなど、書こうかどうしようかと迷った末、延々それだけで終わってしまいそうな勢い&墓穴掘りそう…と言う可哀想なまでの理由で、ルールの方は以下略状態でございます。ただ、一つ。BJにて『ダブルダウン(倍賭け)』の説明だけを少々。アメリカ方式であれば、あの場合でも『ダブルダウン』をかけることは出来るのですが、ヨーロッパ方式では、あれはルール違反で御座います。基本的には、九、十、十一、もしくは、十、十一の際にしか出来ません。
詳しくお知りになりたい方は、OMCホットライン(注:ファンレター投稿とも言う)にて、メール下さいませ。あ、感想、苦情などもうんとこさ募集中でございます。
ちなみに、内部の会話で使用しているカジノ用語は、基本的にフランス語となっております。
>マリオン・バーガンディさま
初めまして、斎木涼でございます。
カジノリクエスト、有難う御座いました。渡欧方法が、マリオンさまの能力を使用し、車にてとの事で御座いましたが、あのような描写で宜しかったでしょうか。実を言うと、ドライブ描写は、もっと書きたかったり致しました(笑)。
>シュライン・エマさま
引き続きお世話になっております。
シュラインさまは、正装持参と言うことでしたので、お色直しをして頂きました。二度のドレス姿と言うことで、わたくし自身はとても楽しかったのですが、宜しかったでございましょうか?
>守崎 啓斗さま
初めまして、斎木涼でございます。
にっこり笑って閻魔帳(弟様限定?)を地でいかれるイメージがわき、何だか『笑顔大魔神』の連呼となっております。何気に博打性格と言うお言葉に、思わず笑顔になりました。
>守崎 北斗さま
初めまして、斎木涼でございます。
元気いっぱい食欲いっぱい、と言う第一印象のままに書かせて頂きました。残高一枚の後、気合いと根性で最初の二倍のジュトンを取り戻したと、私の方は考えておりますので、是非是非、食い倒れの旅を楽しんで下さいませ。
>アイン・ダーウンさま
初めまして、斎木涼でございます。
アインさまのバストアップとデータを拝見した際、『これはきっとジャニ系に違いないっ』と、訳の解らない確信を抱いてしまいました。九人の恩人ネタ、もっとやりたかったなと思ったりしております(笑)。
皆様に、このお話をお気に召して頂ければ幸いです。
ではでは、またご縁が御座いましたら、宜しくお願い致します(^-^)。
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