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<あけましておめでとうパーティノベル・2005>


お正月ニッポン宇宙大戦争


 今まさに日本領空に迫らんとする数多くの未確認飛行物体が存在した。日本政府は予算を湯水のように使って、どこから見ても異様な姿をしている物体の解明に全力を注ぐのだった。世界のさまざまな国から次々と寄せられる情報を統合すると、彼らはお鍋の形をした宇宙母艦から出現した宇宙侵略軍であることが判明した。母艦の呼称に関して高名な学者たちからの進言もあり、また多方面の苦情を考慮して『オ・ナベ』と命名。オ・ナベから発射されたのは指揮艦である巨大戦闘機『トップ・シークレット』と、戦闘員がひとりで操作するサイズで鷹の姿そっくりの戦闘機『ビューン』が関東方面の空を黒く染めながら接近してくる。しかし彼らはなぜかニューヨークやロンドン、北京やモスクワなどの主要都市には一切向かわず、ただまっすぐに日本をめがけてやってきた。標的にされた日本国民は『なぜ日本だけなんだ!』と悲観する者もいた。
 そして彼らは戦闘を開始する。どこでそんなテクニックを手に入れたのかはわからないが、『トップ・シークレット』から無数のパラシュート部隊が放たれ、それぞれが地上に向かって降下を始めた。なんとなく宇宙から来たっぽいメタリックな装備に身を包んだ戦闘員たちは、なんとなくビームガンに見える装備を振りかざしながら都内を徘徊し始める。もしかしたら、もしかしたら……実は彼らは宇宙観光にやってきたのかもしれない。しかしそれはあくまで可能性の話だ。相手の星に銃を持って観光する宇宙人など、いったいどこにいるだろうか。同じことを日本の住人も感じたらしく、初詣などで外出していた人たちは彼らを侵略者と決めつけた。相手のいかにもな姿を見て悲鳴を上げながら逃げ惑う、弱く想像力豊かな人間たち。

 そんな情けない人々の様子を見てひとりの男が立ち上がった。それは正義感から来るものなのか、それともその辺の女の子にモテたいからかどうかはわからない。カッコよく駆け出し、戦闘員のひとりに襲いかかった。だが、本当の恐怖はここから始まる。戦闘員たちは幼い子どもたちが想像するような恐ろしい怪獣へとその姿を変えたのであった! そのすさまじい筋力は戦闘員服を破り、褐色の地肌は人間の皮膚など比べ物にならないほどの強度を想像させる。この戦闘員の変化は特殊な加工を施されたヘルメットが太陽の光を浴びることによって起こったのだが、残念ながら今回はその仕組みについては割愛させていただく。
 戦闘員が怪獣ご一行様になった頃、上も下も大パニックになっていた。逃げ惑う人々の頭上では自衛隊と各国の軍隊が威信をかけてビューン殲滅のために共同作戦を実行し、航空ショーさながらの賑やかさを見せている。地上は地上でパトカーや消防車、救急車がところ構わず意味もわからず出動させられて、こちらもまさにお祭り状態。宇宙人はまだ何もしていないというのに、日本はさっそく壊滅寸前だ。もはやなす術なしか……誰もがそう思った。その時、怪獣軍団の前に勇ましく全身スーツに身を包んだ男が現れた。藤岡 敏郎、またの名をキャプテンブレイブという。

 「お前たち、地球侵攻は許さないぞ!」
 『……ワタシ、日本語、ワカリマセ〜ン。』
 『セ〜ン。』
 『セ〜ン。』
 「おのれ、揃いも揃って勉強不足め。海外に行く時は挨拶くらい覚えてくるものだ! 行くぞ、とぅわぁぁーーーっ!」

 説教すら理解しているか怪しい怪獣軍団に向かっていくブレイブ。彼は鈍重な身体となった宇宙人を片手で軽々と持ち上げたかと思うと、そのまま思いっきり地面に叩きつけた! 彼の筋力と敵の重量でアスファルトには大きなヒビができあがる!

