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ヒッペラカン語講座
『馬子にも衣装』と言えば、相手に対して失礼になるだろうか。タラコ唇と大きな輪のイヤリング、そして日に焼けて健康的な肌をした男が今日の依頼人である。アフリカの奥地に存在するという、ある少数民族の村からやってきたその男はあらゆる意味で特徴的だった。身長は2メートル以上あり、立てば草間興信所の天井ギリギリ。草間も零も入口をしゃがんで入ってきた彼を見て、ただただその大きさに呆然とするばかりだった。しかし体つきはというとそれほどマッチョというわけでもなく、どちらかといえば細身。だがその姿が返って俊敏性を想像させるのだから不思議なものだ。雄大な草原の真ん中に立ち、獲物を追いかける姿が自然とまぶたの裏に描かれる。まさに彼は絵に描いたような酋長といった感じだ……などと思っていたら、通訳が重大なことを口にした。実はこの依頼人、本当に酋長らしい。ふたりは納得の表情を上下させた。
草間はとりあえずお茶を出すよう零に言ったが、果たしてそれでいいものかずっと悩んでいた。彼が困った顔をしていると通訳の男が助け船を出した。酋長の村では暖かい飲み物を口にすることがよくあるという風習を説明されたのだ。とりあえず胸を撫で下ろす草間。ここまで文化に違いがあるとカルチャーギャップという言葉では片付けられない。「世界は広いもんだ」……草間はそう思いながら、デカい依頼人を口を開けたまま見つめていた。
彼の出身はヒッペラカンという。言語が難解なことで有名で、通訳の男でさえ酋長の言葉を流暢に伝えることができないらしい。ヒッペラカン語はテレビでよく見る同時通訳ができる人間はこの世にひとりもいないそうだ。通訳の男は最初から『交渉に時間がかかると思いますが、その辺はご容赦下さい』と前置きしたほどである。よっぽどこの言語は複雑でわかりにくいものだろう。草間もただ静かに頷くしかなかった。
すでに草間は通訳の男からある会社の調査を依頼されていた。その名は『悪食商事』。会社の社長が酋長に対し、ヒッペラカンの奥地にこんこんと涌き出る流水を『ヒッペラカンのおいしい水』という名の商品にしたいと打診してきたことがすべての始まりだった。その商品は現地に建てる予定の工場で密封保存され、それを空路で日本に輸入し全国販売する計画らしい。少数民族であることと難解すぎる言語のせいで周囲の村人との交流も少なく、最近では文明レベルそのものにも溝ができていたヒッペラカン族にとってはまさに渡りに船。その計画に乗ろうとしたその時、若き酋長はひとり悩んだ。この世の中にこんなうまい話があるのだろうか……悩みに悩んだ末、彼は日本の探偵にこの会社の調査を依頼することにした。その考えを聞いた通訳がそれを依頼する際にたまたま草間が選ばれたのだ。ちなみに今回の報酬は日本では見たこともないような大きさのダイヤらしい。草間は別件で『悪食商事』の資料が手元にあったので、快くそれを引き受けた。しかし……
「う〜ん、この会社は業務内容がよろしくないね。酋長さんの不安が的中したな。」
通訳が頭の中で言葉を選びながら、酋長に正確な情報を伝える。草間もそれにあわせて通訳が話し終えるのを確認しながら、一言ずつゆっくりと内容を話していく。
どうやらこの会社、ずいぶんなやり方で商売相手を泣かせているらしい。草間も昔からちょくちょく黒い噂を耳にしていたが、実際に調べると風聞以上にあくどいことをやってのける会社だった。相手の弱みにつけこんで金や資源を絞り取るだけ絞り取ったらそのままポイ。きっと今度もヒッペラカン族の水も枯渇するまで吸い上げておいて、最後には契約を踏み倒して逃げる腹づもりなのだろう。こんな相手と契約したらえらいことになるのは火を見るよりも明らかだ。
そんなヒドい会社のことを聞いた酋長だが、顔色ひとつ変えずに冷静に喋っている。さすが上に立つ人間と言ったところだろうか。
「ンペシャパラ、ペリブリュシュアンボポルペ……」
「……………もはや、言葉じゃないな。」
草間も零も、向かいにいる男ふたりのやり取りを冗談として受け止めるよりほかにない。静かに頷く通訳の顔を物珍しそうに見ながら茶をすする草間。すると通訳の顔がだんだんと沈鬱な表情になった。そして草間の方に向きなおし、静かに酋長の言葉を伝える。
「あ、あのですね……酋長はそのようなところと手は組めないとおっしゃってます。悪食商事との契約で部族にもたらされる利益は他の集落の言語を学ぶ施設を作るためだったのですが、それが叶わないのは非常に残念ですが仕方がないと。」
「でも悪い会社さんの認めるおいしいお水なら、同じように他の会社さんもきっと欲しがると思いますよ〜?」