 『ピギィィーーーッ!』
 「さぁ……かかってこい。」
 『ウウ、ウガアアァァッ!』

 ブレイブの強烈なアピールに怪獣たちも戸惑いの色を隠せない。だが次第に戦う構えを見せ始め、奇怪な低い唸り声を上げる。さすがのキャプテンブレイブもこの敵の多さには息を飲んだ。長い直線になっている道路を埋め尽くさんばかりの怪獣たち……ある情報によると、巨大戦闘機にはまだまだ予備の戦闘員がいるという。登場からさっそく大ピンチのヒーロー。しかし、そこにゴスロリ羽織姿の少女が幼さをまったく無視したのらりくらりとした動作で、戦いの場へと近づいてくるではないか。この羽織、襟や袖にフリルがついている手の込んだ完全ゴスロリ仕様。その小さな手にはご丁寧にもそれっぽい柄の入った三味線を持っている。もしかしたら東京というよりかは、京都で出てきた方が様になっているのかもしれない。

 「ヒヒヒッ、おまえら。新戦組局長のウラ・フレンツヒェンに立ち向かおうなんて、一兆年早くってよ!」
 『ニギギ?』
 「……なーんかその『日本語わかってません』って顔が許せないわ。怪獣っ、ザトースラッシュを食らいなさいっ! べべんっ!」

 さっそく黒い三味線をかき鳴らすと、目の前にいた怪獣たちに青白い電撃が牙を向いた! 避けることもできず、電気ショックでビリビリになってしまった怪獣たちはいつまでも震えたままその場に倒れこむ。一気に複数の敵を仕留める必殺技を持つウラを見て、キャプテンブレイブも手放しに喜んだ。

 「素晴らしいです、ウラさん。このキャプテンブレイブ、感服しました。特に周囲の被害を一切与えない戦い方は特に。」
 「クヒヒ、別にその辺を巻きこんででも戦えるわよ〜。それじゃあ一曲……」

 花火のようにでっかく豪快な電撃をお見舞いしようと腕を振り上げたウラを必死で制止するブレイブ。彼女はどうやら一癖も二癖もあるお味方であるらしい。

 「い、いや、それは目標の大きな相手にお願いします。それでは私は人々を守りつつ奥から攻めます。」
 「ちょーーーっと待ったぁっ! ウサギはひとりじゃ生きられないっ! とぅわぁっ!」

 またまた味方の登場らしい。だが、今回のは見様によってはただの怪しいオッサンである。ブレイブと同じく全身スーツを装着しているのはいいのだが、なぜかピンクでしかも頭にはうさ耳をつけているのだ。ウラは心の底から『コイツ、黒タイツ履いてなくてよかった』と思ったほどである。そんなオッサンが怪獣およびヒーローの視線を一身に受けながら、前口上をカッコよく決めるのであった!

 「群れることが生きること! 邪悪をかじるぜ、今日もまた! もさもさ戦隊っ、兎耳レンジャー!」
 「……………ひとりじゃないのよ、おまえ。」
 「うさ耳ピンクっ!!」
 「だから、ひとりだけじゃないって言ってるのよ! 戦隊なら他にメンバーがいるでしょ? どこ、どこにいるの?!」

 ウラのツッコミが冴える。怪獣たちも顔を見合わせて納得し、何度も首を縦に動かす。うさ耳ピンクことシオン・レ・ハイはこんな形で攻められるとは想像していなかった。今の視線は冷たくて、苦しくて、息苦しい。でもウサギはひとりじゃ生きていけない。快感と苦痛が交互に襲うこの状況で、彼は苦し紛れでふたりのヒーローを指差した!

 「ゴスロリブラックっ!」
 「クヒヒッ!」
 「キャプテンブルーっ!」
 「たあっ!」
 「兎耳せんた」
 「だから、あたしはおまえの仲間じゃないからっ。この場をノリで押し切ろうなんて一万年早いわ!」
 「返事までしてるのに〜っ! 惜しいっ!」

 悔しがるピンクに、舌打ちする局長。一方のブレイブは戦隊に数えられてまんざらでもなさそうな顔をしていた。目の前の漫才が一段落すると、怪獣たちはゆっくりと動き出す。いよいよ戦いが始まるのだ。ブレイブは念動力を使って大きくジャンプすると、わざと敵の巣となっている場所で戦う。ウラは余裕の表情と動作で迫り来る敵に向かって電撃一閃。うさ耳ピンクは余った敵を主武器であるにんじんブレードでこそこそトドメを刺す。

 「……なんかおまえだけ楽してない?」
 「ひとりで戦うのは無理なんですよ。モチーフはウサギなんで。」
 「まー、邪魔しないのならそれでもいいわ。クヒヒッ、面白いほど敵が倒せるわっ! べべべんっ♪」

 敵の中心に飛びこんでいったブレイブも怪獣どもをちぎっては投げちぎっては投げ……宣言通り、ちゃんと車やビルに配慮しての戦いを繰り広げていた。この3人だけで戦況はあっという間に有利になってしまう。だが、ブレイブにはある心配事があった。それは期せず現実のものとなってしまうだろう。ずいぶん敵が片付いたと実感したその時……それは起こった!

  キュンキュン! ドカーーーーーン!
 「くっ、やはりか!」

 大音響と共に放たれたその攻撃は怪獣たちが持つレーザーガンからではない。そう、鷹型戦闘機『ビューン』からの砲撃だった! これではいくら街を守りながら戦っても意味がない。ブレイブなら空を飛んで戦うこともできるが、それをすると怪獣どもが街の中で暴れ出す。にっちもさっちもいかない状況だったが、それでも自分は地上で戦わざるを得ない。ひとり思案していると、隣にうさ耳ピンクが抜群の跳躍力を使ってやってきた。手には命綱ともいえるにんじんブレードが握られている。ここは調子よく「この場は任せて」という展開かと期待しながら、ブレイブは頼れる味方のセリフに耳を傾けた。

 「大丈夫ですか、ブレイブさん。」
 「戦況は悪いですね……よっと!」
 「でもね、この長いお耳がなんかでっかい音を感知してるんですよ。たしかこれはなんかの怪獣映画のテーマソングだったと思うんですけど……」
 「曲?」

 リーダーはピンクのおかしな伝令に首を傾げるが、疑いは一瞬にして解消された。突然、大音響で荘厳な音楽が鳴り響いたかと思うと、閑静な住宅街のど真ん中から巨大なメイドさんが出現する! ミニ丈エプロンドレスに黒ストッキング、黒ローファーを着た正真正銘のメイドさん。ただしそのサイズは超巨大。あまりにデカすぎて、その辺を飛んでいたビューン戦闘機が数機、彼女にぶつかってそのまま爆発炎上してしまうほどだ! そんな彼女が一言ボソッとつぶやく。だがいかんせん身体がデカいので、そのつぶやきもデカくなってしまい誰にでも聞こえる声になってしまう。

 「……登場テーマは特に必要ないですよ。もう、ご主人様ったら。」
 「ゴスロリさんの次はメイドさんですね。」

 どう反応していいかわからないブレイブは適当にそう言うと、周囲の敵をある程度片付けてから空へ飛んだ。突然ひとりにされたうさ耳ピンクは口上通りひとり寂しそうに残った敵と戦い始めたが、並み居る敵をビリビリにしまくったウラと合流すると打って変わって元気いっぱい。またいつもの戦法で姑息に戦うのだった。
 その頃、ビッグサイズメイドさんの目の前にブレイブがやってきた。そして自分では割れんばかりの声を張り上げて、メイドさんに質問する。

 「あなたは何者なんですか!」
 「わたくしはクライバー家に仕えるエリス・シュナイダーです。とりあえずはこの戦闘機を相手に戦いますわ。」
 「それは助かります。人間の平和のためにがんばりましょう!」
 「ええ、よろしく。」

 挨拶もそこそこにエリスは大きくなった腕を振り回しながら歩き始める。とにかく戦闘機が蚊のように小さく見えてしまうほどのサイズだ。ビームで攻撃しようが特攻しようが、今の彼女にそんな攻撃はまったく効かない。まさに完全無敵の女性兵器がここに誕生した。
 この巨大な人間が現れたことで怪獣軍団も戦術を切り替える。地上殲滅の前に空を征するつもりなのか、怪獣歩兵部隊はすたこらさっさと逃げていってしまった。ウラとピンクはこの様子を見て大喜び。「勝った勝った」と喜んでいるところに、またも上空からビューンのビームが降り注ぐ!