「零のいう通りだ。せっかく日本くんだりまで出てきたんだから、営業でもしていったらどうだろう。このままあんたを放り出すのもなんだから、できる範囲でなら協力してやってもいいぞ。」
通訳が「おお」と感嘆の声を響かせると、悠々とお茶を飲んでいた酋長に向かってそれを伝え始めた。ところがこの酋長、さっきから表情がやたらと固い。お茶を飲む仕草こそ外国人らしい面白おかしいアクションを見せていたが、さっきの草間からの報告で腹に据えかねることがあったらしくずっと仏頂面のままだった。
そのうち通訳が何度か酋長の言葉を聞きなおすことが多くなった。どうやら無茶を言っているらしい。短い溜め息を何回にも分けて吐き出す彼の肩を大きな手でしっかりとつかみ、その震えを押し留めようとする酋長。しかし彼は落ちつきを取り戻すことはなかった。狭い事務所の中で一番よく動いているのは、小刻みに震えるもこの男なのかもしれない。
「どうか……したのか?」
「あ、ああ、そうですね。『お気遣い感謝する。私もそうしたいのだ』と酋長は言ったんですが……問題は後に続く言葉でして。」
「その後ですかぁ?」
「ええ。なんでもヒッペラカンには『良き隣人を振る舞って自らを偽る者は、ゾウの尻に3回敷いてペチャンコにしてしまえ』という格言があるそうなんですよ……」
その格言からなんとなくニュアンスは伝わったが、はっきりとした意味はわからない。さすがはヒッペラカン語。草間は感心しつつも冷静にツッコんだ。
「……………お前、訳し方間違ったんじゃないのか?」
「いえいえいえ! そんなことは絶対にありません! 酋長は確かにそうおっしゃいました。それで協力を得る前に、どうしても私たちを騙そうとした悪食商事の人たちに報復をしたいとまぁ……こうおっしゃってるのです。」
「あんたなぁ、ここは日本だ。法治国家なんだぞ。江戸時代みたいに敵討ちが法令で認められてるわけじゃないんだ。」
「さらに酋長は『悪しき者に対しては人差し指と中指の隙間に槍を何度も打ちこみ、気絶するほどの恐怖を与えるべし』との決まりがあるともおっしゃっており、その意志はずいぶんと固いようで……」
「困った先祖だな。一度、ヒッペラカン部族とやらに会ってみたいよ。」
素直に営業活動をすればいいものを、部族の決まりやしきたりで酋長はそれができないらしい。いや、それよりも先にすべきことがあると彼は考えている。今の酋長を止めるには、遠くアフリカの奥地から先祖の霊でも引っ張ってくるくらいしかないだろう。それくらい酋長の言葉には重みがあった。格言の意味だけはよく理解できないが。
草間は腹を括った。そこまで言うのなら、酋長のために報復メンバーを集めてやろうと決心した。彼自身も悪食商事のやり方にはうんざりしている。彼らと同じく『渡りに船』とまではいわないが、まぁいいだろうと思った。さっそくメンバーに支払う報酬の話を酋長に持ちかけると、小さなダイヤをいくつも持っているという。草間はそれを報酬にすればいいと勧めると、酋長もそれに応じた。契約が成立したところで、草間は零に電話をかけるように指示する。悪い会社に天誅を下すヒッペラカンの酋長とともに戦う者たちを広く野に求めたのであった。
「改めて調査した資料はあるのよね。だったら後はその周囲の動きを洗って弱みを握るのが適当かしらね。」
「まさに天誅といった感じだな。まぁ、連中はそうでもしないと納得しな」
「ごめんなさい、武彦さん。今、酋長さんが喋ってるから。」
「シャペポンガハ、リグデヂフォピャンファ。」
身体はちゃんと草間に向いているのに、耳と心は完全に酋長の方。興信所の事務員を勤めるシュライン・エマはさっきからこんな調子で打ち合わせを続けていた。話の腰を折られるのはいつも草間である。さすがの彼も業を煮やしたらしく、彼女のひとこと注文をつけた。
「お前な。俺の話はちゃんと聞」
「生よ、ネイティブよ武彦さん。稀少言語のヒッペラカン語よ。直接聞く機会なんて一生ないと思ってたわ。私、今本当に感動してるの。百聞は一見にしかずとはよく言ったものね……ウットリ。」
「ったく、仕方ないな。お前がそういうなら仕方ないか。おーい、零よ。暇だからお茶くれ。」
「ちょっと、暇ってことはないわよ。ほらほら酋長さん以外にも悪食商事に狙われてる企業があるはずだから、そこの連絡先とか調べないとダメよ。私は今、通訳さんからひとつでも多くの単語を教えてもらわないといけないんだから。」
「それは自分の趣味で聞いてるんじゃないのか? ったく立ってる者は親でも使えってか。困ったもんだ。」