  ガーーッ、ガーーーッ!!
 「わわっと。これ、危ないですねぇ。」
 「ヒヒッ、地上はこれで大丈夫ね。お次は上だけど、おまえ兵器か何か持ってないの?」
 「よくぞ聞いてくださいました。兎耳戦隊にはご都合でロボがあるのです。」
 「それって何人か乗れるの?」
 「ご一緒してくれますか? ミサイルを撃つ係がちょうどいないんですよ。」
 「……ひとりなんでしょ。普段はどうやってミサイル撃ってるのよ?」

 誰もいない道路の真ん中で再び始まる新戦組局長とうさ耳ピンクの面白漫才。しかし今回はそれに水を差すのは正義のヒーロー……いやヒロインだった。彼女はどこかの学校の制服を着ており、右手には魔法のドリルを装着し、他にもヘッドセットディスプレイなどを備えた完全無欠の正統派ヒロインである! しかもなぜか富士山の頂上から名乗りを上げているところがすさまじくそれっぽい匂いがする。

 「銀の螺旋に勇気を込めて、回れ正義のスパイラルっ! ドリルガール、ご期待通りにただいま参上!」
 「おおっ、だんだん私たちがインチキヒーローっぽく見えてきますね!」
 「あたしを入れないでくれる、あたしをっ!!」
 「相手は宇宙人……しかも戦闘機。つまり脱出ポッドとかパラシュートとか生命維持装置とか持ってるってことよね。じゃあ容赦なくドリルで穴を開けていこっと!」

 えらく嬉しそうな口調と素振りで富士山からビューンを見つめるドリルガール。とりあえず飛行ユニット全開で巨大メイドと化したエリスの近くまで突貫を開始した。それを妨害するがごとく飛ぶビューン戦闘機は等しく大きな穴を開けられ、派手に爆発する! さすがは魔法の力を帯びたドリル、宇宙金属ももろともしない。その破壊力に感心する漫才コンビだが、それ以上に気になることがあった。

 「敵さん、脱出しないわね……」
 「み、見えないだけですよ。宇宙戦争ってきっとそんなもんなんですよ。」
 「クヒヒ、あたしは自分が負けたくないから参加してるだけなのよ。相手のことなんか、ぜーんぜん気にしてないわっ!」
 「じゃあそろそろこっちも着ぐるみ兎ロボを出しますね。カモン、ラビちゃん!」

 ドリルガールが名乗りを上げた富士山が今度は真っ二つに割れ、中からこじんまりした着ぐるみ兎ロボが姿を現した。しかしそれは子ども番組でよく見る白いウサギの着ぐるみそっくり。ただ見た目はそれが巨大化しただけとしか思えない。これが本当の兵器なのだろうか……ウラは心配そうにロボを見つめるのだった。

 「これホントに……?」
 「ウラさん、とりあえずジャンプです。ジャンプすれば乗れますんで。」
 「おまえね、あそこまですっごく距離があるじゃない。それをひとっとびなんか絶対に無理よ!」
 「大丈夫です! 飛んだら乗れるんです! そーゆーもんなんです! お約束なんです、お約束!」
 「そーゆーもの?」
 「そーゆーもの。」
 「じゃあ……」

 「「でゅわっ。」」

 ふたりが同時にジャンプし、着地する頃にはあら不思議。なぜかふたりはコクピットの中にいた。目の前に広がる大きなモニターで外の様子を見る限り、本当にジャンプで乗ってしまったらしい。感慨にふけるウラを尻目に、ピンクは操縦桿を握って自らも東京空中戦に参加しようとロボを発進させる。