ボサボサの頭を掻きながら片手に書類を持ち、自分の机へと戻っていそいそと作業を始める草間。そこへクスクスと微笑みながら小さな茶色い急須を持って零がやってきた。事務所全体がこんな忙しいなんて久しぶりのことである。にわかに活気付いているのを見て、零も心なしか嬉しそうだった。
そんな彼らの忙しさを忘れさせようとしたのか、艶やかな姿をした金髪の女性が扉から現れる。彼女は日頃から娘たちがお世話になっているお礼を兼ねて新年の挨拶にやってきた海原 みたまだった。なぜか彼女の頭には十二単を着たぬいぐるみの猫がちょこんと座っている。彼女がさっそく新年のご挨拶をしようと思ったところ、興信所はバケツをひっくり返したかのような大騒ぎ。思わずかぶっていた猫を脱いで、いつかの草間と同じように頭を掻いた。
「あらあら、草間の名前も国際的に売れてきたんだねぇ。うんうん、いいこといいこと。」
「みたまさんじゃないですか。あけましておめでとうございます〜。今、兄たちは取り込み中なんです。ごめんなさい。」
「おめでと、零ちゃん。あ、これかつおぶしの詰め合わせ。また使って。で、あの背の高い黒人さんが依頼主ってわけ?」
実は帽子と思われていた猫には年賀のおみやげが詰まっていた。それを零に手渡し、話を聞いたみたまは酋長を手助けすることをその場で約束する。もちろん報酬は頂く方向で。その辺はさすがは傭兵、しっかりしている。そして必死に言語の習得をしているシュラインの横に座り、「ちょっとゴメン」と詫びをいれた後で話を始めた。
「ちょっといい? この人の喋ってる言葉は何語なの?」
「ヒッペラカン語よ。もしかしてわかります?」
「ヒ、ヒッペラカン……な、名前はちょこっと聞いたことあるくらいだねぇ。そんな奥地の言語までわからないわ。英語ができたら、地球ではある程度生活できるからねぇ。」
「みたまさん、海外が長いからヒッペラカン語も行けるかと思ったけどちょーっと考えが甘かったみたいね。」
「じゃあ状況説明は所長に聞くわ。お邪魔様〜♪」
みたまはさっと席を立ち、草間の隣に折りたたみ椅子を引っ張ってきて今度はそこに陣取った。そしてテーブルに散らばっている書類を一枚ずつ手に取りながら、さっきの話と総合していろいろなことを考え始める。草間はシュラインに指示された通りの仕事をしており、現在は電話で折衝中だった。その間にすっかり全部のプリントを読破したみたまはひとり腕組みをして唸り始めた。
「おっ、みたま来てたのか。気づかなくて悪かったな。」
「今年も娘たちがお世話になると思うから挨拶に来たんだけど、ついでだからこの件は私が手伝っていくよ。それぞれに話を聞いて、今の電話を聞いたけど……やっぱり泣き寝入りしてるところから情報をもらって攻めていくのが常套手段じゃないかねぇ?」
「そうだな。想像以上に被害者が多い。奴さん、もうちょっとうまいことやってるのかと思いきやただ強引なだけらしいな。これじゃ証拠バラ撒いてるのと同じだよ。」
「なら、その辺の関係者に訴訟させればいいじゃない。集団訴訟でもいいからうまく焚きつけて、こちらに正義ありってとこを見せないとね。」
「なるほど、そう来るか。じゃあそうしよう。」
「相手は会社なんだから、資金援助してる銀行を抑えるのも効果的じゃないかしら。『銀行の金庫に悪食商会の汚い金を溜め込んでる』なんてマスコミに書かれたくなかったら、今すぐ付き合いをやめなさいと警告すればいいじゃない。この不景気な世の中でそんなこと言われたら、さすがに首を縦に振らざるを得ないでしょ。証拠は簡単につかめるんだから、それくらいの根回しはしておかないとね。」
「……協力してもらってて言うのもなんだが、お前ノリノリだな。」
「あら、私は悪食商会が二度と足腰立たないようにって考えただけよ。それこそ復讐の「ふ」の字も出ないくらいボロボロにしないと、そういう会社はまた同じことするもんなの。これ、世界共通ね。」
みたまの理路整然とした論に草間も素直に頷いた。探偵という仕事をしている以上、おそらく今回とパターンが似たような話を何度か耳にしているのだろう。やるからにはとことんまで。草間は両手で自分の頬を軽く叩くと、再び受話器を取った。その間、みたまは腕のいい弁護士の名前を近くにあったメモ帳にさらさらと書き出していく。
お客様まで大忙しという状況の中、零はしばしお茶汲みにいそしんでいた。まだまだ客は増える。なぜなら自分でヒッペラカン族の酋長に協力してくれそうな人たちに連絡をしたからだ。台所ではカタカタとやかんのふたが蒸気によって軽快なリズムを奏でている。彼女は急ぎ足でコンロのガスを切り、またあの急須にお湯を注ぐ。そんな作業を繰り返していると、またまた来客がやってきた。今度はふたりだ。ひとりは酋長の通訳を買って出たアイン・ダーウン、そしてもうひとりは心やさしき少女の中藤 美猫だった。アインは美猫の背中をやさしく押しながら事務所に入ると、さっそく酋長の姿を見て言った。