 「着ぐるみ兎ロボは跳躍力だけなら世界一! さっきと同じくひとっとびで〜っ!」

 ロボが体勢を低くして思いっきりジャンプすると、一発でエリスの隣までたどり着いた。もはやその早さは瞬間移動に匹敵する。ウラはすっかりロボが気に入ったらしくさっそく褒めちぎろうとしたが、一瞬モニターを見ると我に返った。なぜかロボの目の前が真っ黒になっている。シオンはそれが何を意味するかわかっていなかったが、ウラはすぐにそれを察したらしい。

 「大きいわね〜、あの女。ハンパじゃないわ。」
 「うそっ、ロボの全長がお姉さんの腰にも届いてなかったりしますかっ?!」
 「これではさすがに戦闘機を虫扱いするわけにはいかないわね。来るわよっ!」
 「ボディには弾力がありますから、ある程度はやれますよ。ロボが小さい分、小回りのよさで勝負ですよ。」

 ピンクの分析は間違っていなかった。確かにエリスは無敵だ。あの程度の敵にやられることはないだろう。しかしあまりにデカすぎて、身のこなしがすさまじくスローモーなのだ。それでもその辺を歩くだけで戦闘機同士のニアミスを誘うので効果は抜群。あとは回りをちょろちょろする敵をブレイブとドリルガールがちくちく落としていく。そこにロボが混じって飛来するビューン戦闘機をうさ耳ミサイルでマイペースに倒すのだ。たまにビューンが突っつき攻撃で反撃してくるのを身体で受けてしまうが、そこはご愛嬌。そうなるとコクピットの中でピンクとウラがケンカするのもご愛嬌。
 結局、地上はおろか空中の攻撃部隊までもボロボロにされてしまい、もはや宇宙人の侵略は失敗に終わったかと思われた。しかしまだ彼らには巨大戦闘機『トップ・シークレット』がある。親玉の登場にここまで大活躍のヒーローたちにも緊張が走った。

 「ついに現れたな……悪の親玉!」
 「ここはこの私、ドリルガールが本気でお相手しなくちゃいけないみたいね……ってあれ?!」
 「キヒヒッ、これがホントの出オチね!」
 「今ごろきっと、相手も驚いてるだろうなぁ〜。」

 その場にいた全員が唖然とした理由は明白だった。満を持して登場した『トップ・シークレット』よりもエリスの方がデカかったのだ! 今までのビューンが蚊なら、今度は子どものおもちゃである。そして彼女は両手でそれを持ち、表現通りの扱いをし始めた。まずは上下にぶんぶん振って、操縦席とおぼしき場所から中の様子を伺ってみる。

 「あらあら、ちゃんと乗組員がいますわね。なんとお話しかはわかりませんが、わいわい騒いで……」
 「連中、きっと今ごろ地球の重力に感謝してるわ。」
 「でしょうね。」

 趣味がミニチュア遊びというエリスでも、これほどリアルな宇宙戦闘機にはなかなかお目にかかれない。いろんな角度から舐めるように観察するその姿はいったいどちらが勝者かを明白に教えてくれている。しばし全員がその光景に釘付けになって動けなくなっていた。エリスがひとしきりトップ・シークレットで遊び終えた後、ドリルガールに向かってあるお願いをした。

 「ドリルガールさん、もういいので壊しちゃってください。ついでに宇宙にいるらしい『オ・ナベ』も退治してくださると助かります。」
 「あ……はい。なーんか調子狂っちゃったけど、まいっか。それじゃ行くわよーーーっ!!」

 エリスから宇宙侵略軍の壊滅をお願いされたドリルガールが魔法の力を全開にし、その全身に神々しきばかりの光を蓄え始めた! その姿は翼を広げた天使のようだ。彼女は猛スピードでエリスが動きを封じている巨大戦闘機に向かって真横から突っ込み、そして宇宙に向かってそのまま駆け上がる! しかしそれでもトップ・シークレットは壊れない。今度はキャプテン・ブレイブが渾身の力で下から突っ込み、ドリルガールの出てきた穴から飛び出す!