「オッケーですよ。ヒッペラカン族とは諸事情で二度ほど会ってます。通訳は俺に任せて下さい。」
この言葉に過敏に反応を示したのはシュラインと通訳だ。やった、これで楽ができる。そう思ってふたりはさっそく酋長の言葉を聞かせた。酋長は今まで肝心要の通訳がシュラインにヒッペラカン語をレクチャーしていたので、かなり暇を持て余している状況だった。そこでその辺の不満がないかどうかを通訳が聞き、その答えをアインが訳することになった。そしていつものようにとても言葉には聞こえない響きが酋長の口から滑らかに出てくる……
「ラッペリャンポシュブポレピシグリョ……」
「え、ええ、えっと、『特にンニョンニョない』らしいです。」
「あんたね、私たちはその『ンニョンニョ』が知りたいのよ!」
「その〜、あの〜、不機嫌じゃないというか……このニュアンスを日本語で伝えるのは難しいんですよ〜。そうでしょ、通訳さん?」
「あんた本当にヒッペラカン語わかるの?!」
「いやいや、でもこの表現は私でも悩みますよ。おそらくは『特に気分は害していないから気にしないでほしい』と言ってるんでしょうがね。」
「あの、皆さん。怒るのはやめてください……ね。」
美猫が小さくも通る声で自分の気持ちを伝えると、シュラインもアインに向けて放とうとした文句の言葉をぐっと飲み込む。さすがにこんな小さな子どもの前で、知る人のいないであろう稀少言語をネタにケンカするのはよろしくない。そう思って突き出した角を引っ込めたのだった。背筋を伸ばしてつんとおすましするシュラインに対し、通訳が思い通りに行かなかったアインは悪気もなく陽気な笑い声を響かせる。そして意味もなく美猫の頭をそっと撫でた。すると酋長も彼女の存在に気づいたらしく、一言声をかけた。
「ピンラヘラカジャエンンポップグシャパカ。」
「えっ、『食べちゃいたい』って?」
「違いますよ。『かわいい娘だ』とおっしゃってるんです。」
どうもアインの通訳は当たらずとも遠からずといった感じだ。大きく的を外しているのかと思えばそうでもない。シュラインも今のセリフを正確に訳せたらしく、アインの訳を聞いてガックリと肩を落とした。まったく役に立つのか立たないのか……彼女はこのなんとも微妙な助っ人に頭を悩ませる。美猫も美猫で何をしにきたのかがイマイチよくわからない。シュラインの心に不安が渦巻いた。
そしてさらに場は混沌とする。開け放たれた扉の向こうから赤いハイヒールの靴音を響かせながら、ゆっくりと興信所の中に入ってくるのはジュジュ・ミュージーだ。いつものように真っ赤な口紅を塗り、紫のタンクトップにミニスカートとお決まりのスタイルで登場する。しかし今日の彼女はその服装には似合わない大きめのビニール袋を片手にぶら下げていた。
「ヘイ、ユー。オー、草間サンね。そこのテレホン借りるネ。さっそくデスけど、酋長サンはこのケータイ持つヨ。」
「ハカヴェル?」
酋長が運よく携帯電話を正しい使用方法で構えるとジュジュは何度か手を叩く。そしていつの間にか静まり返った所内を悠然と歩いた。草間は指示された通りに受話器を彼女に渡す。
「オーーゥ、ナイスよ。そしてミーのケータイにテレホンすると……ハローね!」
「……ンベシャ??」
相手の反応から音が発せられた事実を確認すると、ジュジュはさっさと通話を切ってしまった。そしてさっきの袋から全員分のインコムを取り出し、それをつけるように指示するではないか。どうやら今までの行動は何かの前準備だったらしい。
「ミーの『テレホン・セックス』を酋長サンに憑依させたネ。デーモンは今、脳の言語中枢にステイしてるヨ。うまく行けばこれで酋長サンの思考だけでも読み取れるかもしれないネ〜。」
「これで失敗したら目も当てられないわね……どれどれ?」
とりあえずシュラインがそれを受け取り、しっかりとセットする。するとイヤホンの向こうからバッチリ日本語が聞こえてくるではないか。これは紛れもなく酋長の思考だった。
『この一連の動作はいったい何を意味しているのでしょう?』
「あら、喋ってることが日本語で聞こえるわ。これは便利ね。」
「大成功ネ〜、これでみんなハッピーハッピー!」
「でもこれ……どうやって私たちの考えを酋長さんに伝えるの?」
「ジェスチャーがあるネ! それにシュラインさんならココのファミリーの言葉わかるはずネ!」
「残念ながらそれほど詳しくはないのよね。今も通訳さんに教えてもらってるくらいだから期待しないで。」
「大丈夫ですよ。後はジェスチャーでいけるんでしょ? 俺、がんばりますから。」