 「うおおおおぉぉぉっ!!」
 「エリスさんっ、それをこっちに投げて! 着ぐるみ兎ロボの必殺技『赤いお目ビーム』で焼き尽します!!」
 「クヒヒッ、楽しみだわ……スイッチはこれでいいのね?」
 「そうです! ウラさん、後はエリスさんの投げるタイミングに合わせて押すだけですよ!」

 エリスは全体に火花が散り始めている戦闘機を片手で持って、指示通り着ぐるみ兎ロボに向かって投げつけた! その瞬間、ロボの必殺技『赤いお目ビーム』が両の瞳から発射され、トップ・シークレットを襲った!

  バリバリバリバリ……ドドッカーーーーーン!!

 「やりました〜! ウラさん、ナイスタイミングっ!」
 「キヒヒッ! あたしに任せなさいよっ! ぷかーっ。」

 ウラはどこに持っていたのか、かぎタバコを取り出すと一服の真似事をしてポーズを決めた。局長とピンク、そして巨大メイドとブレイブで地球の安全は確保した。後はドリルガールがオ・ナベを破壊するだけである。彼らは皆、空を見上げた。そしてドリルガールの帰還を待つ……


 ドリルガールはエンジェルフォームを維持したまま、地球の軌道を回っていたオ・ナベにドリルを突き出して突っ込む! その道のりで恐ろしく分厚いレーザーが発射されたが、今の彼女にとってそれらはすべて無意味だ。それどころか、彼女はヘッドセットディスプレイに出てくる表示を見ながら悠々と宇宙旅行を楽しんでいた。

 「エネルギー成分が全然違う……外宇宙から来たのかなぁ。でもどっから見てもスーパーの安売りで売ってるお鍋なんだけど。」

 変身にかかる負荷を計算しつつ、彼女はさらにスピードアップした! そして本来はすさまじく強固であろうオ・ナベの外壁を貫き、そのまま中も全部穴だらけにして再び宇宙へと脱出する。もちろんこの宇宙船がこんな物理攻撃に対応できるはずもなく、瞬時に宇宙の塵となるべく大爆発を起こした! ドリルガールはその音を自分の耳で聞き、ディスプレイで宇宙船の完全破壊を確認すると大急ぎで地球に戻る。青い地球、いや日本の東京は彼女たちによって守られた。地上で待っているであろう仲間たちの元へ向かうドリルガールの表情は太陽のように明るい。そして彼女は仲間たちと一緒に喜びを分かち合うのだろう……



 「う、ううん?」

 と、言うところで目が覚めた。カレンダーは2005年。今日は1月1日。どうやらこれが初夢だったらしい。いやにリアルな夢だった……それがみんなの感想だ。この夢は吉夢なのか、はたまた凶夢なのか。その結果はまだまだわかりそうもない。なぜなら今年は今日始まったばかりなのだから。


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┏┫■■■■■■■■■登場人物表■■■■■■■■■┣┓
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┗━┛★あけましておめでとうPCパーティノベル★┗━┛

【整理番号:PC名/性別/年齢/職業】

【2975:藤岡・敏郎      /男性/24歳/月刊アトラス記者・キャプテンブレイブ】


【1178:エリス・シュナイダー /女性/21歳/メイドさん】
【2066:銀野・らせん     /女性/16歳/高校生(ドリルガール)】
【3356:シオン・レ・ハイ   /男性/42歳/びんぼーにん(食住)+α】
【3427:ウラ・フレンツヒェン /女性/14歳/魔術師見習いにして助手】

(※登場人物の各種紹介は、受注の順番に掲載させて頂いております。)

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■         ライター通信          ■
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いつもありがとうございます、市川 智彦です。今回は「初夢大決戦」なお話です(笑)。
主発注者様のご指定が「夢オチ」だったので、とにかく好き放題書かせて頂きました。
皆さんの活躍をまんべんなく出そうと思いながら書きました。いかがだったでしょうか?

今回は全身タイツに巨大ロボ、果ては宇宙船まで出てくる始末です。
書いてる本人が「すげーな、このネタ」と思ってしまうほどすごいことになってます。
正直、後にも先にもこんな無茶するのは今回限りではないかと思うほどです(笑)。

今回は本当にありがとうございました。私もいい経験をさせて頂きました!(笑)
また別の依頼やシチュノベなどでお会いしましょう! 次回もよろしくお願いします!