「そーそー、私はそういうの得意だからなんとでもするわよ。」
アインもみたまもずいぶんと気楽なことを口にする。しかし、それ以外に方法はなさそうだ。とりあえずある程度はシュラインが訳し、後は全員の必死のジェスチャーに期待するしかない。それでもひとつの壁を越えると気が楽になった。少し肩を回してリラックスするシュラインだったが、ジュジュは休みもせず前にいる酋長の身体をメジャーで測っているではないか。
「ちょ、ちょっと。あんた何してるのよ?」
「このままトーキョーシティを歩かれたら、ビックリなショーも顔負けネ。だから部下にスーツとジャージを作らせるヨ。」
「ああ、そういうことね。どっちみち『ヒッペラカンのおいしい水』を売りこむのにスーツは必要になるわけだし……」
「フフフ〜〜〜♪」
ジュジュは鼻歌混じりに寸法を測ってこまめにメモする。その姿から何かを感じ取ったシュラインはメモにあることを書き、それを草間の左手にしっかりと握らせた。
「武彦さん、後でこの件に関しても調査しておいてくれないかしら。」
「んん、なんだこりゃ………ああ、そうだな。調べておこう。ところでこっちの根回しは終わったぞ。集団訴訟の件はみたまの推薦で経済を専門にしてる弁護士団に任せた。泣き寝入りしてた関係者は口を揃えて協力すると言っているから放っておいても大丈夫だろう。警察沙汰になる前に俺がその辺の証拠書類を作って先手を打てるようにしておく。後は酋長の怒りを静めるには、社長の泣き顔が必要なんだろうなぁ……」
『ヒッペラカン、決してあいつら許さない。』
「やっぱりなぁ……」
仕返しの準備は完璧だが、それだけでは酋長が納得しない。やはり天誅を下さねば気が済まないようだ。さてどうしたものかと草間が腕組みして唸り始めると、その背後からどこからともなくひょこっと子どもが顔を出す。少年は驚くみんなに向かってニコッと笑うと、自分を指差してある作戦を自慢げに披露するのだった。
「我輩、豪徳寺 嵐なんだな〜。どなた様も唐突だがよろしくなんだな。社長を泣かすその役目、我輩が引き受けた〜!」
「いったいどうするのさ。相手は会社だよ、用心棒だっていっぱいいるかもしれないんだ。」
みたまの忠告はもっともだ。だが嵐には自信があった。彼は大きく胸を張って言う。
「我輩、実は姿を消すことができるのだな。そのまま悪食商事の重役室にお邪魔して暴れまくる。すると、みんなどんどん不安になっていくんだな。その時が絶好のチャンスなんだな。」
「銀行からの融資は止まる。集団訴訟は起こる。警察の捜査も始まる。それに加えて幽霊騒動か。完璧だな。」
「できれば、そこでお話し合いで済ませられればいいんですけど……」
「もし暴力沙汰になったら、美猫ちゃんが酋長さんを止めればいいんです。大丈夫、ちっちゃな君でもできます。」
「あ、ありがとう、お兄ちゃん。」
アインの励ましで自分の気持ちをほんの少し強める美猫。その後の話し合いで嵐の嫌がらせの時間を考慮すると、今週の金曜日あたりに悪食商事の重役ご一同様に何らかの動きがあるだろうと予想。その日の夜に改めてここに集まり、酋長が望む天誅を下す段取りになった。そして彼らはそれぞれに動き出した……
翌日から新聞やテレビなどの各種メディアは悪食商事の黒い疑惑を大々的に取り扱った。被害者の声も同時に披露し、ワイドショーも連日トップでこの話題を報じる。ジュジュが用意したホテルの一室でその様子をできるだけ見る酋長は「当然の結果だ」と満足げではあったが、決してこの結果を素直に喜んではいなかった。彼はきっと数日後に控えた天誅を達成するまでは決して安心してはならないと思っているのだろう。部族の誇りを賭けた男を止めることは誰にもできないのだ。その気持ちは全身からあふれ、通訳やジュジュにも十分に伝わるほどだった。
そんな彼の心をやわらげたのが美猫だった。彼女は怒れる酋長の心を静めるため、いつも傍らにいた。そして食事時になると得意のホットケーキを作って、それを振る舞った。ふんわりとやわらかなケーキの上を滑るバターを見て、酋長は不思議そうな顔をしながらそれを頬張る。するとおいしそうにそれを食べ、あっという間に平らげてしまった。それ以来、彼女がいる時は必ずホットケーキを注文するようになった。美猫の得意料理が酋長のやわらかな笑顔を作ったのだ。もちろんそれを証明する事実があった。なんとヒッペラカン族の酋長が初めて覚えた日本語が「ホットケーキ」だったのだ。
そんな優雅な接待の間にも、嵐が巻き起こす擬似ポルターガイスト現象は悪食商事で猛威を振るっていた。毎日のように飛び交う鉢植えや置き物。専務の椅子を揺らしたり、身体をこそばしたりともう毎日毎日よくも飽きずにやりたい放題。もちろん専務だけが標的ではない。社長も狙うし、常務も狙う。悪事のできそうな怪しげな人間はすべて嵐のターゲットになった。
しかし嵐は一介の社員には一切嫌がらせをしなかった。それはみたまやアインから十分に注意されていたからだ。『こんな大掛かりな悪事ができるのは、間違いなくトップだけだから他は狙うな』とでも言われたのだろう。その時、ふたり揃ってなぜか笑顔だったのが効いたのかもしれない。そんな中、彼は金曜日に社長の号令で浮き足立っている重役たちを一同に集め、英気を養おうとしていることを知った。その場所は都内の片隅にある小さなスナックだ。
その情報を嵐から聞いたシュラインは草間と共に手を回し、そこで天誅を下すことにした。スナックのママに直接交渉をしたところ、「相手は常連客だ」と言って一度は申し出を拒んだ。しかし結局はシュラインの粘り強い説得と世論の悪さを考慮してなんとか応じてくれた。そして酋長を含むメンバー全員に予定通り集合するように連絡し、彼女も新たに手に入れた証拠などを準備して夜を待った。
そして夜がやってきた。
全員が酋長の言葉がわかるジュジュ特製インコムを装備し、全員がなぜか酋長が着ているジャージと同じものと着用した。当たり前かもしれないが、衣装の統一には方々で疑問の声が上がった。
「ところで……なんで俺たちまでジャージなんですか?」
「我輩もこの辺はすごく疑問なんだな。」
「オウ、酋長のスタイルに合わせるのが部族の掟なのデ〜ス!」
「じゃあ本当なら、露出度全開のあの衣装を着て復讐に行くことに……」
酋長は今まで『すさまじい』の一言で片付けられる民族衣装を着用していた。みんな、よく草間興信所までやってこれたもんだと感心できるほどのものである。簡単に言えば『半裸以上、全裸以下』だ。さすがに男性陣にこれを着る勇気はなかった。もしかしたら、外を3歩出ただけで警官が飛んでくるかもしれない。それほどの威力のある衣装なのだ。なお、その服装については皆さんの想像にお任せすることにする。
「何かクレーム、ありますカ〜〜〜ん??」
「「ありません、まったくありませんっ!!」」
アインも嵐も部族の衣装を着た自分たちの姿を想像してぞっとしたのだろう。ジュジュの念押しに対して素直に頷いた。その横ではみたまが黒の皮手袋をはめ、シュラインに計画を確認する。
「っしょっと。で、スナックの従業員は全員グルなのね?」
「部屋の電気が消えたと同時に堂々と表口から逃げるよう指示してあるわ。後は施錠して悪食商事のお偉方を全員閉じ込めて……なんだけど。」
「なんだけど?」
一瞬、シュラインが言葉を詰まらせたのをみたまは聞き逃さなかった。「任務遂行前に何か問題があるなら全部明らかにしてほしい」と彼女の口から出かかった時、不意に木の棒で床を叩く音が響く。みたまは大きく口を開けたままゆっくりと頷いた。そう、それがシュラインの言いたかったすべてである。酋長はジャージに部族伝統の技術で作られた槍を手にしていたのだ。
「もしかしたら血の雨が降るかもしれないってことね……」
「通訳さんに十分に説明はしてもらったんだけど、相手の顔を見たら気が変わるかもしれないしね。ある意味では相手の出方よりも酋長の方が心配よ。」
「あーあー、それ大丈夫です。俺に任せて下さい!」
「そのセリフ聞くのこれで二度目なんだけど、ホントーに大丈夫?」
「任せて下さいっ!」
アインが胸を張って酋長の暴走を食い止めることを約束した。それに続いてみたまも一応ではあるが止め役に立候補する。実はこの時、美猫が小さく手を上げていた。それに気づいたみたまは『もしかしたらこの娘が一番の適役かも』と密かに思っていた。そんな彼女でもひとつだけどうしても理解できないことがあった。それは美猫が大事そうに自分の身体よりも大きなリュックを抱えていたことである。いったい中に何を入れているのだろうか……
それを聞こうとした時、ちょうど決行の時間になった。草間が用意と運転を担当する黒のワゴン車に乗り込んで、全員で悪食商事の会合へと向かう。すべてはヒッペラカン族のために。全員の心は一応ひとつになっていた。解決後は果たしてどうなるかわからないが。
夜空に似た暗さが支配するスナック周辺を音もなく走る集団がいた。もちろん酋長たちだ。嵐だけは姿を消して移動している。そしてシュラインが目的の場所にたどり着くと、あるリズムで裏口の扉をノックする。周囲に緊張が走った。いよいよである。これを合図に店内は真っ暗になり、悪食商事の重役たちはここに閉じ込められるのだ。裏口の錠が下りる音と共に、中からオッサンのざわめき声が聞こえる……シュラインを先頭にして特殊部隊が突撃を開始し、あっという間に店の中へと雪崩れこんだ!
「騒ぐんじゃないよ!」
みたまの一喝は重役どころか仲間もビビらせた。ところがあまりにスゴい迫力で、続いて喋れる人間が誰もいない……静寂と闇が支配する店内で大勢が息を潜めた。奇妙な間が開いてしまったが、酋長が自分の言葉で悪者たちに語りかける。
「シャペリピポリガ、ブワヲウイゲル……」
「あっ、お前はヒッペラカンの族長!」
「その通りなのだ〜。我輩たちはお前たちの悪事を暴きにやってきたヒッペラカンの英霊なるぞ〜。控えおろ〜。」
威厳あふれる酋長の言葉に続いて、なんとも緊張感のない嵐の声がスピーカーを通してスナックに響き渡る。ジュジュは両者のギャップに思わずズッコけた。どうやら相手もそう思ったらしく、さっそく反撃の言葉を投げ返してくる。
「そんなバカっぽい英霊なんか、ちっとも怖くないわ〜!」
「ガキがぁ〜、大人の世界舐めるなぁ〜!」
「オーノー……酋長、こいつらもうぶっ殺しマスか?」
「ジュジュさん、いきなり焚きつけないで下さいよ!」
酋長はいくら日本語がわからなくとも、相手が凄みを帯びて喋っているのくらいは直感でわかる。彼はゆっくりと身を屈めて戦闘態勢に入った……実は彼、暗闇でもしっかりと周囲を見通せるのだ! 全員が計算違いに気づいたのは、酋長の雄叫びが上がった刹那だった!
「ウキュラアァァァァァーーーーーーーッ!」
「しまった、酋長さんは暗闇でも相手の位置を把握している!」
「アインっ、早く止めなさい!」
「お、俺もまだ目が……いくら超加速を使っても場所がわからなければっ!」
「ど、ど、どうなってるのだ?!」
「『テレホン・セックス』っ、酋長サンを止めなサイっ!!」
すべてにおいて後手になった仲間たちになす術はない。みたまは突入前から片目をつぶり暗闇に備えていたのだが、不幸にも立ち位置が悪かった。今から駆け出したでは遅い……それはジュジュの能力においても同じことだった。シュラインは何も見えない闇の中で強く目をつぶる。それは深い後悔と絶望を表わしていた。
悪い予感が的中した。誰もがそう思った。しかし不思議なことに誰の悲鳴も上がらなかった。ジュジュが操るデーモンの力が酋長の早さに勝ったのではない。みたまが体当たりで止めたわけでもない。ましてやアインの超加速が発動し、酋長を食い止めることができたわけでもない。なんと彼を止めたのは……美猫だった。彼女が重役のひとりに槍を振り下ろさんとするその時、両手を広げてひとり酋長の目の前に立ちはだかったのだ。
「あの娘、酋長と同じで最初から全部見えてたのね……」
「ダメです。傷つけちゃ、ダメです。」
『む、娘……』
インコムを通して酋長の言葉が響く。彼の口からようやく出された言葉は溜め息にも似ている。思わぬ展開に立ち尽くす仲間たち。しかし相手は目前の恐怖を恐怖と思ってないのか、やんややんやと再び挑発的な文句を並べ立てる。
「なんだ、殺ろうってか! 殺ってみろ!」
「お前はムショに入れられるぞ! 俺らを殺したらお前は部族には帰れん! どうだ、悔しいか?!」
再び槍を振り上げる酋長。しかし美猫は震えながらもそこを動こうとしない。酋長の中で葛藤が生まれようとしたその時、美猫はリュックの中からあるものを取り出した。それはなんとおもちゃのピコピコハンマーだった。酋長の前にそれを差し出し、彼女は遠慮気味にこう言う。
「あの……代わりにこれでお仕置きしてください。」
『これなら……いいのか?』
目が慣れてきた仲間たちは美猫の動作にあ然とした。確かにあれでいくら叩いても、相手は決して死にはしないだろう。しかしこれで怒りを収めろとは……さすが子どもの発想と言うべきか。酋長は素直にハンマーを手に取り、さっそく相手をそれで叩いた。
ゴツ!
「あがっ、痛い痛いっ!!」
酋長は思いっきり柄の部分で殴りかかったため、相手は悲鳴を上げた。さすがにこれは痛いだろうと、目が慣れて動けるようになったアインがジェスチャーを交えてハンマーの使い方を手取り足取り教える。
「あーあー、酋長さん。これはこう、こう持って〜、こう叩く。」
『長い棒の部分を持って、振りかぶって、思いっきり叩く?』
「そうそう。美猫ちゃん、俺にも貸してね。それではご一緒に。こう行って、こう叩く。」
ピコ、ピコン!
この場にまったくそぐわない軽快な音がスナックに鳴り響いた。聞いてる方も叩かれてる方も何とも奇妙な感じである。アインからレクチャーを受け、なんとなくコツをつかむと酋長はパワフルにピコピコハンマーを使い始めた。なんと相手の鼻の頭や脇腹を適確に狙い、並み居る悪人たちを全力で殴りまくる!
ビタンッ、ボコン!
「うげっ!」「あがっ!」
『これでならいいのか。なるほど。後世に残したい名品だ。』
ここでヒッペラカン族が誇る名言が出そうなくらい酋長もピコピコハンマーが気に入ったらしい。いつの間にか彼の持つハンマーからはそれらしい音がしなくなったのが不思議だ。それを黙って見ていた仲間たちもだんだん興が乗ってきたらしく、いい大人が物欲しげな顔を並べて美猫の前に手を出す。
「美猫、まだあれある?」
「ええ、皆さんの分をご用意しましたので……」
「準備のいいことで。じゃあ私もストレス発散にいっちょやりますか♪」
「あー、俺も全力を出してマッハで叩いていいですか〜?」
「我輩も闇に紛れてやるのだ〜!」
「オー、イッツぱーてぃーネ! ぶっ殺〜す!」
「ちょ、ちょっと待って。あんたたち何しに来たの? わしらよくわからんのだが……」
悪食商事の重役たちが意味もわからず殴られ予告をされ、ついには情けない悲鳴を上げた。そんな相手に対して怒りを押し殺しつつも嬉しそうな声で、シュラインと草間がニヤケながらその問いに答える。それは実にシンプルな一言だった。
「天・誅・よ!」
彼女の言葉を合図にモグラ叩きが盛大に開催された。宙を舞い、鮮やかに敵を狙う酋長。それに続けと言わんばかりに飛びかかるジュジュとみたま。叩かれたことに気づかないスピードでハンマーを乱射するアインに、叩かれたことに気づけない透明ショットを繰り出す嵐。草間とシュラインはただ社長と思しきお偉いさんを狙って餅つきのようにピコピコ乱打している。ただその様子を呆然と見ているのは、その原因を作った美猫であった。こうして酋長以下全員が飽きるまでモグラ叩きは続いた。
謎のヒッペラカン天誅組によって肉体的にボコボコにされた重役たちを待っていたのは、なんと翌朝からの警察の強制捜査だった。今度は精神的にボコボコにされ、ついに悪食商事は白旗を上げた。そして社長以下重役たちがそれぞれに供述を始める。まぁボロボロと出るわ出るわ、余罪の数々。訴訟の数よりも多くの悪事を吐いたため、さすがの捜査官も開いた口が塞がらなかったという。それもこれもすべて草間興信所とそれに協力したメンバーのおかげであった。
そんなめでたい日に酋長は約束の報酬をみんなに直接手渡した。特に喜んだのは女性陣である。みたまもシュラインも満足げな表情でダイヤを天にかざして見つめていた。特に美猫はきれいなダイヤを見る目が同じ輝きを放っていた。もちろんアインも草間も大満足。ちなみに通訳さんも一粒もらってホクホク顔である。
ところが約2名はダイヤに目もくれず、未だにインカムを外さずに酋長の近くで懸命にあるメッセージを伝えようとがんばっていた。嵐とジュジュはダイヤよりも『ヒッペラカンのおいしい水』の独占販売権が欲しくて欲しくてたまらないらしい。その必死さは一目瞭然だ。
「ウォーター! ウォーター! ミーにビジネスさせてヨ!」
「ダメダメダメ、我輩の方が信頼できるんだな。なんてったって我輩は物の怪、人間と違ってウソはつかないんだな。」
「ユー、ユー! 人聞き悪いデス! ミーは酋長サンのことを思って……」
「商いは我輩が一枚上手だぞ。我輩に任せれば、きっとたくさんの学校が建てられるぞ〜!」
通訳がマトモにふたりの話を取り次がないせいもあり、ふたりのヘタクソなボディーランゲージは延々と続いた。その様子を見て呆れ果てたシュラインは草間から手渡されたある書類を真剣に読んでいる最中である。そのタイトルは『ヒッペラカンのおいしい水を良心的に販売してくれる企業リスト』。実は前に草間にお願いしていたこととは、このリストのことだったのだ。商売にうるさいあのふたりが何か企んでいるのを察知して、先手を打っていたというわけだ。シュラインは小さく舌を出してから通訳さんを呼び、リストの内容を酋長にしっかり説明するようにお願いする。果たしてこの事実を知ったふたりはなんというだろうか……まだまだ混乱と興奮は収まりそうにないらしい。
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【整理番号/ PC名 /性別/ 年齢 / 職業】
0086/シュライン・エマ /女性/ 26歳/翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員
2449/中藤・美猫 /女性/ 7歳/小学生・半妖
0585/ジュジュ・ミュージー /女性/ 21歳/デーモン使いのなんでも屋
1685/海原・みたま /女性/ 22歳/奥さん・主婦・傭兵
2525/アイン・ダーウン /男性/ 18歳/フリーター
4378/豪徳寺・嵐 /男性/144歳/何でも卸問屋
(※登場人物の各種紹介は、受注の順番に掲載させて頂いております。)
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■ ライター通信 ■
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皆さんこんばんわ、市川 智彦です。今回はちょっと異国情緒あふれる物語……かな?
見事に天誅を成し遂げ、社会的にも制裁を加えることができたのも皆さんのおかげ!
酋長さんも喜んでいると思います。本当に皆さんのお知恵は素晴らしかった!(笑)
シュラインさんはいつもありがとうございます〜。感動してるとこ初めて見ましたよ。
私はあの部分がすごく好きで、序盤ではありますが力いっぱい表現させて頂きました。
後はいつも通り(!)の大活躍、そして最後はちょっとお茶目です。いかがでしたか?
今回は本当にありがとうございました。皆さんのおかげで書いてて楽しかったです!
それではまた、別の形式の依頼やシチュノベでお会いできる日を待ってます!
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